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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

相違点認定

平成21(行ケ)10080 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年12月22日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が、相違点の認定誤りを理由として取り消されました。
 「しかしながら,前記(2)認定のとおり,参考例2に示された関節部位に適用されるサポータにおいて,X状になっているのは,関節部分に使用するサポータの形状であり,電熱片(電熱線)そのものがX状に布設されているわけではない。そして,参考例2のサポータの使用方法としては,X状に裁断されたサポータの交点で関節を覆い,関節を挟んだ各片同士を接続することにより,サポータを身体に装着するもの,具体的には,例えば肘に装着する場合,肘の外側にサポータにおけるX状の交点をあてがい,上腕側,下腕側にそれぞれ位置する2つの片同士を,互いに腕に巻き付けて上腕側片同士,下腕側片同士を相互に接続することにより,肘に装着するものと認められるのである。参考例2に示されたサポータは,上記のように装着することにより,肘の折り曲げ部内側にはサポータ片が存在しないため,肘を屈伸しても,サポータが障害とならないことから,参考例2のサポータは,活発に活動する関節部位の使用に適合するとされ,またそのためにサポータの全体形状がX状とされているものと解される。ウ 他方,前記(1)認定の事実によれば,本件補正発明のヒートセルがX字型に隔離して配設されているのは,身体のねじりのような斜め方向の曲げに対して,ヒートセルが障害とならず,全体形状としては長方形に近い温熱身体ラップが,ねじりに追随して曲がりやすいことを意味し,これにより身体の様々な領域に順応することができるとされているものと解される。エ 上記イ,ウのとおり,参考例2のサポータが全体形状としてX状であることと,本件補正発明の全体形状としては長方形に近い身体温熱ラップにおいて,ヒートセルがX字型に隔離して配設されることは,X状ないしX字型といっても,その意義ないし機能は本質的に異なるものであり,またそれにより身体の適用可能\\な部位も異なることになる。このように,X状ないしX字型に関する両者の意義ないし機能が異なるのであるから,参考例2における,内部に電熱線が均一に布設されたサポータが全体形状としてX状にされている構\\成のうち,「X状」という技術事項のみを取り出し,本件補正発明の身体温熱ラップ内に存在するヒートセルの配設の形態に適用する動機付けは存在せず,引用発明1に参考例2を適用して,相違点2に係る構成とすることはできないといわざるを得ない。オ本件審決は,「使用者が装着している時,使用者の身体または各部位のさまざまな領域の運動に順応することは,当然に要求される事項」とした上,「そのような目的の配置として,X字型の配設は,従来周知」として,参考例2を挙げるが,参考例2をもって,上記周知技術ということはできない。そして,他に,上記事項が周知であることを認めるに足りる証拠はない。カ したがって,引用発明1に周知技術を適用して相違点2に係る構\\成を想到することが,当業者にとって容易であるとした本件審決の判断は,誤りといわなければならない。

◆判決本文

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平成20(行ケ)10405 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年09月01日 知的財産高等裁判所

 設計事項なので当業者にとって容易である、とした審決が取り消されました
 「引用例の記載によると,引用発明におけるインクカートリッジは,インクカートリッジホルダに接合する面が長方形であるものを想定していると認められるところ,その長方形の内部において,インク導入口のような他の必要な部材と共に回路基板及び開口穴を配置しようとする場合,これらの部材をスペースに余裕のある長手方向に配列しようとするのが自然な発想であり,あえて短手方向に複数の部材を配置しようとするには,何らかの示唆に基づくそれなりの動機付けを必要とするというべきである。したがって,引用発明において,回路基板と開口穴とを近傍に配置しようとしたからといって,必ずしも本件補正発明の相違点に係る構成を採用することとなるわけではない。これに対し,本願明細書の記載によると,本件補正発明において,本件相違点に係る構\成が採用されたのは,接続電極部における位置ずれを極めて小さくし,製造のばらつきによる位置決め部を中心とする上下の回動による影響も最小限に抑えようとの動機に基づくものであると認められるところ,上記(1)のとおり,そもそも引用発明が課題として製造のばらつきを意識したものであるとは認められないし,引用例における位置決め機構に関する上記3の記載や他の記載において,本件相違点に係る構\成を示唆する記載が存在するとは認められない。そうすると,引用発明に基づいて,本件補正発明との本件相違点に係る構成を採用することは,当業者にとって単なる設計事項であるということはできないというべきである。」

