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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

使用による識別性

平成29(行ケ)10110  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年11月27日  知的財産高等裁判所

 商3条の識別力無しとした審決が維持されました。争点は、「MORI」の下に「MOTO」とローマ字表記することが、『森本』という氏を普通に用いられている方法で表\示しているかどうかでした。裁判所は「格別特徴的であるとまではいえない」と判断しました。
 次に,本願商標の表示方法について検討するに,本願商標は,前記のと\nおりありふれた氏である「森本」と同一の称呼観念を有する語をローマ字 表記にした上,「mori」と「moto」を上下二段に分けて配置した\nものであり,その字体も,文字の角を丸めたやや太めの書体を採用したに すぎないものである(Fontworks社のスーラEBという特定の書 体を採用した点についても,同社のウェブサイト〔乙35,36〕におい て,同書体がDTP〔デスクトップパブリッシング〕の代表的な書体であ\nり,近年多くの場所で使用されている旨謳われていることからすれば,格 別特徴的であるとはいえない。)。 商取引において,氏や名称をローマ字で表記することは,一般的に行わ\nれていることであるし,標章の構成文字を複数の段に分けることや,構\成 文字の書体をある程度デザイン化することも特段珍しいことではなく,表\n示上格別の工夫を凝らしたものであるとはいえない(これらのことは逐一 立証するまでもない公知な事実であり,被告提出の乙6ないし34からも 明らかといえる。なお,これらの書証の中には,必ずしも原告と同じ業界 でないものの例も含まれているが,複数の業界を跨いで同じような例があ るということは,それだけ一般的に行われていることを示すものといえる から,これらの証拠を総合して取引の実情を認定したとしても何ら差し支 えない。)。 したがって,上記の程度の表示態様(外観)では,いまだ「森本」の氏\nとは別の称呼観念が生じ得るほどに(すなわち,独占の弊害を生ずるおそ れがないといい得るほどに)特徴的であるということはできず,本願商標 は,外観上も,ありふれた氏を「普通に用いられる方法」で表示する域を\n出ないものと評価するのが相当である。 よって,この点に関する審決の認定判断に誤りはない。

◆判決本文

関連カテゴリー
 >> 商3条1項各号
 >> 識別性
 >> 使用による識別性
 >> ピックアップ対象

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平成28(行ケ)10266  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成29年9月27日  知的財産高等裁判所(1部)

