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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

その他特許

平成24(行ウ)383 特許分割出願却下処分取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年12月06日 東京地方裁判所

 H19/4/1以前にした特許出願についての、特許査定後の分割出願が適法かが争われましたが、裁判所は却下処分は適法と判断しました。
 旧44条1項は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる期間内,すなわち,特許をすべき旨の査定の謄本の送達前(特許法17条の2第1項)に限って分割出願をすることができるとしていたが,新44条1項は,これに加え,特許をすべき旨の査定の謄本の送達があった日から30日以内であれば分割出願をすることができることとした。そして,平成18年改正法附則3条1項は,同法による改正に伴う経過措置として,「改正後の特許法…第44条…の規定は,この法律の施行後にする特許出願について適用し,この法律の施行前にした特許出願については,なお従前の例による」と規定し,前段で改正法が適用される場合を特定し,後段でそれ以外の場合(すなわち,改正法が適用されない場合)を定めている。本件出願は,平成22年6月8日にした本件原出願からの分割出願であり,本件原出願は,平成12年2月15日にした本件原々出願からの分割出願であるところ,本件原出願は,新44条2項により,平成18年改正法の施行日(平成19年4月1日)前である平成12年2月15日にしたものとみなされるから,本件出願は,同法附則3条1項前段の「この法律の施行後にする特許出願」には該当せず,後段の「この法律の施行前にした特許出願」に該当するものとして,「なお従前の例による」ことになる。そこで,「従前の例」,すなわち,従前の特許法44条1項の適用関係につきみるに,平成18年改正法による改正前に特許法44条1項に関する改正をした直近の法律は,平成14年改正法であるが,同法附則3条1項は,施行日(平成15年7月1日)以後にする特許出願であって,特許法44条2項の規定により施行日前にしたものとみなされるものについては,同改正法による改正後の特許法の規定(44条1項に関しては,旧44条1項がこれに当たる。)が適用されると規定していたから,本件出願には旧44条1項が適用される。そうすると,本件原出願から分割出願(本件出願)をすることができるのは,本件原出願についての特許をすべき旨の査定の謄本の送達前に限られる。しかるに,原告が本件出願をしたのは,本件原出願についての特許査定の送達がされた平成23年1月28日より後の同年2月10日であるから,本件出願は,旧44条1項の定める出願期間経過後にされたもので,不適法である。 20121214105700

◆判決本文

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平成24(ネ)10023 製造販売禁止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成24年11月29日 知的財産高等裁判所

 秘密保持命令について付言がなされています。
 (2) 本件訴訟では原審で秘密保持命令が発令されているが,秘密保持命令に係る手続に関し,以下の2点について付言する。
ア 第1に,控訴人は,その代表者等において秘密記載文書(乙8の1・8の2)を閲覧できなかったことについて問題がある旨主張する。しかし,秘密記載文書については,閲覧等の制限(民事訴訟法92条1項)など秘密保護の規定が存するものの,「当事者」(当事者の法定代理人を含む。)に関する限り,秘密保持命令の発令に至るまでの協議の過程で,当該当事者が営業秘密の開示を受けないことが合意されていたような特段の事情が存在する場合を除き,その閲覧(同法91条1項)が制限されることはない。そこで,特許法は,特許法105条の6第1項所定の「当事者」(民事訴訟法92条1項の「当事者」と同義と解される。)から秘密記載部分の閲覧請求がされた場合に,その者が秘密保持命令を受けていない者であるときは,秘密保護を要する当事者のために,所定の期間を設けて秘密保持命令を申\し立てる機会を付与している(同条2項参照)。本件においても,控訴人代表者は控訴人の法定代理人であると解されるから,かかる特段の事情がない限り秘密記載文書の閲読が許されるのであり,控訴人の指摘は当たらない。イ 第2に,本件訴訟では,準備書面等に,秘密記載文書の写しが添付されている。しかし,このような営業秘密に関する安易な取扱いは,秘密漏洩を防止するための記録管理をいたずらに煩雑にさせ,また,漏洩の危険性を著しく高めることになる。準備書面等に営業秘密の内容に言及する場合には,営業秘密の内容を準備書面等に転記するような方法を避けた,秘密記載文書(原本)における掲載箇所(開始頁及び行と終了頁及び行、図面の番号)の特定にとどめるなどの工夫をすることにより,営業秘密が拡散することのないよう,配慮をすべきである。

