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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

不正使用

平成27(行ケ)10012  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成27年6月9日  知的財産高等裁判所

 登録商標「SENTCOMEX」について、使用権者は「SENT COMEX」とスペースを入れて使用していました。これに商標「COMEX」の商標権者が混同するとして53条取り消しを求めました。知財高裁は、取り消し理由無しとした審決を維持しました。
 使用商標は,前記のとおり,「SENT(Sent)」と「COMEX(Comex)」の間の若干の隙間等を考慮しても,外観上,一体的に認識されるものであり,一連に称呼しても冗長とはいえない上,全体として特定の観念が生じず,本件指定商品との関係で,「SENT(Sent)」部分に何らの称呼・観念が生じない,あるいは,「COMEX(Comex)」部分だけに強い商品識別力が生じるといえないことは明らかである。そうすると,「COMEX(Comex)」部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとは認められず,また,「SENT(Sent)」部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないとは認められないから,使用商標において,「COMEX(Comex)」部分のみを抽出して分離観察を行うことは許されず,原告の主張は採用できない。 したがって,使用商標は,構成文字全体をもって,一体のものとして認識されるというべきであり,審決の判断には誤りがない。\n

◆判決本文

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平成26(行ケ)10170等  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成27年5月13日  知的財産高等裁判所

