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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

分割

平成24(行ウ)383 特許分割出願却下処分取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年12月06日 東京地方裁判所

 H19/4/1以前にした特許出願についての、特許査定後の分割出願が適法かが争われましたが、裁判所は却下処分は適法と判断しました。
 旧44条1項は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる期間内,すなわち,特許をすべき旨の査定の謄本の送達前(特許法17条の2第1項)に限って分割出願をすることができるとしていたが,新44条1項は,これに加え,特許をすべき旨の査定の謄本の送達があった日から30日以内であれば分割出願をすることができることとした。そして,平成18年改正法附則3条1項は,同法による改正に伴う経過措置として,「改正後の特許法…第44条…の規定は,この法律の施行後にする特許出願について適用し,この法律の施行前にした特許出願については,なお従前の例による」と規定し,前段で改正法が適用される場合を特定し,後段でそれ以外の場合(すなわち,改正法が適用されない場合)を定めている。本件出願は,平成22年6月8日にした本件原出願からの分割出願であり,本件原出願は,平成12年2月15日にした本件原々出願からの分割出願であるところ,本件原出願は,新44条2項により,平成18年改正法の施行日(平成19年4月1日)前である平成12年2月15日にしたものとみなされるから,本件出願は,同法附則3条1項前段の「この法律の施行後にする特許出願」には該当せず,後段の「この法律の施行前にした特許出願」に該当するものとして,「なお従前の例による」ことになる。そこで,「従前の例」,すなわち,従前の特許法44条1項の適用関係につきみるに,平成18年改正法による改正前に特許法44条1項に関する改正をした直近の法律は,平成14年改正法であるが,同法附則3条1項は,施行日(平成15年7月1日)以後にする特許出願であって,特許法44条2項の規定により施行日前にしたものとみなされるものについては,同改正法による改正後の特許法の規定(44条1項に関しては,旧44条1項がこれに当たる。)が適用されると規定していたから,本件出願には旧44条1項が適用される。そうすると,本件原出願から分割出願(本件出願)をすることができるのは,本件原出願についての特許をすべき旨の査定の謄本の送達前に限られる。しかるに,原告が本件出願をしたのは,本件原出願についての特許査定の送達がされた平成23年1月28日より後の同年2月10日であるから,本件出願は,旧44条1項の定める出願期間経過後にされたもので,不適法である。 20121214105700

◆判決本文

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平成23(行ケ)10391 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年09月27日 知的財産高等裁判所

 分割要件を満たしているとした審決が、取り消されました。
 審決は,【0047】に「フォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング部やモールド部材の表面側から発光素子に向かってフォトルミネセンス蛍光体の分布濃度を高くした場合は,外部環境からの水分などの影響をより受けにくくでき,水分による劣化を防止することができる」との記載に関して,同記載の蛍光体が本件組成に限られるものではないことは,当業者が容易に理解できるとして,本件発明が原出願の明細書に記載されていると判断した。(4) しかし,審決の上記判断には,以下のとおりの誤りがある。すなわち,ア 【0047】は,同一段落中において,「コーティング部やモールド部材の表面側から発光素子に向かってフォトルミネセンス蛍光体の分布濃度を高く」する構\成(以下「下部構成」という。)と「フォトルミネセンス蛍光体を,発光素子からモールド部材等の表\面側に向かって分布濃度が高くなるように分布させる」構成(以下「表\面構成」という。)の相反する2つの構\成に区別した上で,下部構成では「水分による劣化を防止することができ」,表\面構成では「発光素子からの発熱,照射強度などの影響をより少なくでき」ると説明している。さらに,【0047】に続く【0048】・【0049】には,本件組成に属する蛍光体を用いる実施形態1について,「高効率でかつ十\分な耐光性を有するので,該蛍光体を用いることにより,優れた発光特性の発光ダイオードを構成できる」こと,「ガーネット構\造を有するので,熱,光及び水分に強く,…励起スペクトルのピークを450nm付近にすることができる」ことが記載されている。そして,【0101】以下の記載及び【図13】には,以下の実験結果について説明がされている。
・・・
以上のとおり,下部構成を採用する等同一条件の下での実験において,本件組成に属する蛍光体を使用した場合(実施例1)では,水分による劣化を防止できるとの効果が得られたのに対し,本件組成に属しない蛍光体を使用した場合(比較例1)では,高温多湿条件下で早期劣化の結果が生じ,その結果に相違が生じた。イ 【0101】の記載及び【図13】,特に前記アによれば,当業者であれば,「(下部構成を採用した場合には,)水分による劣化を防止することができる」との原出願の明細書の記載部分は,本件組成に属する蛍光体について述べたものであると認識,理解するのが自然であるといえる。また,【0048】と【0049】では,本件組成に属する蛍光体が「十分な耐光性を有」し,かつ,「熱,光及び水分に強」いとの性質を有することが言及されており,【0047】に続けてこれらの記載に接した当業者であれば,【0047】の記載のとおり表\面構成と下部構\成が選択可能であるのは,本件組成に属する蛍光体が有する性質によるものと認識,理解するのが自然であるといえる。そうすると【0047】に接した当業者において,【0047】に記載された表\面構成と下部構\成が本件組成に属しない蛍光体についても選択可能であると理解するとまでは認められない。
・・・
エ この点に対し,被告は,本件組成に属しない蛍光体についても,効果が得られる場合がある旨の実験結果(乙1)を提出する。しかし,分割が許されるためには,原出願の明細書に本件発明についての記載,開示があること(当業者において,記載,開示があると合理的に理解できることを含む。)を要するから,訴訟過程で提出された上記実験結果(乙1)をもって,前記の結論を左右することはできないというべきである(仮に,被告の主張,立証が許されるとするならば,原出願の明細書に本件発明について,何ら記載,開示がないにもかかわらず,第三者が,本件組成に属しない蛍光体に,効果が得られた旨の発見をした場合に,そのような蛍光体を包含する分割出願を,当然に許容することになって,不合理が生じる。)。
オ 以上のとおり,少なくとも,本件においては,当業者が,原出願の明細書中に本件発明が記載されていると合理的に理解できるとまでは認められないから,本件発明が記載,開示されていると解されるとした審決の判断には違法がある。

