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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

間接侵害

平成24(ネ)10092 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成25年04月11日 知的財産高等裁判所 

 間接侵害(特許法101条1号)について、専用品であるとの1審認定が維持されました。また、被告の無効主張は、時期に後れた抗弁としての却下はせず、採用したものの、最終的には無効理由無しと判断しました。
 第1審被告は,本件回転板が被告装置のために必須であるからといって,必ずしも本件発明を実施しないで使うことが使用形態として認められないというわけではなく,本件プレート板を使用しない形態が被告装置の経済的,商業的又は実用的な使用形態と認めることはできないとした原判決の認定は,事実を無視したものである,特許法101条1号は,他の用途がないことを要件とするものであって,「全く使用しないという使用形態」が要件となるわけではないし,本件プレート板を使用するか否かは,ユーザーの選択に委ねられているなどと主張する。しかしながら,特許法101条1号は,その物自体を利用して特許発明に係る物の生産にのみ用いる物についてこれを生産,譲渡等する行為を特許権侵害とみなすものであるところ,同号が,特許権を侵害するものとみなす行為の範囲を,「その物の生産にのみ用いる物」を生産,譲渡等する行為のみに限定したのは,そのような性質を有する物であれば,それが生産,譲渡等される場合には侵害行為を誘発する蓋然性が極めて高いことから,特許権の効力の不当な拡張とならない範囲でその効力の実効性を確保するという趣旨に基づくものであると考えられる。このような観点から考えれば,その物の生産に「のみ」用いる物とは,当該物に経済的,商業的又は実用的な他の用途がないことが必要であると解するのが相当である。そうすると,本件回転板及び本件プレート板は,本件発明における「共回り防止装置」の専用部品であると認められる以上,これらにおいて,経済的,商業的又は実用的な他の用途は認め難く,したがって,本件回転板及び本件プレート板は,「その物の生産にのみ用いる物」に当たるといわざるを得ない。したがって,被告装置が本件プレート板を用いないで使用することが可能であることは,本件回転板及び本件プレート板が被告装置の生産にのみ用いる物に該当するとの判断を左右するものではない。
・・・・
 アの認定事実によれば,原審において,第1審被告は,被告装置は本件発明の技術的範囲に属しないと考え,無効の抗弁を提出しなかったところ,その後,第1審被告の予想に反して損害論の審理が行われるに至ったため,無効の抗弁を提出しようとしたが,原審裁判所は時機に後れたものとしてこれを認めなかったものと認められる。ウ 第1審被告は,当審において無効の抗弁を提出し,無効理由として,1)特許法36条違反,2)乙38文献に記載された発明に基づく容易想到性,3)本件発明と乙3文献に記載された発明との同一性について主張するが,特許法36条違反については,本件明細書等の記載を速やかに検討すれば早期に主張が可能であったものといえること,乙3文献は,平成22年9月1日の原審第1回口頭弁論期日において書証として提出されており,また,乙38ないし40の各文献は,平成24年5月9日の原審第12回弁論準備手続期日において書証として提出されたものであること(なお,乙39文献は第1審被告の出願に係る公開特許公報である。)からすると,原審裁判所が時機に後れたものとして主張を許さなかった無効の抗弁を当審に至って提出することは,時機に後れたものというほかない。そして, 無効の抗弁の提出が時機に後れた理由は,本件発明の技術的範囲に属するか否かについて,自らの主張が正しいと信じていたというにすぎないというのであるから,第1審被告には重大な過失が認められるといわざるを得ない。しかしながら,当事者双方は無効の抗弁について主張立証の追加を求めず,当裁判所は,平成25年3月14日の当審第1回口頭弁論期日において,弁論を終結したものである以上,無効の抗弁の提出が「訴訟の完結を遅延させる」(民訴法157条1項)ものとは認められず,また,「審理を不当に遅延させることを目的として提出された」(特許法104条の3第2項)とまで認めることはできない。よって,第1審被告による無効の抗弁の提出は,時機に後れた攻撃防御方法の提出として,これを却下することはできない。

◆判決本文

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平成20(ワ)10819 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成25年02月21日 大阪地方裁判所

