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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

その他特許

平成21(行ケ)10097 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年11月19日 知的財産高等裁判所

 特許権の延長登録について、実施できなかった期間の認定は誤りであるとして 拒絶審決が取り消されました。  「本件特許発明のように,その実施について薬事法上の承認処分のような行政処分を要する特許発明については,上記処分を求める申請日から承認処分の告知を受けた日の前日までの期間は,特許法67条2項にいう「その特許発明の実施をすることができない期間」に該当すると解されるところ,前記(2)認定の事実関係からすると,原告から本件特許の通常実施権の設定を受けた日本チバガイギー社は,膵臓移植に関し,平成12年3月21日に本件承認処分の申請を行い,その後取下書を提出することなく,平成17年1月26日に承認処分を受けており,その間,日本チバガイギー社において免疫抑制剤たるシクロスポリンの販売を膵臓移植に関し断念すべき客観的事情は認められないのであるから,厚生労働省担当官が膵移植につき承認を当面行わないと告知した上記(2)vii)の平成13年4月27日から同省担当官が電話連絡したX)の平成16年11月9日までの間は,承認権者たる厚生労働省が保険診療との調整を理由に承認を保留していたにすぎないと認めるのが相当であり,その間は特許権者たる原告が特許発明を実施することができないことも明らかであるから,この期間を期間計算から除外するのは相当でないというべきである。これに対し被告は,日本チバガイギー社は平成16年12月1日付けで改めて2回目の承認申請を行っていること,不服審判請求後の平成19年6月12日付け(乙1)及び平成20年3月18日付け(乙2)の各意見書において1回目の申請が取り下げられた旨を原告が述べていること等を理由に,平成12年3月21日付けでなされた1回目の申\請は心移植についてのみ承認処分がなされた平成13年6月20日ころに取り下げられた旨主張するが,本件承認処分の取下げという重要な行為の認定に当たっては,原則として取下書の提出のような申請者の意思を確実に認定できる様式を要すると解するのが相当であることに鑑みると(本件不服審判請求後にその代理人弁理士が取下げがなされたことを前提とするかの如き意見書<乙1,2>を提出したとしても,あくまでも意見であるから,前記のような事実関係からすると,これをもって直ちに取下げがあったと認めることはできないし,原告が2回目の承認申\請を行ったことも,1回目の申請が既に取り下げられていることを前提としたものではなく,念のため注意的に申\請書を提出したものとみるべきである。),これを援用することができない。また被告は,前記(2)vii)の平成13年4月27日からX)の平成16年11月9日までの3年6月余の期間は,保健医療と調整のための待機期間であって安全性確保のために必要とされる期間ではない等とも主張するようであるが,保健医療との調整を要するという事情は承認権者たる厚生労働省側の事情であって,特許権者たる原告が本件承認処分を受けていないため本件特許発明を実施できないことに変わりはないから,上記3年6月余を前記期間計算から除外することも相当でない。

◆判決本文

関連事件はこちらに◆平成21(行ケ)10098 平成21年11月19日 知的財産高等裁判所

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平成20(ワ)33405 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年10月22日 東京地方裁判所 

 和解条項違反ではあるが損害が生じていないとして、損害賠償請求が棄却されました。
。  「前記2(4)認定のとおり,被告が本件和解成立後の平成19年7月21日にヤマト自動車に対し,平成20年7月31日にフジックスに対し,それぞれ被告物件A1台(合計2台)を販売したことは,本件和解の和解条項1項に違反する債務不履行に当たるものである。しかし,前記2(1)イ及び(2)イ認定のとおり,被告によるヤマト自動車及びフジックスに対する被告物件Aの上記販売は,原告がエヒメマシン及びフジックスに対し被告から被告物件Aを取り寄せることを依頼し,その依頼を受けたエヒメマシンから発注を受けたヤマト自動車及びフジックス自らが被告物件Aを被告に発注し,これに基づいて被告がヤマト自動車及びフジックスに販売したものであって,この一連の取引によって原告が当該被告物件A(合計2台)を取得したものである。そうすると,被告によるヤマト自動車及びフジックスに対する被告物件Aの上記販売によって,原告がヤマト自動車及びフジックスに対する原告製品の販売の機会を奪われたものと評価することができないことは明らかである。したがって,被告による上記債務不履行によって,原告にその主張する逸失利益相当の損害が生じたものと認めることはできない。」

