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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

社会通念上の同一

平成29(行ケ)10126  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年12月25日  知的財産高等裁判所(1部)

 使用していたとした審決が取り消されました。知財高裁は、登録商標「ベガス」ではなく「ベガスベガス」の使用であると判断しました。
  上記認定事実によれば,本件折込チラシ1には,「ベガス発寒店ファンのお 客様へ」と記載されている部分が認められ,この部分には本件文字部分(ベガス) が使用されており,本件文字部分は本件商標と同一のものと認められる。他方,本 件折込チラシ1の下部には,登録商標であることを示す○R の文字を付した「ベガス ベガス(R)」という文字が大きく付されているほか,「VEGAS VEGAS」,「ベ ガスベガス発寒店」という文字も併せて記載されている。 これらの事実関係によれば,本件折込チラシ1に接した需要者は,同チラシにお いて,パチンコ,スロットマシンなどの娯楽施設の提供という役務に係る出所を示 す文字は,同チラシにおいて多用されている「ベガスベガス」又は「VEGAS V EGAS」であって,一箇所だけで用いられた本件文字部分は,店内改装のため一 時休業する店舗の名称を一部省略した略称を表示したものにすぎず,本件折込チラ\nシ1に係る上記役務の出所自体を示すものではないと理解するのが自然である。 そうすると,本件折込チラシ1に本件文字部分を付する行為は,本件商標につい て商標法2条3項にいう「使用」をするものであると認めることはできない。 したがって,本件文字部分が出所識別機能を果たし得るものと認定した上,本件\n折込チラシ1に本件商標と社会通念上同一と認められる商標が付されていると認定 した審決の各判断には,いずれも誤りがあるから,取消事由4及び5は,理由があ る。
(2) これに対し,被告は,本件文字部分が「ベガスベガス発寒店」の略称表示\n又は愛称表示として解釈できるのであるから,本件折込チラシ1には本件商標と社\n会通念上同一と認められる商標が付されたといえるなどと主張する。 しかしながら,被告が本件文字部分を「ベガスベガス」又は「VEGAS VEG AS」の略称表示であると認めるとおり,本件折込チラシ1に係る役務の出所を示\nす表示は,多用された「ベガスベガス」又は「VEGAS VEGAS」の標章であ ると認めるのが相当であるから,これらと異なる標章である本件文字部分が出所識 別機能を果たし得るとは認められない。かえって,「ベガス」という略称表\示の使用 をもって,本件商標についての使用であると認めることは,実質的には商標として は異なる略称表示に係る信用までを保護することを意味するから,商標法50条1\n項の不使用取消制度の趣旨に照らしても,相当ではない。のみならず,実質的にみ ても,前記認定事実によれば,被告が「ベガス発寒店」という文字を使用したチラ シは,同文字を一箇所でのみ使用した本件折込チラシ1のほかは一切提出されてい ないのであるから,そもそも「ベガス発寒店」という文字に係る標章の信用を保護 すべき特段の事情もうかがわれず,被告の上記主張は,前記認定を左右するもので はない。

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平成29(行ケ)10118  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年10月26日  知的財産高等裁判所(2部)