 分割された同一の商標に係る二以上の商標権が別々の商標権者に帰属している状況で生じた出所混同について、商標法53条の取消理由無しとした審決を、知財高裁は取り消しました。
 ところで,現行の商標法は,指定商品又は指定役務ごとに商標権の分割及び移転を認めており(法24条1項,24条の2第1項),分割に係る商標権の指定商品又は指定役務が,当該指定商品又は指定役務以外の他の指定商品又は指定役務と類似している場合であっても,商標権の分割・移転を制限していない(平成8年法律第68号による改正前の法24条1項ただし書は,同一商標について,類似関係にある商品・役務に係る商標権の分割移転を禁止していた。)。したがって,同一の商標について,類似する商品・役務を指定商品・役務とする商標権に分割され,それぞれが異なる商標権者に帰属することもあり得る。法52条の2は,このような商標権の分割・移転の場合において,商標権者について,「不正競争の目的で」他の商標権者,使用権者等の商品又は役務と混同を生ずるものをしたときは,何人もこのような商標登録の取消しの審判を請求することができる旨を定めたものである。そして,このような商標権の分割・移転の場合における使用権者による使用については,従来から存在している法53条1項の規定の適用に委ねられている。したがって,法53条1項は,このような商標権の分割・移転に係る商標の使用についても適用され得るが,このような場合には,各商標がもともと同一であるため,商標の同一性又は類似性及び商品・役務の類似性のみに起因して,一方の登録商標の使用によって,他方の商標権者と業務上の混同が生じる場合も予想される。\n
しかし,商標法がこのような同一商標の類似商品・役務間での商標権の分割及び別々の商標権者への移転を許容するものである以上,使用された商標と他人の商標の同一性又は類似性及び商標に係る商品・役務の類似性のみをもって,法53条1項の「混同を生ずるものをした」に該当すると解することは相当ではない。また,このように解すると,類似関係にある商品・役務について分割された商標権の譲渡を別々に受け,それぞれの登録商標又はその類似商標を別々の使用権者に使用させた各商標権者は,法53条1項に基づき当然に相互に相手方の有する商標登録の取消しを請求することができることとなり,不当である(立法としては,上記のような商標権の分割・移転に関する法52条の2を法53条の特則としても位置づけ,商標権者だけでなく,使用権者にも,「不正競争の目的」を要求した方がより明確であったと解されるが,現行法の解釈としても,できる限り,これと同様の結果となるように解釈すべきである。)。 以上によれば,分割された同一の商標に係る二以上の商標権が別々の商標権者に帰属する場合に,一方の専用使用権者又は通常使用権者が,法53条1項における,「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるものをしたとき」に該当するというためには,法52条の2の規定の趣旨を類推し,使用商標と他人の商標の同一性又は類似性及び使用商品・役務と他人の業務に係る商品・役務の類似性をいうだけでは足りず,専用使用権者又は通常使用権者が,登録商標又はその類似商標の具体的な使用態様において,他人の商標との商標自体の同一性又は類似性及び指定商品・役務自体の類似性により通常生じ得る混同の範囲を超えて,社会通念上,登録商標の正当使用義務に反する行為と評価されるような態様,すなわち,不正競争の目的で他の商標権者等の業務に係る商品ないし役務と混同を生じさせる行為と評価されるような態様により,客観的に,他人の業務に係る商品・役務と具体的な混同のおそれを生じさせるものをしたことを要するというべきである。
・・・・
ア 上記1(3)イ及びウで認定した原告の商品の販売状況及び雑誌等への掲載状況によれば,「Admiral」の商標は,使用権者商品の販売が開始された平成25年3月の時点で,日本国内のカジュアル・シューズの分野では,原告の販売する商品であるタウン・シューズ(スニーカー)の商標として,20歳前後の若年層か らなる需要者及び取引者の間において,相当程度認識されていたものと認めることができる。また,原告の販売する商品の中でも,原告商品を含むスニーカー「ワトフォード」モデルは,販売数が多く,人気の高い商品であり,シュータン,外側の側面後方及び中敷の踵に近い部分の3箇所に付されている原告使用商標AないしCも,原告の販売するスニーカーの商標として,上記需要者及び取引者の間において,同月時点で,相当程度認識されていたものと認められる。
イ 一方,平成25年3月頃から販売された使用権者商品は,サンダルではあるが,その全体的な外観は,側面の後方及び踵部分の立ち上がりがスニーカーと比べてえぐれて低くなっている以外には,スニーカーの外観とほぼ同じ形状である。また,そのデザインも,原告の「ワトフォード」モデルのスニーカーと同様に,甲の中央部分に銀色のシューレースホールが2列に並び,白い靴紐が通され,シューレースホールに沿って設けられた縫い目部分から靴底にかけて,青系の線と赤線とを組み合わせた斜めの細い2本線が靴の外側に1組だけ付されており,また,アッパーとソールとの境目部分に,黒い線が靴の周りを一周する態様で,ソ\\ールの厚みの半分くらいの高さ部分に,赤い線が靴の周り後方を約半周する態様で,それぞれ付されている。そして,使用権者商標は,このような原告商品に酷似する形状・デザインの使用権者商品において,シュータン,外側側面のえぐれていない部分のうち踵に近い後方部分及び中敷の踵に近い部分という原告商品とほぼ同一の場所に付されていたものであり,個々の商標の構成をみても,使用権者商標A及びCは,それぞれ原告使用商標A及びCと同一の構\\成からなり,使用権者商標B(本件商標4と同じ。)は,原告使用商標B(引用商標1と同じ)と類似する構成からなっている(引用商標1と本件商標4は,互いに白黒部分を反転させたような構\\成であり,両商標が類似することについては,当事者も争っていない。)。