◆平成20(行ケ)10405 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年09月01日 知的財産高等裁判所

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平成20(行ケ)10345 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年08月31日 知的財産高等裁判所

 周知技術であるとした認定を誤りを理由として進歩性なしとした無効審決が取り消されました。
 「上記各記載によれば,周知例1ないし3においては,いずれも膨縮袋により手又は足の両側から挟持して空圧施療するために膨縮させる事項が開示されている。しかし,各周知例は,いずれも,肘掛部上面に形成された膨縮袋群は,内側他端の立ち上がりによって肘掛部上面の肘幅方向内側の先端部を隆起させて肘掛部上に人体手部を安定的に保持させるとの構成は示されていない。すなわち,(ア) 周知例1(甲12)は,従前のマッサージ機では施療部を押し上げるようにしてマッサージし,拡縮袋の膨張時に施療部が前方へ押し出されるという課題があったため,拡縮体を施療部の左右両側に分割配置してこの課題を解決しようとするものであり,被施療部を安定的に保持させるという課題は存在しない。(イ) 周知例2(甲17)は,底面と底面の左右両側から立設された側壁を備えた1つの凹状脚収納部内に使用者の両脚を左右並べて収納し(脚の後方部が底面と接し,脚の両外側が左右両面と接する),空気の給排により膨張収縮して凹状脚収納部に収納された両脚の側部を押圧する側面エアセルが両側壁の内面に設けられた脚用空気マッサージ機に関するものであって,底面に設けられた底面エアセルの膨張収縮により両脚の後方側を押圧してマッサージするものである。周知例2は,側面エアセルからの押圧は脚の形状に沿って側方から押圧し,底面エアセルの押圧は,脚の形状に沿って後方から押圧する構成が採用されている。両脚は,一つの凹状収納体に,縦方向に収納されるため,底面エアセルによって,安定的に保持して脱落を防止するという技術的課題はない。(ウ) 周知例3(甲22)は,使用者の手部及び下腕部を両側から挟持してマッサージするものであって,被施療部を安定的に保持させるという技術的課題に対応しようとするものではない。(3) 小括以上の検討によれば,引用発明1と引用発明2の組合せに周知技術を考慮したとしても,本件肘掛部上面に膨縮袋からなるマッサージ部を配置し,膨縮袋により肘掛け部全面を持ち上げてマッサージし,かつ,手部を立上り壁に配置された膨縮袋との間で挟持して保持する構成とすることには想到し得たとしても,膨縮袋を手部の安定的保持の機能\のための構成とし,「肘掛部の上面に配設した膨縮袋群は,圧縮空気給排装置からの給気によって膨縮袋群の肘幅方向の外側一端よりも内側他端が立ち上がるように配設され,前記膨縮袋の内側他端の立ち上がりによって肘掛部上面の肘幅方向の先端部を隆起させて肘掛部上に人体手部を安定的に保持させ」る構\成とすることには当業者が容易に想到し得ないものというべきである。」

