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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

分割

平成26(ネ)10084  補償金請求控訴事件  実用新案権  民事訴訟 平成26年11月26日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 非常にレアなケースです。旧実案についての分割出願についての補償金請求権が、出願日からの制限により既に存続期間経過しているとして認められませんでした。
 控訴人は,これに対し,1)補償金請求権と実用新案権は法的性質が異なる別個の権利であること,2)実用新案権の設定登録が有効にされた場合に実用新案権の存続期間が満了したことを理由に補償金請求権の行使を否定する根拠規定を欠くこと,3)分割出願した考案は,原出願とは別個の手続の対象とされており,実用新案権の存続期間が満了していても出願公開の対象となり,その出願公開により新規に公開がされる以上,公開に対する代償は公開の都度個別に行われる必要が存すること,4)仮に実用新案権の存続期間満了後は登録によっても,実用新案権のみならず,補償金請求権をも認められないとすれば,存続期間が満了した考案につき,そもそも分割出願を認める意味はなく,存続期間満了後は分割自体を認めないのが合理的であるが,分割出願の時期的要件を定める旧実用新案法9条1項,特許法44条1項は,存続期間満了後の分割出願につき何ら制限していないこと,5)本件実用新案権の設定登録が存続期間満了後であったことにつき控訴人に帰責性はないことなどを挙げて,控訴人は,被控訴人に対し,被控訴人による本件考案の実施について旧実用新案法13条の3第1項に基づく補償金請求権を有している旨主張する。 償金請求権は,法が特に出願人に認めたものであり,実用新案権とは別個の権利であるが,上記補償金請求権に係る考案は,登録実用新案として保護を受けるべき考案であることを前提としているといえるから,補償金請求権を取得できる期間は,実用新案権の存続期間の範囲内であると解される。 また,本件出願は,その現実の出願日である平成11年12月20日の時点で,本件考案が実用新案登録された場合であっても既に実用新案権の存続期間は満了し,実用新案権を行使することができなかったものであるから,第三者によって本件考案が実施されたとしても出願人である控訴人が不利益を被る関係にあるものと認めることはできないものであって,本件出願の出願公開により,保護を受けるべき考案が公開されたものとはいえず,控訴人が不利益を被ることはおよそ想定し得ないものであり,本件出願の出願公開に基づいて,控訴人に旧実用新案法13条の3第1項の補償金請求権を認める合理性は認められない。 したがって,控訴人が挙げる1)ないし5)の諸点は,いずれも控訴人に補償金請求権を認める根拠となるものではないから,控訴人の上記主張は,採用することができない。 以上によれば,控訴人の請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。

◆判決本文

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平成25(行ケ)10070 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成26年02月26日 知的財産高等裁判所

 分割要件を満たしていないとした審決が維持されました。
 前記2のとおり,原出願発明では,内側周壁について特定されているのみならず,原明細書にも,内側周壁がない構成は記載されていない。しかも,原明細書段落【0045】には,原出願発明の第1実施の形態が内側周壁を有することを前提とした上で,「マグネット13が対向する開口部4の縁4aのみに内側壁3gを形成しても良い」と記載されている。当該記載は,少なくともマグネットが対抗する開口部の縁には内側壁又はこれに対応する内側周壁を形成することを必須とする旨の記載であるから,原明細書には,磁路を形成するために内側周壁を必須の構\成とする発明が記載されているというべきである。そうすると,内側周壁を有しないレンズ駆動装置に係る発明を含む本願発明は,原明細書に記載されているということはできない。また,内側周壁を有するレンズ駆動装置は,内側周壁の厚さ,外側周壁とコイルとの間隔分が寸法上余計に必要となることが明らかであるから,内側周壁を有しない構成を採用することにより,レンズ駆動装置としての寸法を更に小さくすることができるという技術上の意義を有するものである(この点については,原告らも,前記第3の1(2)アのとおり,従来,当業者は,常に磁気回路上のメリットと,小型化及びコストアップに代表されるデメリットとを比較して,内側周壁や内側壁を設けるか否かを選択し,レンズ駆動装置を設計しているものであると主張している。)。そうすると,レンズ駆動装置としての寸法を更に小さくすることができるという技術上の意義を有する,内側周壁を有しないレンズ駆動装置に係る本願発明は,磁路を形成するために内側周壁を必須の構\成とする発明に関する原明細書の記載から自明であるということもできない。以上によれば,本願は,分割要件を充足するものではない。
オ 原告らは,原明細書において,特定事項A,特定事項B及び特定事項Cの構成が開示されているから,本願発明は原明細書に記載されているなどと主張する。前記2(7)の原明細書における原出願発明の第1実施形態に関する記載(特に,別紙2の【図1】〜【図5】,【図9】,段落【0029】参照)によれば,特定事項A,特定事項B及び特定事項Cの構成は,その間隔の関係についてみれば,原明細書の記載から自明であるということができる。しかしながら,複数の円弧状壁部間に設けられた上辺,下辺及び両側辺に位置する外側周壁の内周側面と開口部の周縁との間の間隔に係る特定事項A,ベースの各角部に対応する位置に形成された円弧状壁部からなる外側周壁の内周側面と前記開口部の周縁との間の間隔に係る特定事項B及びベースの各角部に対応する位置に形成された円弧状壁部からなる外側周壁の内周側面と開口部の周縁との間の間隔よりも,複数の円弧状壁部間に設けられた上辺,下辺及び両側辺に位置する外側周壁の内周側面と開口部の周縁との間の間隔の方が狭いヨークという特定事項Cは,いずれも内側周壁とは無関係の事項を特定するものにすぎず,内側周壁を有しないレンズ駆動装置に係る本願発明が,内側周壁を必須の構\成とする発明に関する原明細書の記載から自明であるということができない以上,特定事項A,特定事項B及び特定事項Cの構成が原明細書の記載から自明であるからといって,分割要件を充足するものということはできない。\n

