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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

要旨認定

平成26(行ケ)10044  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年11月20日  知的財産高等裁判所

 Appleの特許について進歩性なしと審決が取り消されました。「セキュリティ特権」という用語の意義が争点です。
 被告は,本願の請求項1には「セキュリティ特権」の明確な定義はないことを前提に,本願明細書の記載を参酌すると,本願発明に特定された「セキュリティ特権」の技術的意義は,所定の機能と関連付けられたアクセス権に対応するものであり,審決の認定するように「Eメールなどの機能\と登録した指紋とを結び付けるもの」(審決書14頁8〜9行目等)であると合理的に理解することができ,審決における本願発明のセキュリティ特権の技術的意義の認定に誤りはない旨主張する(前記第4の1)。 しかし,被告の上記主張は,審決における「Eメール機能はセキュリティ特権の中の一であって,「セキュリティ特権」は,Eメールなどの「機能\」と登録した「指紋」とを結び付けるものであり,「機能」や「指紋」から独立して設定可能\な「セキュリティ特権」があるものではないと解される。」(審決書14頁7行目〜10行目)との認定判断を前提とするものであるところ,本願発明における「セキュリティ特権」は,指紋と機能とを結び付けるものであるとしても,「機能\」とは異なるものとして理解できることは前記ウの説示のとおりである。そうすると,上記審決の認定は誤っているというほかなく,したがって,被告の上記主張は採用することができない。
オ まとめ
以上によれば,本願発明の「セキュリティ特権」の意義に関する審決の認定には誤りがある。

◆判決本文

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平成25(行ケ)10303  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年10月23日  知的財産高等裁判所

 引用文献の認定誤りを理由として、新規性無しとした審決が取り消されました。
 特許出願前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明は,その発明について特許を受けることができない(特許法29条1項3号)。\nここにいう「刊行物に記載された発明」の認定においては,刊行物において発明の構成について具体的な記載が省略されていたとしても,それが当業者にとって自明な技術事項であり,かつ,刊行物に記載された発明がその構\\成を備えていることを当然の前提としていると当該刊行物自体から 理解することができる場合には,その記載がされているに等しいということができる。しかし,そうでない場合には,その記載がされているに等しいと認めることはできないというべきである。 そうすると,本件において,「ポリエステル組成物Aからなる白色ポリエステルフィルム」が甲1公報に記載されているに等しいというためには,ポリエステル組成物Aについてフィルムを成形したものが当業者にとって自明な技術事項であり,かつ,同公報に記載された発明が,ポリエステル組成物Aについてフィルムを成形したものであることを当然の前提としていると同公報自体から理解することができることが必要というべきである。 しかるに,本件においては,ポリエステル組成物Aについてフィルムを成形したものが当業者にとって自明な技術事項であることを認めるに足りる証拠はない。したがって,これを自明な技術事項であるということはできない。また,甲1公報の記載を検討しても,実施例12のポリエステル組成物Aは白色二軸延伸フィルムを製造するポリエステル組成物Bを得るための中間段階の組成物にすぎず,同実施例がポリエステル組成物Aについてフィルムを成形するものでないことはいうまでもないし,さらに,同公報のその他の記載をみても,ポリエステル組成物Aについてフィルムを成形することを示す記載や,そのことを当然の前提とするような記載はない。 以上のとおり,ポリエステル組成物Aについてフィルムを成形したものが当業者にとって自明な技術事項であるとはいえず,また,甲1公報に記載された発明が,ポリエステル組成物Aについてフィルムを成形したものであることを当然の前提としていると同公報自体から理解することができるともいえない。そうすると,「ポリエステル組成物Aからなる白色ポリエステルフィルム」は,甲1公報に記載されているに等しい事項であると 認めることはできないものというべきである。

◆判決本文

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平成26(行ケ)10030  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年10月20日  知的財産高等裁判所

 進歩性違反無しとした審決が維持されました。
 (2) 以上のとおり,甲1においては,第1実施の形態として,段落【0013】〜【0020】,図1〜6において,・・・可能としたものが記載されている。\nところが,第2実施の形態において,「カードサイズ紙片」を加えた構成について,本文中の記載及び図面にも直接的に記載したものはなく,これを窺わせる記載も存在しない。そして,甲1発明の目的は,上記(1)アに記載したとおり,重ね合わせた部分が不必要時には不用意に開封しないようにして,かつ,必要なときには重ね合わせた部分を容易に開封できるようにした重ね合わせ郵便はがきを提供することであり,発明の効果として,隅部にカットラインを入れて,隅部を切り取ることなく一方の片葉に残したために,従来技術のように段差を形成することはないため,重ね合わせ郵便はがきに他の郵便はがきが引っかかって不用意に開封されることがなく,剥がすときには,片葉あるいは二葉の両端に形成した隅部をカットラインから切離して取り除くことにより段差を形成することができ,その段差から一方の片葉を容易に引き剥がすことができる(【0026】〜【0029】)と記載されているのみである。これらの記載から見て,甲1の請求項に記載された発明の本質的部分は,隅部にカットラインを入れた構成に存するものであることは明らかである。したがって,第1実施の形態に記載された「カードサイズ紙片」は,甲1全体を通じて理解される技術思想であるとは理解できず,単に,用紙を中央で二葉に折り曲げて,二葉同士を重ね合わせ,剥離可能\に接着剤で密着して形成した重ね合わせ郵便はがきを第1実施の形態とし,その一例の構成として示されたものにすぎない。よって,第1の実施の形態における「カードサイズ紙片」は,第2の実施の形態と関連性を有するものではなく,第2の実施例において「カードサイズ紙片」を設けることが自明であるとも,記載されているに等しいものと認めることもできない。\n

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平成25(行ケ)10227  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟  平成26年9月17日  知的財産高等裁判所

 引用文献の認定誤りを理由として、無効理由無しとした審決が取り消されました。
 相違点13−2は,要するに,本件発明7では,光検出器において,第二の次元の共焦点作用をもたらすのに対し,甲13発明では,PS−PMT検出器において,そのような共焦点作用をもたらしているか否か不明である,というものである。 しかるところ,空間フィルタを使用しないで,光検出器において共焦点作用をもたらすことが本件優先日前に周知の事項であったことは,審決において認定するところであり(27頁10〜14行目),被告も,そのこと自体を争っているものとは認められない。 したがって,甲13に接した当業者は,甲13発明のPS−PMT検出器において共焦点作用を生じるに足るものであれば,少なくとも共焦点作用がもたらされていること自体は,認識するといえる。 これについて,審決は,上記周知の空間フィルタを使用しない共焦点作用は,2次元の共焦点作用をもたらすものの代替であり,1次元の共焦点作用をもららすものではないと認定している。 そこで,まず,甲13発明のPS−PMT検出器が共焦点作用をもたらしているか,そして,その共焦点作用がいかなるものかを,次に検討する。
・・・・
すると,甲13発明では,スリットの長さ方向(Y軸方向)に広がる光を非点収差補正光学系で光検出器の位置で結像させ,PS−PMTのY方向の5ピクセルの領域のみを加算しているから,「光検出器の所与の領域で受ける光が,前記所与の領域外で受ける光を含まずに」「所与の領域は第一の次元(X軸方向)を横切る第二の次元(Y軸方向)で共焦点作用をもたらすように形成されて」いるといえる。 したがって,相違点13−2は,実質的な相違点ではない。
・・・・
以上2及び3によれば,相違点13−1及び相違点13−2は,実質的な相違点ではなく,相違点13−3及び相違点13−4は,容易に想到し得たものといえる。 したがって,本件発明7は,甲13発明及び周知技術に基づいて容易に想到することができたから,本件発明7を甲13発明から容易に想到できないとした審決の認定判断には誤りがあり,この誤りが審決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。