◆平成20(行ケ)10345 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年08月31日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10396 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年06月30日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした無効審決が、引用文献との相違点の認定誤りを理由として取り消されました。
  「前記2のとおり,本件発明1における「破砕片」は,表面に表\飾のための凹凸が施された塩化ビニールシートに紙製シートを貼り合わせて成る壁紙の廃材を細かく破砕したものであって,表\面に上記凹凸を残存する塩化ビニール片と紙片の貼り合わせ構\造を有し,塩化ビニール片の上記凹凸面が対面して通水路を形成し,該通水路内に繊維状吸水材又は粉粒状吸水材を保持した構造を有するものであるから,シート形態を残存するものである。そして,前記2(2)カのとおり,本件特許明細書(段落【0037】〜【0039】)には,破砕機を用いて壁紙を破砕することが記載されており,このような方法が本件発明1の技術分野で通常用いられる破砕方法と考えられる。一方,前記3(2)のとおり,甲第1号証発明は「3mm以下の粒度の表面がプラスチック材料被膜で覆われているラミネート加工紙廃材の粉砕物」を含むものであるが,証拠(牛乳パックの外観写真と拡大断面写真[甲29],技術説明資料[甲35])及び弁論の全趣旨によれば,表\面がプラスチック材料被膜で覆われているラミネート加工紙である紙製牛乳パックを,破砕機で3mm以下に粉砕した粉砕物は,紙の部分がプラスチックフィルムの部分よりもはるかに厚いため,短繊維状に離解されて,シート原形を留めない粉末状又は綿状のものになり,シート形態を残存しないものと認められる。そうすると,本件発明1における「破砕片」と甲第1号証発明における「粉砕物」とは,上記のとおりシート形態を残存するかどうかという点に違いがあるということができる。・・・・(3) 審決は,<相違点2>として,「本件発明1は,粗粒状体が『壁紙を細かく破砕し形成した表面に上記凹凸を残存する塩化ビニール片と紙片の貼\り合わせ構造を有する破砕片を組成材とする』のに対し,甲第1号証発明は,粒体が『粉砕物を含有』するものであり,かかる『粉砕物』について,表\面に凹凸を残存する塩化ビニール片と紙片の貼り合わせ構\造を有する破砕片であることの特定がない点。」と認定し,<相違点3>として,「本件発明1は,『粗粒状体中の塩化ビニール片の上記凹凸面が対面して通水路を形成し,該通水路内に上記繊維状吸水材又は粉粒状吸水材を保持した構造を有する』のに対し,甲第1号証発明は,かかる構\造の特定がない点。」と認定しているが,上記(1)(2)で述べたところからすると,単に特定がないというにとどまらず,上記(1)(2)認定のような形状の違いがあることを認定すべきであったということができる。」

◆平成20(行ケ)10396 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年06月30日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10444 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年07月30日 知的財産高等裁判所

 相違点の認定誤りを理由として、進歩性なしとした審決が取り消されました。
     「本願補正発明に係る請求項の記載によれば,「内面シート」,「外面シート」及びこれらに挟まれた「液吸収体」とを有する「積層体」によって「袋体」が形成されるとともに,当該「袋体」は「身体装着側」と「身体装着側に対向する裏側」とを有し,「身体装着側」には「開口部」が形成され,「開口部を囲む領域」と「これ以外の領域」との境に,液吸収体を薄くし又はこれを除去した「変形境界部」が形成されるものである。以上からすれば,「開口部を囲む領域」は,当然に,上記「袋体」の一部と解されるため,「内面シート」,「外面シート」及び「液吸収体」を有する「積層体」で形成されていることになる。(イ) 他方で,被告が主張するとおり,液吸収体を有する積層体において,端部にシール部がないと液が端部から漏れるおそれがあることは技術常識といえるため,このような積層体はシール部を有することが通常であるものと解される。そして,本願補正発明においても,「開口部」を囲む部位は積層体の端部となるので,「袋体」の「開口部」を囲む部位にはシール部が必要であると解され,現に,開口部20の周囲には「縁部17」(シール部)が存在する(前記(2)ク,ケ参照)。しかし,前記(ア)で検討したとおり,本願補正発明の請求項の記載によれば,「開口部を囲む領域」は,「内面シート」,「外面シート」及び「液吸収体」を有する「積層体」で形成されるものである。仮に,シール部が「開口部を囲む領域」の一部に該当すると解する余地があるとしても,被告が主張するように,「開口部を囲む領域」が,液吸収体が全く存在しない単なるシール部でもよいと解するのでは,特許請求の範囲の請求項に「『開口部を囲む領域』が『液吸収体』を有する『積層体』によって形成される」旨が記載されていることが無意味になるから,被告の上記主張は採用できない。(ウ) 以上のとおり,本願補正発明に係る尿取りパッドにはシール部が存在するが,本願補正発明における「開口部を囲む領域」とは,液吸収体を有する積層体で形成されている領域であって,基本的にシール部以外の領域を指す(仮に「開口部を囲む領域」がシール部を含むとしても,少なくともシール部以外の「液吸収体を有する積層体」で形成される部分を主たる構成部分とする。)ものと解するのが相当である。

◆平成20(行ケ)10444 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年07月30日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10305 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年03月25日 知的財産高等裁判所