 カジノで用いるトランプ繰り出し装置の形状を立体形状とした商標出願が、識別力無し(3条1項3号違反)と判断された審決が、維持されました。3条2項の主張もなされましたが、我が国では使用されていないので否定されました。判決文の最後に形状が掲載されています。
 前記(1)によれば,本願商標の形状と一般的なカードシューの形状とは,横長の箱 状であり,上面をなだらかに傾斜させるとともに,前面を傾斜させ,半円状の開口 部が設けられているという点において共通するものであり,その共通する形状は, トランプを格納して,上から一枚ずつ取り出せるカード容器の基本的な形状であっ て,トランプ繰り出し装置という機能を効果的に発揮させるために通常採用されて\nいる形状であることが認められる。 そして,本願商標の立体的形状は,全体として曲線を輪郭として用いていること など,一定の特徴的形態を有するものであるけれども,このような曲線を輪郭とす るカードシューは,他にも存在するのであって(乙4,11),通常採用されてい る形状の範囲を超えるものとまでは認められず,本願商標に接した需要者が,商品 の美感に資することを目的とした形状であると予測し得る範囲内のものであると認\nめられる。 また,本願指定商品は,「トランプに内蔵印刷されたトランプ識別コード識別認 識機能及び識別認識結果によりトランプの真偽又はゲームの勝敗を判定するプログ\nラムを内蔵してなる」ものであるところ,前記認定のとおり,ランプやボタン等 は,電子的にトランプカードを識別認識してゲームの結果を表示する,又は電子機\n器を制御するために設けられたものであると認められる。このような電子的な機能\nを有する商品には,その機能を発揮させるために,ランプやボタン,スイッチ等を\n搭載することが通例であるといえ,本願商標のランプやボタン,スイッチ等の特徴 的形態については,本願商標に接した需要者が,商品の機能を効果的に発揮させる\nことを目的とした形状であると予測し得る範囲内のものであると認められる。\n以上によれば,本願商標の立体的形状は,客観的に見れば,機能又は美感に資す\nることを目的として採用されたものと認められ,また,需要者において,機能又は\n美感に資することを目的とした形状であると予測し得る範囲内のものであるから,\n商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として,商\n標法3条1項3号に該当するものと認められる。
・・・
商標法3条1項3号に掲げる商標が商標登録の要件を欠くとされているのは,こ のような商標は,商品の産地,販売地その他の特性を表示記述する標章,あるい\nは,商品等の形状を表示する標章であって,取引に際し必要適切な表\示として何人 もその使用を欲するものであるから,特定人によるその独占使用を認めるのを公益 上適当としないものであるとともに,一般的に使用される標章であって,多くの場 合自他商品識別力を欠き,商標としての機能を果たし得ないものであることによる\nものである。また,商標法3条2項は,同条1項3号に該当する商標のように,本 来は,特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとと もに,自他商品識別力を欠き,商標としての機能を果たし得ないものであっても,\nその使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識 することができるものについては,自他商品識別力を獲得したものとして,例外的 に商標登録を受けることができる旨を定めたものである。そして,商標法は全国一 律に適用されるものであって,商標権が全国に効力の及ぶ更新登録可能な排他的な\n権利であることからすると,商標法3条2項により商標登録が認められるために は,同条1項3号に該当する商標が,現実に使用された結果,指定商品又は指定役 務の需要者の間で,特定の者の出所表示として我が国において全国的に認識される\nに至ったことが必要であると解される(そうである以上,指定商品又は指定役務の 需要者は,通常,全国的に存在していることが前提となるものである。)。上記の理 は,商標法3条1項4号及び5号に該当する商標について,同条2項により商標登 録を受けることができる場合においても異なるところはないといえる。
本願商標及び使用に係る商品の構成態様
本願商標は,前記1 に認定したとおりの構成からなるものであるのに対し,証\n拠(甲1〜4,6,18,22,37,49)及び弁論の全趣旨によれば,原告 は,本願商標と類似する形状の商品「バカラ電子シュー」(本件使用商品)を製造 及び販売しているところ,本件使用商品は,「トランプに内蔵印刷されたトランプ 識別コード識別認識機能及び識別認識結果によりトランプの真偽又はゲームの勝敗\nを判定するプログラムを内蔵してなるトランプ繰り出し装置」であり,本願指定商 品に属するものであること,本件使用商品と本願商標の立体的形状は,ランプの数 や曲面の形状,カード繰り出し口の形状等において若干相違するものもあり,完全 に同一の形状からなるものということはできないものの,実質的に同一性を有する ものであるといえることなどが認められる。なお,証拠(甲1,2,18,24, 37,41)及び弁論の全趣旨によれば,本件使用商品は,その上面に,看者の注 意を惹くように書された「ANGEL EYE」等の文字が記載されていることが 認められるが,商品等は,その販売等に当たって,その出所たる企業等の名称や記 号・文字等からなる標章などが付されるのが通例であることに照らすと,使用に係 る立体形状にこれらが付されているということのみで,直ちに本願商標の立体的形 状について,商標法3条2項の適用を否定することは適切ではなく,上記文字商標 等を捨象して残された立体的形状に注目して,独自の自他商品識別力を獲得するに 至っているか否かを判断するのが相当である。  以上を前提に,本願商標について検討するに,本願商標の立体的形状と実 質的に同一の形状を有する本件使用商品が,輸出専用の商品であって我が国におい て流通していないことは,当事者間に争いがない。そして,原告が主張するよう に,本件使用商品が輸出され,又は輸出を前提としてのみ譲渡若しくはそのための 展示がされることにより,本願商標が使用されているとしても,本件使用商品の取 引に関係する者は国内の販売代理店に限定されており,本願商標を原告の出所表示\nとして認識し得る需要者は限られた範囲にとどまるから,本願指定商品の需要者が 全国的に存在していると認められない。のみならず,本件使用商品が輸出されるこ とにより,諸外国で使用されており,諸外国のカジノ関係者に知られているとして も,その周知性が我が国に及んでいると認めるに足りる証拠はないから,本願商標 が,現実に使用された結果,本願指定商品の需要者の間で,原告の出所表示として\n我が国において全国的に認識されるに至ったものと認めることはできない。 したがって,本願商標は,商標法3条2項により商標登録を受けることができる ものということはできない

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