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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

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平成24(行ケ)10221 審決取消請求事件  特許権 行政訴訟 平成25年02月27日 知的財産高等裁判所

 進歩性違反なしとした審決が、動機づけ有りとして取り消されました。
 引用発明1の洗浄剤混合物は,グルタミン酸二酢酸塩類,グリコール酸塩,陰イオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤を含んでおり,本件発明1の洗浄剤組成物と組成において一致し,かつ,各成分量は,本件発明1において規定された範囲内である。このように,引用発明1の洗浄剤混合物は,本件発明1の規定する3つの成分をいずれも含み,かつ,その成分量も本件発明1の規定する範囲内であることに照らすと,単に,グリコール酸ナトリウムが主成分の一つであると規定したことをもって,容易想到でなかったということはできない。この点,被告は,甲1文献では,グリコール酸ナトリウムは,洗浄剤の有効成分と認識されず,精製して除去されるべき不純物として記載されているのであるから,本件発明1の相違点1に係る構成は,容易想到ではないと主張する。確かに,仮に,本件発明1の洗浄剤組成物が引用発明1と対比して異なる成分から構\成されるような場合であれば,両発明に共通する成分である「グリコール酸ナトリウム」が,単なる不純物にすぎないか否かは,発明の課題解決の上で,重要な技術的な意義を有し,容易想到性の判断に影響を与える余地があるといえる。しかし,本件においては,前記のとおり,本件発明1と引用発明1とは,その要素たる3成分が全く共通するものであるから,「グリコール酸ナトリウム」が単なる不純物ではないとの知見が,直ちに進歩性を基礎づける根拠となるものではないといえる。
(イ)被告の付加的な主張について
 被告は,相違点2については容易想到ではないとも主張する。しかし,被告の上記主張は,以下のとおり,採用することはできない。甲1文献には,同文献における金属イオン封鎖剤組成物の封鎖作用は,通常の洗浄剤媒体のアルカリ性のレベルに相当するpH8〜11において最大であることが確認された旨の記載があり,実施例3では,pH10のアンモニア性緩衝液において,甲1文献における金属イオン封鎖剤組成物の効果が確認されている。そうすると,たとえ上記pH8〜11に関する記述が界面活性剤を含む洗浄剤混合物について記載したものではないとしても,甲1文献の記載から,上記金属イオン封鎖剤組成物を含有する引用発明1の洗浄剤混合物においても,pH8〜11において洗浄作用が最大になると理解することは,容易に想到できる事項である。そして,このpHの数値範囲は,本件発明1におけるpH10〜13と,pH10〜11において重なっている。したがって,甲1文献に接した当業者が,その洗浄能力が高まるように調整して,引用発明1のpHを10〜13にするのは,容易であるといえる。よって,この点に関する審決の判断に誤りはない。\nエ 以上のとおり,審決は,相違点1を本件発明1と引用発明1の相違点であると認定した上で,相違点1が容易想到でないとした判断に,誤りがある。

◆判決本文

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