  進歩性なしとした無効審決を取り消しました。
   「引用発明は,シール帯域内に合成樹脂溜まり部を設けて,熱融着に寄与するポリエチレン樹脂の量を確保することにより,「接合強度を維持」するようにしたものであるから,単に,「溝を設けた部分に形成される合成樹脂溜まり部を非溶着の熱シールされない部分とする」ことを開示する周知例(甲2,3)を指摘することによって,その周知の技術を適用して,引用発明とは異なる解決課題と解決手段を示した本願発明の構成に至ることが容易であるということはできない。引用発明は,接合強度維持を目的とした技術であるのに対し,周知技術は,接合強度維持に寄与することとは関連しない技術であるから,本願発明と互いに課題の異なる引用発明に周知技術を適用することによって「本願発明の構\成に達することが容易であった」という立証命題を論理的に証明できたと判断することはできない。」

◆平成20(行ケ)10305 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年03月25日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10064 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年03月11日 知的財産高等裁判所

  進歩性なしとした無効審決を取り消しました。
  「以上のとおり,本件発明は,内側の液体用供給路を形成する供給管及びその先端部に設けられた液体供給孔が主軸と同体に回転するように構成し,これによって液体供給孔から供給された液体が遠心力で外方に噴出して微細化することとなり,さらに,気体がこの液体供給孔の外周囲に設けられた狭窄部を経て噴出されることにより,液体と気体が激しく攪拌混合してミストを発生するようにしたもので,このようにして発生したミストは,工具ホルダ及び工具内の通路を分離することなく通過して,被加工物の比較的深い箇所にも供給されるものである。そして,その結果,ミスト発生装置の設置箇所は,主軸の先端部内又は工具ホルダ内とすることが可能\となっている。これに対し,甲2発明は,本件発明と異なり,パイプ(19)をスピンドルと同体にして回転させるものではなく,また,液体供給孔の外周に狭窄部を設けて空気を噴出させて積極的に液体と気体が激しく攪拌混合してミストを発生するようにするものではなく,噴霧を切削領域に放出させるためには,パイプ(19)は,ドリル工具又はフライス工具(10)の出口(31)のすぐ上流側まで延びて配置する必要があるものである。
 エ そうすると,本件発明と甲2発明とは,同じ工作機械の主軸装置に関する発明において,主軸装置側にミスト発生装置を設け,そのミスト発生装置は,気体と液体を同時かつ別々に供給するための2系統の供給路を備え,2系統の供給路のうち内側に液体用供給路を形成する供給管を設けて切削液を液体供給孔から供給し,気体をこの液体供給孔の外周囲に設けられた供給管から供給して,液体と気体を混合してミストを発生する構成とし,発生したミストは,工具内通路を通じて切刃近傍から噴出され,被加工物に供給されるようにした点で共通するものであるが,本件発明は,混合したミストが分散しないことを解決課題としているという点で,甲2発明とは異なる課題を有するものである。そして,?@本件発明における上記課題を解決するため,本件発明1のミスト発生装置の構成は,甲2発明のミスト発生装置の構\成とは上記のとおりの相違点を有することになり,その結果,?Aミスト発生装置の設置位置につき,甲2発明は工具の出口のすぐ上流側であるのに対し,本件発明は主軸の先端部又は工具ホルダ内とすることができるとの相違点を生じさせ,さらに,?Bミスト発生位置からミストを供給する加工部までの噴霧状態を保つ必要がある距離も,両者を比較すると,本件発明は長い距離であるのに対し,甲2発明は短い距離であるとの相違点を生じさせたものである。このように,本件発明は,本件発明が有し,甲2発明が有しない上記課題を解決するために,ミストを発生する機構,ミスト発生装置の設置箇所及び噴霧状態を保つ距離において異なることとなったものであって,これらについては,甲2発明から容易に想到し得るものではないと認められる。
 したがって,審決が,甲2発明の構成につき,「ミスト発生のための機構\が,工具の中央ボア孔(22)と,パイプ(19)からなっているのであるから,工具そのものが,その中央ボア孔がパイプを通し,更に必要な量の圧縮空気を流すことのできるというような,ミスト発生のための専用の形状を採らざるを得ないことは明らかである。」(20頁11〜15行)としながら,「しかしながら,切削液通路を備えただけの通常の形状の工具を用いるというような要求は一般的なものであるから,この要求に応えるならば,ミスト発生のための機構を,工具内に設けることはできなくなり,工具の手前,つまり『主軸の先端部或いは工具ホルダ内』に設けざるを得ないのは,当然である。」(20頁16〜20行)として,「相違点1に係る本件発明の発明特定事項は,当業者が適宜採用できた設計的事項である。」(20頁21,22行)としたことは是認することができない。」