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平成25(行ケ)10134  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟  平成25年11月27日  知的財産高等裁判所

 1年くらい前の判決ですが、「請求項1の要旨認定については,発明の詳細な説明を参酌する必要はない」とのくだりがおもしろいので、あげておきます。知財高裁は新規性有りとした審決を取り消しました。
 上記アによると,本件訂正発明と甲7発明との一応の相違点は,審決が認定するとおり,本件訂正発明では,目的物質が「基剤に保持され」ているのに対して,甲7発明では,目的物質が基剤からなる医療用針内に設けられたチャンバに封止されているか,縦孔に収容されることにより保持されている点となる。審決は,この一応の相違点について,「目的物質が,基剤にではなく,基剤に設けられた空間に保持されている点で,両者は,相違する。したがって,本件訂正発明は,甲第7号証に記載された発明であるとはいえない。」と判断した。この審決の判断は,請求項1の記載を当業者が読めば,「基剤に保持された目的物質とを有し」とは,目的物質が基剤に混合されて基剤とともに存在していると理解されること,及び,特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確ではないとして,本件訂正明細書の記載(【0005】【0006】【0008】〜【0010】【0070】等)をみても,同様に解されることを前提とするものである。しかし,請求項1の「基剤に保持された目的物質」との記載は,目的物質が基剤に保持されていることを規定しているのであり,その保持の態様について何らこれを限定するものでないことは,その記載自体から明らかである。そして,「保持」とは,広辞苑(甲12)にあるとおり,たもちつづけること,手放さずに持っていることを意味する用語であり,その意味は明確である。したがって,請求項1の「保持」の技術的意義は,目的物質を基剤で保持する(たもちつづける)という意味のものとして一義的に明確に理解することができるのであるから,審決が,請求項1の「基剤に保持された目的物質」との記載について,目的物質が基剤に混合されて基剤とともに存在していると理解されることと解したのは,請求項1を「基剤に混合されて保持された目的物質」と解したのと同義であって,誤りであるといわざるを得ない。また,本件訂正発明の請求項1の記載は,上記のとおり,請求項の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないなど,発明の詳細な説明を参酌することができる特段の事情がある場合にも当たらないから,少なくとも請求項1の要旨認定については,発明の詳細な説明を参酌する必要はないところである(最高裁判所平成3年3月8日第二小法廷判決民集45巻3号123頁参照)。そうすると,甲7発明の,目的物質が基剤からなる医療用針内に設けられたチャンバに封止されていることや縦孔に収容されていることは,本件訂正発明の目的物質が「基剤に保持された」構成に含まれているといえる。そうすると,本件訂正発明は,甲7公報に記載された発明といえるから,特許法29条1 項3号の規定により特許を受けることができないものであり,この点に関する審決の判断は誤りである。

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平成25(行ケ)10209  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年9月10日  知的財産高等裁判所

 進歩性無しとした審決が取り消されました。
 前述したとおり,補正発明と引用発明の相違点は,薬剤の用途が,補正発明においては,「血管内皮の収縮・拡張機能改善及び血管内膜の肥厚抑制の少なくとも一方の作用を有する剤」であるのに対して,引用発明においては,「ACE阻害活性を示す,抗高血圧剤」である点である。\nイ(ア) 引用例2から引用例4には,前記のとおり,ACE阻害剤であるシラザプリル,キナプリル,カプトプリルを,本態性高血圧症や内皮機能障害の疾患を有するヒト,バルーンカテーテル処理によって頸動脈の内皮剥離,損傷を受けたラットに投与した実験の結果,血管内皮の拡張能\の向上,血管内膜の肥厚抑制等が見られた旨が記載されており,引用例5には,血管壁肥厚の抑制と改善,内皮細胞機能の改善等がACE阻害薬の効果としてヒトで証明されている旨が記載されている。これらの記載によれば,シラザプリル等のACE阻害剤を人体や動物に投与した実験において,血管内皮の機能\改善作用,血管内膜の肥厚抑制作用が確認されたことを読み取ることができる。 (イ) しかしながら,前述のとおり,本願優先日当時においては,上記と異なる実験結果を示す複数の技術文献が存することから,ACE阻害剤であれば原則として血管内皮の収縮・拡張機能改善作用又は血管内膜の肥厚抑制作用のうち少なくともいずれか一方を有するとまではいえず,個々のACE阻害剤が実際にこれらの作用を有するか否かは,各別の実験によって確認しなければ分からないというのが,当業者の一般的な認識であった。\n(ウ) しかも,IPP及びVPPと,引用例2から引用例5に記載されたシラザプリル等のACE阻害剤との間には,以下のとおり,性質,構造において大きな差異が存在する。他方,IPP及びVPPと上記ACE阻害剤との間に,ACE阻害活性を有すること以外に特徴的な共通点は見当たらない。\na すなわち,シラザプリル等はいずれも典型的なACE阻害剤であるのに対し,IPP及びVPPは確かにACE阻害活性を有しているものの,下記の比較によれば,その強度は上記ACE阻害剤よりもかなり弱いものにとどまるといえる。現に,本件に証拠として提出されている公刊物中には,IPP及びVPPをACE阻害剤として紹介する記載は見当たらない。
・・・
ウ 前述した本願優先日当時の当業者の一般的な認識に鑑みれば,当業者 が,ACE阻害活性の有無に焦点を絞り,引用発明においてIPP及びVPPがA CE阻害活性を示したことのみをもって,引用例2から引用例5に記載されたAC E阻害剤との間には,前述したとおりACE阻害活性の強度及び構造上の差異など\n種々の相違があることを捨象し,IPP及びVPPも上記ACE阻害剤と同様に, 血管内皮の機能改善作用,血管内膜の肥厚抑制作用を示すことを期待して,IPP\n及び/又はVPPを用いることを容易に想到したとは考え難い。 また,仮に,当業者において,引用例2から引用例5に接し,前記一般的な認識 によれば必ずしも奏功するとは限らないとはいえ,ACE阻害活性を備えた物質が 上記作用を示すか否か試行することを想起したとしても,前述したとおり,IPP 及びVPPは,性質,構造において上記ACE阻害剤と大きく異なり,特にIPP\n及びVPPのACE阻害活性は上記ACE阻害剤よりもかなり低いものといえるから,試行の対象としてIPP及び/又はVPPを選択することは,容易に想到するものではないというべきである。 以上によれば,引用発明と引用例2から引用例5とを組み合わせて補正発明を想到することは容易とはいえず,本件審決が,「相当程度の確立した知見」を前提として,引用発明と引用例2から引用例5とを組み合わせ,これらを併せ見た当業者であれば,引用発明においてACE阻害活性を有することが確認されたIPP及び/又はVPPを,血管内皮の収縮・拡張機能改善及び血管内膜の肥厚抑制の少なくとも一方の作用を有する剤として用いることに,格別の創意を要したものとはいえないと判断した点は誤りである。\n

