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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

102条1項

平成23(ワ)3292 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成26年03月26日 東京地方裁判所

 販売不可事情として7割に関しては除外されましたが、特102条1項により、1億6000万円を超える損害賠償が認められました。
 以上によれば,本件発明1は,電池電圧低下を検出した場合に,従来技術において採用されていた,意味不明かつ耳障りなブザー音に代えて,意味が明確かつ耳障りでない音声メッセージによって電池交換を促すとともに,利用者が音声メッセージを聴取するための誘因として,視覚的効果を有する表示灯手段を採用し,さらに,表\示灯手段を視認して誘引された利用者が確認要求受付手段を利用することにより,確実に音声メッセージを認識できるようにしたものである。そうすると,本件発明1の技術的意義は,第1に,従来技術における意味不明かつ耳障りなブザー音に代えて音声メッセージを利用するようにしたことであり,第2に音声メッセージへ到達するための誘因として視覚的な表示灯手段を利用するとともに,利用者の確認要求によって音声メッセージを確実に認識できるようにしたことにある。このような技術的意義を有する構\成を採用したことにより,早期に確実に電池交換をすることが促進され,電池の無駄な消費も抑えることができるようになる。本件発明1の上記技術的意義に照らせば,本件発明1において,電池電圧低下の検出と同時に発することが排除されているのは,利用者がうるさがって電池を抜き出してしまう程度に耳障りな音声又はブザー音であって,表示灯手段による報知と併せて発音を行うこと自体が全く排除されているものではないと解するのが相当である。そして,ハ号及びニ号製品における「ピッ」音は,50秒単位で発せられるものであり,利用者に異常表\示灯手段への注意を促す程度のものとみることができるから,上記発音が,利用者においてうるさがって電池を抜き出してしまう程度に耳障りなものとは解されず,上記発音が本件発明1において排除されている音声に当たるものとは解されない。
・・・
また,被告は,原告は,平成20年8月までは,原告製品1及び2のみしか販売していなかったものであるから,同月末日までの間は,原告製品1及び2のみが「特許権者…がその侵害の行為がなければ販売することができた物」に当たると主張する。しかし,特許法102条1項は,一定期間にわたる特許権侵害が認められる場合に,権利者の上記期間における競合品としてあり得べき権利者製品の販売機会の喪失による逸失利益を全体として評価して,これを権利者の受けた損害とするものであり,権利者製品と侵害品を厳密に1対1対応させ,販売機会の喪失を検討することが予定されているものではないというべきである。したがって,本件においても,特許法102条1項に基づく原告の損害を算定するに当たり,平成19年8月24日から平成24年3月末日までの期間を全体として捉え,原告製品を,いずれも,上記期間において「特許権者…がその侵害の行為がなければ販売することができた物」に当たるとみて,その平均利益をもって原告の損害を評価することは,特許法102条1項の上記趣旨に反するものではなく,許容されるものというべきである。(オ) よって,被告の主張はいずれも採用することができず,原告製品は,被告製品全部との関係において,「特許権者…がその侵害の行為がなければ販売することができた物」に当たるものと認められる。
ウ 「特許権者…がその侵害の行為がなければ販売することのできた物の単位数量当たりの利益の額」
(ア) 特許法102条1項にいう「単位数量当たりの利益の額」とは,原則として,権利者製品の売上高から変動費を控除した利益(限界利益)をいうが,費用のうち権利者製品の製造又は販売に直接必要な個別固定費も例外的に含むものと解するのが相当である。他方,本件発明は,その構成により,利用者が早期かつ確実に電池電圧低下を認識し,これを放置することなく早期の電池交換が促されることで,無監視状態で警報器が放置される事態を回避することが可能\になるという作用効果を有するものであるところ(前記第4の1(1)イ(ウ)),被告製品のカタログ等に本件発明に係る構成が記載されていること(上記(イ)e)に照らせば,本件発明の作用効果が購入者らによる製品購入(又は事業者による製品採用)の動機付けの一つとなっていることがうかがわれるものというべきである。ただし,火災警報器における基本的性能は,監視領域における火災等の異常を確実に検知し報知する点にあると考えられるのであって,電池電圧低下の検知及び報知は,異常を確実に検知し報知するための警報器の作動を確保するための機能\に関するものではあるものの,複数あり得る火災警報器の故障又は異常状態の一類型に対応するものにすぎないことや電池電圧の低下の検知及び報知については音声のみによる方法等の本件発明を実施しない他の方法もあり得ることを考慮すれば,本件発明に係る構成に基づく作用効果が,購入の決定的な動機付けとなり,又は製品を選択するに当たり大きな影響力をもつものとまでは考え難い。以上の諸事情については,被告製品の販売数量のうち,本件発明の作用効果を考慮してもなお他社の競合品によって代替されたと考えられる割合及び被告自身の営業力や本件発明の実施部分以外の被告製品の特性等により販売することができたと考えられる割合について,これらを総合して,原告が原告製品を「販売することができないとする事情」があると解するのが相当である。そして,上記諸事情に照らし,上記数量は7割とみるのが相当である。
(オ) 以上の認定に関し,原告は,パナソニック等の製品は本件特許権を侵害するものであるから,これらの製品の存在を考慮して,「販売することができないとする事情」を認定するのは相当ではないと主張するが,上記製品が本件特許権を侵害するものと認めるに足りず,採用することができない。(カ) したがって,前記アの被告製品の販売数量のうち,7割に相当する数量に応じた額を,原告の損害額から控除すべきである。