◆判決本文

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平成24(ネ)10016 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成24年07月18日 知的財産高等裁判所

 先使用による通常実施権を有するとして、差止、損害賠償請求を棄却した一審判断が維持されました。
 先使用による通常実施権が成立するには,まず,これを主張する者が特許出願に係る発明の内容を知らないで,当該特許出願に係る発明と同一の発明をしていること,あるいは,発明をした者から知得することが必要である(特許法79条)。そして,発明とは,自然法則を利用した技術的思想の創作であり(同法2条1項),一定の技術的課題(目的)の設定,その課題を解決するための技術的手段の採用及びその技術的手段により所期の目的を達成し得るという効果の確認という段階を経て完成されるものであるが,発明が完成したというためには,その技術的手段が,当該技術分野における通常の知識を有する者が反復継続して目的とする効果を挙げることができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成されていることを要し,またこれをもって足りるものと解するのが相当である(最高裁昭和49年(行ツ)第107号同52年10月13日第一小法廷判決・民集31巻6号805頁参照)。
(2) そこで,以上の観点から,被控訴人製品に係る発明が完成していたか否かを検討すると,前記前提となる事実及び後掲各証拠並びに弁論の全趣旨によれば,以下の各事実が認められる。
・・・
 以上のとおり,大阪ガスが開発したトルエン加水分解法は,BPEFの粗結晶を水とトルエンに溶かした後,不純物が溶けた水を取り除くと,BPEFのみが溶けたトルエンが得られ,これを精製して純度の高いBPEFを得るという方法であり,本件特許発明1とは異なるBPEFの製造方法であるところ,大阪ガス及び同社から平成11年4月頃にトルエン加水分解法を含んだBPEFの製造方法について開示を受けた被控訴人は,本件特許の優先権主張日である平成19年2月15日前に,本件特許発明2の技術的範囲に属するBPEFを少なくとも約30トン委託製造しているのであるから,被控訴人製品に係る発明は,その技術的手段が,当該技術分野における通常の知識を有する者が反復継続して目的とする効果を挙げることができる程度にまで具体的,客観的なものとして構成されていたということができる。したがって,被控訴人製品に係る発明は完成していたものと認められる。

◆判決本文

◆一審判決はこちら。平成22年(ワ)第9102号

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平成23(ネ)10069 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成24年04月25日 知的財産高等裁判所

 優先権主張が認められず、新規性無しとして特104条の3の規定により、権利公使不能と判断されました。
 本件特許発明1については,特許法29条等の規定の適用に関して優先権主張の利益を享受できず,現実の出願日である平成14年10月2日を基準として新規性等を判断すべきであるところ,同日以前に実施品「スイングクランプLH」が製造・販売されていたので,新規性を欠き,特許無効審判によって無効とされるべきものである。
・・・
原判決が認定するとおり(58〜63頁),平成13年11月13日にされた特許出願(第1基礎出願)に係る基礎出願明細書1(図面を含む。乙2)にも,平成13年12月18日にされた特許出願(第2基礎出願)に係る基礎出願明細書2(図面を含む。乙3)にも,平成14年4月3日にされた特許出願(第3基礎出願)に係る基礎出願明細書3(図面を含む。乙4)にも,クランプロッド5の下摺動部分12に4つのガイド溝を設けることを前提に,下摺動部分12の外周面を展開した状態における螺旋溝27(旋回溝)に傾斜角度を付けることは開示されているものの,傾斜角度の具体的範囲については記載も示唆もされておらず,本件特許発明1の構成のうち,「第2摺動部分(12)の外周面を展開した状態における上記の旋回溝(27)の傾斜角度(A)を10度から30度の範囲内に設定」するとの構\成(発明特定事項)については,平成14年法律第24号による改正前の特許法41条1項にいう先の出願「の願書に最初に添付した明細書又は図面・・・に記載された発明に基づ」いて特許出願されたものでないから,本件特許発明1についての特許法29条等の規定の適用については,優先権主張の利益を享受できず,現実の出願日である平成14年10月2日を基準として新規性等を判断すべきである。

◆判決本文

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平成21(ワ)47445 専用実施権設定登録抹消登録等請求事件 特許権 民事訴訟 平成24年03月30日 東京地方裁判所

