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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

要旨認定

平成22(行ケ)10407 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年12月26日 知的財産高等裁判所

 引用発明の認定に誤りありとして、拒絶審決が取り消されました。
 上記によれば,引用例1には,以下の技術が記載されていると解される。風力発電設備(本願発明の「風力発電装置」に該当する。)は,風力によって発電する設備であることから,気象条件や立地条件によって発電量が異なり,全ての風力発電設備から常に最大電力出力が得られるとは限らない。したがって,従来の複数の風力発電設備を備えた風力発電施設(本願発明の「ウインドパーク」に該当する。)では,施設全体の最大電力出力を連続して出すことができなかった。そこで,風力発電施設が,送電網の最大許容送電量(可及的最大送電網出力電力)よりも高い全出力電力が出せるようにした上で,全出力電力が送電網の最大許容送電量を超過する場合には,風力発電施設調整が働き,常に送電網の最大許容送電量となるように個々の風力発電設備を調整するとの構成を採用することにより,上記課題の解決を図った。具体的には,風力発電施設の全出力電力が送電網の最大許容送電量となるように,少なくとも1基,又は全ての風力発電設備の出力電力が,定格出力電力の0から100%の範囲内で調整され,全ての風力発電設備を同様に調整することも,風力発電設備によって調整の程度が異なることも可能\である。そして,送電網の電圧に応じて,風力発電設備の発電機の出力を制御することも可能である。また,個々の風力発電設備を調整するには,発電設備のデータ入力と接続してデータ処理装置を接続することも可能\である。これにより,送電網の送電網構成部品が最適化された態様で利用されることができる。以上によると,引用例1には,「複数の風力発電設備を備えた風力発電施設であって,上記風力発電施設に接続されている送電網に,発生した電力を供給する風力発電施設の運転方法は,上記風力発電施設により供給される電力をそれぞれの風力発電設備のデータ入力に接続されたデータ処理装置で制御可能\として,全ての風力発電設備の出力電力を上記データ処理装置で定格出力電力の0から100%の範囲内で調節することができると共に,風力発電施設が送電網の最大許容送電量よりも高い全出力電力を出せるようにしたうえで,送電網の電圧に応じて風力発電施設全体の出力電力が送電網の最大許容送電量となるように調整するステップからなる運転方法。」との技術が開示されているといえるが(下線部分は,審決における引用発明の内容の認定と異なる部分である。),「送電網の電圧に応じて風力発電施設全体の出力電力を(その定格出力電力の)0から100%の範囲内の所望値に設定する」との技術は,開示されていない。

◆判決本文

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平成23(行ケ)10100 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年10月31日 知的財産高等裁判所 

 引用文献の認定誤りを理由に、進歩性なしとした審決が取り消されました。
 ところで,合金においては,それぞれの合金ごとに,その組成成分の一つでも含有量等が異なれば,全体の特性が異なることが通常であって,所定の含有量を有する合金元素の組合せの全体が一体のものとして技術的に評価されると解すべきである。本件全証拠によっても,「個々の合金を構成する元素が他の元素の影響を受けることなく,常に固有の作用を有する」,すなわち,「個々の元素における含有量等が,独立して,特定の技術的意義を有する」と認めることはできない。したがって,引用例に,複数の鋼(鋼1ないし鋼5)が実施例として示されている場合に,それぞれの成分ごとに,複数の鋼のうち,別個の鋼における元素の含有量を適宜選択して,その最大含有量と最小含有量の範囲の元素を含有する鋼も,同様の作用効果を有するものとして開示がされているかのような前提に立って,引用発明の内容を認定した審決の手法は,技術的観点に照らして適切とはいえない。上記1(2) カないしサによれば,引用例には,成分間の相互作用を前提とした各種機構により鋼の強化を図るため,一般に,鋼成分として,Si,Mn,P,Ti,Nb等の元素が添加され,これらの添加元素のうち,Siは特にめっき性を阻害する元素であるので,鋼板には積極的には含有させないか,含有させる場合でも少量のみとすれば,めっき性への阻害要因を排除できること,Pは,強化作用は大きいが合金化を遅滞させるという不利な影響も有しているので,鋼板中の含有量を低下させることで対処できること,Mnは,強化元素として一般的に多用されるが,高Mn量を含有する高張力合金化溶融亜鉛めっき鋼板では,合金化めっき層中のMn濃度の上昇を生じて,溶融めっき性や耐パウダリング性への悪影響が顕在化すること,鋼板のMn含有量が1.0 質量%以上の高い量であっても,合金化しためっき層中のMn量を100mg/m2以下,好ましくは60mg/m2以下に抑制することができれば,溶融めっき性や耐パウダリング性における問題点を解消することができること等が開示されていると認められる。そして,上記1(2) ウ,エによれば,引用例記載の発明は,高Mn系の高張力溶融亜鉛めっき鋼板における不めっき等の溶融めっき性不良や耐パウダリング性不良の問題を解決するものであり,優れた溶融めっき性や耐パウダリング性を安定して得られる高張力合金化溶融亜鉛めっき鋼板の提案を目的とすることも認められる。以上によれば,引用発明は,優れた溶融めっき性や耐パウダリング性を安定して得られる高張力合金化溶融亜鉛めっき鋼板の提案を目的とするところ,鋼においては,一般に,成分として添加される元素間の相互作用が高く,1つの鋼を組成する元素の組合せ及び含有量(含有する質量割合)が,一体として,鋼の特性を決定する上で重要な技術的意義を有することが認められる。引用例の上記説明は,各元素ごとに,5つの独立した任意の鋼の中から含有量の最大値と最小値の範囲の含有量により組成される,あたかも1種の鋼において,特定の性質(優れた溶融めっき性や耐パウダリング性を安定して得られる高張力合金化溶融亜鉛めっき鋼板)を有することを開示したことを意味するものでもなく,具体的な鋼の組成及び性質を特定したものと理解することもできない。したがって,審決のした引用発明の認定は,誤りというべきである。

