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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

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平成29(行ケ)10121  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年2月14日  知的財産高等裁判所(2部)

 進歩性ありとした審決が取り消されました。理由は、引用文献に記載の数値を本件の範囲とする動機付けありというものです。
 引用文献の【0027】には,はんだ合金に,Biを添加することで,さらに温 度サイクル特性を向上させることができ,添加するBiの量は,1.5〜5.5質 量%が好ましいことが記載されている。したがって,引用発明1〜3のビスマスの 量を,上記好ましい量の範囲内である,4.8質量%を超過し,5.5質量%まで の範囲とする動機付けがあるといえる。 そして,本件発明2〜8においてビスマスの含有割合が所定の範囲内であること の効果は,「優れた耐衝撃性を得ることができ,また,比較的厳しい温度サイクル条 件下に曝露した場合においても,優れた耐衝撃性を維持することができる」(本件明 細書【0031】)ことにある。引用発明1〜3においてビスマスの含有割合を上記 好ましい範囲内とすることの効果は,温度サイクル特性を向上させること(引用文 献【0027】)であるが,ここにいう温度サイクル特性とは,「−40℃から+1 25℃の温度サイクル試験を3000サイクル近く繰り返しても,微量なはんだ量 のはんだ接合部にもクラックが発生せず,また,クラックが発生した場合において も,クラックがはんだ中を伝播することを抑制」する(引用文献【0021】)とい う性質である。温度サイクル試験後のはんだ接合部にクラックが発生せず,クラッ クが発生してもその伝播を抑制する効果が高まれば,厳しい温度サイクル条件下の 耐衝撃性も高まるものといえる。そして,厳しい温度サイクル条件下の耐衝撃性が 高ければ,そのような厳しい条件下にない場合の耐衝撃性も高いことが予想される。\nしたがって,本件発明2〜8におけるビスマスの含有割合を所定の範囲内とするこ との上記効果は,引用発明1〜3のビスマスの量を4.8質量%を超過し,5.5 質量%までの範囲とする上記効果と比較して,格別顕著な効果であるとはいえない。 以上より,引用発明1〜3において,Bi:3.2質量%の数値を,相違点2に 係る,「4.8質量%を超過し,5.5質量%まで」の範囲の本件発明2〜8の構成\nとすることは,当業者が容易になし得たものである。 イ 相違点4について 引用文献の【0028】には,はんだ合金に,Coを添加することで,Niの効 果を高めることができ,添加する量は,0.001〜0.1質量%が好ましいこと が記載されている。したがって,引用発明4〜6にコバルトを添加し,その量を0. 001質量%〜0.1質量%とする動機付けがあるといえる。 本件発明2〜8においてコバルトの含有割合が所定の範囲内であることの効果は, 「優れた耐衝撃性を得ることができ,また,比較的厳しい温度サイクル条件下に曝 露した場合においても,優れた耐衝撃性を維持することができる」(本件明細書【0 037】)ことにある。そして,引用発明4〜6においてコバルトの含有割合を上記 好ましい範囲内とすることの効果は,Niの効果を高めること,すなわち,はんだ 付け界面付近に発生する金属間化合物層の金属管化合物を微細化して,クラックの 発生を抑制するとともに,一旦発生したクラックの伝播を抑制する働きをする(引 用文献【0024】,【0028】)という効果を高めることである。クラックの発生 を抑制し,一旦発生したクラックの伝播を抑制すれば,耐衝撃性がより優れ,これ が維持されるといえる。したがって,本件発明2〜8におけるコバルトの含有割合 が所定の範囲内であることの効果は,引用発明4〜6においてコバルトを添加し, その含有割合を0.001質量%〜0.1質量%とすることの効果と比較して,格 別顕著なものであるとはいえない。 以上より,引用発明4〜6にコバルトを添加し,その量を0.001質量%〜0. 1質量%として,相違点4に係る,「コバルトの含有割合が,0.001質量%以上 0.1質量%以下(本件発明6については0.003質量%以上0.01質量%以 下)」の本件発明2〜8の構成とすることは,当業者が容易になし得たものである。\n ウ 被告の主張について 被告は,本件発明2〜8と,引用発明1〜6との間には,ビスマスの含有量又は コバルトの含有量について明確な相違点があり,これを容易想到とする理由はない, と主張する。 しかし,前記ア及びイのとおり,引用発明1〜3において相違点2に係る構成を\n採用すること,及び引用発明4〜6において相違点4に係る構成を採用することの\n動機付けがあり,本件発明2〜8のビスマスの含有量及びコバルトの含有量につい て格別顕著な効果があるともいえないから,引用発明1〜6に相違点2及び4の構\n成を採用することは,容易想到である。

◆判決本文

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