◆判決本文

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◆平成20(行ケ)10476 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年05月27日 知的財産高等裁判所

 特許権の延長登録を認めなかった審決が取り消されました。裁判所は下記を付言しました。
  「事案にかんがみ,再開されるべき審判手続における審理に資するよう,特許法67条2項及び67条の3第1項1号の解釈について,当裁判所の見解を付言する。・・・そうすると,「その特許発明の実施」に「政令で定める処分」を受けることが必要であったというためには,「政令で定める処分」を受けることによって禁止が解除された行為と「その特許発明の実施」に当たる行為(例えば,物の発明にあっては,その物を生産等する行為)に重複部分があることが必要であるといえる。換言すれば,「政令で定める処分」を受けることによって禁止が解除された行為と「その特許発明の実施」に当たる行為に重複している部分がなければ,「その特許発明の実施」に「政令で定める処分」を受けることが必要であったとは認められないことになる。イ「政令で定める処分」を受けることによって禁止が解除された行為と「その特許発明の実施」に当たる行為に重複している部分があるか否かを判断するには,まず,「政令で定める処分」が薬事法14条所定の医薬品の製造の承認や医薬品の製造の承認事項の一部変更に係る承認である場合には,当該承認を受けることによって禁止が解除された医薬品の製造行為が「その特許発明の実施」に当たる行為であるか否かを検討すべきである。なぜなら,薬事法14条所定の承認を受けることによって禁止が解除された医薬品の製造行為が「その特許発明の実施」に当たる行為である場合には,特許発明の当該実施行為をすることは,薬事法により禁止されていたということができるからである。ウ 一方,特許法68条の2は,「特許権の存続期間が延長された場合(第六十七条の二第五項の規定により延長されたものとみなされた場合を含む。)の当該特許権の効力は,その延長登録の理由となつた第六十\七条第二項の政令で定める処分の対象となつた物(その処分においてその物の使用される特定の用途が定められている場合にあつては,当該用途に使用されるその物)についての当該特許発明の実施以外の行為には,及ばない。」と規定している。上記規定の趣旨は,特許権の存続期間が延長された場合の当該特許権の効力は,その特許発明の全範囲に及ぶものではなく,「政令で定める処分の対象」となった「物」(その処分においてその物に使用される特定の用途が定められている場合にあっては,当該用途に使用されるその物)についてのみ及ぶというものである。これは,特許請求の範囲がしばしば上位概念で記載されるため,同記載によって特定される特許発明の範囲も「政令で定める処分」を受けることによって禁止が解除された範囲よりも広いことが少なくないところ,「政令で定める処分」を受けることが必要なために特許権者がその特許発明を実施することができなかった範囲(「物」又は「物及び用途」の範囲)を超えて,延長された特許権の効力が及ぶとすることは,特許発明の実施が妨げられる場合に存続期間の延長を認めるという特許権の存続期間の延長登録の制度趣旨に反することとなるからであると解される。ところで,特許権の存続期間が延長された場合の当該特許権の効力が,「政令で定める処分の対象」となった「物」(又は「物」及び「用途」)についてのみ及ぶとする制度の下においては,特許権の存続期間満了後に当該特許発明を実施しようとする第三者に対し,不測の不利益を与えないという観点からの考慮が必要であることはいうまでもない。しかし,そのような観点から,「政令で定める処分」の対象となった「物」(又は「物」及び「用途」)が,客観的な要素によって特定され,かつ,「特許請求の範囲」,「発明の詳細な説明」の各記載及び技術常識に基づいて,十分に認識,理解できることが必要となるとはいい得ても,特許請求の範囲によって明確に記載されていることが必要となるとはいえない。したがって,「政令で定める処分の対象」となった「物」(又は「物」及び「用途」)が,特許請求の範囲に明確に記載されていないという理由で,特許権の存続期間の延長登録の出願を拒絶することは,許されないものというべきである。」

