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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

102条2項

平成23(ワ)15499 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成25年10月24日 大阪地方裁判所

 特許権侵害が認定され、102条3項での損害額よりも、102条2項による損害額の方が高額ということで、3000万円強の損害額が認定がされました。
 原告製品及び被告各製品のほかにも,食品を収納するとともに,当該食材を加熱可能な容器が多数存在することは当事者間で争いがない。もっとも,このうちフラップ部と蓋を一体成型したものについては,原告製品,被告各製品及び乙30発明に係る実施品の存在を認めることができるにとどまる。本件各特許発明は,「加熱調理後,容器内の水分を,開口部を通じて,排出可能\である。この結果,本発明の容器は,パスタ等の調理に好適に使用可能となる。」(段落【0023】)という作用効果を奏する点に技術的意義があるものである。このような代替品の有無などに関する状況及び本件各特許発明の技術的意義に加え,本件で表\れた一切の事情を総合すると,本件各特許発明の被告各製品の売上げに対する寄与度は15%とするのが相当である。エ 損害以上によれば,売上高5億9510万5017円から経費合計3億9795万7004円を控除した額に寄与度15%を乗じた2957万2201円を,特許法102条2項に基づき算定される損害額と認める。
(3)特許法102条3項に基づく損害の計算
証拠(乙27の1〜3)によれば,プラスチック製品に係る実施料率は,平成4年度から平成10年度までの期間において,イニシャルペイメントがある場合において平均350%,イニシャルペイメントがない場合において39%であったことが認められる。このことに加え,前記で検討した代替品の有無などに関する状況及び本件各特許発明の技術的意義等も考慮すると,本件において相当な実施料率は35%であると認める。そうすると,売上高5億9510万5017円に実施料率35%を乗じた2082万8675円が相当な実施料額であると認める。
以上によれば,より高額である前記の計算に基づき,原告の損害(逸失利益)は2957万2201円であると認めるのが相当である。この約1割に相当する300万円の限度で,弁護士費用及び弁理士費用についても本件と相当因果関係のある損害と認める。

◆判決本文

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平成23(ワ)6878 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成25年08月27日 大阪地方裁判所

 単純方法の発明の侵害について、侵害者利益の40%が損害への寄与度と認定されました。
 特許法102条2項により,特許権(あるいは独占的通常実施権)を侵害した者がその侵害行為により利益を受けているときは,その利益の額が損害額と推定されるが,特許発明の実施が当該利益に寄与した度合によっては,上記損害額の推定の一部が覆滅されるものと解される。この点,前記イでも論じたとおり,本件特許発明1は,着色漆喰組成物の着色を均一かつ安定的にし,当該漆喰組成物の使用時に形成される着色漆喰塗膜の色むらを防止するという作用効果を有する。これは,塗壁材としての用途を有する着色漆喰組成物にとって,その有用性を高め,商品価値に直結するものであり,被告製品1の販売による利益に寄与していることは確かである。しかし,本件特許発明1は,物の発明でも,物を生産する発明の方法でもなく,単純方法の発明であるから,物の販売による利益への寄与度については,低く評価せざるを得ない。また,被告製品1を紹介するウェブサイト(甲25)及びカタログ(甲26)は,本件特許発明1で特定されている含有成分やそれに伴う着色の均一性や安定性,製品使用時に形成される着色漆喰塗膜の色むら防止といった作用効果を,被告製品1の特徴として挙げていなかった。むしろ,それらウェブサイトやカタログは,被告製品1につき,漆喰が有する調湿機能などを基本としつつ,酸化チタンを配合することによる防臭機能\\や,銀イオンを含有することによる抗菌機能などを特徴として強調しており,この点が現に一定の需要を喚起したこともうかがわれる(乙50〜52)。以上の事情に加え,競業他者の存在(甲33,乙12,13)も考慮し,60%の範囲で,特許法102条2項の推定が覆滅されると認めるのが相当である。なお,被告は,被告製品1の販売による利益には,被告の信用や顧客との信頼関係の寄与が大きい旨主張するが,前記ウ記載のカタログ等の製作や広告掲載のほか,被告において,その信用を高めるためにいかなる活動を行ったのか具体的かつ客観的に裏付ける証拠はない。被告の営業活動については,既に広告宣伝に要する費用として粗利の1割を超す額を利益から控除しているのであり,寄与度としてさらに考慮すべき事情を認めることはできない。また,被告は,平成24年8月に被告製品1の製造を中止し,石灰を含有しない製品へと設計変更した後,着色安定化作用はむしろ高まり,設計変更前と比べて売上げの減少も見られない(乙53,54,79〜87)とも主張するが,着色安定化作用の有無及び違いの程度を裏付けるに足りる証拠はない上,設計変更後の売上げがどのようにして維持されたかの具体的経過も明らかでなく,本件特許発明1の寄与度が低いことを示す事情とはいえない。したがって,特許法102条2項により,本件特許権1等の侵害によって原告が被った損害額(逸失利益)は,2278万8170円(=5697万0427円×(1−0.6),1円未満切捨て)と算定される。\n

◆判決本文

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平成23(ワ)13054 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成25年05月23日 大阪地方裁判所

 特102条2項に損害推定についての覆滅事由は否定されました。
 被告は,本件特許発明の切断刃は,交換装置と共に利用されて初めて技術的な貢献をするものであり,切断刃自体は,公知の切断刃の一部分に極めてありふれた単純な構造の付加を行っただけの物品であるから,本件特許発明は,被告製品全体のうち,せいぜい公知の切断刃の物品に付加された構\成による利用価値を高めるだけであり,被告製品の購買動機に影響を与えるものではないと主張する。確かに,被告製品は,剪断式破砕機用切断刃であり,対象物を切断することを目的とするが,本件特許発明は,切断刃の取外し作業の効率性を高めるものであり,切断の機能自体に関わるものではない。しかし,被告製品のような分割式の切断刃自体は公知のものであり(乙B1,本件明細書段落【0004】),本件特許発明の実施品たる構\成を備え,切断刃の取外し作業の効率性を高めている点を除き,格別の特徴を有するわけではないのであるから,本件特許発明の実施品であることこそが被告製品にとって最も重要な差別化要因であったといえる。現に証拠(甲5〜11,乙A29)及び弁論の全趣旨によれば,被告から被告製品を購入した顧客らは,被告製品の「輪形凹部3で形成した係合部」と係合する切断刃交換装置を保有しており,被告製品が本件特許発明の実施品であるからこそ発注,購入したものと認められる。したがって,本件特許発明の実施が被告製品の売上げに寄与した度合は,むしろ大きいというべきであって,損害額の推定の全部又は一部が覆滅されるべき事情があったとは認められない。なお,被告製品を購入した大栄環境株式会社の担当者は,切断刃交換装置を保有しておらず,ハンマーでたたいて切断刃の取り外しを行っていると述べる(乙A30)。しかし,前記1(2)のとおり,被告製品の構成を有する以上,本件特許発明の技術的範囲に属すると認められるところ,被告は,いずれも顧客から指示された仕様に従って被告製品を製造,販売したことが認められる。また,このような事情及び証拠(甲10,11)によれば,大栄環境株式会社は,原告の関連会社から切断刃交換装置を購入していたことも認められ,他にこの認定を妨げるに足りる証拠はない。そのため,ハンマーでたたいて切断刃の取り外しを行っているという上記担当者の陳述内容が真実であったとしても,損害額の推定の全部又は一部が覆滅されるべき事情とすることはできない。\n

◆判決本文

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