 不使用請求を認めなかった審決が維持されました。争点は商標の同一性および使用の評価です。
 ア 本件チラシ1の下段に記載されている「ピーアールタイムズ」の片仮名 は,本件商標の下段の片仮名と同一であるから,本件商標と社会通念上同一の標章 であると認められる。
イ 本件チラシ2の下段に記載されている「PRTIMES」の欧文字は, 本件商標の上段の欧文字と同一であるから,本件商標と社会通念上同一の標章であ ると認められる。
(3) 使用役務等について
上記1(2)のとおり,本件チラシ1には,「広告をご検討の事業主の皆様!まずは お気軽にご相談ください」,「広告のプロが広告主様と一緒に,売上・集客に繋がる 広告戦略を練らせていただきます。広告の事なら何でもご相談ください。」と記載さ れており,被告が広告の役務を提供することを広告しているものと認められる。 上記1(3)のとおり,本件チラシ2には,「広告をご検討の事業主の皆様!まずは お気軽にご相談ください」,「広告出稿や広告に関するコンサルティングの事なら」 と記載されており,被告が広告の役務を提供することを広告しているものと認めら れる。 そして,上記1(2)及び(3)のとおり,本件チラシには被告の会社名及び連絡先が 記載されており,本件チラシは,合計3000部作成され,頒布されたのであるか ら,被告は,本件チラシを見た者が被告に広告依頼などの連絡をしてくればこれに 応じ,業として広告の役務を提供する意思であったと認められる。 したがって,被告は,広告の役務に関する広告に本件商標と社会通念上同一の商 標を付して頒布し,これを使用したものと認められる。
ア 本件チラシの頒布に関する証拠である,本件チラシ(甲6,12),並び に,ニューアシストから被告に対する領収書(甲7,13)及び納品書(甲8,1 4)は,いずれも,当法廷において被告から原本が提示されており,その作成日当 時作成され,授受されたものであることに合理的な疑いを差し挟むべき不自然な点 はない。
イ ニューアシストのホームページに記載されているのは,「事業概要」であ って(甲21の2),その余の業務を行っていないという趣旨とは解されないから, ニューアシストがチラシの作成やポスティングの業務を行っていないとまではいえ ない。 被告の本店所在地と池尻大橋駅が遠く離れているとはいい難い上,チラシの配布 地域や配布部数などは,広告を行う者がその広告戦略などを考慮して決定するもの であるから,本件チラシの配布場所が池尻大橋駅周辺であり,配布部数が合計30 00部であることなどは,本件チラシの頒布を否定すべき事情とはいえない。広告 業務はその態様によって価格が異なるものと考えられる上,個別に連絡してきた者 に対して説明することもできるから,本件チラシに価格が記載されていないことは, 本件チラシの頒布を否定すべき事情とはいえない。 上記1(2)(3)のとおり,本件チラシ,領収書及び納品書によって,本件チラシの 頒布の事実が認定できるから,その他の取引に関する契約書,Eメールのやりとり, 報告書等が証拠として提出されていないことは,本件チラシの頒布を認定すること を妨げる事情とはならない。各2通の領収書(甲7,13)と納品書(甲8,14) の内容が同一であることは,同一の取引を2回行ったことを示すものにすぎず,ま た,被告の住所の誤りは,同一のデータを使いまわしたことによるものであると推 認されるから,これらの書証の信用性を疑わせる事情とはならない。

◆判決本文

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平成28(行ケ)10230  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年9月14日  知的財産高等裁判所

 不使用取消請求(50条)に対して、アルファベットの「X」状のマークを付したスニーカーを販売していたと争いましたが、靴の図形商標の使用とは認められませんでした。
 本件商標は,前記第2の1のとおり,平成16年6月22日に国際登録が され,同年12月13日に日本国が事後指定がされたもの(同日に商標登録出願が されたものとみなされる[商標法68条の9第1項])であって,平成18年1月 24日に登録査定がされ,同年7月21日に登録されたものである。 平成26年法律第36号による商標法の一部改正(平成27年4月1日施行)に よって,位置商標について,その出願の手続が定められた(商標法5条2項5号, 同条4項,5項,商標法施行規則4条の6〜8)が,それより前には,我が国にお いて,位置商標の出願についての規定はなく,本件商標についても,位置商標では なく,通常の平面図形の商標であると解するほかない(本件商標が位置商標ではな いことは,原告も認めている。)。 そうすると,本件商標と社会通念上同一の商標が使用されているというためには, 黒い実線で囲まれたX字状の部分のみならず,靴の形状をした点線部分も,平面図 形の商標として使用されていなければ,本件商標と社会通念上同一の商標が使用さ れているということはできない。 原告各製品には,X字状の標章が付されているものの,靴の形状をした点線部分 の標章が平面図形の商標として使用されているということはできないから,本件商 標と社会通念上同一の商標が使用されているとは認められない。
(3) この点について,原告は,原告各製品には,X字状の標章が付されている 上,スニーカー自体の形状もほぼ同じであると主張するが,スニーカー自体の形状 がどうであれ,平面図形の商標として点線部分の標章が使用されているということ はできないから,原告の主張を採用することはできない。 また,原告は,本件商標の基礎登録商標に基づく主張や欧州共同体商標意匠庁な ど各国における本件商標についての判断に基づく主張をするが,商標の出願及び登 録の要件は各国において定められるべきものである(パリ条約6条1項及び3項) から,他国における本件商標についての判断と同じ判断をしなければならない理由 はないし,本件商標の基礎登録商標に関する前記1(2)の事実は,スペイン国の商標 についてのものであって,直ちに我が国の商標について判断を左右するものではな い。 さらに,原告は,商標法50条の趣旨から本件商標は取り消されるべきではない と主張するが,商標法50条の趣旨が原告主張のとおりであるとしても,本件商標 と社会通念上同一の商標の使用が認められない以上,本件商標は取消しを免れない のであって,商標法50条の趣旨によって左右されるものではない。