ウ 上記イのとおり,使用権者商品は,原告商品と,商品の3箇所に商標を付しているという点で共通するのみならず,複数存在する本件ブランドに係る商標のうち,各箇所に使用された商標の種類も,商標を付す位置もほぼ同一の商標を,原告 商品と酷似する形状・デザインの類似の種類の商品に付しているものである。このような使用権者商標の具体的な使用態様に加えて,使用権者商品(サンダル)の性質や使用権者商品が紹介されていた雑誌が原告の商品が紹介されていた雑誌と共通すること(前記1(3)ウ及び(4)ウ)からすれば,使用権者商品の需要者も原告商品と同じ20歳前後の若年層を含むと認められ,両商品は需要者及び取引者を共通にしていること,両商品は,大手靴量販店であるチヨダの店舗で同じ棚に並べられて販売されていたという取引の実情をも考慮すれば,チヨダによる使用権者商標の使用態様は,単に原告使用商標と同一又は類似する,及び「履物(サンダル等を除く。)」と「サンダル等」という商品の種類が類似すること自体により通常混同が生じうるという範囲を超えて,当時,需要者及び取引者の間において原告の販売する商品の表示として認識されていた原告使用商標の具体的な使用態様と酷似していたものというべきであり,そのような使用権者商標の使用により,取引者及び需要者に,使用権者商品も,「Admiral」商標に係るスニーカーを販売する者(原告)と同一の出所に係るものであるとの認識を生じさせる具体的な混同のおそれを生じさせたものといえる。
以上によれば,チヨダによる使用権者商標の使用は,社会通念上,本件商標の正当使用義務に反する行為と評価されるような態様,すなわち,不正競争の目的で他の商標権者等の業務に係る商品ないし役務と混同を生じさせる行為と評価されるような態様により,客観的に,原告の業務に係る商品等と具体的な混同のおそれを生じさせたものということができ,法53条1項本文の「他人の業務に係る商品・・と混同を生ずるものをしたとき」に該当するというべきである。
・・・
審決は,前記・・・のとおり,引用商標及び本件商標は,いずれも「Admiral(アドミラル)」という国際的ブランドに係る商標であり,引用商標が,原告の業務に係る商標として取引者及び需要者に認識されているものとは認められず,使用権者商標に接する取引者及び需要者は,1914年英国発祥のブラ ンドに係るものとして認識することはあっても,それを超えて,原告又は被告の業務に係る商品であると認識することはないから,出所混同のおそれはない,と判断したものである。
ア しかし,世界各国で本件ブランドが広く知られている結果,引用商標及び本件商標が,「イギリス海軍に由来する伝統的な英国発祥のブランドに係るもの」として取引者及び需要者に認識されているとしても,そのことは,これらの商標が有するブランドイメージについての認識を意味するにすぎないというべきであり,そのようなブランドイメージの認識をもって,当該商標が付された商品について商標法上保護されるべき「出所」についての取引者及び需要者の認識と同視することはできないし,そのようなブランドイメージを有するからといって,日本国内の商標権者を当該商標が付された商品の出所として観念できないということもできない。 むしろ,法53条1項が適用されるためには,取引者及び需要者は,「他人の業務」に係る商標が特定の権利者に帰属していることまで認識している必要はないところ,上記のようなブランドイメージを有する取引者及び需要者の,我が国において販売されるブランドに係る商品の出所についての一般的な認識も,特段の事情がない限り,「同商品の当該ブランドに係る商標について,我が国において適法に権利を有する者」の業務に係る商品であると認識するものと理解するのが合理的である。そして,商標法は,商標権の効力を登録商標権者に対して認めているのであるから,同法上,登録商標について保護されるべき出所は,我が国における当該登録商標についての登録商標権者であり,国際的に周知著名な商標であっても,同商標について我が国において保護されるべき出所は,同商標に係る商標権を適法に日本で有する者である。したがって,国際的に周知著名な商標についての登録商標権を我が国の商標権者が適法に取得したような事案における法53条1項の適用については,「他人の業務に係る商品」との「混同」が生じうるかが問題となるべき主体(他人)は,当該商標についての登録商標権者であるというべきである。 そうすると,日本国内においては,履物(サンダル等を除く。)については,原告 が,本件ブランドを発展させ,国際的なブランドイメージを形成した会社等から引用商標に係る商標権の譲渡を受け,現に登録商標権者となっているのであるから,法53条1項の適用について,「混同」が生じうるかを問題とすべき「他人」とは,登録商標権者である原告であるというべきであり,このことは,需要者及び消費者が,日本国における具体的な商標権者が誰であるかを認識していないことや,日本国では商標権が分割されて商品毎に権利者が異なるということを認識していないことによって,左右されるものではない。
イ また,具体的な事実関係をみても,本件においては,前記(2)アのとおり,原告使用商標は,タウン・シューズの分野において,原告の販売する商品を表す商標として,取引者及び需要者の間において,相当程度認識されていたものである。そして,これらの取引者及び需要者は,使用権者商品(サンダル)に前記(2)イ認定のとおりの使用態様で付された使用権者商標に接することにより,使用権者商品も,上記履物(スニーカー)と同じ特定の者(他人)の業務に係る商品であると誤認して,混同するおそれがあるのであるから,本件では,法53条1項の混同のおそれがあるものと認められる。

◆判決本文

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