◆判決本文

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平成22(行ケ)10245 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年10月24日 知的財産高等裁判所

 「CMITを含まない」との限定がなされた請求項にかかる発明について、無効審判では進歩性なしとの判断がなされました。これに対して、裁判所は、「引用文献1には、CMITが含有されたことによる問題点(解決課題)及び解決手段等の言及は一切なく,したがって「CMITを含まない」との技術的構成によって限定するという技術思想に関する記載又は示唆は何らされていない」として、進歩性なしとした審決を取り消しました。
 当該発明と出願前に公知の発明等(以下「公知発明」という場合がある。)を対比して,公知発明が,当該発明の特許請求の範囲に記載された構成要件のすべてを充足する発明である場合には,当該発明は特許を受けることができないのはいうまでもない(当該発明は新規性を有しない。)。これに対して,公知発明が,当該発明の特許請求の範囲に記載された構\成要件の一部しか充足しない発明である場合には,当該発明は特許を受けることができる(当該発明は新規性を有する。)。ただし,後者の場合には,公知発明が,「一部の構成要件」のみを充足し,「その他の構\成要件」について何らの言及もされていないときは,広範な技術的範囲を包含することになるため,論理的には,当該発明を排除していないことになる。したがって,例えば,公知発明の内容を説明する刊行物の記載について,推測ないし類推することによって,「その他の構成要件についても限定された範囲の発明が記載されているとした上で,当該発明の構\成要件のすべてを充足する」との結論を導く余地がないわけではない。しかし,刊行物の記載ないし説明部分に,当該発明の構成要件のすべてが示されていない場合に,そのような推測,類推をすることによってはじめて,構\成要件が充足されると認識又は理解できるような発明は,特許法29条1項所定の文献に記載された発明ということはできない。仮に,そのような場合について,同法29条1項に該当するとするならば,発明を適切に保護することが著しく困難となり,特許法が設けられた趣旨に反する結果を招くことになるからである。上記の場合は,進歩性その他の特許要件の充足性の有無により特許されるべきか否かが検討されるべきである。上記の観点から,新規性を否定した審決の当否を検討する。
・・・・
甲1に上記の記載があったとしても,上記アで認定したとおり,甲1に接した当業者は,「CMITを含まない」との構成によって限定された範囲の発明が記載されていると認識することはないというべきである。すなわち,i)甲1発明には,上記のとおり,CMITが含まれたことによって生じる問題点に関する指摘は,全くされていないこと,ii)のみならず,甲1発明では,CMITが一般式(2)で示される化合物の具体例(2−2)として記載されていること,iii)本件優先日において,当業者が利用可能なMITとしては,CMITとの混合物しか市販されていなかったこと(甲7,甲34ないし39,乙6),iv)甲1の表2に示される実施例として用いられたMITにCMITが含まれるか否かを,原告において追試により確認した結果によれば,実施例は,純粋なMITからなるものではなく,むしろMITにCMITが含まれたものであると推測されること(甲25,28,42,43),v)甲1の出願人と同一の出願人の特許出願に係る明細書において,「MITの合成法では,CMITの生成が避けられず,仕方なくこれまで両者の混合物を使用してきた」,「MITを単一に得ることは難しく,製造コストの点からわざわざ分離してまで使用することはしなかったからである。」(甲46,平成16年3月出願)などの記述があり,本件発明の出願日(優先日)当時においても,一般に,上記明細書に記述されていたとおりの認識がされていたと推認されること等の諸事実を総合すれば,当業者であれば,甲1発明において使用されるMITは,当然にCMITを含有するものであり,製造コストをかけて,CMITを除去するような化合物を使用することはないと認識していたものと解するのが合理的である。そうすると,甲1には,MIT及びBITからなる実施例が示されていたとしてもなお,同実施例の記載から直ちに,「CMITを含まない」との構成要件を充足する発明が記載,開示されていると認定することはできない。\n