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平成28(行ケ)10276  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年6月28日  知的財産高等裁判所

 商標「Crest」(16類「印刷物」)について、不使用取消請求がなされ、審決は、「新潮クレスト・ブック」による使用で請求棄却しました。知財高裁(3部)もこれを維持しました。
商標法50条1項においては,使用の対象となる商標について,「登録商標 (書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標,平仮名,片仮名及びロー マ字の文字の表示を相互に変更するものであつて同一の称呼及び観念を生ずる\n商標,外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標と社会 通念上同一と認められる商標を含む。…)」と規定されており,「登録商標と 社会通念上同一と認められる商標」も含むものとされている。 そこで,使用商標B−1が,本件商標と「社会通念上同一と認められる商標」 といえるか否かについて検討する。
(1) 本件商標は,「Crest」の欧文字を標準文字で横書きしてなる商標で あるところ,「crest」の語は,「(ものの)頂上,山頂,波頭」などの 意味を有する英語として認識されるものであるから,本件商標からは,通常 の英語読みに従った「クレスト」の称呼が生じるとともに,その英語の意味に 従った「(ものの)頂上,山頂,波頭」などの観念が生じるものといえる。
(2) 他方,使用商標B−1は,「新潮クレスト・ブックス」の漢字及び片仮名 を横書きで一連表記してなるものであるところ,「新潮」の文字と「クレスト\n・ブックス」の文字は,漢字と片仮名という文字種の違いから,明確に区別し て認識されるものである。また,「クレスト」の文字と「ブックス」の文字に ついても,その間が「・」によって区切られていることに加え,後述のとおり, 「ブックス」の語が「書籍」を表す英語の片仮名表\記として明確に認識される ことからすると,同様に区別して認識されるものといえる。してみると,使用 商標B−1は,「新潮」,「クレスト」及び「ブックス」の3つの独立した語 が組み合わされて表記された商標として認識されるものといえる。\n そこで,以上を前提に,使用商標B−1を「書籍」についての商品識別標識 として見てみると,まず,「新潮」の漢字部分は,我が国における著名な出版 社である被告の略称として広く知られているものであり,「書籍」に使用され た使用商標B−1に接した取引者・需要者は,「新潮」の漢字部分を,当該書 籍を発行する出版社が被告であることを表示するものにすぎないと認識する\nから,この「新潮」の漢字部分は,商標の同一性という観点からは重要性を持 たない部分といえる。 次に,使用商標B−1のうち,「ブックス」の片仮名部分は,「本,書籍」 を意味する英語「book」の複数形を片仮名表記したものであることが明\nらかである。また,「書籍」の出版の分野においては,特定のシリーズに属す る書籍群に,特定のブランド名と「ブックス(books)」の語を合わせた, 「○○ブックス(books)」の名称を付けて出版,販売することが一般的 に行われていることが認められる(甲10,12,14,16,18,20, 22,23,80〜82,84〜87,89,91,92,94〜99,10 1〜104(枝番を含む。))。してみると,「書籍」に使用された使用商標B −1に接した取引者・需要者は,「ブックス」の片仮名部分を,これが付され た商品が「書籍」であること,あるいは,その商品が「特定のシリーズに属す る書籍」であることを表示するものとして認識するといえるから,これも商\n標の同一性という観点からは重要性を持たない部分であるといえる。 他方,「クレスト」の片仮名部分は,「(ものの)頂上,山頂,波頭」など の意味を有する英語「crest」を片仮名表記したものとして認識され,そ\nの意味に従った観念を生じるものといえるところ,このような「クレスト」の 語は,「書籍」との関係で特段の結びつきを有するものではないから,「書籍」 に係る商品識別標識としての機能を果たし得るものであり,商標の同一性を\n基礎づける中核的部分といえる。 この点,原告は,被告自らがそのホームページ等で「クレスト・ブックス」 を一体として使用していることを理由に挙げ,取引者・需要者からは,「クレ スト・ブックス」で一つの商標として理解され認識される旨主張する。しか し,「書籍」に関する広告等において,「クレスト・ブックス」が一連表記さ\nれていたとしても,これに接した取引者・需要者からは,「クレスト」と「ブ ックス」が独立した語として認識され,そのうち,特に「クレスト」の部分が 独立して自他商品の識別標識の機能を発揮する部分として認識されることは\n上記で述べたとおりであるから,原告の主張は採用できない。
(3) 以上のとおり,使用商標B−1のうち,商標の同一性を基礎づける中核的 部分として把握される「クレスト」の片仮名部分を,本件商標と比較すると, 両者は,片仮名と欧文字という文字種の違いからくる外観上の相違はあるも のの,「クレスト」の称呼及び「(ものの)頂上,山頂,波頭」などの観念を いずれも共通にするものであることからすると,使用商標B−1は,本件商 標と社会通念上同一の商標であると認めるのが相当である。

