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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

限定解釈

平成19(ワ)16025 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年09月10日 大阪地方裁判所

 技術的範囲の判断において、請求項の「〜手段」という文言が明細書開示事項に基づいて限定解釈がなされました。
 「特許請求の範囲において,加減圧手段は,「レンジ室内と連通されレンジ室内の加圧及び減圧を繰り返す加減圧手段」というように,加減圧という作用,機能面に着眼して抽象的に記載されているだけであって,加減圧手段の具体的な構\成は明らかにされていない。このように,特許請求の範囲の発明の構成が機能\的,抽象的な表現で記載されている場合に,当該機能\ないし作用効果を果たし得る構成がすべてその技術的範囲に含まれるとすれば,明細書に開示されていない技術的思想に属する構\成までもが発明の技術的範囲に含まれることになりかねず,特許権に基づく独占権が当該特許発明を公衆に対して開示することの代償として与えられるという特許法の理念に反することになり,相当でない。そこで,本件特許発明1の技術的範囲を確定するに当たっては,本件明細書1の発明の詳細な説明及び図面を参酌し,そこに開示された加減圧手段に関する記載内容から当業者が実施し得る構成に限り,その技術的範囲に含まれると解するのが相当である。・・・・本件明細書1には,上記調圧器5の具体的構\成や,それがいかなる作用,機能を有するものであるかについて,一切開示されておらず,当業者にとっても「調圧器5」がいかなる構\造,機能を有するものであるかを理解することはできない(本件明細書1の【図面の簡単な説明】の欄には「ポンプ4」が, 「加減圧手段としてのポンプ」と記載されているのに対し,「調圧器5」は単に「調圧器」と記載されているだけである。)。そして,本件明細書1には,加減圧手段として採り得る他の構成は開示されおらず,また,他の構\成を採用し得ることについての示唆もない。してみると,本件明細書1で加減圧手段として開示されている具体的構成は,気密室6を構\成する外枠1に接続された管路に接続し,ポンプ4の作動により,加圧と減圧を繰り返すものである。以上によれば,本件明細書1の発明の詳細な説明及び図面を参酌して,その記載内容等から当業者が実施し得る加減圧手段の構成は,ポンプ4のようなそれ自体の作動により加圧及び減圧を繰り返すことができるようなもの,すなわち,加熱手段によるレンジ室内の加熱に伴う圧力変化とは無関係にそれ自体の作動によりレンジ室内の加圧及び減圧を繰り返し行うものと解するのが相当である」。
 

◆平成19(ワ)16025 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年09月10日 大阪地方裁判所

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平成20(ワ)3277 特許権侵害差止等 特許権 民事訴訟 平成21年08月27日 大阪地方裁判所

 製造方法が構成要件として特定されている侵害事件において、原則として別の方法で製造された場合でも同じものであれば技術的範囲に属するとの原則を述べつつ、禁反言により、侵害が否定されました。
「・・・原告は,構成要件Eの「枠台」の解釈において,裏返し脱型作業するという製造工程までも構\成要件とする方法の発明ではないとも主張する。たしかに,本件特許発明は特許法2条3項1号の物の発明と解されるところ,それにもかかわらず,特許請求の範囲に物の製造方法(構成要件E及びF)が記載されている。そこで,本件特許発明における構\成要件E及びFの位置づけについて最初に検討することとする。ア 特許法2条3項1号の物の発明において特許請求の範囲に当該物の製造方法が記載されている場合であっても,原則として,同製造方法により得られる物と同一であれば,これと異なる製造方法を用いて製造された物であっても,同特許発明の技術的範囲に属するというべきである。しかしながら,証拠(乙18)によれば,本件特許に係る出願経過について,以下の事実が認められる。「・・・本件補正のうち,構成要件Bの金属線材受け入れ孔を設けることについては,もともと出願当初の特許請求の範囲【請求項2】に記載されていたものであり,同請求項に係る上記拒絶理由通知においても「結束用金属線材受け入れ孔を設けることは,引用文献2にも記載されている。」と指摘されているところである。また,原告も上記意見書においてこの点を特段強調してもいない。これに対し,成形キャビティを用いたコンクリートブロックの成形及び陥没数字の賦形手段については,上記意見書においても,原告が従来技術との相違点として特に強調していた点であり,本件補正がなされたことによって特許査定がなされていることからすれば,特許庁審査官も,その当否は措くとして,この点を考慮して特許査定したものと認められる。そうとすれば,原告が本件特許権を行使するに当たり,本件特許発明は物の発明であって,構\成要件E及びFの製造工程を構成要件とするものではないと主張することは,禁反言の法理に照らして到底許されるものではないというべきである。ウ よって,構\成要件E及びFの製造工程も,本件特許発明の技術的範囲を画する構成要件と解すべきであり,ここに記載された製造工程によって製造された鉄筋用スペーサーのみが本件特許発明の技術的範囲に属し得るものというべきである」

◆平成20(ワ)3277 特許権侵害差止等 特許権 民事訴訟 平成21年08月27日 大阪地方裁判所

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◆平成19(ワ)22715 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年06月30日 東京地方裁判所

 特許請求の範囲の用語「抽出」について、化学変化を起こさせる方法については開示または示唆がないとして、技術的範囲に属さないと判断されました。
   「燕窩の含水溶剤抽出物」の製造方法としては,「燕窩乾燥物の粉砕品を,1〜 1000 倍重量,好ましくは5〜 500 倍重量,より好ましくは10 〜 100 倍重量の含水溶剤中において,0〜 180 ℃,好ましくは室温〜 120 ℃の範囲の温度において,10 分〜 50 時間,好ましくは1〜8時間抽出処理する」ものであり,「抽出処理は,常圧下および加圧下のいずれで行ってもよく,抽出装置としては,加熱抽出機等が利用できる」こと,抽出処理に用いる含水溶剤の例としては,「例えば,水を始め,水と水混和性有機化合物との混合物が用いられ,水混和性有機化合物としては,メタノールなどが挙げられる」こと,成分としては,「通常タンパク質が40 〜 80 重量%,糖質が20 〜 60 重量%およびシアル酸が0.1 〜 15 重量%の割合で含有されている」こと,作用としては,「優れた保湿作用、皮膚細胞におけるコラーゲン合成促進作用及び良好な皮膜形成能を有しており、皮膚に対して極めて安全性が高い」ことなどが説明されているにとどまり,燕窩の含水溶剤抽出に際し,単に目的物(燕窩中の成分)を抽出相(水や水と水混和性有機化合物との混合物)に溶解させて抽出する方法のほかに,タンパク分解酵素による加水分解反応等の化学変化を起こさせる方法も採り得ることや,このように化学変化を起こさせる方法により燕窩から取り出した物質が,燕窩から水等によって抽出した物質と同様の成分,作用を有することなどを示唆する記載は,存在しないことが認められる。また,本件明細書中には,「含水溶剤」及び「抽出物」という用語について,酵素を用いた加水分解のように,燕窩の中の成分に適当な化学変化を起こす場合をも含むものである旨の,格別の定義は記載されていない。したがって,本件明細書の記載からも,特許請求の範囲に記載された「燕窩の含水溶剤抽出物」は燕窩の酵素分解物を含むものであると解釈することは,困難である。」

◆平成19(ワ)22715 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年06月30日 東京地方裁判所

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