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平成23(行ケ)10048 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年10月20日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が、一致点の認定誤りがあるとして取り消されました。
   前記(1)エのとおり,引用発明における撮影処理は,撮影開始ボタンが操作されてから(ステップS5),撮影終了ボタンが操作されるまで(ステップS13)に行われるものであるところ,「編集対象の画像として選択したキープ画像」は,ステップS5からステップS13の間に行われるステップS11よって表示されるものであるから,撮影処理中に表\示される画像であると認められる。イ 他方,本件補正発明の「撮影処理によって撮影された画像の中から選択された編集対象の画像」は,編集用モニタに表示される「編集対象画像」に対応するものであるが(本件明細書【0083】),編集用モニタに編集対象画像を表\示するステップS32は,編集処理中に行われるものである。したがって,本件補正発明の「撮影処理によって撮影された画像の中から選択された編集対象の画像」は,編集処理中に表示される画像であると認められる。 以上によれば,引用発明の「編集対象の画像として選択したキープ画像」は,撮影処理中に表\示される画像であり,他方,本件補正発明の「撮影処理によって撮影された画像の中から選択された編集対象の画像」は,編集処理中に表示される画像であって,両者は異なる処理中に表\示される画像であるから,引用発明の「編集対象の画像として選択したキープ画像」は,本件補正発明の「撮影処理によって撮影された画像の中から選択された編集対象の画像」に相当するということはできない。
・・・
 以上からすると,本件補正発明と引用発明は,「表示領域が複数設けられる表\示手段」を有している点では一致しているものの,引用発明の操作パネル(13−1)は,「撮影処理によって撮影された画像の中から選択された編集対象の画像と,前記編集対象の画像に施す編集を支持するとき操作される操作画像のうちの少なくともいずれかを表示」するものではないし,また,引用発明は,「前記撮影処理が終了した後の編集処理中,前記表\示手段に設けられる複数の表示領域のうち,前記編集対象の画像と前記操作画像のいずれの画像も表\示していない表示領域に,前記編集処理が終了した後に行われる,前記編集処理とは別の処理としての前記編集対象の画像の処理に関する選択操作を行う画面を,他の前記表\示領域に前記編集対象の画像もしくは前記操作画像を表示させることと並行して表\示させる」機能を有しないから,本件審決の一致点の認定は誤りであるといわなければならない。\n

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平成22(行ケ)10405 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年10月24日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が、引用例の認定誤りがあるとして取り消されました。
 審決は,引用刊行物2の段落【0010】,【0017】の記載及び図1(別 紙図面8)に基づき,組立体の各端部を受容シリンダ8に取り付けて,組立体の各 端部を取り付けることが補償シリンダ6及び結合リング7の各端部の近くにおいて 組立体の各端部に接続フランジ10を取り付けることからなるようにした構成が示\nされていると認定する。しかし,審決の上記認定も,以下のとおり誤りがある。すなわち,引用刊行物2には,コリオリ導管1,補償シリンダ6及び結合リング7に,接続導管11を含めた組立体は記載されていない。また,引用刊行物2の【請求項14】,【請求項15】,段落【0017】の記載及び図1,2(別紙図面8,9)によれば,接続導管11は,結合リング9を貫通して接続フランジ10内に突き出るものであって,それ以上に,接続フランジ10或いは受容シリンダ8に何らかの手段により結合することなどの取り付けを想定しているとは解されない。仮に,引用刊行物2において,第1の補完手段を採用した場合,組立体の端部に位置する接続導管11は,補強シリンダ12に対し,有利には真空ろう付けによって,かつ有利には約1000℃のろう付け温度で結合されるが(段落【0019】),その場合であっても,結合された補強シリンダ12が,接続フランジ10或いは受容シリンダ8とどのように接続されるかは明らかでなく,また,コリオリ導管は,チタン又はチタン合金ではなく,ニッケル合金を使用するとされている(甲9の段落【0013】)。したがって,引用刊行物2には,組立体の各端部を受容シリンダ8に取り付けることは記載されておらず,審決の上記認定には誤りがある。