◆判決本文

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平成25(行ケ)10209  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年9月10日  知的財産高等裁判所

 進歩性無しとした審決が取り消されました。
 前述したとおり,補正発明と引用発明の相違点は,薬剤の用途が,補正発明においては,「血管内皮の収縮・拡張機能改善及び血管内膜の肥厚抑制の少なくとも一方の作用を有する剤」であるのに対して,引用発明においては,「ACE阻害活性を示す,抗高血圧剤」である点である。\nイ(ア) 引用例2から引用例4には,前記のとおり,ACE阻害剤であるシラザプリル,キナプリル,カプトプリルを,本態性高血圧症や内皮機能障害の疾患を有するヒト,バルーンカテーテル処理によって頸動脈の内皮剥離,損傷を受けたラットに投与した実験の結果,血管内皮の拡張能\の向上,血管内膜の肥厚抑制等が見られた旨が記載されており,引用例5には,血管壁肥厚の抑制と改善,内皮細胞機能の改善等がACE阻害薬の効果としてヒトで証明されている旨が記載されている。これらの記載によれば,シラザプリル等のACE阻害剤を人体や動物に投与した実験において,血管内皮の機能\改善作用,血管内膜の肥厚抑制作用が確認されたことを読み取ることができる。 (イ) しかしながら,前述のとおり,本願優先日当時においては,上記と異なる実験結果を示す複数の技術文献が存することから,ACE阻害剤であれば原則として血管内皮の収縮・拡張機能改善作用又は血管内膜の肥厚抑制作用のうち少なくともいずれか一方を有するとまではいえず,個々のACE阻害剤が実際にこれらの作用を有するか否かは,各別の実験によって確認しなければ分からないというのが,当業者の一般的な認識であった。\n(ウ) しかも,IPP及びVPPと,引用例2から引用例5に記載されたシラザプリル等のACE阻害剤との間には,以下のとおり,性質,構造において大きな差異が存在する。他方,IPP及びVPPと上記ACE阻害剤との間に,ACE阻害活性を有すること以外に特徴的な共通点は見当たらない。\na すなわち,シラザプリル等はいずれも典型的なACE阻害剤であるのに対し,IPP及びVPPは確かにACE阻害活性を有しているものの,下記の比較によれば,その強度は上記ACE阻害剤よりもかなり弱いものにとどまるといえる。現に,本件に証拠として提出されている公刊物中には,IPP及びVPPをACE阻害剤として紹介する記載は見当たらない。
・・・
ウ 前述した本願優先日当時の当業者の一般的な認識に鑑みれば,当業者 が,ACE阻害活性の有無に焦点を絞り,引用発明においてIPP及びVPPがA CE阻害活性を示したことのみをもって,引用例2から引用例5に記載されたAC E阻害剤との間には,前述したとおりACE阻害活性の強度及び構造上の差異など\n種々の相違があることを捨象し,IPP及びVPPも上記ACE阻害剤と同様に, 血管内皮の機能改善作用,血管内膜の肥厚抑制作用を示すことを期待して,IPP\n及び/又はVPPを用いることを容易に想到したとは考え難い。 また,仮に,当業者において,引用例2から引用例5に接し,前記一般的な認識 によれば必ずしも奏功するとは限らないとはいえ,ACE阻害活性を備えた物質が 上記作用を示すか否か試行することを想起したとしても,前述したとおり,IPP 及びVPPは,性質,構造において上記ACE阻害剤と大きく異なり,特にIPP\n及びVPPのACE阻害活性は上記ACE阻害剤よりもかなり低いものといえるから,試行の対象としてIPP及び/又はVPPを選択することは,容易に想到するものではないというべきである。 以上によれば,引用発明と引用例2から引用例5とを組み合わせて補正発明を想到することは容易とはいえず,本件審決が,「相当程度の確立した知見」を前提として,引用発明と引用例2から引用例5とを組み合わせ,これらを併せ見た当業者であれば,引用発明においてACE阻害活性を有することが確認されたIPP及び/又はVPPを,血管内皮の収縮・拡張機能改善及び血管内膜の肥厚抑制の少なくとも一方の作用を有する剤として用いることに,格別の創意を要したものとはいえないと判断した点は誤りである。\n

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平成25(行ケ)10310  審決取消請求事件  実用新案権  行政訴訟 平成26年7月9日  知的財産高等裁判所

 登録実用新案について、無効理由無しとした審決が取り消されました。
 甲1及び甲2対象品は,その形状等からみて,いずれも審決が甲1考案として認定したとおりの構成を有するものと認められ,本件考案1との相違点も,審決の認定のとおり,甲1及び甲2対象品が「付箋紙の積重ね層の中間部分に位置している色の付箋紙だけを剥離しても,他の付箋紙が分離してばらばらになることのないように,個々の上記付箋紙束が,多数枚の上記付箋紙の端縁の集まりによって形成されている上記付箋紙束の面状の端面に剥離可能\に接合された帯状の連結材によって連結されている」との構成(本件連結構\成)を有するか否が明らかでない点である。 そこで,甲1及び甲2対象品が,本件連結構成を有するか否かについて検討する。\n技術的効果証明写真(甲16)及び係争付箋紙の機能説明用DVD(甲27)によれば,甲1及び甲2対象品を各々構\成する一塊となった4色組付箋紙束が実験に用いられているところ,4色組付箋紙束ブロックをそれぞれ広げると,一端は繋がったまま各色の付箋紙束が角度をなして離間した状態となること,これらの4色組付箋紙束ブロックの両側最外層に一対のクリップを取り付け,両クリップを持って付箋紙束ブロックを持ち上げると,一端は繋がったまま各色の付箋紙束が角度をなして離間した状態となることが認められ,甲1及び甲2対象品の4色組付箋紙束ブロックにおいて,各色の付箋紙束が一端にて連結されているといえる。そして,前記のとおり,甲1及び甲2対象品は同一製品であるところ,甲1又は甲2対象品内の4色組付箋紙束ブロックのうち,中間部分の色束を数十枚剥離しても,付箋紙束は繋がったままであり,実験後の付箋紙束の両側最外層に一対のクリップを取り付け,両クリップを持って付箋紙束ブロックを持ち上げても,一端が繋がったままである様子が認められ,中間部分に位置している色の付箋紙を剥離しても,残った付箋紙が分離してばらばらにならないといえる。さらに,複数枚の付箋紙を剥離した後の付箋紙束の面状の端面,すなわち,付箋紙束が連結されている部分を見ると,膜状の層を認識でき,この膜状の層は,付箋紙束の面状の端面全体に亘っていることが認められ,各色の付箋紙束の一端を連結するのが,各色の付箋紙束の一端の端面に跨って接合された膜状の層であるといえる。\n以上を総合すれば,甲1及び甲2対象品の4色付箋紙束ブロックは,各色の付箋紙束の一端の端面に跨って剥離可能に接合された膜状の層によって,各色の付箋紙束が一端にて連結されることで,中間部分に位置している色の付箋紙を剥離しても,残った付箋紙が分離してばらばらにならない構\成を有することが認められる。上記の「膜状の層」は本件考案1の「帯状の連結材」に相当するものであるから,両構成は一致しており,甲1及び甲2対象品の4色付箋紙束ブロックは,本件考案1の本件連結構\成を備えているといえる。

