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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

限定解釈

平成21(ワ)7718 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成22年11月30日 東京地方裁判所

 切り餅事件について、明細書の記載、出願経過が参酌されて上面および底面に切り込みがあるものは技術的範囲外と解釈されました。
 原告は,焼き上がった後の切り込み部が「忌避すべき焼き形状とならない」ことについて述べる本件明細書の記載(段落【0034】等)は,単に「側周表面」に設けられた切り込み部が忌避すべき焼き形状とならないことを指摘したものにすぎず,「載置底面又は平坦上面」に切り込み部を設けるか否かについて何ら言及するものではない旨主張する。しかしながら,前記ア(イ)で述べたとおり,本件明細書には,加熱時の膨化による噴き出しを制御するための切り込み部を餅の表面(切餅では平坦上面)に設けた場合には,「人肌での傷跡のような焼き上がりとなり,焼き上がり形状が忌避すべき状態となってしまい,切餅への実用化がためらわれる」という従来の課題を踏まえ,当該切り込み部を,平坦上面の場合に比べて見えにくい上に,オーブンによる火力が弱い位置である「側周表\面」に設けたことによって,「焼き上がった後の切り込み部位が人肌での傷跡のような忌避すべき焼き形状とならない場合が多い」などの作用効果を奏することが記載されていることに照らすならば,原告の上記主張は,理由がない。

◆判決本文

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平成21(ワ)7718 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成22年11月30日 東京地方裁判所

 切り餅事件について、明細書の記載、出願経過が参酌されて上面および底面に切り込みがあるものは技術的範囲外と解釈されました。
 原告は,焼き上がった後の切り込み部が「忌避すべき焼き形状とならない」ことについて述べる本件明細書の記載(段落【0034】等)は,単に「側周表面」に設けられた切り込み部が忌避すべき焼き形状とならないことを指摘したものにすぎず,「載置底面又は平坦上面」に切り込み部を設けるか否かについて何ら言及するものではない旨主張する。しかしながら,前記ア(イ)で述べたとおり,本件明細書には,加熱時の膨化による噴き出しを制御するための切り込み部を餅の表面(切餅では平坦上面)に設けた場合には,「人肌での傷跡のような焼き上がりとなり,焼き上がり形状が忌避すべき状態となってしまい,切餅への実用化がためらわれる」という従来の課題を踏まえ,当該切り込み部を,平坦上面の場合に比べて見えにくい上に,オーブンによる火力が弱い位置である「側周表\面」に設けたことによって,「焼き上がった後の切り込み部位が人肌での傷跡のような忌避すべき焼き形状とならない場合が多い」などの作用効果を奏することが記載されていることに照らすならば,原告の上記主張は,理由がない。

◆判決本文

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平成22(ワ)9664 補償金請求事件 特許権 民事訴訟 平成22年07月22日 大阪地方裁判所 

 地震時ロック方法に関する特許権について、詳細な説明に記載の発明に基づき、特許請求の範囲が限定解釈されました。
 特許権に基づく独占権は,新規で進歩性のある特許発明を公衆に対して開示することの代償として与えられるものであるから,このように特許請求の範囲の記載が機能的,抽象的な表\現にとどまっている場合に,当該機能ないし作用効果を果たし得る構\成すべてを,その技術的範囲に含まれると解することは,明細書に開示されていない技術思想に属する構成までを特許発明の技術的範囲に含ましめて特許権に基づく独占権を与えることになりかねないが,そのような解釈は,発明の開示の代償として独占権を付与したという特許制度の趣旨に反することになり許されないというべきである。したがって,特許請求の範囲が上記のように抽象的,機能\的な表現で記載されている場合においては,その記載のみによって発明の技術的範囲を明らかにすることはできず,上記記載に加えて明細書及び図面の記載を参酌し,そこに開示された具体的な構\成に示されている技術思想に基づいて当該発明の技術的範囲を確定すべきであり,具体的には,明細書及び図面の記載から当業者が実施できる構成に限り当該発明の技術的範囲に含まれると解するのが相当である。・・・以上のとおり,本件明細書には,地震時ロック装置において,前後又は左右の方向で規定される地震のゆれによって係止体がその後部において回動が妨げられ,扉等が開き停止位置を超えてそれ以上開く動きを許容しない状態を生じさせるための具体的構\成としては,装置本体の震動エリアに収納された球により地震時に係止体の回動を妨げる構成が開示されていることが認められるが,それ以外の構\成は記載されておらず,またそれを示唆する記載もない。また,本件明細書の【背景技術】にも,従来技術として地震時ロック方法が紹介されているが,それはゆれによって球が動くことにより地震を検出するものであって,他に,振動エリア内に収容した球を用いる以外の構成を示唆するような記載は一切認められない。したがって,本件明細書には,装置本体の振動エリアに収納した球を用いて係止体の回動を妨げるという技術思想だけが開示されているというべきである。以上によれば,本件明細書の記載から当業者が実施できる構\成は,振動エリアに収納した球を用いて係止体の回動を妨げる構成だけというべきであるから,かかる構\成に限り本件特許発明の技術的範囲に含まれる(構成要件Cを充足する)と解するのが相当である。\n