 専用実施権の設定期間満了による登録抹消請求が認められました。争点は、契約を更新する旨の覚え書きが有効か否かです。
 上記認定事実に鑑みると,本件覚書は,平成21年9月30日に本件株式譲渡契約(の準備契約)が締結された後,Aとペンジュラム社との間での顧問契約の内容等について不安を抱いたAが,Dと共謀して,ペンジュラム社がAの所有する株式を買収することを妨げる目的で作成したものと認められ,本件覚書を作成した当時,原告と被告MFI社との間において,本件覚書記載のとおり本件専用実施権設定契約の内容を変更する合意があったと認めることはできない。したがって,本件覚書は,通謀虚偽表示(民法94条)により無効であるから,原告と被告MFI社との間の本件専用実施権設定契約は,同契約の第4条第2項に基づく解約により終了したものと認められる。\n

◆判決本文

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平成23(行ケ)10227 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年03月28日 知的財産高等裁判所

 H11年改正前の特30条について、同一発明でなくても適用すべきと争いましたが、認められませんでした。
 平成11年特許法改正による改正前特許法30条の改正は,新規性喪失の例外適用の拡大を目的とするものであり,改正前においては,新規性喪失の例外が適用される範囲は,特許出願に係る発明と発表等がされた発明とが同一である場合に限られていたが,当該要件を見直し,これを同一のみならず,自己の発表\等を行った発明から出願の発明が容易に発明をすることができた場合(両者に相違点が存在する場合)まで適用可能とし,当該発明の新規性又は進歩性の判断において,発表\等の行為を考慮しないこととする趣旨の改正であるとされる(甲11,乙2)。このように,改正前特許法30条においては,新規性喪失の例外が適用される範囲は,進歩性の判断の場合を含まず,新規性の判断の場合のみであると定められており,特許庁における運用についても,同様であったことについては,原告も争うものではない。平成11年特許法改正は,上記解釈及び運用を前提として,例外が適用される範囲を進歩性判断の場合にまで拡大したものである。
・・・・
原告は,平成11年特許法改正により,進歩性判断の場合にまで例外規定が拡大された趣旨をふまえ,改正前特許法30条の適用においても同様に解し,本件出願にもその趣旨を拡大して同条が適用されるべきであって,引用例1を引用例として用いることはできないと主張する。しかしながら,前記アの改正前特許法30条の解釈によれば,同条を原告主張のように拡大して適用することができないことは明らかである。原告の主張は採用できない。

◆判決本文

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平成23(行ウ)542 決定処分取消請求事件 その他 行政訴訟 平成24年03月16日 東京地方裁判所

 国内書面提出日から2月経過後に提出された翻訳文提出に対して、特許庁は期間経過後であるとして却下処分を行いました。原告は優先権主張を取り下げて争いましたが、裁判所は、かかる処分について、適法と判断しました。
 原告は,i)平成22年1月22日に原告が特許庁長官に対し本件国際特許出願に関して本件取下書を提出したことにより,本件国際特許出願における2007年(平成19年)1月23日を優先日とするパリ条約による優先権主張は取り下げられた,ii)その結果,本件国際特許出願に係る特許協力条約2条(xi)の優先日は,本件国際出願の国際出願日である2008年(平成20年)1月23日に繰り下がる,iii)その結果,本件国際特許出願についての国内書面提出期間(特許法184条の4第1項)の満了日も,上記国際出願日である平成20年1月23日から2年6月が経過する平成22年7月23日に繰り下がることになる旨主張する。しかしながら,原告の主張は採用することができない。すなわち,原告は,2008年(平成20年)1月23日,特許協力条約に基づいてパリ条約による優先権主張を伴う本件国際出願をし,本件国際出願は,日本において,特許法184条の3第1項の規定により,その国際出願日にされた特許出願とみなされ(本件国際特許出願),本件国際特許出願についての明細書等の翻訳文の提出期間は,同法184条の4第1項ただし書の適用により,原告が本件国内書面を提出した日である平成21年7月14日から2月が経過する同年9月14日までであったにもかかわらず,原告は当該提出期間の満了日までに上記翻訳文を提出しなかった(前記第2の2(1),(2)ア,イ)のであるから,同法184条の4第3項の規定により,当該満了日が経過した時点で,本件国際特許出願は取り下げられたものとみなされる。そうすると,原告が本件取下書を特許庁長官に提出した平成22年1月22日の時点においては,本件国際特許出願は既に取り下げられたものとされ,そもそも特許出願として特許庁に係属していなかったことになるから,当該出願に関して,優先権主張の取下げを含む特許庁における法律上の手続を観念することはできないというべきである。したがって,原告による本件取下書の提出をもって,原告が主張する上記ii),iii)のような本件国際特許出願に関する優先権主張の取下げの効果を生じさせるものということはできず,これに反する原告の主張は採用できない。