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平成25(行ケ)10245  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年7月17日  知的財産高等裁判所

 進歩性無しとした審決が、相違点の認定に誤りありとして取り消されました。
 引用文献においては,「Refining(精細)して再利用可能な程度の可塑性と粘着性を与える工程」については,「再生は脱硫のみならずRefiningに依つても行われる」,「(Refiningを)をおろそかにしている工場の殆ど總ては・・・出来上つた再生ゴムは粒子が粗く著しい見劣りが感ぜられた」,「何れにしてもRefiningは斯くの如く重要なもの」等とされており,「Refining(精細)して再利用可能な程度の可塑性と粘着性を与える工程」を重視すべきことが強調されている(甲2)。そうすると甲2発明に接した当業者は,再生(本願発明の「脱硫」)に際して「Refining(精細)して再利用可能な程度の可塑性と粘着性を与える工程」を強化するべきことを想到するとしても,「Refining(精細)して再利用可能な程度の可塑性と粘着性を与える工程」を必須としない構\成については,これを容易に想到し得ない。(3) 本願発明の「54〜100%の架橋を破壊して,加硫ゴム中の硫黄含量を減少するに十分な量のテルピン溶液」とは,本願発明の意味での「脱硫」,すなわち,使用済みの加硫ゴムを再利用できる形態まで「再生」すること,を基本的に完了するに足りる量のテルピン溶液を意味すると解される。一方,甲2発明の「再生方法」では,松根油と共に加熱する工程のみならず,可塑性及び粘着性を強めるRefining工程も必須であって,松根油と共に加熱する工程のみで「再生」が行われるわけではないから,松根油の量は,加硫ゴムを再利用できる可塑性及び粘着性を有する形態まで「再生」するのに十分な量であるとは認められない。むしろ,引用文献には,前記のとおり油の量を多くし加熱時間を長くすると再生ゴムの腰が弱くなるので,そうせずにRefiningを十分に行うことで十\分な可塑性と粘着性を有し,腰の強い再生ゴムが得られる旨が記載されているので,油の量を多くすることには阻害要因があるというべきである。(4) したがって,本願発明と甲2発明との間の上記各相違点に係る構成は,当業者が容易に想到し得たものであるとはいえないから,審決の容易想到性判断には誤りがある。そして,この誤りは結論に影響を及ぼすものであるから,原告主張の取消事由4は理由がある。\n

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平成25(行ケ)10248 審決取消訴訟 特許権 行政訴訟 平成26年05月26日 知的財産高等裁判所

 引用文献の認定誤りを理由として、進歩性無しとした審決が取り消されました。
 甲1発明は,前記(1)イに認定したとおりであるから,甲1発明における,排気ガスの酸素濃度が低下したとき(リッチ燃焼運転時)に,「HCが部分酸化されて活性化され,NOxの還元反応が進みやすくなり,結果的に,HC及びNOx浄化率が高まる」という作用効果は,NOx吸収材と貴金属とを含む排気ガス浄化用触媒に追加した「Ce−Zr−Pr複酸化物」によって奏したものであって,排気ガスの酸素濃度を前記段落【0058】のように「2.0%以下,あるいは0.5%以下」となるように制御することによって奏したものではない。すなわち,「Ce−Zr−Pr複酸化物」は,前記作用効果を奏するための必須の構成要件であるというべきであり,排気ガスの酸素濃度を「2.0%以下,あるいは0.5%以下」となるように制御した点は,単に,実施例の一つとして,リーン燃焼運転時に「例えば4〜5%から20%」,リッチ燃焼運転時に「2.0%以下,あるいは0.5%以下」との数値範囲に制御したにとどまり,前記作用効果を奏するために施した手段とは認められない。したがって,引用発明において,「HCが部分酸化されて活性化」されるのは,NOx吸収材と貴金属とを含む排気ガス浄化用触媒において,「Ce−Zr−Pr複酸化物」を含むように構\成したことによるものであるから,引用例1に,「排気ガス浄化用触媒1の入口側の排気ガスの酸素濃度は2.0%以下に制御」(段落【0058】)することにより,HCの部分酸化をもたらすことを内容とする発明が,開示されていると認めることはできない。そうすると,審決は,引用発明の認定において,「酸素濃度は2.0%以下に制御され,HCが部分酸化されて活性化されNOxの還元反応が進みやすくなり,結果的にHC及びNOx浄化率が高まる,排気ガス浄化装置」と認定しながら,そのような作用効果を奏する必須の構成である「Ce−Zr−Pr複酸化物」を排気ガス浄化用触媒に含ませることなく,欠落させた点において,その認定は誤りであるといわざるを得ない。\n

◆判決本文

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平成25(行ケ)10259 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成26年04月24日 知的財産高等裁判所

 進歩性違反無しとした審決が、共通の技術分野に属するものであるとして、取り消されました。
 本件特許発明1は,帯電微粒子水を食品収納庫内の空気中に浮遊させて当該帯電微粒子水に含まれる活性種とエチレンガスを反応させ,二酸化炭素と水に分解するエチレンガスの除去方法であるのに対し,甲1発明1は,帯電微粒子水を室内の空気中に浮遊させて当該帯電微粒子水に含まれる活性種とアセトアルデヒドを反応させて消臭するものではあるが,いずれも,活性種を用いて対象物を除去し空気を清浄する点では共通するものである。さらに,前記・・・において認定した甲2公報ないし甲5公報に記載された技術は,その生成方法や生成された活性種の状態について本件特許発明1や甲1発明1のものと同一とはいえないものも含まれるものの,いずれも活性種を利用し空気等を清浄した点では共通する。そうすると,原出願時の当業者は,本件特許発明1,甲1発明1及び・・・において認定した各技術につき「活性種を利用した空気清浄技術」という共通の技術分野に属するものと認識するものと認められる。さらに,前記イにおいて認定した技術も,その内容に照らし,いずれも「活性種を利用した空気清浄技術」に属するものと認められる。そして,前記・・・において認定したところに照らすと,「活性種を利用した空気清浄技術」という技術分野において,同一の活性種の発生方法(発生装置)を,空気清浄機や食品収納庫やエアコンや加湿器等の異なる機器の間で転用したり,脱臭や除菌やエチレンガスの分解等の異なる目的の用途に利用することは,原出願時において,当業者において通常に行われていた技術常識であると認められる。さらに,前記・・・において認定したところに照らすと,一般に,植物の成長促進成分として野菜や果実からエチレンガス及びアセトアルデヒドが出ることが知られており,このエチレンガス及びアセトアルデヒドを活性種により分解することは,原出願時において周知の技術であるものと認められる。加えて,・・・とおり,甲2公報ないし甲5公報には,食品収納庫において活性種が食品から出るエチレンガスを分解することが記載されているほか,甲4公報には,OHラジカルがエチレンを炭酸ガス(CO2)と水に分解することが記載されていることに照らすと,食品収納庫内のエチレンガスを除去することが求められており,そのために活性種を用いる技術が存在したことが認められる。また,前記・・・において認定したところに照らすと,甲1発明1並びに甲2公報及び甲3公報に記載された技術は,いずれも,活性種が水と結合している状態のものを利用して空気等を清浄する点で共通するものと認められる。以上によれば,甲1発明1において,帯電微粒子水に含まれる活性種につき,アセトアルデヒドと反応させて消臭することに代えて,エチレンガスの除去に用いること,その際,帯電微粒子水を室内の空気中に浮遊させ,アセトアルデヒドを消臭することに代えて,帯電微粒子水を食品収納庫内の空気中に浮遊させて当該帯電微粒子水に含まれる活性種とエチレンガスを反応させ,二酸化炭素と水に分解することは,原出願時の当業者において容易に想到することができたものと認められる。よって,甲1発明1に甲2公報ないし甲5公報記載の技術並びに技術常識及び周知技術を適用して,本件特許発明1との相違点に係る構成とすることは,原出願時の当業者において,容易に想到することができたものと認められる。\n

