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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

特許庁手続

平成26(行ケ)10158  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年7月16日  知的財産高等裁判所

 審判請求時にした補正書に該当するか否かが争われました。裁判所は実質的に判断して補正書に該当すると認定し、拒絶審決を取り消しました。
 特許法17条の2第1項4号は,特許出願人は,拒絶査定不服審判を請 求する場合には,その審判請求と同時に願書に添付した明細書,特許請求 の範囲又は図面について補正をすることができる旨規定し,同法17条4 項は,手続の補正(手数料の納付を除く。)をするには,手続補正書を提 出しなければならない旨規定し,また,特許法施行規則11条1項は,手 続補正書の様式に関し,手続の補正は,「様式13」によりしなければな らない旨規定している。 そこで,本件書面1が様式13に適合するかどうかについて検討するに, 様式13は,「【書類名】」欄に「手続補正書」,「【あて先】」欄に「特 許長官 殿」とそれぞれ記載し,「【事件の表示】」の「【出願番号】」\n欄,【補正をする者】の「【識別番号】」欄,「【住所又は居所】」欄及 び【氏名又は名称】」欄,【代理人】の「【識別番号】」欄,「【住所又 は居所】」欄及び「【氏名又は名称】」欄,「【発送番号】」欄」,「【手 続補正1】」の「【補正対象書類名】」欄,「【補正対象項目名】」欄, 「【補正方法】」欄及び「【補正の内容】」欄を設け,その各欄に具体的 に記載すべき旨定めているところ,前記ア(ウ)によれば,本件書面1は, 「【補正対象項目名】」欄と記載すべきところを「【補正対象項目】」欄 と記載し,「【代理人】」の「【識別番号】」欄の記載がないほかは,様 式13の定めに従った記載がされているものと認められる。 しかるところ,「【補正対象項目名】」欄の欄名を「【補正対象項目】」 と記載したことは,単なる誤記にすぎず,職権訂正の対象となる事柄であ るものと認められる。 次に,様式13の「[備考]」の「2」に「識別ラベルをはり付けるこ とにより印を省略するときは,識別ラベルは「「【氏名又は名称】」(法 人にあつては「【代表?】」)の横にはるものとする。」との記載がある ことからすると,【代理人】の「【識別番号】」欄は識別ラベルを貼付す\nる方法によって記載することができ,また,代理人がその押印をすること により「【識別番号】」欄の記載を要しないものと認められる。本件書面 1には,【代理人】の「【氏名又は名称】」欄に記載されたCの押印はな く,「【識別番号】」欄の記載も,識別ラベルの貼付もないが,前記ア(ア )のとおり,Cは特許庁の窓口(出願支援課窓口)に訪れて,本件審判請求 書とともに,本件書面1を含む書類を提出していること,本件審判請求書 の【代理人】の「【氏名又は名称】」欄には,Cの氏名が記載され,その 押印がされていること(乙6の1枚目)に鑑みると,上記の点は,窓口の 担当者がCに本件書面1への押印を求めることなどにより補正可能な軽微\nな瑕疵にすぎないものと認められる。 さらに,様式13には,「【提出日】」について,括弧書きで「(【提 出日】 平成 年 月 日)」と記載され,それが任意的記載事項であっ て,必要的記載事項に当たらないことが示されている。この点に関し,本 件書面1には,「【提出日】」欄に「平成22年12月 日」との記載が あるが,この記載は具体的な日を特定するものではなく,「【提出日】」 の記載に当たらないといえるから,本件書面1には,具体的な「【提出日 】」の記載がないものとして取り扱うべきものといえる。 以上によれば,本件書面1は,本願の特許請求の範囲の補正を内容とす る書面であって,様式13に適合する手続補正書と認めるのが相当である。
ウ そして,本件審判請求書の「3・立証の趣旨」に,「拒絶されるべきで ない理由」として記載されている主たる理由は,平成20年10月10日 付け手続補正による補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし16につい て補正をすることで拒絶理由を解消するという内容のものであり(乙6の 5頁ないし9頁記載の「(拒絶理由1)」ないし「(拒絶理由4)」に対 する反論部分を参照),しかも,本件審判請求書の「4・むすび」には, 「したがって,本願発明は引用文献1〜10に記載された発明の内容に関 項を2つにまとめ, よって原査定を取り消す,この出願の発明はこれを特許すべきものとする, との審決をもとめる.」(乙6の10頁〜11頁)との記載がある。これ らの記載は,本願の特許請求の範囲が平成20年10月10日付け手続補 正による補正後の請求項1ないし16から本件書面1記載の請求項1及び 2に補正されたことを前提としたものであることは明らかである。 もっとも,本件審判請求書の「【提出物件の目録】」欄には,「【物件 名】」として,「1・手続補正書 1」及び「7・手続補正書 1」との 記載があり,「1・手続補正書 1」に対応するものとして本件書面1が, 「1・手続補正書 7」に対応するものとして本件書面2が提出されてい るが(前記第2の1(2)ウ),本件書面2(甲45,乙6)には,「【提出 日】」欄に平成22年10月5日,「【補正の内容】」欄に請求項1ない し3がそれぞれ記載され,「22.10.6」と刻印された特許庁国際出 願課名義の日付印が押印されていることに照らすと,本件書面2は,本件 審判請求書の提出日(平成23年12月26日)より前に提出された手続 補正書であり,本件審判請求書の前提とする「請求項を2つにまとめ」る 手続補正に係る手続補正書に当たらないことは明らかである。 さらに,本件においては,拒絶査定不服審判請求書の「【提出物件の目 録】」欄に,拒絶査定不服審判請求と同時にする「手続補正書」を記載し てはならないことを定めた法令が存在することや特許庁がそのような運用 基準を定めて公表していることについての主張立証はない。
エ 前記イ及びウによれば,本件書面1は,本件審判請求書と同時に特許庁 に提出された,本願の特許請求の範囲の補正を内容とする様式13に適合 する手続補正書であるから,特許法17条の2第1項4号に基づく補正に 係る手続補正書に該当するものと認められる。 そうすると,本件審判手続においては,本件書面による補正が特許法1 7条の2第3項ないし5項所定の補正の要件に適合するかどうかについて 審理判断を行い,適法であれば,本件書面による補正後の特許請求の範囲 (請求項1及び2)の記載に基づいて発明の要旨認定を行い,その特許要 件について審理判断を行うべきであったものであるが,本件審決には,本 件書面1による補正がされたことを看過し,上記審理判断を行うことなく, 本件書面による補正前の特許請求の範囲の記載に基づいて発明の要旨認定 を行った誤りがあり,この誤りは,審決の結論に影響を及ぼすべきものと 認められる。