◆判決本文

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平成23(ワ)27102 特許権侵害行為差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成26年01月24日 東京地方裁判所 

 FRAND宣言した特許についての侵害事件です。地裁は、「特許発明の目的や技術的意義に反しないからという理由だけで拡張して解釈するもの」として、非侵害と認定しました。
 分割出願においては,分割出願に係る発明の技術的事項が原出願の特許請求の範囲,明細書又は図面に記載されていることを要し(特許法44条1項参照),分割出願において,原出願からみて新たな技術的事項を導入することは許されないのであるから,分割出願の特許請求の範囲の文言は,原出願の特許請求の範囲,明細書又は図面に記された事項の範囲外のものを含まないことを前提にしていると解するのが合理的であり,そうすると,分割出願の特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するにおいては,原出願及び分割出願の特許請求の範囲及び明細書等の全体を通じて統一的な意味に解釈すべきである。したがって,本件においても,本件発明の技術的範囲を確定するに当たっては,原出願に係る明細書である原出願翻訳文の記載についても参酌することが相当である。
・・・
上記のとおり,原出願翻訳文の「特許請求の範囲」及び「発明の利点」には,アクセス閾値が,アクセス権限データに含まれて加入者局に伝送されること,加入者局において,アクセス権限データにアクセス閾値が含まれているか否かを検査すること及びアクセス閾値がランダム数又は擬似ランダム数と比較されることが記載されている。特に,上記「発明の利点」の段落【0003】では,原出願に記載された発明に係るアクセスコントロールにおいては,単にアクセス閾値を伝送すればよいため,情報信号を伝送するのに最小の伝送容量しか必要としないことが記載されており,そこで伝送されるものが「アクセス閾値」であることが明記されている。他方,「アクセス閾値ビット」の用語は,原出願翻訳文の「特許請求の範囲」及び明細書の「発明の利点」の中には記載されておらず,「ビット」に関する事項としては,請求項7において,アクセス権限データがビットパターンとして伝送されることが開示されているのみである。また,原出願翻訳文の明細書中の実施例においては,「アクセス閾値ビット」について,アクセス閾値がアクセス閾値ビットから検出されるものであることが記載されており,その更なる具体例として,アクセス閾値を2進符号化したものをアクセス閾値ビットとすること,及び,アクセス閾値ビットが「1 000 」である場合に,アクセス閾値として「8」の値が得られることが開示されているが,「アクセス閾値ビット」が上記実施例に記載された以外の技術的意義を有するものであることを開示し,又は示唆する記載は見当たらない。なお,原出願翻訳文の全体を通して,アクセス閾値がアクセス閾値ビットから「求め」られるものであること(本件発明の構成要件D)については,記載がない。原出願翻訳文の「特許請求の範囲」及び「発明の利点」におけるこれらの記載に鑑みれば,原出願翻訳文に記載された発明において,「アクセス閾値」とは,加入者局にRACHへのアクセス権限をランダム分配するための閾となる値として,シグナリングチャネル(BCCHとして構\成することができる。)を介して加入者局(移動局として構成することができる。)に対して伝送される値そのものであると解するのが相当である。
エ 検討