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平成25(行ケ)10207 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成26年04月17日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、動機付け無しとして、拒絶審決が取り消されました。出願人は、三菱東京UFJ銀行です。
 相違点2は,本願発明は,「インターネットを介して利用者の情報閲覧手段よりリンク先の指定に関する情報を受信する手段」を有するのに対し,引用発明は,そのような手段を有するとはされていない点である。本件審決は,上記相違点2について,引用発明の具体的動作として,「アクセス可能なサーバー/アプリケーションのID/パスワードの束」を受け取る具体例が示されているが,ユーザーがどの「サーバー/アプリケーション」にアクセスしたいかを指定して,その指定された「サーバー/アプリケーション」の「ID/パスワード」を受け取るようにすることは,当業者が適宜になし得ることであり,その際に,「Webのアプリケーション」に対して「SSO環境を構\\築できる」ような製品である場合に,「インターネットを介して」,どの「サーバー/アプリケーション」にアクセスしたいかを指定する情報を「SSOサーバー」に送るようにすることも,当業者が適宜になし得ることにすぎないから,引用発明を,「インターネットを介して利用者の情報閲覧手段よりリンク先の指定に関する情報を受信する手段」を有するようなものとすることは,当業者が適宜になし得ることである旨判断した。 ア 前記1のとおり,本願発明における認証代行処理手段は,利用者の選択により,利用者の認証情報が登録されているリンク先が指定された場合に,利用者に代わって当該リンク先の認証処理を代行する機能を有するものである。すなわち,本願発明における認証代行処理手段は,利用者によるリンク先の指定情報及びその利用者情報を受け取って,リンク先情報登録手段から該当するリンク先情報(URL情報など)を,また認証情報格納手段から利用者のそのリンク先における認証情報(リンク先における利用者のユーザーID及びパスワードなど)を,それぞれ読み出すと共に,ひな形スクリプト/モジュール格納手段から,該当するリンク先のひな形スクリプトを読み出して,リンク先用の認証処理スクリプト(対象とするリンク先に自動的に接続処理を開始する処理をHTMLとJavaScriptにて記載したもの)を作成し,上記リンク先情報及び認証処理スクリプトを,利用者のブラウザに転送するので,利用者側のブラウザは,送られてきたリンク先情報で,目的とするリンク先にリンクすると共に,上記認証処理スクリプトに基づいて,ブラウザが,リンク先で実行される認証処理で表\\示される画面構成に対し,自動的に上記認証情報を埋め込んでいくため,利用者は,何ら選択したリンク先への操作を行わなくても,認証処理が自動的に実行されることになる。その結果,本願発明は,利用者が,ポータルサイトなどにおいてリンク先の選択を行うだけで,該リンク先に対して,何ら特別な操作を行わなくても,認証処理が自動的に実行されるため,それが終了した段階で,当該リンク先へのログインが可能\\となるという効果を奏し得るものである。そうすると,本願発明は,利用者の選択により,利用者の認証情報が登録されているリンク先が指定され,「利用者の情報閲覧手段よりリンク先の指定に関する情報を受信する手段」(相違点2に係る構成)によって,上記利用者によるリンク先の指定情報を受け取った認証代行処理手段が,利用者に代わって当該リンク先の認証処理を代行するものと認められる。
イ これに対し,引用発明は,前記3のとおり,SSOサーバーにログインすると,アクセス可能なサーバー/アプリケーションのID/パスワードの束と,各サーバー/アプリケーションの種類ごとに用意され,ログイン操作を自動化するスクリプトが,SSOサーバーからクライアント・モジュールに配布され,クライアント・モジュールは,ログイン操作を自動化するスクリプトを実行するものである。ここで,アクセス可能\\なサーバー/アプリケーションのID/パスワードの束とは,SSOサーバーにログインしたユーザーが,アクセスすることができる全てのサーバー/アプリケーションのID/パスワードの組合せであると理解することができる。また,前記3アのとおり,引用例の記載及び本技術分野における技術常識に照らせば,引用発明のSSOサーバーは,各サーバー/アプリケーションのリンク先情報を登録しておくリンク先情報登録手段を有し,クライアントモジュールは,SSOサーバーから,各サーバー/アプリケーションのリンク先情報を受け取るものである。そして,引用発明では,上記の構成を採用することによって,ユーザーは,一度のログイン操作で,アクセス可能\\な全てのアプリケーションを利用できるとの機能(シングル・サインオン(SSO)機能\\)を有すると認められる。そうすると,引用発明においては,一度SSOサーバーにログインすれば,クライアント・モジュールは,SSOサーバーにログインしたユーザーがアクセス可能な全てのサーバー/アプリケーションのID/パスワードの組合せ,各サーバー/アプリケーションの種類ごとのログイン操作を自動化するスクリプト,及び各サーバー/アプリケーションのリンク先情報を受け取るから,それ以降,SSOサーバーとの通信を行う必要がなく,ログイン操作を自動化するスクリプトを実行することで,シングル・サインオン機能\\を果たすとの作用効果を奏すると認められる。しかるに,このような構成を採用する引用発明について,SSOサーバーが「利用者の情報閲覧手段よりリンク先の指定に関する情報を受信する手段」を有するものとした上で,ユーザーがどの「サーバー/アプリケーション」にアクセスしたいかを指定して,その指定された「サーバー/アプリケーション」の「ID/パスワード」を受け取るように構\\成を変更するとすれば,利用者が情報閲覧手段よりリンク先の指定を行う都度,クライアント・モジュールは,SSOサーバーとの通信を行い,その指定された「サーバー/アプリケーション」の「ID/パスワード」を受け取り,上記指定された「サーバー/アプリケーション」へのログイン操作を自動化するスクリプトを実行することにより,シングル・サインオン機能を果たすことになる。しかし,それでは,一度SSOサーバーにログインすれば,クライアント・モジュールは,それ以降,SSOサーバーとの通信を行う必要がなく,ログイン操作を自動化するスクリプトを実行できるとの引用発明が有する上記の作用効果が失われることとなる。したがって,引用発明において,相違点2に係る本願発明の構\\成に変更する必要性があるものとは認められない。このように,引用発明について,SSOサーバーが「利用者の情報閲覧手段よりリンク先の指定に関する情報を受信する手段」を有するもの(相違点2に係る構成とすること)とした上で,ユーザーがどの「サーバー/アプリケーション」にアクセスしたいかを指定して,その指定された「サーバー/アプリケーション」の「ID/パスワード」を受け取るように構\\成を変更することについては,引用発明が本来奏する上記作用効果が失われるものであって,その必要性が認められないから,引用発明における上記構成上の変更は,解決課題の存在等の動機付けなしには容易に想到することができない。しかして,引用例には,引用発明について上記構\\成上の変更をすることの動機付けとなるような事項が記載又は示唆されていると認めることはできない。
ウ 前記アのとおり,本願発明は,利用者の選択により,利用者の認証情報が登録されているリンク先が指定され,「利用者の情報閲覧手段よりリンク先の指定に関する情報を受信する手段」(相違点2に係る構成)によって,上記利用者によるリンク先の指定情報を受け取った認証代行処理手段が,利用者に代わって当該リンク先の認証処理を代行するものであるから,本願発明と引用発明とは,相違点2に係る構\\成により,作用効果上,格別に相違するものであり,引用発明において,相違点2に係る本願発明の構成を採用することは,当業者が適宜なし得る程度のものとは認められない。\n