◆判決本文

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平成26(行コ)10004等  行政処分取消義務付け等請求控訴事件,同附帯控訴事件  特許権  行政訴訟 平成27年6月10日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 原審では審査官による特許査定を取り消すとの判断がなされましたが、知財高裁はこれを取り消しました。
 以上の認定判断を踏まえ,本件特許査定について,担当審査官による審 査がされなかったか,実質的にこれと同視することができる場合であるか について検討する。 前記ウによれば,担当審査官は,本件補正が審査基準に照らせば新規事 項の追加に当たることについては,これを看過したといわざるを得ない。 しかし,前記イに検討したところによれば,本件補正後の本願発明が特許 要件を具備しているかどうかについては,本願発明の進歩性,請求項の明 確性,明細書のサポート要件及び実施可能要件について,それぞれ検討を\n経た上で本件特許査定に至ったと評価することができ,その検討過程や検 討結果が,明らかに不合理であるとまでいうことはできない。 このような担当審査官による審査の内容を全体としてみれば,それが, およそ審査の体を成すものではなかったとか,あるいは審査していないに 等しいものであったと評価することはできないものというべきである。そ して,担当審査官が新規事項の追加の点を看過したことによって,本件特 許査定に係る特許が無効理由を含むこととなったとしても,その点は,無 効審判請求における判断対象となるにとどまり,これによって直ちに,担 当審査官が全く審査をせず,あるいは実質的に審査をしなかったのと同視 すべき場合において本件特許査定をしたことが裏付けられるということは できない。 以上によれば,担当審査官が,審査を全くすることなく,あるいは実質 的に審査をしなかったのと同視すべき場合において本件特許査定を行った と認めることはできない。

◆判決本文

◆原審はこちら。平成24(行ウ)591

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平成25(行ケ)10131  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年2月5日  知的財産高等裁判所