(ア) 上記ウのとおり,原出願翻訳文に記載された発明においては,「アクセス閾値」とは,BCCHを介して移動局に伝送される値そのものを意味すると解されるところ,このように解釈した場合,BCCHを介して伝送されるデータがビット形式で表記されていることが技術常識であることからすれば,その「アクセス閾値」の値は,BCCHを介して伝送するためにビット形式に置き換えられることになるが,そのように「アクセス閾値」の値を2進数表\記に置き換えたビットを,「アクセス閾値ビット」と表現することは,「アクセス閾値ビット」との用語から通常把握される意義にも合致するということができる。また,本件明細書等及び原出願翻訳文における実施例の記載についても,「アクセス閾値ビットにより,アクセス閾値は2進符号化され」ることやアクセス閾値ビット「1000」からアクセス閾値「8」が得られるとの実施態様など,上記解釈に沿う記載がある一方で,上記解釈とは異なる実施形態を具体的に開示し,又は示唆する記載は見当たらない。そうすると,本件発明における「アクセス閾値」及び「アクセス閾値ビット」の各用語の意義については,「アクセス閾値」とはBCCHを介して伝送されて,移動局において閾値として用いられる特定の値であり,「アクセス閾値ビット」とは,そのアクセス閾値を,BCCHを介して伝送するためにビット形式で表\記したものと解するのが相当である。(イ) 「アクセス閾値」及び「アクセス閾値ビット」の技術的意義がそれぞれ上記のように解されることから,本件発明の構成要件Dの「アクセス閾値ビットからアクセス閾値を求め」ることは,移動局において閾値として用いられる特定の値が,基地局からBCCHを介して移動局に伝送される際にビット形式に置き換えられるところ,移動局において,このビット形式で表\現されたデータ(アクセス閾値ビット)を受信して,このビット形式のデータから閾値となる上記の特定の値(アクセス閾値)を得ることを意味するものと解される。そうすると,例えば,ある特定の値(アクセス閾値)をビット形式に置き換えたデータ(アクセス閾値ビット)を受信した移動局が,そのビット形式のデータから元の値(アクセス閾値)を得ることは,構成要件Dの「アクセス閾値ビットからアクセス閾値を求め」ることに当たるが,その元の値を更に関数などに代入することによって算出される別の値は,それ自体がBCCHを介して伝送されたものでない以上,本件発明の「アクセス閾値」に当たるということはできないというべきであり,それゆえ,そのような別の値を求めることは,「アクセス閾値ビットからアクセス閾値を求め」ることには該当しないと解するのが相当である。
(2) 原告の主張について
この点に関して原告は,構成要件Dは,「アクセス閾値」が「アクセス閾値ビット」から「求められる」ことを要求しているだけであるから,アクセス閾値はアクセス閾値ビットから特定されれば足り,例えば,アクセス閾値ビットを関数に代入して別の値を求めるような場合も,「アクセス閾値ビットからアクセス閾値を求め」ることに当たると主張する。確かに,構\成要件Dは,アクセス閾値がアクセス閾値ビットから求められることだけを規定しており,「求め」との用語自体からは,求める方法が特段限定されていることは読み取れないが,他方,構成要件Dに規定される「アクセス閾値」の用語は,それ自体がBCCHを介して伝送される値であると解されるべきことは,前記(1)エのとおりである。そうすると,構成要件Dが,アクセス閾値ビットからアクセス閾値を求めることしか規定していないとしても,そもそも「アクセス閾値」が,上記のとおりBCCHを介して伝送されるべき値として規定されている以上,BCCHを介して伝送された値を更に関数に代入して得られる別の値が「アクセス閾値」に該当しないことは明らかである。したがって,「求める」について特段の限定がないことを前提としたとしても,アクセス閾値ビットから「アクセス閾値と異なる別の値」を求めることが構\成要件Dに合致するというに等しい原告の上記主張は採用することができない。イ 原告は,移動局においてアクセス閾値ビットからアクセス閾値を求めて,当該アクセス閾値の評価に依存してRACHへのアクセス制限の有無が決定されることによって,ネットワーク側においてRACHへのアクセス権限を移動局に分配することが可能になるとの本件発明の目的並びに「アクセス閾値」及び「アクセス閾値ビット」の技術的意義に照らせば,アクセス閾値ビットに基づいてこれに対応するアクセス閾値が特定されれば足りるのであって,いかなる規則に基づいてアクセス閾値ビットからアクセス閾値が特定されるかは問題でないと主張する。しかし,特許発明の技術的範囲は,特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならず,その特許請求の範囲に記載された用語の意義は明細書の記載及び図面を考慮して解釈されなければならないところ(特許法70条1項,2項),本件特許の特許請求の範囲及び明細書等の記載を考慮した場合に,本件発明における「アクセス閾値」が,例えば,「アクセス閾値ビット」で表\現された値を更に関数に代入することによって特定される別の値であってもよいと解することができないことは,前記(1)エのとおりである。原告の主張は,「アクセス閾値」及び「アクセス閾値ビット」の用語の意義を,特許請求の範囲及び明細書等の記載から導き出される解釈を超えて,当該特許発明の目的や技術的意義に反しないからという理由だけで拡張して解釈するものであって相当でないから,採用することができない。