◆判決本文

関連カテゴリー
 >> 賠償額認定
 >> 102条1項
 >> 104条の3

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平成23(ワ)36583 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成26年03月20日 東京地方裁判所

 独占的通常実施権者に対して、特許法102条1項による損害賠償が認められました。
 原告製品1個当たりの利益の額は423.3円であること,被告は,平成21年2月23日から平成22年12月3日までに被告製品を10万0034個販売したことは当事者間に争いがない。また,証拠(甲30,乙7の1)及び弁論の全趣旨によれば,原告は平成16年から19年までは年間20万個を超える原告製品を,平成20年から22年までも年間10万個を超える原告製品を販売しており,原告の保有する生産設備やこれまでの販売実績からすれば,原告が被告の譲渡数量について実施する能力を有していたことが認められる。よって,原告の損害額は4234万4392円となる(なお,被告は本件に特許法102条1項の類推適用があることを争っていない。)\n
・・・・
被告は,原告製品と被告製品の価格差が大きいこと,装身具用連結金具の市場における原告のシェアが30%程度であり,複数の競合品が販売されていることから,被告製品の譲渡数量の一部につき「販売することができないとする事情」(特許法102条1項ただし書)があると主張する。そこで検討すると,前記争いのない事実等,証拠(甲31,32,乙8〜13。枝番号のある証拠はすべての枝番号を含む。)及び弁論の全趣旨を総合すると,1)原告製品の販売価格は1個859.5円であるのに対し,被告製品は約467.5円であること,2) 装身具用連結金具製品を販売する業者は原告と被告のほかにも複数存在することが認められる。しかしながら,1)価格差のあることが上記ただし書の事情に当たり得るものであるとしても,本件においては,弁論の全趣旨によれば,装身具用連結金具がネックレス等の環状装身具の部品の一つとして使用されるものであり,最終製品である環状装身具の価格が連結金具の価格を大きく上回るものであることに照らすと,原告製品と被告製品に上記の程度の価格差があることから原告製品につき「販売することができないとする事情」があると認めることはできない。また,2) 他社の装身具用連結金具製品が,本件発明と構成を異にするものであり,かつ,操作性が容易であり,構\造が簡単でコスト的にも優れているという本件発明と同様の効果を奏するものとして,原告製品の競合品となり得る特徴を有するものであるかは明らかではない。
 イ 次に,被告は,被告製品は別件発明に係る特許の実施品でもあるので,被告製品の販売における本件発明の寄与度は多くとも5割であると主張する。そこで検討すると,前記争いのない事実等(5)のとおり,原告と被告は,別件特許権の独占的通常実施権の侵害に係る別件訴訟において,被告が原告に解決金600万円を支払う,本件特許の独占的通常実施権侵害に基づく損害賠償債務の存在及び額が判決等により確定した場合には,この解決金を上記損害賠償債務に充当する旨の別件和解が成立し,別件特許権については原告と被告の間に他に債権債務はないことが確認されている。このような別件和解の経緯及びその内容に照らせば,被告製品の販売数量についての別件発明の寄与については,原告と被告の間では別件和解により解決済みであると解すべきであって,本件発明に係る独占的通常実施権侵害の損害額から別件発明の寄与度に相当する部分を減額するのは相当でない。

◆判決本文

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