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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

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平成20(行ケ)10235 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年01月14日 知的財産高等裁判所 

 36条違反により無効であるとした審決が取り消されました。リパーゼ最高裁判決にも触れています。
 以上のとおり,当業者であれば,本件訂正明細書の記載から,本件発明に係る共沸混合物様組成物の全範囲が空調用又はヒートポンプ用の冷媒として使用できることが理解可能であって,実施例4として記載されていた具体例が本件訂正によって本件発明の対象外となってもなお,本件発明が実施可能\要件に欠けることはないというべきである。(5) 審決は,実施例4の記載からは,訂正後の請求項1に記載された共沸混合物様組成物について,すべての範囲に渡ってCOP 等の性能が同等又は優れているとはいえず,また他に具体的な性能\評価の記載もないから,本件訂正明細書には,本件発明について当業者が実施することができる程度に発明の目的,構成及び効果が発明の詳細な説明中に記載されているとすることはできないとしている。しかし,本件発明は,前記(1) ウ記載のとおり,その組成範囲が限定された組成物であって,本件訂正明細書において,同組成物が共沸混合物様に挙動し,かつ,同組成物が空調用又はヒートポンプ用の冷媒として使用可能であることが開示されている。本件発明は,共沸混合物様に挙動する組成物の組成範囲を開示した点において既に新規性があるものであって,「すべての範囲に渡ってCOP 等の性能が同等又は優れている」ことの開示が必要であるとまではいえない。(6) 被告は,本件訂正明細書には,本件発明の具体的な性能評価(温度勾配が0.3°C未満であること,難燃性を有すること,空調用又はヒートポンプ用に適した熱力学的性能\を有すること)は記載されていない旨主張する。しかし,そもそも,温度勾配については,本件発明を特定するために必要な記載事項とはいえない。・・・・・・被告は,最高裁平成3年3月8日判決(いわゆるリパーゼ事件判決)を引用して,請求項1の後段の「32°Fにて約119.0 psia の蒸気圧」について,それが誤記であるとしても,それは同判決が判示するような「一見して誤記であることが明らかな場合」には当たらないと主張し,また,誤記ではないとしても,「特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができない」場合にも当たらないと主張するので,念のために,所論の判例との関係につき付言することとする。上記判示のとおり,本件発明の請求項1の文言は,前段では,組成物の物質の名称が特定の数値(重量パーセント)とともに記載され,後段では,特定の温度における特定の数値の蒸気圧が記載されており,それぞれの用語自体としては疑義を生じる余地のない明瞭なものであるが,組成物の発明であるから,構成としては前段の記載で必要かつ十\分であるのに,後者は,さらにこれを限定しているようにも見えるものの,真実,要件ないし権利の範囲として更に付された限定であるとすれば,その帰結するところ,権利範囲が極めて限定され,特許として有用性がほとんどない組成物となり,極限的な,いわば点でしか成立しない構成の発明であるという不可思議な理解に,当業者であれば容易に想到することが必定である。そうすると,本件発明の請求項1の記載に接した当業者は,前段と後段との関係,特に後段の意味内容を理解するために,明細書の関係部分の記載を直ちに参照しようとするはずである。そうであってみれば,本件発明の請求項1の記載に接した当業者は,後段の「32°Fにて約119.0 psia の蒸気圧を有する」の記載に接し,その技術的な意義を一義的に明確に理解することができないため,明細書の記載を参照する必要に迫られ,これを参照した結果,その意味内容を上記判示のように理解するに至るものということができる。したがって,本件発明の請求項1の解釈に当たって明細書の記載を参照することは許され,上記の判断には,所論のような,判例の趣旨に反するところはなく,被告のこの点に関する主張は採用することができない。 (3) 以上のとおり,本件発明における請求項1の「32°Fにて約119.0 psiaの蒸気圧を有する」との記載(後段記載)は,「真の共沸混合物が有する蒸気圧」を記載したにとどまり,本件発明の対象はあくまで「約35.7〜約50.0重量%のペンタフルオロエタンと約64.3〜約50.0重量%のジフルオロメタン」との組成範囲の記載(前段記載)によって定まると解釈すべきことになるから,本件発明の前段記載と後段記載は実質的に矛盾しないことになり,本件特許には,審決が説示したような実施可能要件違反はない。\n

◆判決本文

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平成20(ワ)38425等 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年12月21日 東京地方裁判所

 104条の3により、請求が認められませんでした。
 前記(1)で認定したように,乙20公報の記載内容を知る当業者は,乙22公報の記載自体からも,フレームサイズが294 mm ×427 mm のような大型ペリクルでも,ピンと張った状態でペリクル膜をたるみなくフレームに貼り付けることが要求されるものであり,その結果,ペリクル膜の張力によりフレームに歪みが生じ,その歪みは,フレームサイズが大きくなるにつれて増大するという技術課題が開示されているものと理解できる。他方,前記(2)で認定したように,長辺及び短辺を有する方形状の枠体において,長辺の撓みを減少させるために長辺の幅のみを広くすることは,技術常識であって,当業者が当然のこととして知るところである。そうすると,公知となっている,大型ペリクルにおいてフレームサイズが大きくなるにつれてフレームの歪みが増大するという上記の技術課題を解決する観点から,長辺の撓みを減少させるために長辺の幅のみを増大させるという上記の技術常識を当てはめて,ペリクル膜の張力による歪みに応じ,長辺の幅を短辺の幅よりも広くすることは,当業者が容易に想到することができたものであるといえる。したがって,前記相違点のうち,「長辺の幅」が「短辺の幅」よりも大きいという本件発明の構成は,乙22発明に,当業者の技術常識を適用することにより,当業者が容易に想到し得たものというべきである。\n

◆判決本文

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