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平成25(行ケ)10214 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成26年03月25日 知的財産高等裁判所

 相違点の認定について誤っているとして、進歩性無しとした審決が取り消されました。
 審決は,「ソレノイド駆動ポンプを含む電気機器や電気システムにおいて,設計上その使用に適した電圧が設定されていることは電気機器・システムにおける技術常識である。」,「交流電源を用いる電気機器において,電源電圧が異なっても同じ機器を使用できるように対処しようとする課題は周知の課題…であるから,パソ\\コン・家電用品に限らず,ポンプ等交流電源を用いるものならば当然要求される課題である。また,刊行物1発明の課題も入力電圧の異なる複数の電源に対応することである。」,「交流電源を用いる機器であるソレノイド駆動ポンプは,…従来から周知の技術である。」,「刊行物2には,ソ\\レノイドを用いるポンプ…の入力電圧が異なっても…,オン・オフのデューティを制御…する信号…を用いて所望の直流電圧を得ることが記載されている」,「自動車用の燃料ポンプとしてポンプ動作体…を往復動作するためにソレノイドが用いられるものは,…常套手段である」とし,「入力電圧の異なる複数の電源に対応することを課題とする刊行物1発明を,刊行物2記載の事項,上記技術常識,上記周知の課題,上記周知の技術及び上記常套手段の下,適用対象を本件訂正発明のソ\\レノイド駆動ポンプとし,本件訂正発明の上記相違点1に係る構成とすることは当業者であれば容易に想到し得ることと認められる。」(審決書17〜19頁)と判断した。しかしながら,審決の上記判断は,次に述べるとおり誤りである。ア 本件訂正発明は,前記(1)のとおり,ソレノイド駆動ポンプの制御回路に関する発明であり,ポンプの技術分野に属するものであって,その課題は,ユーザーが電源電圧の選択を必要とせず,かつ,種類が低減され,したがって,管理が容易なソ\\レノイド駆動ポンプの制御回路を提供することである。これに対し,刊行物1発明は,前記(2)のとおり,パソコン等の電子機器に内蔵されたDC/DCコンバータの制御回路に関する発明であり,電子機器の技術分野に属する発明であって,その課題は,利用者の経済的負担を軽減でき,設置面積が少なくて済み,かつ様々な電源に対応可能\\な電源供給手段を備えた電子機器を提供することにある。このように,刊行物1発明は,電子機器の技術分野に属するものであるのに対し,本件訂正発明はポンプの技術分野に属するものであるから,両者の技術分野は明らかに相違する。しかるに,審決は,上記のとおり,交流電源を用いる電気機器において,電源電圧が異なっていても同じ機器を使用できるようにするとの課題は周知の課題であることを理由として,ソレノイド駆動ポンプにも上記課題があるとする。しかし,これは技術分野を特定しない交流電源を用いる電気機器における課題であって,ポンプの技術分野における課題ではないし,ポンプの技術分野において当然に要求される課題であることを示す証拠もない。そもそも,本件訂正発明が属するポンプの技術分野における当業者が,ポンプとは明らかに技術分野が異なる電子機器に関する刊行物1に接するかどうかも疑問であり,また,仮に,ポンプの技術分野における当業者が刊行物1に接したとしても,刊行物1発明は,携帯型パーソ\\ナルコンピュータ等の電子機器に関するものであり,刊行物1には,ポンプについての記載はなく,刊行物1発明が技術分野の異なるポンプに対しても適用可能であることについてはその記載もなければ示唆もない。したがって,携帯型パーソ\\ナルコンピュータ等の電子機器に関する刊行物1発明をポンプに適用しようとする動機付けもないといわざるを得ない。以上によれば,刊行物1発明を本件訂正発明の相違点1に係る構成とすることが容易想到であるとした審決の前記判断は誤りである。イ 被告は,刊行物1発明も本件訂正発明も共に電源電圧の変換回路を開示しており,技術分野は同一であると主張し,また,刊行物1発明において用いられている「DC/DCコンバータ」は周知の技術であり,電気機器,電子機器全般に適用可能な汎用技術であるから,その適用範囲内において適用対象が異なっても,技術分野が異なることになるとはいえないとも主張する。しかし,前記のとおり,本件訂正発明はポンプの技術分野に属する発明であるのに対し,刊行物1発明は,電子機器の技術分野に属する発明であって,両者の属する技術分野は,明らかに異なる。そして,刊行物1発明が本件訂正発明と同様に電源電圧の変換回路を開示しているとしても,また,刊行物1発明において用いられている「DC/DCコンバータ」が周知の技術であり,電気機器,電子機器全般に適用可能\\な汎用技術であるとしても,刊行物1発明をポンプに適用しようとする動機付けがないことは前記のとおりである。

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◆関連事件です。平成25(行ケ)10193

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平成25(行ケ)10163 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成26年01月30日 知的財産高等裁判所