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平成22(行ケ)10282 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年10月12日 知的財産高等裁判所

 進歩性欠如により無効である、とした審決が取り消されました。
 以上によれば,本件訂正発明1の「液体供給空間」は,単に「ディスク状」であるだけでなく,さらに,上記i)ないしv)の構成を一体的に備えることによって,課題を解決できるという技術的意義を有するものと認められる。この点に関して,審決は,相違点1について,「『ディスク状』の『液体供給空間』それ自体は,甲第13,14号証にみられるごとく周知である。」(審決62頁5〜6行)と判断している。しかし,本件訂正発明1は,前記(1) イで認定したとおり,収束されるレーザービームによる材料加工方法であってレーザービームを導く液体ビームがノズルにより形成されて加工すべき加工片へ向けられる加工方法における「ディスク状」の「液体供給空間」を対象とする発明であるところ,甲13文献は,前記(3) アのとおり,内燃機関に用いられる燃料用の噴出ノズルに関し,従来この技術分野で達成できないと考えられていたような噴出比を得ることを課題とするものであり,本件訂正発明1とは技術分野もその機序も相違している。しかも,甲13文献に記載されたものは,前記課題を解決するために,カバープレートが旋回室によって区画されたノズル体の芯部の端面と共に円板状の間隙15を形成し,カバープレートに存する出口開口部が円板状の間隙15を介して旋回室と通じ,出口開口部の断面が間隙の周面よりも数倍大きく構成することを中核的解決手段としているものであって,「円板状の間隙15」のみを取り出せば「ディスク状」と呼べないこともないが,出口開口部の断面が間隙の周面よりも数倍大きく構\成されていることに鑑みれば,「円板状の間隙15」のみを独立した空間と捉えるのは不自然であり,むしろ,出口開口部と一体の空間,そして,好ましくはさらに出口開口部と整列して形成される孔も含めた一体の空間として課題を解決するものである。さらに,「円板状の間隙15」を実際上「零」に等しいように対接させる態様もあり得るものとされており,もはや「ディスク状」の形状の空間を備えているものとはいえないというべきである。また,甲14文献に記載された発明も,燃焼装置やエンジンに用いられる,燃料のような液状媒体のための噴出ノズルに関し,噴射精度を改善するというものであり,本件訂正発明1とは技術分野もその機序も相違する。しかも,甲14文献に記載されたものは,前記課題を解決するために,被覆板の直径がノズル本体の直径よりも小さく,ノズル本体がその出口側の端面に,被覆板を形状補完的に収容するための中央の窪みを備え,窪みの深さが被覆板の厚さよりも浅く構成することを中核的解決手段としているものであって,その実施例に記載された「円板状の隙間15」のみを取り出せば「ディスク状」と呼べないこともないが,円板状の隙間15の外周面積は被覆板12内の中央の出口16の横断面積よりもはるかに小さく構\成されていることに鑑みれば,「円板状の隙間15」のみを独立した空間と捉えるのは不自然であり,むしろ,出口と一体の空間として所要の機序を備えるものであり,さらには,静止位置で「円板状の隙間15」の厚さが「零」であり,適当な噴射圧力のときに初めてほんの少し大きくなるように接触する態様もあり得るものとされており,もはや「ディスク状」の形状の空間を備えているものとはいえないというべきである。以上によれば,本件訂正発明1の「ディスク状」「液体供給空間」について甲13文献及び甲14文献から周知とした審決の判断は誤りである。

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平成22(行ケ)10329 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年10月04日 知的財産高等裁判所