 イ号製品は,本件特許発明2による課題の解決に不可欠なものとして、間接侵害が認められました。
 イ号製品は,「混合」を行うか否か(構成要件E及びF),「一時貯留ホッパー」を備えているか否か(構\成要件C)という点を除き,本件特許発明2の構成要件を充足している(被告は争うことを明らかにしない。)。そして,次のとおり,イ号製品は,本件特許発明2の装置生産に用いることができる。すなわち,イ号製品は,後記4−1のとおり,ロ号製品の一部(たとえば,ロ1−1・2号)として用いられる結果,本件特許発明2の構\成要件を充足すると認めることができる。また,前記1−1によると,イ号製品は,ロ号製品の構成をとらなくても,混合にも用いることが可能\な構成といえる。なお,このときでも,一時貯留ホッパー(本件特許発明2の構\成要件C)の具備が求められるが,イ号製品の延伸部(47)は,一時貯留ホッパーの用を果たしているということができるだけでなく,前記1−2のとおり,一時貯留ホッパーを延伸部に置き換えることによる均等侵害の要件についても,これを認めることができる。
(2)本件特許発明2の課題の解決に不可欠なものであることア「発明による課題の解決に不可欠なもの」とは,特許請求の範囲に記載された発明の構成要素(発明特定事項)とは異なる概念であり,当該発明の構\成要素以外の物であっても,物の生産や方法の使用に用いられる道具,原料なども含まれ得る。他方において,特許請求の範囲に記載された発明の構成要素であっても,その発明が解決しようとする課題とは無関係に従来から必要とされていたものは,「発明による課題の解決に不可欠なもの」には当たらない。すなわち,それを用いることにより初めて「発明の解決しようとする課題」が解決されるような部品,道具,原料等が「発明による課題の解決に不可欠なもの」に該当するものというべきである。換言すれば,従来技術の問題点を解決するための方法として,当該発明が新たに開示する,従来技術に見られない特徴的技術手段について,当該手段を特徴付けている特有の構\成ないし成分を直接もたらす,特徴的な部材,原料,道具等が,これに該当するものと解される。したがって,特許請求の範囲に記載された部材,成分等であっても,課題解決のために当該発明が新たに開示する特徴的技術手段を直接形成するものに当たらないものは,「発明による課題の解決に不可欠なもの」には当たらない
・・・・
紙イ号製品目録記載のとおり,イ号製品の構成eは,「横向き管(4B)より上側に,縦向き管(4A)内の樹脂材料のレベルを,該吸引空気源を停止している場合に計測するレベル計(70)が設けられている。」というものである。これは,本件特許発明2に係る上記「従来技術に見られない特徴的技術手段」と同一であるから,イ号製品は課題解決のために本件特許発明2が新たに開示する特徴的技術手段を直接形成するものに当たるというべきである。したがって,イ号製品は,本件特許発明2による課題の解決に不可欠なものであると認めることができる。
・・・
特許法101条2号所定の「日本国内において広く一般に流通しているもの」とは,典型的には,ねじ,釘,電球,トランジスター等のような,日本国内において広く普及している一般的な製品,すなわち,特注品ではなく,他の用途にも用いることができ,市場において一般に入手可能な状態にある規格品,普及品を意味するものと解するのが相当である。本件では,イ号製品の構\成(特に構成e)を備えたホッパーが,日本国内において広く普及している一般的な製品又は市場において一般に入手可能\な状態にある規格品,普及品であること(及びその裏付けとなる事実)を認めるに足りる主張立証はない。

◆判決本文

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平成23(ワ)19435等 特許権侵害行為差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成25年02月28日 東京地方裁判所