◆平成20(行ケ)10476 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年05月27日 知的財産高等裁判所

関連判決はこちらです
    ◆平成20(行ケ)10477
    ◆平成20(行ケ)10478

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◆平成20(行ケ)10460 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年05月29日 知的財産高等裁判所

特許権の存続期間延長登録について、「特許法68条の2にいう「政令で定める処分の対象」となった「物」を「有効成分」であるとしてした審決の判断には,誤りがある」として、拒絶審決が取り消されました。
 「特許権の存続期間の延長登録の制度は,特許発明を実施する意思及び能力があってもなお,特許発明を実施することができなかった特許権者に対して,「政令で定める処分」を受けることによって禁止が解除されることとなった特許発明の実施行為について,当該「政令で定める処分」を受けるために必要であった期間,特許権の存続期間を延長するという方法を講じることによって,特許発明を実施することができなかった不利益の解消を図った制度であるということができる。そうとすると,「その特許発明の実施に政令で定める処分を受けることが必要であった」との事実が存在するといえるためには,i)「政令で定める処分」を受けたことによって禁止が解除されたこと,及びii)「政令で定める処分」によって禁止が解除された当該行為が「その特許発明の実施」に該当する行為(例えば,物の発明にあっては,その物を生産等する行為)に含まれることが前提となり,その両者が成立することが必要であるといえる。以上の点を前提として整理する。特許法67条の3第1項1号は,「その特許発明の実施に・・・政令で定める処分を受けることが必要であつたとは認められないとき。」と,審査官(審判官)が延長登録出願を拒絶するための要件として規定されているから,審査官(審判官)が,当該出願を拒絶するためには,i)「政令で定める処分」を受けたことによっては,禁止が解除されたとはいえないこと,又は,ii)「『政令で定める処分』を受けたことによって禁止が解除された行為」が「『その特許発明の実施』に該当する行為」に含まれないことを論証する必要があるということになる(なお,特許法67条の2第1項4号及び同条2項の規定に照らし,「政令で定める処分」の存在及びその内容については,出願人が主張,立証すべきものと解される。)。換言すれば,審決において,そのような要件に該当する事実がある旨を論証しない限り,同号所定の延長登録の出願を拒絶すべきとの判断をすることはできないというべきである。(2) 本件事案について上記(1)の観点から,本件について,本件先行処分の対象となった先行医薬品と本件発明との関係について検討する。本件においては,第2「当事者に争いのない事実等」記載のとおり,原告は,i)平成17年9月30日,本件医薬品について,本件処分を受け,同処分によって,本件医薬品の製造等に関する禁止が解除されたこと,また,ii)本件処分によって禁止が解除された行為が,本件発明(本件発明15を除く。)の実施に当たる行為を含んでいることについて,先行的に主張していることが認められる。そうすると,上記原告の先行的主張が肯定される場合には,特許法67条の3第1項1号所定の「その特許発明の実施に・・・政令で定める処分を受けることが必要であつたとは認められないとき。」との延長登録出願を拒絶する要件を充足しないことになる。ところで,本件においては,本件処分の前である平成15年3月14日に,先行医薬品を対象とする本件先行処分がされている。しかし,本件先行処分の対象となった先行医薬品は,本件発明の技術的範囲に含まれないこと,本件先行処分を受けた者が,本件特許権の特許権者である原告でもなく,専用実施権者又は登録された通常実施権者でもないことは,当事者間に争いがなく,本件先行処分によって禁止が解除された先行医薬品の製造行為等は本件発明の実施行為に該当するものではない。本件においては,本件先行処分が存在するものの,本件先行処分を受けることによって禁止が解除された行為が,本件発明の技術的範囲に属し,本件発明の実施行為に該当するという関係が存在するわけではない。したがって,本件先行処分の存在は,本件発明に係る特許権者である原告にとって,本件発明の技術的範囲に含まれる医薬品について薬事法所定の承認を受けない限り,本件発明を実施することができなかった法的状態の解消に対し,何らかの影響を及ぼすものとはいえない。本件先行処分の存在は,本件発明の実施に当たり,「政令で定める処分」(本件では薬事法所定の承認)を受けることが必要であったことを否定する理由とならない。」