周知技術の認定誤りを理由として進歩性なしとした審決が取り消されました。
 被告は,乙17〜乙24を提示し,バーコードを読み取る際に,「透明基材を通してバーコードを読み取る」ことは,印刷の技術分野においても広く知られている旨主張する。 しかし,乙17,乙19〜乙22,乙24は,いわゆる複写機やプリンタ,ファクシミリなどの電子写真方式による印刷技術に関するものであり,乙23は,画像プリンタ用インクリボンを用いた印刷技術に関するものであるから,印刷という点では補正発明の技術分野と関連性はないとはいえないが,いずれの証拠も刷版を用いた印刷技術に関するものではなく,機能・原理・使用される機械等が全く異なるから,補正発明の技術分野と同じ技術分野に関するものであるとは認められない。また,乙18は,バーコード付き包装体に関するものであって,補正発明の技術分野とは明らかに異なる技術分野のものである。 したがって,バーコードを読み取る際に,「透明基材を通してバーコードを読み- 19 -取る」ことが,補正発明の技術分野において周知とはいえないから,被告の主張は採用できない。

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平成22(行ケ)10235 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年10月04日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が取り消されました。
 そうすると,本件優先日当時(平成15年8月8日),VA型(垂直配向型)液晶表示装置等に用いる重畳フィルムを作製するために,偏光フィルムの吸収軸と位相差フィルムの遅相軸とが直交(偏光フィルムの透過軸と位相差フィルムの遅相軸が平行)するように両フィルムを貼\り合わせるという条件の下で,ロールtoロールの方法で両フィルムを貼り合わせるためには,引用発明のように,横方向に延伸して遅相軸が横方向に現れる位相差フィルムを作製し,他方でフィルムを縦方向に延伸し,吸収軸が縦方向に現れる偏光フィルムを作製して,両フィルムを貼\り合わせる方法を採用するか,又は縦方向に遅相軸を有する位相差フィルムをロールから切り離して,縦方向に吸収軸を有する偏光フィルムのロールと貼り合わせる方法を採用するのが当業者の一般的な技術常識であったと認められる。だとすると,本件優先日当時,縦方向に延伸して位相差フィルムを作製する方法や横方向に延伸して偏光フィルムを作製する方法が存在したとしても,これらの方法をすべて採用し,引用発明に適用して相違点を解消するには,当業者の上記の技術常識を超越して新たな発想に至る必要があるのであって,当業者にとってかかる創意工夫が容易であったかは極めて疑問である。そうすると,前記のとおり,引用文献2ないし6にはロールtoロールの方法で偏光フィルムと位相差フィルムを貼\り合わせる発明に対して各文献に記載された事項を当業者が適用する可能性及びその効果が教示されていない点を併せ考えてみると,本件優先日当時,当業者が引用発明に引用文献2ないし6に記載された事項を適用して,補正発明と引用発明の相違点1,2に係る構\成に想到することが容易であったと認めることはできない。

◆判決本文

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平成22(行ケ)10404 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年09月08日 知的財産高等裁判所 

