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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

特許庁手続

平成23(ワ)3102 損害賠償請求事件 平成23年10月24日 大阪地方裁判所

 弁理士に対して、委任契約の債務不履行又は不法行為があるとして損害賠償請求がなされましたが、原告の請求は棄却されました。
 そこで検討すると,原告が拒絶したのでなければ,被告が審査官と再度面談をしたり,進歩性なしとして拒絶された出願について一部でも特許査定をする旨の合意をされたにもかかわらず,それに従った手続補正をしなかったりする理由は他にないのであって,上記経過は被告本人の供述を前提としてしか了解することができないものである。また,前提事実のとおり,原告と被告は相互に本件出願Bに係る委任契約を解除したにもかかわらず,再度,本件出願Bに係る委任契約を締結している。これは,本件出願Bについて拒絶査定がされ,本件出願A及びCの拒絶査定も確定した後の時期であり,原告の主張するような債務不履行が被告にあったのであれば起こりえないことである。さらに,乙20及び21によれば,再度の委任契約後に,原告は本件出願Bに係る手続補正について発明の名称や請求項の記載内容の文案を示すなど,被告に詳細に指示したことが認められる。このことや,前記1のとおり,被告が原告のアメリカ特許について手続をする都度,原告に了解を求めたことは,被告本人の上記供述を裏付けるものである。なお,この点に関する原告本人の供述は,書面の体裁からして原告から被告に指示したものであることが明らかであるのに,被告から指示されるままに書いたなどと不合理な弁解に終始しており,信用することはできない。加えて,上記1と同様に,原告が平成19年4月に至るまで被告の責任を追及することがなかったことからすれば,本件出願Bの出願手続において被告の責任を追求することができるような事情があったとは考えにくい。

◆判決本文

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平成21(行ウ)417 手続却下処分取消請求事件 平成23年09月15日 東京地方裁判所

 北朝鮮の国民がしたPCT出願に基づいて日本国にした移行手続の却下処分は違法ではないと判断しました。
 PCTは,我が国,北朝鮮その他の多数の国家が加盟する多数国間条約であり,各国が所定の手続を踏むことにより当該条約に加入することが可能な開放条約である(PCT62条,パリ条約21条)。本件では,我が国と北朝鮮との間でPCT上の権利義務関係が生じるか否かが問題となっているところ,ある国から国家承認を受けていない国(未承認国)と上記承認を与えていない国との間において,その両国がいずれも当事国である多数国間条約上の権利義務関係が生じるかという問題については,これを定める条約及び確立した国際法規が存在するとは認められない。一方,証拠(乙6の1,2)及び弁論の全趣旨によれば,我が国の政府は,国家承認の意義について,ある主体を国際法上の国家として認めることをいうものと理解し,国際法上の主体とは,一般に国際法上の権利又は義務の直接の帰属者をいい,その典型は国家であると理解していること,また,我が国の政府は北朝鮮を国家承認していないから,我が国と北朝鮮との間には国際法上の主体である国家間の関係は存在せず,したがって,未承認国(北朝鮮)が国家間の権利義務を定める多数国間条約に加入したとしても,同国を国家として承認していない国家(我が国)との関係では,原則として当該多数国間条約に基づく権利義務は発生しないとの見解をとっていること,が認められる。そして,当裁判所は,日本国憲法上,外交関係の処理及び条約を締結することが内閣の権限に属するものとされ(憲法73条2号,3号),我が国及び未承認国を当事国とする多数国間条約上の権利義務関係を我が国と未承認国との間で生じさせるかということも,外交関係の処理に含まれるものといえることに鑑み,上記の政府見解を尊重し,未承認国である北朝鮮と我が国との間に両国を当事国とする多数国間条約に基づく権利義務関係は原則として生じないと解するべきであり,PCTについても,原則どおり我が国と北朝鮮との間に同条約に基づく権利義務関係は生じないものと考える(知的財産高等裁判所平成20年12月24日判決参照)。したがって,我が国が国家として承認していない北朝鮮に在住する,北朝鮮の国民であるAらによって行われた,指定国に我が国を含む本件国際出願によっては,我が国と北朝鮮との間に多数国間条約であるPCTに基づく権利義務は生じず,我が国は,北朝鮮における発明の保護を図るために本件国際出願をPCT上の国際出願として取り扱うべき義務を負うものではないというべきである。そうすると,本件国際出願は,特許法184条の3第1項所定の「その国際出願日にされた特許出願とみなす」ことはできず,本件国際出願に関する本件書面は,いずれもその提出の対象がないものであるから,本件手続は,特許法上の根拠を欠く不適法な手続であるといえる。また,本件書面が提出対象のないものである以上,本件手続について補正をすることができないことは明らかである。よって,本件手続を却下した本件手続却下処分の判断は適法であると認められる。\n

