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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

102条2項

平成27(ワ)8736  特許権侵害行為差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年2月15日  大阪地方裁判所

 5%の推定覆滅事由が認められましたが、特102条2項により約4100万円の損害賠償が認められました。
 以上より,乙43発明は,同公報において,本件発明の課題として,開閉操作 部がチャック部を跨ぐように配置されていることから,保持の仕方によっては容器を 保持する手は充填部の一部に重なって充填物の量を確認しにくいという課題がある ことを前提に,開閉操作部とチャック部の位置関係につき,チャック部を開閉操作部 の下側になるよう特定したものと理解できる。 そして確かに,本件発明の実施例は,すべて開閉操作部がチャック部を跨ぐように なっているものの,本件発明の特許請求の範囲において,チャックの位置関係は何ら 特定されているわけではない。そうすると,乙43発明に,本件発明において特定さ れていないチャック部と開閉操作部の位置関係を特定することで進歩性があるとし ても,結局,片手操作で栄養剤注入するという本件発明の改良形にすぎないことは明 らかであって,本件発明1を実施している以上に技術的に積極的な意味はなく,被告 製品の販売拡大に貢献している程度はさほど大きいものとは認められない。
e 乙44ないし乙46意匠
乙44意匠ないし乙46意匠は,被告製品そのものを対象として出願し登録された 意匠といえるが,乙45意匠,乙46意匠は乙44意匠の部分についての部分意匠と して登録されているにすぎないから,結局,本件で問題とすべきは,被告製品が乙4 4意匠を実施していることということになる。 しかし,その意匠は,乙41発明,乙42発明の実施例と同じものにすぎないし, 栄養供給バッグという商品の性質上,登録意匠のもたらす美観が需要を喚起すること は考えにくいから,登録意匠を実施していることをもって,本件特許権侵害を理由と する法102条2項の推定を覆滅する事由となるものとは認め難い。
f まとめ
以上を総合すると,被告製品は,確かに乙40発明ないし乙43発明及び乙44意 匠ないし乙46意匠を実施しているが,本件発明に技術的に付与するものは乙43発 明のみであり,その付与の程度がさほど大きくないことは上記のとおりである。 したがって,その事情が,法102条2項の推定覆滅事由となるにしても,5%を 減じるにとどまるというべきである。
ウ 被告製品の売上げについての被告の営業力,ブランド力の貢献
被告は,被告製品の売上げは被告の営業力,ブランド力よるものであり,技術面の 寄与度はせいぜい30%であると主張する。 確かに証拠(甲18,乙57)及び弁論の全趣旨によれば,連結売上高で原告は5 76億3600万円であるのに対し,被告は3596億9900万円であり,従業員 数でも原告はグループ総数で6777名にとどまるのに対し,被告のそれは2万74 15名であって,企業規模としては被告の方が圧倒的に大きく,したがって原告が全 国に支社,営業所を有していることを考慮しても,営業力,ブランド力とも被告の方 が強いことは否定できない。 しかし,証拠(乙47)によれば,本件で問題とすべき経腸栄養バッグ(空バッグ) の分野に限れば,当該市場は,●(省略)●のシェアを占め,その余を他社が占める というのであり,とりわけ「片手の指を挿入するためのシート状の1対の開閉操作部」 を有する経腸栄養バッグに限れば,市場には原告と被告の製品以外は存しないから, 市場を●(省略)●を占めるという関係にあり,当該分野に限れば,限られた需要者 の間において原告がブランド力を確立していることは容易に推認され,原告との間で, 営業力,ブランド力の差が生じているものとは認められない。 したがって,原告と被告の営業力,ブランド力の差をもって,法102条2項によ る推定が覆滅されるとする被告の主張は採用できない。
(5) 総括
以上を総合すると,法102条2項の規定により原告の損害として認定されるべき 額は,上記(3)で認定した被告製品の販売により受けた利益の額●(省略)●に,上 記(4)で認定した減額事由を考慮し,以下の計算式のとおり3718万0364円と 認定するのが相当である。
(計算式)
●(省略)●=37,180,364 円
また,上記損害額に本件に現れた一切の事情を斟酌すると,本件と因果関係のある 弁護士及び弁理士費用相当の損害額は380万円と認定するのが相当である。

◆判決本文

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