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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

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平成28(行ケ)10265  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年10月3日  知的財産高等裁判所(4部)

 特許庁では、無効審判における訂正請求が独立特許要件違反として否定されました。 知財高裁は、引用文献どおしを組み合わせる動機付けはあるが、本件発明には想到しないとして、審決を取り消しました。
 引用発明Aが検知の対象とするタグと引用例3事項の付け札とは,いずれ も盗難防止装置に使用されるタグ(付け札)の技術分野に関するものである。 また,引用発明Aと引用例3事項の付け札が使用される電子物品管理システムは, いずれも,タグ(付け札)が警報動作を開始する際には,電波送出パネル22(出 口送信機ユニット)が信号を発信し,タグ1(付け札)がこれを受信するものであ って,警報動作を終了する際には,コード信号出力ユニット(勘定所送信機ユニッ ト又は携帯送信機ユニット)が信号を発信し,タグ1(付け札)がこれを受信する ものである。このように,引用発明Aと引用例3事項の付け札が使用される電子物 品管理システムとは,タグ(付け札)が警報動作を開始する際及び終了する際の作 用機序において共通する。 さらに,引用発明Aは,警報動作を開始させる所定の周波数の電波及び警報動作 を終了させるコード信号のみを使用するものであるが,引用例3事項の付け札が使 用される電子物品管理システムは,これらに相当する信号(出口メッセージ及び終 了メッセージ)に加えて,能動的包装メッセージ,オーディオ包装メッセージ,受\n動的包装メッセージ及び保管メッセージを含む信号を使用し,電子物品監視システ ムの作動能力を拡張するものである。このように,引用例3事項の付け札は,引用\n発明Aが検知の対象とするタグと比較して,その作動能力が拡張されたものである。
(イ) 以上によれば,当業者は,引用発明Aが検知の対象とするタグに,盗難防 止装置に使用されるものであって,警報動作の開始及び終了の作用機序が共通し, さらに作動能力が拡張された引用例3事項の付け札を適用する動機付けがあるとい\nうべきである。
エ 引用例3事項を適用した引用発明Aの構成
(ア) 本件訂正発明8において,盗難防止タグは,警報出力手段が作動可能であ\nる状態及び警報出力状態を解除するに当たり,「一致判定手段が「前記識別手段が 識別した解除指示信号に含まれる」暗号コードが一致するか否かを判定する」もの である。一致判定手段は,前記識別手段が解除指示信号を識別した後に,その解除 指示信号に含まれる暗号コードと,暗号記憶手段が記憶する暗号コードが一致する か否かを判定するから,識別手段による解除指示信号の識別に用いられるコードと, 一致判定手段による暗号コードの一致判定に用いられるコードとは無関係なものと いうことができる。
・・・
(ウ) そうすると,警報動作を終了させるに当たり,本件訂正発明8の盗難防止 タグは,解除信号の一部に含まれる,解除指示信号の識別とは無関係な「暗号コー ド」と,記憶された暗号コードとの一致判定を行うのに対し,引用例3事項を適用 した引用発明Aのタグは,解除信号である「コード信号」と,記憶された「それぞ れ異なるメッセージを含む信号」中の「コード信号」との一致判定を行うものであ る。したがって,引用発明Aに引用例3事項を適用しても,相違点2に係る本件訂正 発明8の構成に至らないというべきである。
オ 本件審決の判断について
(ア) 本件審決は,引用例3事項の「終了メッセージを含む信号」は,警報オフ とする点において,「解除指示信号」と共通するとした上で,引用例3,甲5(米 国特許第5148159号明細書。平成4年公開)及び甲6(「NEC MOS集 積回路 μPD6121,6122データシート」NEC株式会社。平成7年公開) から,「信号が設定可能なコードを一部に含み,一致判定手段が前記信号に含まれ\nる前記コードが一致するか否かを判定する」という周知技術(以下「審決認定周知 技術」という。)が認められるから,引用例3事項を適用するに当たって,引用例 3事項の「終了メッセージを含む信号」を,設定機能によって所望に設定できるコ\nードを一部に含み,引用発明Aの一致判定手段において信号に含まれるコードが一 致するか否かを判定するように構成することは,当業者にとって格別困難ではない\nと判断した。
(イ) 本件審決は,引用発明Aに引用例3事項を適用するに当たり,周知技術を 考慮して変更した引用例3事項を適用することによって,本件訂正発明8を容易に 想到することができるとするものである。 しかしながら,前記エのとおり,引用発明Aに引用例3事項を適用しても,相違 点2に係る本件訂正発明8の構成に至らないところ,さらに周知技術を考慮して引\n用例3事項を変更することには格別の努力が必要であるし,後記(ウ)のとおり,引 用例3事項を適用するに当たり,これを変更する動機付けも認められない。主引用 発明に副引用発明を適用するに当たり,当該副引用発明の構成を変更することは,\n通常容易なものではなく,仮にそのように容易想到性を判断する際には,副引用発 明の構成を変更することの動機付けについて慎重に検討すべきであるから,本件審\n決の上記判断は,直ちに採用できるものではない。

◆判決本文

本件特許の侵害事件の控訴審です。こちらは技術的範囲に属しないと判断されています。

◆平成29(ネ)10022

◆原審はこちら。平成26(ワ)20319

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