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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

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平成25(行ケ)10287 審決取消請求事件 意匠権 行政訴訟 平成26年03月27日 知的財産高等裁判所

 意匠法3条1項3号に該当するとした審決が取り消されました。最後に3条2項の適用について付言されています。
 被告は,タッチパネルを湾曲させたスマートフォンは本願出願前より既に公知となっており,本願意匠のみの新規な特徴とはいえないし,スマートフォンは使用時に片手に持ったり,画面を指で操作する関係から,筐体全体の形態はもとより,機能キーの形状や配置,カメラレンズの配置等,詳細に確認されるものであって,それら全てが,意匠の特徴部分となり得るのであり,タッチパネルを湾曲させたことのみを過大評価することはできないし,そもそも本願意匠の湾曲の程度はごく僅かなものでしかないので,両意匠の筐体の形態における相違点が類否判断に及ぼす影響は微弱なものにとどまる旨主張する。そして,前記1(3)認定のとおり,携帯電話の意匠において,筐体の正面が凹面,背面が凸面の側面視がごく緩やかな円弧状をなす湾曲板形状を呈する筐体の形態,及び,正面視すると,上下辺はごく緩やかに円弧状に膨らむ曲線で,正面周囲枠は,平底面視及び左右側面視すると,正面側にごく僅かに窄まる形態は,それぞれ優先日前に公知である。しかし,乙第1号証によれば,携帯電話の意匠においては,本願意匠のような筐体の正面が凹面,背面が凸面の側面視がごく緩やかな円弧状をなす湾曲板形状を呈する筐体の形態ではなく,むしろ,正面及び背面の大部分が平坦面でかつそれぞれが平行な平坦面をなす平板形状の筐体の形態も多数見受けられることが認められる。そうすると,本願意匠の上記形態は,スマートフォンの形態としてありふれたものであるとまでいうことはできない。しかも,上記認定のとおり,上記の形態は,本願意匠の全体の形状という最も需要者の注意を惹きやすい部分の一つを構成する形態であることも併せ考えると,上記認定のとおり,筐体の正面が凹面,背面が凸面の側面視がごく緩やかな円弧状をなす湾曲板形状を呈する筐体の形態が公知のものであるとしても,直ちに本願意匠の上記形態が,共通点(A)の形態に埋没してしまい,需要者の注意を惹くものでないということはできない。また,上記の点に照らすと,タッチパネルが湾曲した形態を有すること自体が全体の形状の美観に与える影響が大きいものであるというべきであり,その程度が僅かであるとしても,やはり,需要者の注意を惹くものでないということはできない。なお,被告は,画像を表示するための画面を凹面として湾曲させることは,スマートフォンを含む画面(液晶画面等)を使用する物品においては,本願出願前よりごく普通に見受けられるものであった(乙2ないし6)とか,スマートフォンにおいて,画面を湾曲させたものも本願出願前に既に公知となっているものが見受けられる(乙7ないし11)とも主張する。しかし,スマートフォン以外の物品において画像を表\示するための画面を凹面として湾曲させる形態が公知であったとしても,用途や使用方法が大きく異なる以上,そのことをもって直ちにスマートフォンにおいて画像を表示するための画面を凹面として湾曲させる形態が需要者の注意を惹くものでないことの根拠とすることはできない。また,スマートフォンにおけるものについても,本願意匠とはその形態が大きく異なるもの(乙10,11)も存在する以上,上記乙号各証に示されたスマートフォンないしはその意匠に画面を湾曲させた形態のものが存在するからといって,直ちに上記認定が左右されるものとはいえない。また,乙第1号証によれば,正面視における上下辺の形態や,正面周囲枠の形態についても種々のものが見られることが認められる。そうすると,本願意匠の筐体正面の四隅を曲率半径のやや大きな隅丸とし,上下辺はともにごく緩やかに円弧状に膨らむ曲線であり,正面周囲枠は,平底面視及び左右側面視すると,正面側にごく僅かに窄まっている形態がありふれたものであるとまでいうことはできない。その上,上記形態は,本願意匠の最も需要者の注意を惹きやすい部分の一つを構\成するものであることも併せ考えると,正面視すると,上下辺はごく緩やかに円弧状に膨らむ曲線で,正面周囲枠は,平底面視及び左右側面視すると,正面側にごく僅かに窄まる形態が本願出願前に公知であるとしても,本願意匠の上記形態が共通点(A)の形態に埋没してしまい,需要者の注意を惹くものではないということはできない。
・・・・
以上によれば,本願意匠と引用意匠とは類似するとはいえず,意匠法3条1項3号に該当しないから,審決の判断は誤りであり,原告主張の取消事由は理由がある(なお,当裁判所の前記判断は,本願意匠の意匠法3条1項3号該当性についての審決の判断に対するものであり,当然ながら,本願意匠の同法3条2項について何ら判断するものではない。)。

◆判決本文

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