◆判決本文

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平成23(行ケ)10241 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年02月28日 知的財産高等裁判所

 特29−2(出願後に公開された公報に記載された発明と同一である)違反として拒絶された出願について、裁判所は、先願発明は本願発明を排除しているとして、審決を取り消しました。
 本願補正発明における「電力需給線路」は,同発明の特許請求の範囲の請求項1の記載によれば,複数の電力需給家の電力需給制御機器を相互接続するものであり,電力需給家において電力不足又は電力余剰が生じた場合に,これを介して電力を「受け取り」又は「渡す」ものであることが認められるが,請求項1の記載のみでは,その技術的意義が明確ではないから,発明の詳細な説明の記載を参酌することとする。補正明細書の記載によれば,「従来の電力系統」とは,図8が示すような,大規模発電所を頂点とし需要家を裾野とする「放射状系統」を基本とする広域かつ大規模な単一システムをいうこと,従来の電力系統では,大量かつ長距離の電力移送による損失が多く,また,従来の電力系統との連係を前提とした系統連系型分散発電システムは,再生可能エネルギーの遍在により大規模発電所を構\築しにくいとの課題があり,これを解決するため,本願補正発明は,従来の電力系統に拠らない電力システムの提供を目的としていること(【0002】,【0003】,【0005】,【0006】),本願補正発明は,自立し,疎結合した各電力需給家が,少なくとも各1つの発電機器,蓄電機器及び電力消費機器と,電力需給制御機器とを備え,それぞれの電力需給制御機器において電力需給線路により相互接続されてなる電力システムであること,電力需給制御機器は,当該機器が備えられた電力需給家において電力不足が生じるか否か,又は,電力余剰が生じるか否かを判断し,電力不足が生じる場合には他の電力需給家から電力需給線路を介して電力を受け取り,電力余剰が生じる場合には他の電力需給家に電力需給線路を介して電力を渡すことを特徴とすること(【0009】,【0014】,【0015】,【0018】),電力需給者間で電力の需給を行う場合,電圧・電流・周波数・位相の整合を電力需給制御機器が行うこと(【0025】,【0026】等)が認められる。以上によれば,特許請求の範囲の請求項1記載の「電力需給線路」は,従来の電力系統に拠らない電力システムを構成し,各「電力需給家」が備える「電力需給制御機器」を接続するものであり,各「電力需給家」において,電力の不足,余剰が生じた場合には,「電力需給制御機器」がこれを判断して電力を「受け取り」又は「渡し」,電流・電圧等の整合を行うが,「電力需給線路」を介して電力の移動が行われるものであることが認められる。すなわち,本願補正発明における「電力需給線路」は,「従来の電力系統に拠らない」【0006】ことを目的とするものであって,図8(従来の電力系統)が示すような,大規模発電所を頂点とし需要家を裾野とする「放射状系統」を基本とする広域かつ大規模な単一システムを前提とする電力設備は含まず,各「電力需給家」が備える「電力需給制御機器」を接続するものであるから,「電力需給線路」は,「従来の電力系統」とは異なるとともに,電圧等の整合を行うための構\成を含んでいないと解するのが相当である。そうすると,本願補正発明における,電力需給家の複数が夫々の電力需給制御機器を相互接続するための「電力需給線路」は,「従来の電力系統」(図8が示すような,大規模発電所を頂点とし需要家を裾野とする「放射状系統」を基本とする広域かつ大規模な単一システムを前提とする電力設備)を排除しているものと解すべきである。