◆判決本文

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平成23(行ケ)10391 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年09月27日 知的財産高等裁判所

 分割出願について、分割要件を満たしていないと判断されました。
 審決は,【0047】に「フォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング部やモールド部材の表面側から発光素子に向かってフォトルミネセンス蛍光体の分布濃度を高くした場合は,外部環境からの水分などの影響をより受けにくくでき,水分による劣化を防止することができる」との記載に関して,同記載の蛍光体が本件組成に限られるものではないことは,当業者が容易に理解できるとして,本件発明が原出願の明細書に記載されていると判断した。 
(4) しかし,審決の上記判断には,以下のとおりの誤りがある。・・・【0101】以下の記載及び【図13】には,以下の実験結果について説明がされている。i) 下部構成を採用した上で本件組成に属する蛍光体(「(Y0.8Gd0.2)3Al5O12:Ce蛍光体」)を使用した実施例1と,下部構\成を採用した上で本件組成に属しない蛍光体(「(ZnCd)S:Cu,Al」)を使用した比較例1について,寿命試験を実施した。ii) 実施例1については,温度25°C20mA通電の条件下(【図13】の「(A)」19のグラフ)でも,温度60°C90%RH下で20mA通電の条件下(同「(B)」のグラフ)でも,蛍光体に起因する変化は観測されなかったのに対し,比較例1については,後者の条件下〔温度60°C90%RH下で20mA通電の条件下(同「(B)」のグラフ)〕では,約100時間で外部環境から進入した水分の影響で蛍光体が劣化し出力がゼロになった。iii) 以上のとおり,下部構成を採用する等同一条件の下での実験において,本件組成に属する蛍光体を使用した場合(実施例1)では,水分による劣化を防止できるとの効果が得られたのに対し,本件組成に属しない蛍光体を使用した場合(比較例1)では,高温多湿条件下で早期劣化の結果が生じ,その結果に相違が生じた。イ 【0101】の記載及び【図13】,特に前記アiii)によれば,当業者であれば,「(下部構成を採用した場合には,)水分による劣化を防止することができる」との原出願の明細書の記載部分は,本件組成に属する蛍光体について述べたものであると認識,理解するのが自然であるといえる。また,【0048】と【0049】では,本件組成に属する蛍光体が「十分な耐光性を有」し,かつ,「熱,光及び水分に強」いとの性質を有することが言及されており,【0047】に続けてこれらの記載に接した当業者であれば,【0047】の記載のとおり表\面構成と下部構\成が選択可能であるのは,本件組成に属する蛍光体が有する性質によるものと認識,理解するのが自然であるといえる。そうすると【0047】に接した当業者において,【0047】に記載された表\面構成と下部構\成が本件組成に属しない蛍光体についても選択可能であると理解するとまでは認められない。\nウ 加えて,i)上記のとおり,原出願の明細書で実施形態又は実施例として挙げられている蛍光体は,いずれも本件組成に属する蛍光体のみであること,及び,ii)【0047】の冒頭には,「このフォトルミネセンス蛍光体」と,「この」との指示語が用いられているが,同指示語は,前後の文脈から,【0045】等に記載されている本件組成に属する蛍光体を指しているのは明白であること,iii)【0047】には,「このような,フォトルミネセンス蛍光体の分布は,フォトルミネセンス蛍光体を含有する部材,形成温度,粘度やフォトルミネセンス蛍光体の形状,粒度分布などを調整することによって種々の分布を実現することができ,発光ダイオードの使用条件などを考慮して分布状態が設定される。」と記載され,同記載部分に接した当業者は,表面構\成と下部構成は,使用条件により,適宜選択可能\な設計的な事項であり,本件組成に属しない蛍光体についての何らかの発明を開示していると認識,理解することはできないこと等を総合するならば,【0047】の記載に接した当業者は,【0047】の「フォトルミネセンス蛍光体」について,本件組成に属する蛍光体に限定されないと理解するとまでは容易に認め難い。エ この点に対し,被告は,本件組成に属しない蛍光体についても,効果が得られる場合がある旨の実験結果(乙1)を提出する。しかし,分割が許されるためには,原出願の明細書に本件発明についての記載,開示があること(当業者において,記載,開示があると合理的に理解できることを含む。)を要するから,訴訟過程で提出された上記実験結果(乙1)をもって,前記の結論を左右することはできないというべきである(仮に,被告の主張,立証が許されるとするならば,原出願の明細書に本件発明について,何ら記載,開示がないにもかかわらず,第三者が,本件組成に属しない蛍光体に,効果が得られた旨の発見をした場合に,そのような蛍光体を包含する分割出願を,当然に許容することになって,不合理が生じる。)。
オ 以上のとおり,少なくとも,本件においては,当業者が,原出願の明細書中に本件発明が記載されていると合理的に理解できるとまでは認められないから,本件発明が記載,開示されていると解されるとした審決の判断には違法がある。

◆判決本文

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