審判では訂正を認めた上で無効であると判断されましたが、裁判所はこれを取り消しました。理由は、引用文献の認定誤りです。
 以上の甲11公報の記載に照らすと,放電によって発生するマイナスの極小イオンは,その後,「水の分子に極小イオンが結合して,水分子のクラスターを核とする0.001μm(判決注・1nm)程度の大きさの動きやすい小イオン」となるものとされているにとどまる。また,上記図3には「O2―(H2O)n」が示されているが,これも上記の小イオンに該当するものである。そうすると,甲11公報に,高電圧により大気中で水を静電霧化して生成された帯電微粒子水にラジカルが含まれることが開示されているとは認められない。・・・・以上によれば,本件優先日において,高電圧により大気中で水を静電霧化して生成された帯電微粒子水にラジカルが含まれることが技術常識であったとも,当業者が上記の事項を認識できたともいえない。なお,ラジカルにより臭気を除去できることが本件優先日時の技術常識であったとしても,臭気を除去するものとして水粒子に溶解させること (甲8,20参照)など他の方法も存在するものである以上,上記の点のみをもって甲1発明1の帯電微粒子水による消臭効果がラジカルによるものであると認識することができるものということはできない。そうすると,甲4公報の記載及び技術常識に基づき,甲1発明1の帯電微粒子水にラジカルが含まれ,これにより消臭がなされたと認識することが容易であるということはできない。

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平成25(行ケ)10087 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成26年01月22日 知的財産高等裁判所

 本件発明の認定に誤りがあるものの、結果的に相違点は容易に発明できるとして拒絶審決が維持されました。
 本願発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載中には,「ローカル無線ゾーン内のモバイル端末に位置ベース情報を提供するための方法」,「アクセスポイントを介したモバイル端末とのローカル無線通信が可能である,一意のゾーン識別子に関連付けられたローカル無線ゾーン内のモバイル端末を認識すること」との記載があるが,「モバイル端末が複数のローカル無線ゾーン内に位置していること」,すなわち,モバイル端末が,別紙1の図2に示すような,複数のローカル無線ゾーンが重複するエリアに位置することを発明の特定事項とする旨の記載はない。そうすると,本件審決が認定した相違点である「本願発明は,モバイル端末が複数のローカル無線ゾーン内に位置していることを前提として,アクセスポイントに関連付けられたサーバを選択するために一意のゾーン識別子を使用するのに対して,引用発明は,アクセスポイントに関連付けられたサーバから位置ベース情報を得るものの,そのようなサーバを一意のゾーン識別子を使用して選択するものか否か明確ではない点。」のうち,「本願発明は,モバイル端末が複数のローカル無線ゾーン内に位置していることを前提として」との部分は適切とはいえない。したがって,本願発明と引用発明の相違点は,本件審決が認定した相違点から上記部分を除き,「本願発明が,アクセスポイントに関連付けられたサーバを選択するために一意のゾーン識別子を使用するのに対して,引用発明は,その点が不明である点。」(以下「本件相違点」という。)と認定すべきであったものというべきである。そこで,本件相違点について検討するに,引用発明は,無線端末装置5a〜5cは,それぞれ最寄りの無線基地局装置2a〜2cとの無線接続を確立し(S1),無線基地局装置固有の無線基地局識別番号を取得して(S2),その識別番号をアドレス提供サーバ3に送信し(S3),アドレス提供サーバ3は,受信した無線基地局識別番号に対応する情報のURLを,自己が保有する対応表\から取得し,無線端末装置5a〜5cに送信し(S4),URLを受信した無線端末装置5a〜5cは,そのURLを元に情報サーバ1a〜1cに接続し(S5),その地域に応じた情報を取得する(S6)方法である(引用文献の段落【0031】,【0032】及び別紙2の図3参照)。引用文献には,アクセスポイントに関連付けられたサーバを選択するために,無線基地局識別番号を使用するとの明示の記載はない。しかしながら,引用発明においては,無線端末装置5a〜5cは,アドレス提供サーバ3から送信された情報のURLを元に情報サーバ1a〜1cに接続し,接続した情報サーバ1a〜1c内の地域に応じた情報を取得し,しかも,情報のURLは無線基地局識別番号に対応するものであるから,無線基地局識別番号は,無線基地局装置2a〜2cに関連付けられた情報サーバ1a〜1cを選択するために使用されているものと認められる。そして,引用発明の「無線基地局識別番号」は本願発明の「一意のゾーン識別子」に,「無線基地局装置2a〜2c」は本願発明の「アクセスポイント」に,「情報サーバ1a〜1c」は本願発明の「サーバ」に,情報サーバ1a〜1c内の「地域に応じた情報」は本願発明の「位置ベース情報」にそれぞれ相当することは,前記1で認定したとおりである。そうすると,引用文献には,アクセスポイントに関連付けられたサーバを選択するために「無線基地局識別番号」(一意のゾーン識別子)を使用するとの明示の記載はないものの,引用発明においては,情報サーバ1a〜1c内の地域に応じた情報を選択する前提として,無線基地局識別番号がサーバを選択するために使用されており,本件相違点は,本願発明と引用発明の実質的な相違点とはいえないから,当業者であれば,相違点に係る本願発明の構成(「アクセスポイントに関連付けられたサーバを選択するために一意のゾーン識別子を使用する構\成」)を容易に想到し得たものと認められる。