他方,先願発明の「送配電線網」については,上記ア(イ) のとおり,モノや設備の集合体としての設備群ないし「送電線,配電線,変電所および変圧器などの多くの設備から構成され,電気エネルギーを流通するための電力設備群」であることについて,当事者間に争いはない(引用例の段落【0003】,【0021】,【0022】,【0025】の記載からも,このように理解できる。)。また,引用例によれば,「電力送受制御手段324では,要求制御手段322が待ち受けた受電に応じる受電応答情報Cまたは送電に応じる旨の送電応答情報D,あるいは応答制御手段323が送信した受電に応じる旨の受電応答情報Cまたは送電に応じる旨の送電応答情報Dをもとに,受電または送電を行う電力を制御する。」等の記載(【0024】,【0030】,【0034】参照)があるものの,電力需要家間での電力を送電し受電する際の具体的な制御や必要となる電圧等の整合に係る制御についての具体的な記載はない。引用例の図5(別紙図面の「引用例の図5」のとおり。)には,先願発明の「制御装置」(本願補正発明の「電力需給制御装置」に相当する。)は,「通信網」とは接続されているが,「送配電線網」とは接続されていない様子が明確に示されている。したがって,先願発明では,「既存の系統を利用することなく,別個に送電及び受電を行うための技術的構\成」は示されていないというべきである。以上によれば,本願補正発明の「電力需給線路」は,従来の電力系統でないとともに「電力需給制御装置」とも区別されているのであって,電圧等の整合を行うための構成を含んでいないのに対して,先願発明における「送配電線網」は,従来の電力系統として変電所等の電圧等の整合を行うための構\成を示すにとどまり,これを超える構成を示すものではないから,両者が相当するということはできない。そうすると,本願補正発明における「電力需給線路」は,「従来の電力系統」を含まない点において,先願発明の「送配電線網」と相違する。本願補正発明と先願発明に相違点は認められないとした審決には誤りがあるというべきである。
ウ これに対し,被告は,i)乙1の段落【0001】,乙2の段落【0003】,【0035】の各記載からすれば,「線路」に変圧器等の機器が含まれることは技術常識である,ii)補正明細書に,「電力需給線路W」として「送配電線網」を用いないことを示す記載はなく,本願補正発明の「電力需給線路」から「送配電線網」を除外すべき理由はない,iii)本願補正発明が「従来の電力系統に拠らない」,「各電力需給家は自立している電力システム」であるとすることは,特許請求の範囲の請求項1,補正明細書の段落【0025】,【0026】の各記載に基づくものではない,iv)補正明細書の図5の実施例のような広域間での送電では,送電効率を高くするため,変電所や変圧器を用いて,昇圧して送電することは技術常識(乙3,乙4)であり,「電力需給線路」を変電所や変圧器などの電力設備を備えた「送配電線網」とすることは当業者が当然に行うことであると主張する。しかし,被告の主張はいずれも失当である。上記イのとおり,本願補正発明は,従来の電力系統に拠らない電力システムの提供を目的とするものであるから,仮に,「線路」に変圧器等が含まれることや,変電所,変圧器を用いて昇圧して送電することが技術常識であり,補正明細書の記載に,「電力需給線路W」として「送配電線網」を用いないことが明示されていないとしても,少なくとも「従来の電力系統」を前提とする電力設備が本願補正発明における「電力需給線路」に含まれると理解する根拠はない(なお,本願補正発明における「従来の電力系統」を前提とする電力設備の範囲の明確性や,そのような電力設備を含まない「電力需給線路」の構成の容易想到性は,本件の争点ではない。)。また,上記イのとおり,先願発明の「送配電線網」は,従来の電力系統として変電所等の電圧等の整合を行うための構\成を示すにとどまるものと解される。したがって,「電力需給線路」に「送配電線網」が含まれるとはいえず,上記i),ii)及びiv)の被告の主張は失当である。