◆平成20(行ケ)10064 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年03月11日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10026 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年02月17日 知的財産高等裁判所

     進歩性なしとした審決が取り消されました。
    「ア 上記(1)によれば,相違点1に係る本願発明3の構成は,乗物の実際の前進加速により乗客が経験する加速度の感覚を強調するために,乗物を更に加速することに代えて,前進中の乗物に加速度感を生起させる動きを加え,それによるシミュレーション効果により擬似的に実際の加速以上の加速度感を乗客に体験させるとともに,安全性を十\分に確保するという点に技術的意義があるものと認められる。これに対し,上記(2)のとおり,刊行物記載発明は,カプセル内部のスクリーン上の映像に対応して座席等に動きを与え,乗客に映像上の出来事を擬似的に体感させるというものであり,同発明におけるシミュレーション効果は,乗物の実際の動きがもたらす乗客の感覚とは無関係である。また,引用刊行物には,設計技術上及び安全性の問題から乗物の急激な加・減速や急速度での急カーブの曲がりなどの実際の動きが制限されるという事情の下で,動的な乗物に臨場感や大きなスリルなどを求める乗客に対して急激な加速や減速,高速での急カーブの曲がりの感覚を提供するという本願発明3の課題についての記載も示唆もなく,シミュレーション効果の利用という点においては,引用刊行物が従来技術として記載している「従来のシミュレーション式遊戯装置」と同一の技術的思想であるといえる。したがって,刊行物記載発明は,動的な乗物においてシミュレーション効果を利用するという点では本願発明3と共通するものの,シミュレーション効果の利用状況についての着想及びそれにより実現される効果の点で本願発明3とは技術的思想を異にするものというべきであって,刊行物記載発明と本願発明3とでは,シミュレーションを利用することの技術的意義が相違するものと認められる。そして,本願発明3におけるシミュレーションの利用の技術的意義については,引用刊行物に記載も示唆も認め難いところ,本願発明3におけるシミュレーションの利用の点が,相違点1に係る構成に当たるから,結局,引用刊行物には,相違点1に係る構\成の技術的意義について,記載及び示唆があるものと認めることはできない。以上によれば,引用刊行物には,相違点1に係る本願発明3の構成を想到する契機ないしは動機付けとなる記載や示唆があるものと認めることはできない。・・・
  (エ) 上記(ア)ないし(ウ)によれば,乗物を実際には移動させることなく(上記(ア),(ウ)),あるいは乗物の実際の動きとは異なる態様で(上記(イ)),乗物を運転する際に感じる運転感覚や体感を擬似的に体験させるシミュレーション装置はよく知られた技術であると認められる。しかしながら,周知例甲2ないし5には,乗物が実際に前進加速している時に,乗客が経験する加速度感を更に強調するために,当該乗物に加速度感を生起させる実際の動きを加え,乗客の前進加速感を擬似的に強調し高めるシミュレーションを行うとの技術的事項が記載されているとは認められないし,これを示唆する記載も見い出すことがことができない。そうすると,周知例甲2ないし5によって,擬似的な前進加速感を乗客に与えるシミュレーションを行うことが周知技術であることは認められるものの,前記アに認定した本願発明3におけるシミュレーション利用の技術的意義についてまで周知であったと認めることはできず,また,これが当業者にとって技術常識であったことを認めるに足りる証拠もない。さらに,前記アに説示したところに照らせば,上記周知のシミュレーション技術は,本願発明3におけるシミュレーション利用の技術的意義を示唆するものとは認め難いから,相違点1に係る本願発明3の構成を示唆するものとも認められない。(オ) 以上のとおり,引用刊行物には,相違点1に係る本願発明3の構成を想到する契機ないしは動機付けとなる記載も示唆もないこと,また,周知例甲2ないし5によっては,単に擬似的な前進加速感を乗客に与えるシミュレーションを行うことが周知技術であったと認められるにすぎず,同シミュレーション技術は相違点1に係る構\成を示唆するものでもないこと等に照らすならば,刊行物記載発明において上記周知技術を考慮したとしても,当業者において,本願発明3におけるシミュレーション利用の技術的意義を容易に着想し,また,それによる効果を容易に想到し得たとは認められないから,当業者が相違点1に係る本願発明3の構成を容易に想到し得たとは認められない。」