◆平成20(行ケ)10460 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年05月29日 知的財産高等裁判所

関連判決はこちらです
    ◆平成20(行ケ)10459
    ◆平成20(行ケ)10458

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◆平成18(ワ)11429 特許権侵害差止等 特許権 民事訴訟 平成21年04月07日 大阪地方裁判所

 原実施権者に対する損害賠償請求事件です。1)特許請求の範囲の用語の解釈、2)均等判断、3)補正された場合の通知義務なとが争われまれした。
  争点1)
 「原告は,本件明細書の発明の詳細な説明には,熱伝導性無機フィラーの全量がカップリング処理されていなければ本件各特許発明の効果が得られないとは記載されていないから,構成要件Bの「熱伝導性無機フィラー」全量がカップリング処理されることまで要求されていないとも主張する。確かに,本件明細書では,熱伝導性無機フィラーの全量がカップリング処理されていなければ本件各特許発明の効果が得られないとまでは明示的に記載されていない。しかし,他方で,本件明細書には,未処理の熱伝導性無機フィラーを加えてもよいことについて何らの開示も示唆もなく,実施例にも熱伝導性無機フィラーの全量がカップリング処理されたものだけが開示されており,未処理の熱伝導性無機フィラーを加えた場合にも,そうでない場合と同様の効果が得られることについて何ら記載されていない。むしろ,前記ウのとおり,未処理の熱伝導性無機フィラーは,その表\面が疎水性の長鎖アルキル基に全く覆われていないのであるから,これを加えた場合に本件各特許発明と同様の効果が得られるとは容易に想到できないと考えられる。この点,原告は,自ら実験した結果(甲6)を基に,熱伝導性無機フィラーの半量を処理した場合であっても,本件各特許発明の効果を奏するに十分であると主張する(原告第3準備書面15頁6行〜16頁9行)。しかし,特許請求の範囲の解釈(均等侵害の成否は別論)において,明細書の記載のほか,出願経過及び公知技術を参しゃくすることを超えて,当業者にとって自明でない実験結果を考慮することはできないというべきであるから,同実験結果の信用性にかかわらず,これを根拠とすることはできない。・・・以上からすると,本件補(ウ) 正における原告の主観的意図はともかく,少なくとも構成要件Bを加えた本件補正を外形的に見れば,カップリング処理された熱伝導性無機フィラーの体積分率を限定したものと解するのが相当であり,自らかかる補正をしておきながら,後になってこれと異なる主張をすることは,本件補正の外形を信用した第三者の法的安定性を害するものであり,禁反言の法理に抵触し許されないというべきである。
 争点2)
 「そうすると,特許権者において特許発明の技術的範囲に属しないことを承認したといった主観的な意図が認定されなくても,第三者から見て,外形的に特許請求の範囲から除外されたと解されるような行動をとった場合には,第三者の予測可能\性を保護する観点から,上記特段の事情があるものと解するのが相当である。そこで,かかる解釈を前提に,本件において上記特段の事情が認められるかどうかについて検討する。・・・前記1 において認定したとおりであり,本件補正をするに当たっての原告の主観的意図はともかく,少なくとも構成要件Bを加えた本件補正を外形的に見れば,カップリング処理された熱伝導性無機フィラーの体積分率を限定したものと解される。したがって,原告は,熱伝導性無機フィラーの体積分率が「40vol%〜80vol%」の範囲内にあるもの以外の構成を外形的に特許請求の範囲から除外したと解されるような行動をとったものであり,上記特段の事情に当たるというべきである。なお,本件拒絶理由通知は,単に組成物に係る発明だからという理由で,その組成比の記載がない本件出願は,特許法36条6項2号に規定する要件を充足しないと判断しているところ,この判断の妥当性には疑問の余地がないではない。