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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

意匠認定

平成28(行ケ)10122  審決取消請求事件  意匠権  行政訴訟 平成28年11月30日  知的財産高等裁判所

 透明部分について需要者に強い印象を与えるとして、類似するとした審決を取り消しました(知財高裁第4部)。判決文の最後に両意匠の図面がアップされています。
 以上のとおり,両意匠に係る物品の性質,用途及び使用態様並びに公知意匠との 関係を総合すれば,本願意匠と引用意匠は,基本的構成態様において共通するもの\nの,その態様は,ありふれたものであり,需要者の注意を強く惹くものとはいえな い。また,具体的構成態様における共通点も,需要者の注意を強く惹くものとはい\nえない。これに対し,マウスピース部の端部の形態の相違は,需要者である患者及 び医療関係者らの注意を強く惹き,視覚を通じて起こさせる美感に大きな影響を与 えるものである。 したがって,本願意匠と引用意匠の相違点のうち,マウスピース部の端部につい て,本願意匠は,その中央に円形孔及びその周囲に4つの小円形孔が形成された端 壁を設けたものであるのに対して,引用意匠は,端壁がなく,単に筒状のまま大き く開口した点は,マウスピースカバー部が透明であることと相まって,需要者であ る患者や医療関係者の注意を強く惹くものと認められ,異なる美感を起こさせるも のであり,それ以外の共通点から生じる印象に埋没するものではないというべきで ある。 よって,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。
3 被告の主張について
被告は,使用者は主に使用時に限ってマウスピース部の構成態様に注目し,購入\n時などマウスピースカバー部が閉じられた状態では,透けて見えるにすぎないマウ スピース部の端部の態様は,需要者に強い印象を与えるものとはいえない,マウス ピース部の端壁の有無は全体から一部分と認められるマウスピース部の,さらにそ の先端部分のみの相違であって,全体からすると僅かな範囲のものであるとして, マウスピースの端部の相違点が,両意匠の類否判断に及ぼす影響は限定的であると 主張する。 しかし,マウスピース部の端部は,需要者である患者が吸引器を使用する際に観 察するものであるし,医療関係者も,処方する薬剤を前提に機能を重視して観察す\nるものであるから,かかる部分が全体と比較して僅かな範囲のものであるとしても, マウスピース部の端部の相違点が類否判断に及ぼす影響を限定的であるということ はできない。被告の前記主張は採用できない。

◆判決本文

◆関連事件です。平成28(行ケ)10123

◆平成28(行ケ)10124

◆平成28(行ケ)10121

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平成27(ワ)37086  意匠権侵害差止等請求事件  意匠権  民事訴訟 平成28年5月18日  東京地方裁判所

 膣圧回復治療用具について非類似の意匠と判断されました。
 登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は,需要者の視覚を通 じて起こさせる美観に基づいて行うものであるところ(意匠法24条2項),この ためには,意匠に係る物品の性質,用途,使用態様,さらには公知意匠にない新規 な創作部分の存否等を参酌して,当該意匠に係る物品の看者となる需要者が視覚を 通じて注意を惹きやすい部分を把握した上で,登録意匠とそれ以外の意匠とが要部 において構成態様を共通にするか否かを中心に観察し,全体としての美観を共通に\nするか否かを判断すべきである。 本件意匠に係る物品は,膣圧回復治療用具であって,これを使用する一般消費者 を需要者と観念すべきところ,本件において,同用具の公知意匠に係る証拠は提出 されていないが,膣圧回復治療用具を実際に使用する需要者にとっては,膣内に挿 入する部分は,注意を惹きやすい部分といえる。もっとも,需要者は,現実に同用 具を使用する際にどのように使用することとなるかについても着目すると考えられ るから,本件意匠のうち持ち手部分も,注意を惹く部分であることは否定できない。 したがって,本件意匠について,需要者が視覚を通じて最も注意を惹きやすい部 分は,本体部及び持ち手部分の各具体的構成態様にあるものと認められる。\n
・・・
以上のとおり,本件意匠と被告意匠1とは,需要者が視覚を通じて最も注意を惹 きやすい部分の各具体的構成態様において差異点が認められるところ,本件意匠の\n本体部には突起がないことから,滑らかな印象を与えるのに対し,被告意匠1のA 部は,多数の突起が形成されていることから,ざらざらとした印象を与える。また, 本件意匠の持ち手部にはリングを備えているのに対し,被告意匠1のB部は,底部 にブラシ状に多数の突起が形成されていることから,明らかに異なった印象を与え る。 以上の点を総合すると,前記共通点にかかわらず,本件意匠と被告意匠1とは, 全体として美観を共通にするものとはいえないから,被告意匠1が本件意匠に類似 するものとは認められない。
・・・
以上のとおり,本件意匠と被告意匠2とは,需要者が視覚を通じて最も注意を惹 きやすい部分の各具体的構成態様において差異点が認められるところ,本件意匠の\n本体部は,正面視において略「ハート」状であるのに対し,被告意匠2のC部は, 正面視において略「卵」状であり,その印象を異にする。また,本件意匠の持ち手 部には略楕円状のリングを備えているのに対し,被告意匠2のD部は,底部にブラ シ状に多数の突起が形成されていることから,明らかに異なった印象を与える。 以上の点を総合すると,前記共通点にかかわらず,本件意匠と被告意匠2とは, 全体として美観を共通にするものとはいえないから,被告意匠2が本件意匠に類似 するものとは認められない。

◆判決本文

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