◆判決本文

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平成17(ワ)26473 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成22年02月26日 東京地方裁判所

 ゴルフボールの特許について、10億を超える損害賠償が認められました。
 (ア) 特許法102条1項ただし書は,侵害品の譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を権利者が「販売することができないとする事情」があるときは,同項本文の損害額から,当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものとする旨規定している。被告は,本件においては,本件訂正発明の実施の有無が需用者の購買の動機付けとなっていないこと,原告各製品の市場におけるマーケットシェアを超える部分は,他の製品が代替して販売されたものと評価すべきであること,被告の営業努力,ブランド力及び販売力などの事情が存在し,これらの事情は,原告が原告各製品を「販売することができないとする事情」に該当するので,上記事情に相当する数量に応じた額を原告主張の損害額から控除すべきである旨主張する。・・・・以上・・事情を総合考慮すると,前記ア(ウ)認定の被告各製品の譲渡数量のうち,60%に相当する数量については,被告の営業努力,ブランド力,他社の競合品の存在等に起因するものであり,被告による本件特許権の侵害がなくとも,原告が原告各製品を「販売することができないとする事情」があったものと認めるのが相当である。したがって,前記ア(ウ)認定の被告各製品の譲渡数量のうち,60%に相当する数量に応じた額を,原告の損害額から控除すべきである。(イ)a これに対し被告は,原告各製品(5種類)が特許法102条1項本文の「侵害の行為がなければ販売することができた物」であることを前提に,その「単位数量当たりの利益の額」を基に損害額を算定する以上,同項ただし書の「販売することができないとする事情」としての市場におけるマーケットシェア(市場占有率)を考慮する際には,上記5種類の原告各製品の市場占有率に限定すべきであり,当該市場占有率を超える部分は,他の製品が代替して販売されたものと評価すべきである旨主張する。しかし,i)ゴルフメーカー各社の営業努力及びブランド力は,市場占有率に反映されているといえるが,それを適切に評価するためには,ゴルフボール全体の市場占有率を考慮するのが相当であると考えられること,ii)本件においては,原告各製品と競合する他社メーカーの具体的な製品についての市場占有率に関する主張がされていないなど,被告各製品の譲渡数量のうち,原告各製品の市場占有率を超える部分は他の製品が代替して販売されたものと評価できることを基礎付ける事情はうかがわれないことに照らすならば,被告の上記主張は採用することができない。b また,被告は,原告各製品及び被告各製品の販売において,本件訂正発明の対象である添加剤の使用は,一切ユーザーには知らされておらず,本件訂正発明の使用の有無により,ユーザーが被告各製品の購買の動機付けとなることはあり得ないから,本件訂正発明の実施の有無が需用者の購買の動機付けとなっていないことを,原告が「販売することができないとする事情」として考慮すべきである旨主張する。しかし,前記(ア)b認定のとおり,ユーザーがゴルフボールを選択する際,ゴルフボールの性能(飛距離性能\,スピン性能等)を重視する傾向にあるといえるが,一般のユーザーはゴルフボールの性能\を発揮する原因となるゴルフボールを構成する具体的な成分等については特段の関心を抱いていないものとうかがわれることに照らすならば,原告各製品及び被告各製品の販売において本件訂正発明の対象である添加剤の使用がユーザーには知らされていないことを,前記ア(ウ)認定の被告各製品の譲渡数量を原告が「販売することができないとする事情」として考慮すべき余地はないというべきである。

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