しかし,第三者に拒絶理由の妥当性についての判断のリスクを負わせることは相当でなく,原告としても,単に熱伝導性無機フィラーの総量を定める意図だったというのであれば,その意図が明確になるような補正をすることはできたはずであり,それにもかかわらず,自らの意図とは異なる解釈をされ得るような(むしろそのように解する方が自然な)特許請求の範囲に補正したのであるから,これによる不利益は原告において負担すべきである。(3) 以上により,GR−b等について,「対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もない」ことという要件を充たさないから,これらを本件各特許発明と均等なものとして,その技術的範囲に属すると認めることはできない。」
 争点3)
 「原告は,信義則上,本件補正を通知する義務を負っていたと主張するところ,上記 イ・ウのとおり,出願段階では補正が認められて特許されるものかどうかが未だ確定しておらず,原告が本件補正書を提出したというだけでは直ちに本件実施契約上の権利義務に影響を及ぼすものではないと解すべきであるから,そもそも補正の事実を通知する実益に乏しく,信義則上,かかる義務を認めることはできない。他方で,補正によって特許請求の範囲が減縮された上で特許査定され,特許権が発生した場合には,本件実施契約上の権利義務にも影響を及ぼすことになるから,減縮の事実を被許諾者に通知する実益があることは否定できない。また,本件実施契約では,まず,被告において自己の販売する製品が「許諾製品」に該当するかどうかを判断すべきであるから,その判断に当たって特許請求の範囲が減縮されたことは重要な情報といえる。したがって,少なくとも,被告から本件出願の経過等について問合せがされた場合には,原告はこれに誠実に応答すべき信義則上の義務があったというべきである。しかし,さらに進んで,特許請求の範囲が減縮されたことについて,被告からの問合せの有無にかかわらず原告から積極的にこれを通知すべき義務があったか否かについては,これを容易に肯定することはできない。なぜなら,本件実施契約書においてかかる通知義務の存在を窺わせる条項は全く見当たらず,同契約書外においても通知義務を認める旨の合意の存在を推認させる具体的事情は何ら認められないのであるから,本件において通知義務を認めるということは,実施許諾契約一般において,これについての明示又は黙示の合意の有無にかかわらず,許諾者たる特許権者に信義則上の通知義務を負わせることになりかねないからである。もともと,出願段階で許諾を受けようとする者にとって,契約締結後の補正により特許成立段階で特許請求の範囲が減縮されることは,当然に想定できる事柄であり,減縮があった場合に許諾者から通知して欲しいというのであれば,契約交渉段階でその旨の同意を取り付けて契約書に明記しておくべきといえる(かかる交渉を経ずに許諾者一般にかかる義務を負わせることは,むしろ許諾者に予期しない不利益を被らせるおそれがある。)。また,被許諾者は,許諾者に特許請求の範囲を問い合わせたり(少なくとも許諾者には問合せに応答すべき義務がある。),特許公報等を参照するなどして,特許請求の範囲がどのようになったか調査することができるのである。上記のような事情を併せ考慮すれば,許諾者たる特許権者一般に,信義則上,特許請求の範囲が減縮された場合の通知義務を認めることはできないというべきであり,本件においても,原告に,信義則上かかる通知義務があったと認めるに足りる事情はない(なお,上記は特許請求の範囲が減縮された場合を前提としており,拒絶査定不服審判における不成立審決が確定した場合や,特許無効審判における無効審決が確定したような場合における通知義務については別途考慮を要するところである。)。」

◆平成18(ワ)11429 特許権侵害差止等 特許権 民事訴訟 平成21年04月07日 大阪地方裁判所
  

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