 審判請求時の補正が独立特許要件を欠く場合には,拒絶理由通知をしなくとも常に補正を却下することができるとする主張は採用できないと判断されました。ただ本件における補正却下は問題なしと判断されました。
 そこで検討するに,平成18年法律第55号による改正前の特許法50条本文は,拒絶査定をしようとする場合は,出願人に対し拒絶の理由を通知し,相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えなければならないと規定し,同法17条の2第1項1号に基づき,出願人には指定された期間内に補正をする機会が与えられ,これらの規定は,同法159条2項により,拒絶査定不服審判において査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合にも準用される。この準用の趣旨は,審査段階で示されなかった拒絶理由に基づいて直ちに請求不成立の審決を行うことは,審査段階と異なりその後の補正の機会も設けられていない(もとより審決取消訴訟においては補正をする余地はない。)以上,出願人である審判請求人にとって不意打ちとなり,過酷であるからである。そこで,手続保障の観点から,出願人に意見書の提出の機会を与えて適正な審判の実現を図るとともに,補正の機会を与えることにより,出願された特許発明の保護を図ったものと理解される。この適正な審判の実現と特許発明の保護との調和は,拒絶査定不服審判において審判請求時の補正が行われ,補正後の特許請求の範囲の記載について拒絶査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合にも当然妥当するものであって,その後の補正の機会のない審判請求人の手続保障は,同様に重視されるべきものといえる。
以上の点を考慮すると,拒絶査定不服審判において,本件のように審判請求時の補正として限定的減縮がなされ独立特許要件が判断される場合に,仮に査定の理由と全く異なる拒絶の理由を発見したときには,審判請求人に対し拒絶の理由を通知し,意見書の提出及び補正をする機会を与えなければならないと解される。これに対し,当該補正が他の補正の要件を欠いているような場合は,当然,補正を却下すべきであるし,当該補正が限定的減縮に該当するような場合であっても,当業者にとっての周知の技術や技術常識を適用したような限定である場合には,査定の理由と全く異なる拒絶の理由とはいえず,その周知技術や技術常識に関して改めて意見書の提出及び補正をする機会を与えることなく進歩性を否定して補正を却下しても,当業者である審判請求人に過酷とはいえず,手続保障の面で欠けることはないといえよう。そうすると,審判請求時の補正が独立特許要件を欠く場合には,拒絶理由通知をしなくとも常に補正を却下することができるとする被告の主位的主張は,上記の説示に反する限度で採用することができない。
(2) 以上の点を踏まえて更に検討するに,本件において,拒絶査定の理由は,「補正前発明は,当業者が,引用文献1に記載された発明に対して,引用文献2に開示された技術及び周知技術を適用して容易に発明をすることができた」というものであるのに対し,審決の補正却下の理由は,「補正発明は,当業者が,引用文献1に記載された発明に対して周知技術を適用して容易に発明することができた」というものである。そうすると,両者の相違は,引用文献2に開示された技術について,拒絶査定ではこれを公知技術としたのに対し,審決ではこれを周知技術と評価して例示したのであって,審判請求人である原告にとって不意打ちとはいえないから,審判段階の独立特許要件の判断において改めてこの点について意見書の提出及び補正をする機会を与えなくとも,手続保障の面から審決に違背はないといえる。この点について原告は,審決が,拒絶理由通知書及び拒絶査定において引用されなかった参考文献1ないし3を引用しており,これらに対して補正できないことにかんがみれば十分な反論を行うことは困難であり,審理手続を尽くすことができたとはいえないと主張する。しかし,参考文献1ないし3は,審決において周知技術や常套手段を示すものとして引用されたものであり,後記3(2)及び(3)のとおり,いずれも実際に当業者にとっての周知の技術や常套手段を示したものと認められるのであるから,これに対する補正の機会が与えられなくとも(参考文献1及び2は,審判の審尋において示されたものであり,原告からこれらに対する反論として回答書(甲14)が提出されている。),当業者である審査請求人にとって格別の不利益はないものと解され,原告の主張には理由がない。また,原告は,審決が,引用文献1及び2の記載の中から拒絶理由通知書及び拒絶査定で引用した箇所とは異なる箇所を引用しており,審理手続を尽くすことができなかったと主張する。しかし,拒絶理由通知書(甲7)及び拒絶査定(甲10)では,引用文献1の一部を適示して,引用発明の本質的部分である「Internet Explorerのツールバーのボタンからワンクリックで表示中のWebページのサーバのWhois情報を表\\示させるシステム」という技術事項が開示されていることを示したのに対し,審決では,当該摘示箇所を示した上で,引用発明の背景や目的効果等を示すために別途の箇所を摘記したもの認められるから,原告にとって不利益がないことは明らかであり,原告の主張には理由がない。したがって,審決が,補正発明は独立特許要件を満たさないことを理由として,審判段階で改めて拒絶理由通知をすることなく本件補正を却下したことに誤りはなく,原告の主張する取消事由1は理由がない。