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平成22(ワ)9102 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成24年01月26日 大阪地方裁判所

 特79条の先使用権が認められました。
 たしかに,上記各乙号証(乙15の2,乙20,26)は,いずれも作成名義が開示されていない。しかし,上記書証は,いわゆる処分証書とは異なり,被告が譲渡するBPEFについて,示差走査熱分析による融解吸熱最大を測定した結果を報告する文書であり,その文書の内容及び体裁自体から,その測定した者が作成した文書であることを十分に認めることができる。また,上記書証の作成者が特定されていないため,上記書証の作成者に対する反対尋問も実施することができない。しかし,これらの書証は,相互に内容を補強しているということができ,その後,提出された同様の測定結果(乙56の3,乙57の3,乙63。いずれも作成者が明記されており,原告は,真正に成立したことを争っていない。また,その信用性を疑わせる事情も見あたらない。)とも符合する。さらに,上記(1)イ(ア),同ウ(ア)及び(ウ)のとおり,上記各乙号証(乙15の2,乙20,26)に係るBPEFについては,上記書証が提出されてから相当期間を経た後,譲渡先の了解を得られたことから譲渡に係る書証が提出されており,このような提出の経過等も考慮すれば,これらの測定結果は,いずれも,実質的証拠力を認めることができ,上記(1)において,大阪ガス又は被告が製造に関与したBPEFが,いずれも本件特許発明2の技術的範囲に属することを認めることができる。他に,上記(1)の事実認定を左右する証拠はない。
 (3) 先使用の成否上記(1)のとおり,大阪ガスは,遅くとも平成11年3月からは本件特許発明2の技術的範囲に属する被告製品を製造していたこと,その後も,大阪ガス及びその事業を承継した被告は,複数の譲渡先に対し,反復,継続して被告製品を譲渡してきたこと,本件特許の優先日前に,被告らが委託するなどして製造した被告製品の数量は少なくとも合計約40トンを超えており,譲渡した数量も少なくとも約25トンを超えることが認められる。これらのことからすれば,被告は,本件特許出願の際現に日本国内においてその発明の実施である事業をしている者に当たると優に認めることができる。なお,原告は,被告がこれまで本件特許発明2の技術的範囲に属しないBPEFも製造していたことからすれば,被告において本件特許の優先日前には本件特許発明2に係る発明を完成していなかったし,事業又は事業の準備の程度には至っていなかったなどと主張する。しかしながら,大阪ガス又は被告が,本件特許発明2の技術的範囲に属しないBPEFを,被告製品と平行して製造・販売していたとしても,そのことのみをもって,被告が本件特許発明2に係る発明を完成していなかったとか,被告製品について本件特許発明2に係る発明を反復実施することができなかったなどと推認するべき事情は見当たらない。むしろ,上記(1)のような被告製品の製造数量や譲渡数量からすれば,被告らは,本件特許発明2について反復・継続して実施してきたものというほかない。また,大阪ガスが本件特許の優先日より約8年も以前から被告製品を製造してきたことなどからすれば,大阪ガスは本件特許発明2の内容を知らないで自らその発明をしたものであること,被告は,大阪ガスから被告製品に係る発明の内容を知得したものであることについても優に認めることができる。したがって,被告は,本件特許出願に係る発明の内容を知らないでその発明をした者から知得し,優先権主張に係る先の出願の際現に日本国内において本件特許発明2の実施である事業をしていたことが認められるから,本件特許発明2に係る本件特許権について,先使用による通常実施権を有するものというべきである。

◆判決本文

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平成22(ワ)5655等 不当利得返還請求事件 特許権 民事訴訟 平成24年01月19日 大阪地方裁判所

 無償実施することについて、黙示の許諾があったと認定されました。
 前提事実(2)イのとおり,被告は,原告P1から依頼され,その指導,監督の下,本件各歪計を製造し,原告P1が当時勤務していた名古屋大学及び同大学が共同研究協定を締結していた日本原子力研究開発機構瑞浪超深地層研究所に販売したことが認められる。また,争点1に係る【原告らの主張】によれば,これらの機関が本件各歪計を購入するに至ったことについても,原告P1の寄与が大きかったというのであり,原告P1は本件各歪計の検査と設置工事まで指導したというのである。さらに,原告P1本人の陳述によれば,名古屋大学在職中に本件特許権Aに係る実施料を受け取ることは可能\であったし,本件各歪計の販売価格等についても当時から認識していたというのである。これらのことからすれば,原告P1が被告との間で,本件各歪計の製造,販売に際し,本件特許A発明の実施料の支払等について協議する機会はあったことが明らかである。それにもかかわらず,原告P1は,当時,被告に対し,本件特許A発明の実施料の支払等を請求したことはなかったのであるから,このような原告P1の対応をみれば,少なくとも黙示的には,被告が本件各歪計を製造,販売するに当たり,本件特許A発明について無償で実施することを許諾していたものというべきである。原告らの主張によれば,原告P1は被告に本件特許A発明を自らの依頼により実施させておきながら,その時点では,実施料の請求をせず(その結果,販売先である自らの勤務する大学等に対する販売価格に転嫁されることはない。),その後になって 実施料の請求をしているということになるが,このような請求は,被告にとっては全くの予想外というべきである。\n

◆判決本文

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