・・・
カ このほか,原告の提出にかかる平成25年(2013年)1月28日付け意見書には,原出願翻訳文(同意見書では「本件親出願当初明細書等」と表記されている。)の記載を基にしても,アクセス閾値ビットがアクセス閾値そのものを2進数表\記したものに限定されないとの意見が述べられている。同意見書は,原出願翻訳文に記載されている発明がRACHにおいて複数の移動局からの信号が衝突することを避けることを目的としていること,アクセス閾値が基地局から送信され,アクセス閾値の評価に依存してアクセスが許容されることによって,アクセス権限が移動局の間で分散されること,デジタル通信システムにおいては,アクセス閾値は通信プロトコルの一構成要素としてビットの形式で送信されることが当然であるから,アクセス閾値ビットは基地局がアクセス閾値を明示するビットであることなどを挙げて,このような発明の目的やコンセプトからすると,アクセス閾値を規定するアクセス閾値ビットとしてどのようなビットの構\成を用いるかは特に限定がないとする。しかし,原告が主張するような発明の目的やコンセプトだけを根拠として,特許請求の範囲に記載された用語の意義を拡張して解釈することが相当でないことは,前記イのとおりである。また,同意見書は,平成11年(1999年)当時,通信チャネルのアクセス制御の設計において,どのようなビットの構成(ビット位置の割当てとパラメータ値の割当て)を採用するかは,通信プロトコル設計の目的やコンセプトとは切り離して考えることができ,ビット構\成はプロトコルによって自由に定めることができたとするが,技術的にそのような自由な設計の可能性があったとしても,原出願翻訳文に記載された発明において,特許出願人が,あえて「アクセス閾値」をBCCH上で送信されるべき値として規定している以上,それと異なる可能\性があったことを理由として,実際に用いられた用語の意義を拡張して解釈すべきことにはならない。さらに,同意見書は,原出願翻訳文の段落【0027】等の「アクセス閾値を送信する」との表現について,アクセス閾値ビット以外の要素を考慮してアクセス閾値の値を調整する場合も含めてこのように表\現することは,特に不自然ではなく,平成11年(1999年)当時,通信チャネルのアクセス制御の設計において,制御の基本的な仕組みを定めた上で,様々な条件を追加的に考慮してきめの細かい制御を行う目的で,アクセス閾値ビット以外の要素を考慮してアクセス閾値の値を調整することは普通に考えることであったとする。しかし,そのような解釈に従えば,BCCHを介して送信されるアクセス閾値ビットによって表現される値は,アクセス閾値を求める上で考慮されるべき複数の要素のうちの一つにすぎないことになるが,そのように「アクセス閾値」を求めるための複数の考慮要素の一つをビットで表\現したものを,あえて「アクセス閾値ビット」と呼称することが用語の用い方として自然であるとの解釈は,直ちに首肯し難く,しかも,アクセス閾値の複数の考慮要素の一つにすぎない値をビット形式で送信することが,「アクセス閾値を送信する」ことと同義であるとか,「アクセス閾値を送信する」という文言から通常理解される技術内容であるということもできない。さらにいえば,同意見書が,アクセス閾値の値の調整にアクセス閾値ビット以外の要素を考慮できるか否かを論じる上では,アクセス閾値ビットがアクセス閾値をビット形式に置き換えたものに限られないことを前提としているところ,そのような前提を採ることができないことは,前記(1)のとおりである。

◆判決本文

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