◆平成20(行ケ)10026 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年02月17日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10386 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年01月29日 知的財産高等裁判所

 請求理由なしとした(進歩性)審決が取り消されました。 
 「このようにしてエアシリンダ13は,第2のアーム8が目標の設定位置P2に到達する以前から起動し始めるため,エアシリンダ13の順次プログラム上での実質的な作動時間は,第2のアーム8の移動完了後に起動する場合と比較して短縮している。」との記載に照らしてみれば,甲第7号証記載の動作制御装置は,第2のアームが移動中にエアシリンダの移動を開始することで作動時間を短縮するものであるが,最も作動時間が短縮されるのは,第3図に記載の円弧に沿って動作が完了する場合,すなわち,第2のアームの旋回運動が停止した時点でエアシリンダの下降動作が完了する場合であることはきわめて容易に理解し得るところである。(ウ) そうすると,甲第7号証に接した当業者であれば,ロボットにおいて同時に複数の動作を行うように動作制御する場合に,一方の動作の終了時点と他方の動作の終了時点が一致するように制御すれば,最も動作時間を短縮できることを容易に理解し得るものと認められるから,甲第7号証には,「ロボットにおいて同時に複数の動作を同時に行うように動作制御する場合に,一方の動作の終了時点において他方の動作を終了するように重ねて制御すれば,最も動作時間を短縮することができる」との技術事項が開示されているといえる。(エ) そして,前記ア(ア),(イ)の甲第3号証の記載事項及び当業者が技術常識から当然に認識し得た事項を考慮すれば,甲第3号証記載の考案に甲第7号証記載の上記(ウ)の技術事項を適用して,相違点10に係る本件考案の構成とすることは,当業者がきわめて容易に想到し得たことというべきである。」

◆平成19(行ケ)10386 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年01月29日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10176 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年01月29日 知的財産高等裁判所

 ゲーム装置(CS関連発明?)について、進歩性なしとした審決が取り消されました。 
  「審決は,引用発明の電子チップが本願発明のゲーム的メリットと共通する(実質的具備事項5)とした上で,引用発明と本願発明とが「電子データであるメリットをネットワークを介して端末装置に送信する送信手段」を有する点で一致すると認定している。しかしながら,上記ア及びイに認定説示したところによれば,本願発明は,ゲーム的メリットをネットワークを介して端末装置に送信するものであるのに対し,引用発明は,電子チップを端末装置に送信するものではないから,引用発明の電子チップが本願発明のゲーム的メリットと共通するかについても争いのあるところであるが,仮にこれが認められるとしても,引用発明が「電子データであるメリットをネットワークを介して端末装置に送信する送信手段」を有するとした審決の認定は誤りというべきである。(イ) この点について,被告は,引用発明においては,電子チップ情報をクライアント装置に送信して供給することにより,消費あるいはゲームの進行に従った電子チップ数の演算及び表示をクライアント装置に実施させ,ひいてはユーザが電子チップを消費し,あるいはゲームの進行に従って電子チップ数を変化させることを可能\としているから,電子チップ情報の供給は,実質的には,クライアント装置に対して利用可能な形態で電子チップを送信して供給するものであるということができると主張する。しかしながら,引用発明において,ユーザがクライアント装置を使用してその保有する電子チップに関する情報を確認できたり,電子チップを使用できたりしたとしても,そのような機能\を実現するための具体的構成は複数存在するのであって,引用発明と本願発明とでは同じ機能\を実現するための具体的な構成が異なるのであるから,単に実現される機能\が同一であるという理由から,両者の具体的な構成を同一視することはできないというべきである。したがって,被告の上記主張は採用することができない。」

◆平成20(行ケ)10176 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年01月29日 知的財産高等裁判所

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