 被告の行為は間接侵害(特101条2号)に該当しない、と判断されました。
 以上の本件各明細書の発明の詳細な説明の記載によれば,2型糖尿病に対しては,個々の患者のそのときの症状に最も適した薬剤を選択する必要があるが,個々の薬剤の単独使用においては,症状により十分な効果が得られなかったり,投与量の増大や長期化により副作用が発現する等の問題があり,臨床の場でその選択が困難であったこと,本件各発明は,これを解決するために,インスリン感受性増強剤であり副作用のほとんどないピオグリタゾンと消化酵素を阻害して澱粉や蔗糖の消化を遅延させる作用を有するα−グルコシダーゼ阻害剤(アカルボース,ボグリボース,ミグリトール),嫌気性解糖促進作用等を有するビグアナイド剤(フェンホルミン,メトホルミン,ブホルミン),膵β細胞からのインスリン分泌を促進するSU剤であるグリメピリドのいずれかとを組み合わせ,これにより,薬物の長期投与においても副作用が少なく,かつ多くの2型糖尿病患者に効果的な糖尿病の予\防や治療を可能にしたことが認められる。これによると,本件各発明が,個々の薬剤の単独使用における従来技術の問題点を解決するための方法として新たに開示したのは,ピオグリタゾンと本件各併用薬との特定の組合せであると認められる(ピオグリタゾンや本件各併用薬は,それ自体,本件各発明の国内優先権主張日より前から既に存在して2型糖尿病に用いられていたのであり,本件各発明がピオグリタゾンや本件各併用薬自体の構\成や成分等を新たに開示したということができないのは当然である。)。そうすると,ピオグリタゾン製剤である被告ら各製剤は,それ自体では,従来技術の問題点を解決するための方法として,本件各発明が新たに開示する,従来技術に見られない特徴的技術手段について,当該手段を特徴付けている特有の構成ないし成分を直接もたらすものに当たるということはできないから,本件各発明の課題の解決に不可欠なものであるとは認められない。
(4) 原告は,ピオグリタゾンが公知であったとしても,これが「その発明による課題の解決に不可欠なもの」に該当することを否定すべき理由はないし,ピオグリタゾンは,これを用いることによって本件各発明の課題を解決することができる重要な成分であり,ピオグリタゾンがなければ本件各併用薬との組合せという従来技術には見られない特徴的技術手段をもたらすことはできず,これを他の有効成分に置き換えることもできないから,当該手段を特徴付けている特有の成分に当たると主張する。しかしながら,本件各発明は,ピオグリタゾンと本件各併用薬という,いずれも既存の物質を組み合わせた新たな糖尿病予防・治療薬の発明であり,このような既存の部材の新たな組合せに係る発明において,当該発明に係る組合せではなく,単剤としてや,既存の組合せに用いる場合にまで,既存の部材が「その発明による課題の解決に不可欠なもの」に該当すると解するとすれば,当該発明に係る特許権の及ぶ範囲を不当に拡張する結果をもたらすとの非難を免れない。このような組合せに係る特許製品の発明においては,既存の部材自体は,その発明が解決しようとする課題とは無関係に従来から必要とされていたものに過ぎず,既存の部材が当該発明のためのものとして製造販売等がされているなど,特段の事情がない限り,既存の部材は,「その発明による課題の解決に不可欠なもの」に該当しないと解するのが相当である。被告ら各製剤の添付文書には,前記前提事実のとおり,【効能\・効果】,【用法・用量】欄に,食事療法と運動療法,又は,食事療法と運動療法に加え,本件各併用薬等を使用する治療で十分な効果が得られずインスリン抵抗性が推定される2型糖尿病に対して被告ら各製剤が効能\,効果を有することやそれらの場合における被告ら各製剤の用量や投与回数及び時期等についての記載があるほか,薬剤の併用投与の場合の注意事項等についての記載はあるが,本件各併用薬との併用投与を推奨するような記載や被告ら各製剤が本件各併用薬との組合せのためのものであるとの趣旨の記載はないから,添付文書の記載内容をもって,被告ら各製剤が本件各発明のためのものとして製造販売等されているということはできず,その他,特段の事情があることを認めるに足りる証拠はない。

◆判決本文

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平成23(ワ)4836 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成25年01月17日 大阪地方裁判所

 使用方法を特定したクレームに基づく、特許権侵害が認定されました。
 前記(1)のとおり,被告各製品は,ジェル剤と顆粒剤のキットからなる化粧料であり,本件特許発明1の各構成要件を充足するが,被告各製品を購入した需要者は,上記2剤を混ぜ合わせて,自らジェル状の「部分肥満改善用化粧料」を調製し,生成することが予\定されており,それ以外の用途は考えられない。したがって,被告各製品を製造,販売する行為は,本件特許発明7に係る特許権の間接侵害に当たるといえる。また,上述のとおり,被告各製品の製造,販売は,本件特許発明7に係る特許権の間接侵害に当たるところ,後記(3)のとおり,被告各製品は,主に顔の部分肥満改善に使用されているので,被告各製品を製造,販売する行為は,本件特許発明8に係る特許権の間接侵害にも当たるといえる。
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前記アの被告各製品に係る広告宣伝の内容からすれば,被告各製品は,小顔効果,顔やせ,部分痩せの効果を奏する化粧料として販売されていることが認められる。そうすると,被告各製品が本件各特許発明の「部分肥満改善用化粧料として使用される」という構成を文言上充足することは明らかである。被告らは,前記アの被告各製品に係る広告宣伝には関与していない旨主張する。しかしながら,上記各広告宣伝は,その体裁・内容自体からして真正に成立したものであると認めることができる(被告らも第三者の作成名義で真正に成立した文書であることについてまで争っているとは解されない。)。そして,被告各製品について上記のような類似した広告宣伝がされていることからすれば,被告らが,小売店等に対し,上記のような作用効果を奏する化粧料として被告各製品を販売していることは優に認められるものというべきである。\n

◆判決本文

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