◆判決本文

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平成22(行ウ)527 特許料納付書却下処分取消請求事件 平成23年07月01日 東京地方裁判所

 特許年金の支払いについて、「通常期待される注意を尽くしたものということはできない」と判断されています。特許料管理の委託を受けた事務所は気をつけないといけませんね。
 原告は,本件特許権に係る第11年分特許料を納付することができなかった事情として,A法律事務所(前権利者であるフラーレン社が本件特許権に係る特許料の支払を委託していた法律事務所)がB法律事務所(原告が本件特許権に係る特許料の支払を委託した法律事務所)からの再三の要求にもかかわらず,本件特許権に関する一件記録の送付に応じなかったことから,B法律事務所において適切に特許維持管理を行うことができなかったことが原因であり,原告及びB法律事務所には何ら責任がなく,「その責めに帰することができない理由」がある旨主張する。しかしながら,仮に,原告が本件特許権に係る第11年分特許料を納付することができなかった事情が原告の主張するとおりであったとしても,原告から本件特許権の管理を委託されたB法律事務所は,受託者として,善良な管理者としての注意義務を負うものであるから,A法律事務所に対し,本件特許権の特許番号,特許料の支払期限,支払状況等が記載された一件記録の送付を求めたというだけで,その注意義務を尽くしたことになるとは解されない。すなわち,B法律事務所が本件特許権を管理するに当たって必要な情報を入手するため,A法律事務所に対し,本件特許権に係る一件記録の送付を求めた措置に合理性は認められるものの,その後,相当期間が経過してもA法律事務所から一件記録が送付されなかった場合には,本件特許権に係る特許料の追納期限が到来する可能性についても当然に配慮し,特許権者である原告に対して本件特許権に係る詳細な情報の提供を求めるとか,あるいは自ら特許原簿を閲覧するなどして,本件特許権に係る特許料の納付状況を調査することが求められているというべきであり,このような調査を尽くすことは,本件特許権の管理を委託された者に通常期待される注意義務の範囲内のことというべきである。本件において,B法律事務所がA法律事務所に対し,本件特許権に係る一件記録の送付を最初に求めた時期は不明であるが,原告の主張を前提としても,B法律事務所は,少なくともA法律事務所から「B法律事務所が特許維持管理の責任を負うことの確認」を求めるレターを受領した平成20年6月5日頃には,A法律事務所に対し,本件特許権に係る一件記録の送付を求めていたことになる。本件特許権に係る第11年分特許料の追納期限は平成21年1月17日であり,B法律事務所がA法律事務所に対し本件特許権に係る一件記録の送付を要求してから少なくとも半年以上の期間が残存していたことを考慮すると,B法律事務所は,その間,A法律事務所からの一件記録の送付を漫然と待つにとどまらず,自ら本件特許権に係る特許料の納付状況を調査した上,本件特許権の維持に必要な処置を講じることが求められていたというべきである。したがって,このような調査を行わず,本件特許権に係る第11年分の特許料の追納期限(平成21年1月17日)を徒過させたB法律事務所は,本件特許権の管理者として通常期待される注意を尽くしたものということはできない。そして,B法律事務所は,本件特許権の管理について,特許権者である原告から委託を受けた者であり,B法律事務所に「その責めに帰することができない理由」が認められない以上,前示2のとおり,原告についても「その責めに帰することができない理由」があると認めることはできない。\n

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