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平成29(行ケ)10033  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年6月8日  知的財産高等裁判所

 不使用であるとして審決が取消されました。多機能物品(十\徳ナイフ)について、一部の機能の商品に関しても使用がなされていたと判断されました。また、使用形態として別の文字とともに使用していましたが、社会通念上同一の商標と判断されました。\n
 前記1(5)のとおり,本件商品1〜3は,革製のケースであって,スイスアーミー ナイフに適合するものとして販売されているものの,その形状は略直方体であって スイスアーミーナイフ以外の物を収納することも可能であること,その販売形態は,\n収納物を伴うことなく本件商品1〜3のみで購入することが可能であること,スイ\nスアーミーナイフには,刃物であるナイフ等以外に,栓抜きやつまようじなど,他 の物も組み込まれていることからすると,第18類「small persona l leather goods」(革製の小さな身の回りの物)に該当するという ことができる。
・・・・
(2) 被告は,ビクトリノックス日本支社が使用していた標章には,いずれも「W ENGER」の文字の右上にRマークが付されているから,同標章は図形単体では なく,図形と文字を組み合わせた一体の標章として使用していたものであり,本件 商標と社会的同一性はない,と主張する。 しかし,前記1(2)(5)のとおり,本件商標と「WENGER」の欧文字とは左右 に配されており分離可能であること,ビクトリノックス日本支社のウェブサイトに\n表示されたものは,本件商標が赤で「WENGER」の欧文字は黒であることから\nすると,本件商標と「WENGER」の欧文字とは分離して観察することができる。 また,Rマークについても,登録商標を示すものとして分離して観察する ことができる。これらのことからすると,本件商標と社会通念上同一の商標が使用 されていたと認めることができる。したがって,被告の主張は,採用することがで きない。

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