◆判決本文

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平成26(行ケ)10137  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年3月10日  知的財産高等裁判所

 手続き違背ありとして、拒絶審決が取り消されました。
 ア(ア) 被告は,1)本件拒絶理由通知書においては,「理由1」,すなわち,新規性欠如を拒絶理由とする請求項として,当初請求項「1,2,5〜8,11〜16,20〜22,25」が挙げられていること,2)その後,平成24年補正により,当初請求項4及び10が削除されて項番号が振り直されたことから,平成24年補正後請求項「1,2,4〜7,9〜14,18〜20,23」が,「理由1」の対象となったこと,3)本件拒絶理由通知書においては,拒絶理由の対象となる請求項につき,「下記の請求項に係る発明は,」という,「記」以下の記載に委ねる文言が明記されているのに対し,本件拒絶査定においては,そのような文言は記載されておらず,本件拒絶理由通知書に記載した理由によって拒絶したことが記載されていることから,本件拒絶査定により「理由1」に基づいて拒絶された請求項は,第一義的には,上記2)の平成24年補正後請求項「1,2,4〜7,9〜14,18〜20,23」であることが理解できる旨主張する。 (イ)a しかしながら,前述した本件拒絶査定の記載内容によれば,本件拒絶査定の理由となる請求項は,「備考」欄に記載されたものとみるのが自然である。 b そして,前述したとおり,本件拒絶査定中,平成24年補正後請求項1に言及しているのは,「なお書き」における新規事項追加及び明瞭性の問題点の指摘のみであり,それ以外にはない。 加えて,本件拒絶理由通知書において,「理由2」,「引用文献等2」,すなわち,引用文献2に対して進歩性を欠くことを拒絶理由とする請求項として挙げられている当初請求項のうち,「7」及び「11〜14」に対応する平成24年補正後請求項は,「6」及び「9〜12」であるところ,これらの請求項は,本件拒絶査定においても,本件拒絶理由通知書と同じく,「理由2」,「引用文献等2」の対象として明記 されており,「なおも,引用文献2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることが出来たものである。」と記載されている。これは,上記請求項については,平成24年補正を経てもなお,本件拒絶理由通知書記載の拒絶理由が解消されていないことを示すものである。 上記の点に鑑みれば,本件拒絶査定において,「理由1」及び「理由2」のいずれの対象にも記載されていない平成24年補正後請求項1につき,これに対応する当初請求項1について本件拒絶理由通知書に記載されていた拒絶理由が,黙示に維持されているものと解する余地はないものというべきである。
c 以上によれば,被告の前記主張は,失当といわざるを得ない。
イ(ア) また,被告は,本件拒絶査定には,平成24年補正後本願発明1を更に限定した平成24年補正後本願発明24につき,新規性を欠く旨が説明されているのであるから,当業者であれば,平成24年補正後本願発明1が,依然として,新規性を欠くとの拒絶理由を回避できないことは,当然に予測できる旨主張する。\n(イ) しかしながら,前記アのとおり,1)本件拒絶査定中,平成24年補正後請求項1については,「なお書き」において新規事項追加及び明瞭性の問題点を指摘されているほかは,一切,言及されていないこと,2)他方,本件拒絶理由通知書中,「理由2」,「引用文献等2」の対象とされている当初請求項のうち「7」及び「11〜14」については,これらに対応する平成24年補正後請求項の「6」及び「9〜12」が,本件拒絶査定においても,「理由2」,「引用文献等2」の対象として明記されていること鑑みれば,当業者は,当初請求項1について,本件拒絶理由通知書に記載された拒絶理由はすべて平成24年補正により解消し,本件拒絶査定において指摘されている新規事項追加及び明瞭性の問題点を解消すれば,特許査定が得られるものと認識するのが,当然である。 以上に加え,1)平成24年補正後請求項24は,平成24年補正後請求項1を含むほかの請求項を引用することなく,独立の請求項であること,2)クレームの文言上,平成24年補正後請求項24が平成24年補正後請求項1を包含するものとま では,直ちにいい難いことも併せ考えれば,原告を含む当業者が,本件拒絶査定において平成24年補正後本願発明24が新規性を欠く旨が説明されていることをもって,平成24年補正後本願発明1についても同様に新規性を欠くものと認識することは,考え難い。平成24年補正後本願発明1が,新規性を欠いているのであれば,それを拒絶査定で明示すれば足りるのであり,出願人に対し疑義を与えるような記載をすべきではない。

◆判決本文

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