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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

第3要件(置換容易性)

平成24(ワ)31523  特許権侵害行為差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成26年12月18日  東京地方裁判所

 均等侵害が認められました。また、不競法2条1項14号に該当するとして、損害賠償が認めれました。
 被告製品3は,本件発明の構成要件A1)〜C及びEを充足するものであるが,本件発明が制水駒を接合金具に内嵌するブッシュを介して通水室に内設するものであるのに対し(構成要件D),ブッシュを設けることなく制水駒を接合金具に形成されたV型のテーパに圧入することによって通水室に内設する構\成を採用しているから,構成要件Dを文言上充足しない。\n原告らは,被告製品3は上記のとおり特許請求の範囲に記載された構成と異なるが,1) ブッシュを介して内設することは本件発明の本質的部分ではなく,2)これを被告製品3のように置き換えても本件発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏するものであって,3)そのように置き換えることに本件発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が被告製品3の製造時点において容易に想到することができたものであり,4) 被告製品3が本件特許権の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから出願時に容易に推考することができたものではなく,かつ,5) 被告製品3が特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないから,被告製品3は特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして本件発明の技術的範囲に属する(最高裁平成10年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁参照)と主張するのに対し,被告らは原告らの主張のうち上記3)の点のみを争っている。
イ そこで判断するに,本件発明における通水室は,水栓の口端に接合される接合金具と水を吐出する吐出金具との間に形成され(構成要件A1)〜3),上端(入水側)と下端(出水側)が開口された筒状の空間を指すものと解される(明細書(甲8)の段落【0007】,【図2】参照)。また,構成要件Dの「ブッシュ」は,特許請求の範囲の文言上,接合金具に内嵌され,上記通水室に制水駒を内設させるものとされているが,明細書の発明の詳細な説明の欄をみてもその具体的な構\成やブッシュを設けることによる作用効果に関する記載は見当たらない。そして,構成要件Cに記載の構\成から成る制水駒を通水室に内設することにより,1個の制水駒によって多様の流量制御に対応することができるという本件発明の技術的意義(明細書の段落【0003】〜【0005】参照)に照らすと,制水駒は,上記形状の通水室内に下端から落ちることなく止まるよう,また,制水駒と通水室の間から水漏れがしないよう,通水室内に固定されていることを要すると解すべきものとなる。 ところで,通水室に制水駒を固定するに当たっては,これらを直接結合するか,他の部材を介して間接的に結合するかのいずれかであるところ,本件発明は後者を採用したものであるが,ブッシュを介在させることの技術的意義は明細書に記載されていない。また,物を製造するに当たり,製造原価を削減する,工程を減らし工期を短くするなどの目的で部品の数を減らすことは,当業者であれば当然に考慮すべき事柄と解される。そうすると,本件発明の特許請求の範囲及び明細書の詳細な説明の記載に接した当業者であれば,ブッシュを省略し,制水駒を通水室に直接結合する構成への設計変更を試みるものと考えられる。そして,本件発明の実施例に示されたとおり,通水室の断面及び制水駒の形状が円形であること,通水室には上端から下端方向に水が流れることからすれば,制水駒が下端から落ちることなく,かつ,制水駒と通水室の間から水が漏れないように両者を\n固定するため,接合金具の内側を下端側が狭まったV型のテーパ状に形成し,その円周部分に円盤状の制水駒を直接圧入するように構成することは,当業者にとって容易に想到できた\n
・・・・
上記事実関係によれば,甲17書面及び甲18書面は,「被告2社には本件発明を実施する権利がなく,被告2社による節水装置の製造販売は特許権侵害になる」旨の警告や通知をした原告らの行為が被告2社に対する誹謗中傷に当たる旨の事実を告知するものということができる。ところで,被告2社による本件特許権の侵害行為が認められることは前記1において認定判断したとおりであり,特許権侵害に関する請求につき説示したところによれば,原告らによる上記警告等は特許権者又は専用実施権者として登録された者による正当な権利行使の範囲を出るものではないと解される。そうすると,これが誹謗中傷であるとする被告2社による上記告知は虚偽であるといわざるを得ない。そして,このような記載内容に照らせば,これが原告らの営業上の信用を害することは明らかと解される。 したがって,上記1)の告知行為は不正競争防止法2条1項14号に該当すると認められる。
・・・
したがって,原告らは,被告らに対し,被告らが甲17書面及び甲18書面においてD及び原告アースアンドウォーターが被告らを「誹謗中傷」した旨を告知したことにつき,不正競争防止法2条1項14号,4条に基づき,原告ごとに35万円及びこれに対する各訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めることができる。

◆判決本文

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 >> 均等
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 >> 営業誹謗

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平成25(ワ)31341 特許専用実施権侵害行為差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成26年9月25日  東京地方裁判所

 均等侵害を主張しましたが、第3要件(置換容易性)を満たしていないとして、請求棄却されました。
 被告製品は,スライド用ボルト114が移動不可能に軸支されているという点で本件発明とは基本的構\成を異にするものであって,単に構成要件D3及びD4の文言の一部を修正したり上位概念で置き換えたりするだけでは,被告製品を充足するように本件特許の特許請求の範囲を構\成することは困難というべきである。ウ 以上のとおり,1)被告製品には本件発明に存在しない部材が用いられ,ケース117及びスライドタップ115の設計が必要となるが,2)その反面,パチンコ台アセンブリの前面からスライドタップ115を前後に移動することでパチンコ台の傾斜角を調整することができるという付加的な効果が得られている。他方,3)パチンコ台取付装置を含む技術分野において,相違点3及び4に係る技術が被告製品の製造の時点で公知であったと認めることはできず,また,4)単に本件発明の構成要件D3及びD4の文言の一部を修正したり上位概念で置き換えたりするだけで,被告製品を充足するように本件特許の特許請求の範囲を構\成することは困難である。これらの事情によれば,構成要件D3及びD4の構\成を被告製品のように置換することに,当業者が被告製品の製造の時点において容易に想到することができたと認めることはできないから,被告製品は,均等侵害の第3要件を欠き,本件発明と均等なものとしてその技術的範囲に属するということはできない。

◆判決本文

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