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平成25(行ケ)10109 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年12月25日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性無しとした審決が取り消されました。
 本願発明は,車等の移動体に搭載されたナビゲーション装置を介して,移動体が走行する経路等の周辺の施設等に関する広告情報を提供する移動体広告システムにおける経路広告枠設定装置に関する発明である。従来の移動体広告システムは,移動体の位置や,予めユーザが目的地を登録することにより決定された経路に応じて広告情報を配信するものであったが,配信する広告情報が地図上の各エリアに対応付けられていたため,移動体が所定の経路を外れても,エリア内であれば,エリアに対応付けられた広告情報が配信されてしまうという解決課題があった。本願発明は,エリアに代えて地図上の経路に応じて広告情報を配信可能\な経路広告枠設定装置を提供することを目的とするものである。本願発明における経路広告枠設定装置は,通信ネットワークを介して広告主の端末と接続しており,この広告主の端末から,地図上の経路に関する,線描写によって設定された経路情報を受信し,受信した前記経路情報に広告枠を設定し,記憶部に有する経路データベースに記憶するとの構成を有するものであり,広告主は,地図上の様々な経路に広告枠を設定することができるとするものである。そして,ユーザの端末からユーザの位置情報を取得し,当該位置情報を含む経路を特定して,当該経路に関連する広告枠の広告情報をユーザの端末に送信する。\n
(2) 容易想到性の有無
引用例1発明は,広告枠を地図上のエリアに設定し,広告主が供給する広告情報と地図上のエリア情報の対応関係をデータベースに記憶し,現在位置が含まれる地図上のエリアに対応した広告情報をデータベースから読み出して,ナビゲーション装置に送信するという,移動体広告システムの発明であり,本願明細書が言及するとおり,移動体が所定の経路を外れても,エリア内であれば,エリアに対応付けられた広告情報が配信されてしまうとの未解決の課題を残した発明である。他方,引用例2は,車載ナビゲーション・システム等を使用した,位置に基づく広告の提供方法に関する発明を記載したものである。引用例2には,広告メッセージを伝えることができる位置として,通行可能な道路沿いの特定位置を「仮想広告掲示板」の位置として指定し,ナビゲーション・サービス・プロバイダは広告主との契約に基づき,設けられた「仮想広告掲示板」の位置を通過するエンドユーザに広告メッセージを伝えるとの技術事項が記載開示されている。引用例2に記載された上記技術は,通行可能\な道路沿いの特定位置を通過するユーザに対して,広告メッセージを伝えるものであり,広告メッセージが送信されるのは,ユーザが特定の位置を通過した時点である。広告枠を地図上のエリアに設定し,広告主が供給する広告情報と地図上のエリア情報の対応関係をデータベースに記憶し,現在位置が含まれる地図上のエリアに対応した広告情報をデータベースから読み出して,ナビゲーション装置に送信するという発明である引用例1発明と,通行可能な道路沿いの特定位置を「仮想広告掲示板」の位置として指定し,位置を通過するエンドユーザに広告メッセージを伝えるとの引用例2に記載された技術事項を組み合わせたとしても,本願発明における地図上の経路に広告枠を設定するとの構\成に至ることはない。また,引用例1発明に引用例2の記載事項を組み合わせても本願発明における上記構成に至らない以上,経路を線描写によって設定することが周知事項であったとしても,引用例1発明に引用例2の記載事項及び上記周知事項を組み合わせることにより本願発明の上記構\成に至ることはない。したがって,広告枠を地図上の経路に対して設定することが引用例2の段落【0060】及び【0061】の記載並びに図11から出願前公知であるとして,経路を線描写によって設定することが周知事項であることを考慮し,引用例1発明の地図上のエリアとして引用例2の記載事項にあるような道路区間(経路)を採用し,相違点の構成とすることが当業者において容易になし得ることであるとした審決の判断には誤りがある。
(3) 被告の主張に対して
被告は,引用例2における「道路区間」は本願発明における「経路」に相当し,引用例2には「道路(経路)に対して広告を設定すること」が記載されているのであるから,引用例1発明に引用例2に記載の技術事項を採用して,相違点に係る構成に至るのは容易であると主張する。しかし,引用例2に記載された「道路区間」の語は,仮想広告掲示板を設定する「道路区間」沿いの位置を特定する文脈の中で用いられたものであって,広告枠を設定する対象を意味するものとして用いられた語ではない。したがって,引用例2における「道路区間」と本願発明における「経路」とは,技術的意義において相違する。引用例2においては,移動体が当該道路区間上を移動中であったとしても,当該特定位置に至らない限り,広告メッセージは配信されないのであるから,「広告枠を経路情報に設定」することが記載されているとはいえず,被告の主張は失当である。\n

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平成25(行ケ)10109 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年12月25日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性無しとした審決が取り消されました。
 本願発明は,車等の移動体に搭載されたナビゲーション装置を介して,移動体が走行する経路等の周辺の施設等に関する広告情報を提供する移動体広告システムにおける経路広告枠設定装置に関する発明である。従来の移動体広告システムは,移動体の位置や,予めユーザが目的地を登録することにより決定された経路に応じて広告情報を配信するものであったが,配信する広告情報が地図上の各エリアに対応付けられていたため,移動体が所定の経路を外れても,エリア内であれば,エリアに対応付けられた広告情報が配信されてしまうという解決課題があった。本願発明は,エリアに代えて地図上の経路に応じて広告情報を配信可能\な経路広告枠設定装置を提供することを目的とするものである。本願発明における経路広告枠設定装置は,通信ネットワークを介して広告主の端末と接続しており,この広告主の端末から,地図上の経路に関する,線描写によって設定された経路情報を受信し,受信した前記経路情報に広告枠を設定し,記憶部に有する経路データベースに記憶するとの構成を有するものであり,広告主は,地図上の様々な経路に広告枠を設定することができるとするものである。そして,ユーザの端末からユーザの位置情報を取得し,当該位置情報を含む経路を特定して,当該経路に関連する広告枠の広告情報をユーザの端末に送信する。\n
(2) 容易想到性の有無
引用例1発明は,広告枠を地図上のエリアに設定し,広告主が供給する広告情報と地図上のエリア情報の対応関係をデータベースに記憶し,現在位置が含まれる地図上のエリアに対応した広告情報をデータベースから読み出して,ナビゲーション装置に送信するという,移動体広告システムの発明であり,本願明細書が言及するとおり,移動体が所定の経路を外れても,エリア内であれば,エリアに対応付けられた広告情報が配信されてしまうとの未解決の課題を残した発明である。他方,引用例2は,車載ナビゲーション・システム等を使用した,位置に基づく広告の提供方法に関する発明を記載したものである。引用例2には,広告メッセージを伝えることができる位置として,通行可能な道路沿いの特定位置を「仮想広告掲示板」の位置として指定し,ナビゲーション・サービス・プロバイダは広告主との契約に基づき,設けられた「仮想広告掲示板」の位置を通過するエンドユーザに広告メッセージを伝えるとの技術事項が記載開示されている。引用例2に記載された上記技術は,通行可能\な道路沿いの特定位置を通過するユーザに対して,広告メッセージを伝えるものであり,広告メッセージが送信されるのは,ユーザが特定の位置を通過した時点である。広告枠を地図上のエリアに設定し,広告主が供給する広告情報と地図上のエリア情報の対応関係をデータベースに記憶し,現在位置が含まれる地図上のエリアに対応した広告情報をデータベースから読み出して,ナビゲーション装置に送信するという発明である引用例1発明と,通行可能な道路沿いの特定位置を「仮想広告掲示板」の位置として指定し,位置を通過するエンドユーザに広告メッセージを伝えるとの引用例2に記載された技術事項を組み合わせたとしても,本願発明における地図上の経路に広告枠を設定するとの構\成に至ることはない。また,引用例1発明に引用例2の記載事項を組み合わせても本願発明における上記構成に至らない以上,経路を線描写によって設定することが周知事項であったとしても,引用例1発明に引用例2の記載事項及び上記周知事項を組み合わせることにより本願発明の上記構\成に至ることはない。したがって,広告枠を地図上の経路に対して設定することが引用例2の段落【0060】及び【0061】の記載並びに図11から出願前公知であるとして,経路を線描写によって設定することが周知事項であることを考慮し,引用例1発明の地図上のエリアとして引用例2の記載事項にあるような道路区間(経路)を採用し,相違点の構成とすることが当業者において容易になし得ることであるとした審決の判断には誤りがある。
(3) 被告の主張に対して
被告は,引用例2における「道路区間」は本願発明における「経路」に相当し,引用例2には「道路(経路)に対して広告を設定すること」が記載されているのであるから,引用例1発明に引用例2に記載の技術事項を採用して,相違点に係る構成に至るのは容易であると主張する。しかし,引用例2に記載された「道路区間」の語は,仮想広告掲示板を設定する「道路区間」沿いの位置を特定する文脈の中で用いられたものであって,広告枠を設定する対象を意味するものとして用いられた語ではない。したがって,引用例2における「道路区間」と本願発明における「経路」とは,技術的意義において相違する。引用例2においては,移動体が当該道路区間上を移動中であったとしても,当該特定位置に至らない限り,広告メッセージは配信されないのであるから,「広告枠を経路情報に設定」することが記載されているとはいえず,被告の主張は失当である。\n

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