 進歩性なしとした無効審決が取り消されました。経緯は複雑で、第2次訂正審決まであります。
 前記のとおり,引用発明は穴明機の制御装置に係る発明であり,周知例1ないし3並びに本件審決が指摘した甲12及び13のいずれにも,本件発明に開示された,被加工物の材質及び板厚に応じてダイの成形位置を変更,補正するパンチプレス機の制御装置に関連する周知技術が開示されていないことは,前記のとおりであるから,穴明機の制御装置に係る引用発明に,上記周知例等を適用しても,パンチとダイという複数の成形金型を制御の対象とし,パンチのみならずダイの成形位置を変更,補正し,パンチとダイとの相対的な制御タイミングを制御パラメータとして規定する本件発明に想到することは容易とはいえない。しかも,当業者が,ドリルしかなく制御パラメータが極めて少ない引用発明の穴明機を出発点として,わざわざ,パンチとダイという複数の成形金型を制御の対象とし,パンチのみならずダイの成形位置を変更,補正し,パンチとダイとの相対的な制御タイミングを制御パラメータとして規定するパンチプレス機における成形金型に置き換える動機付けはないから,引用発明をパンチプレス機に適用することが困難でないとはいえない。なお,本件審決は,相違点1の検討において,甲5及び6を挙げて「打抜加工も可能なパンチプレス機」の制御装置と,「穴明機」の制御装置は,工作機械の数値制御装置である点で共通し,同じような制御方法であれば相互に適用可能\であることは技術常識であったと判断し,被告も,穴明機の制御装置とパンチプレス機の制御装置とが本質的に異ならないものとして,乙2ないし7を提出する。しかし,甲5及び6,乙2ないし7のいずれにも,被加工物の材質及び板厚に応じてダイの成形位置を変更,補正することは記載されていないし,穴明機から出発して,パンチプレス機の制御装置に想到することには,阻害要因があるといわざるを得ない。
・・・・しかしながら,本件発明に係るパンチ及びダイを備えたパンチプレス機の成形金型の制御装置は,成形金型の金型番号に対応してプレス動作を示すプレスモーション番号を設定・記憶し,そのプレスモーション番号ごとに設定された詳細設定データを生成するものであるから,複数の成形金型を使用する際に,共通のプレスモーションがあれば,そのプレスモーション分,詳細設定データを減らすことができ,またその分データの修正の作業量も少なくなる。そして,新たな成形金型を追加する場合でも,既に利用できるプレスモーションがある場合には,そのデータ入力作業が不要になるのであって,成形金型が2つあることによる制御パラメータの増大に加え,パンチとダイのそれぞれについて,他方との相対的な制御タイミングを制御パラメータとして規定する必要があるパンチプレス機において,データ入力作業が不要になることは,格別の作用効果と評価すべきである。ウ また,本件審決は,同一の成形加工を行う金型の保有個数を減らせるということをもって格別の作用効果であるとはいえないと判断した。しかしながら,従来技術において,複数個の金型を準備しておく必要があってコスト高になるほか,収納部分が必要以上に多くなって生産量に限界があったことが本件発明の課題の1つであったのであり(【0003】),本件発明の特許請求の範囲に記載された構成をとることにより,被加工物の多種多様な成形加工や打抜加工のために予\め準備すべき成形金型の数が少なくてすむことになり,金型の調整や試し打ち確認の作業も少なくできる効果を奏するものであり,同一の成形加工を行う金型の保有個数を減らせることによりランニングコストの低減が期待できることも,複雑なパンチプレス機にあっては,格別の作用効果ということができる。エ 本件審決は,金型の調整や交換などの段取り作業を不要にし,無人化・省人化運転が可能となり,生産性の向上を図ることができるものであるとしても,それは,引用発明に本件発明に係る構\成を適用することにより予測し得る作用効果であって,格別の作用効果とはいえないと判断した。しかしながら,そもそも,引用発明に係る穴明機にあっては,ドリルという一つの工具の上下移動のみを制御するものであり,パンチ及びダイといった複数の成形金型を同期制御することを本質とし,制御パラメータが極めて多いパンチプレス機と異なり,制御すべきパラメータが極めて少ないのであるから,パンチプレス機に係る本件発明において,上記のような効果を奏することは,予\測し得る作用効果とはいえない。

◆判決本文

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平成22(行ケ)10345 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年09月08日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が本件発明の認定誤りを理由として取り消されました。
 本件明細書の記載(前記(1)ウないしカ)によれば,本件補正発明における「加熱装置」は,内燃機関の排気側の管路のうち,三元触媒と圧力波機械との間に設けられたバーナ又は電気作動式ヒータであり,触媒の最適な動作温度がより急速に得られ,かつ,ガスがより高い温度で圧力波機械に達するようにすることで,特にコールド・スタート特性を改善するものであるといえる。(イ) これに対して,引用例2の記載(前記(2)エ及びオ)によれば,引用例2に記載の発明における「排気冷却・中間加熱器」は,2段式給気を行う内燃機関からの排気がガスタービンの許容入口温度を越えないようにする一方,ガスタービンからの排気の圧力波機械における仕事能力低下を防ぐために,これらの各排気の間で熱交換を行わせ,もって内燃機関からの排気の温度を降下させることに伴ってガスタービンからの排気の温度を上昇させるものである。すなわち,「排気冷却・中間加熱器」は,機関の排気系において,ガスタービンの上下流の各排気間で常に加熱と冷却を伴う一体不可分の熱交換を行う装置である。さらに,引用例2に記載の発明では,高圧圧縮段用の排気タービン式過給機と低圧圧縮段用の圧力波機械とを逆にして使用することも可能\であって(前記(2)オ),この場合,「排気冷却・中間加熱器」は,圧力波機械との関係では圧力波機械に流入する排気を冷却させることになり,圧力波機械の仕事能力を低下させる面を有することになる。(ウ) 以上によれば,本件補正発明の「加熱装置」は,機関の排気側の管路において圧力波機械に流入する排気を外部の熱源又は電気エネルギー源(以下「熱源等」という。)により加熱することで特に圧力波機械のコールド・スタート特性を改善するものである一方,引用例2に記載の「排気冷却・中間加熱器」は,2段式給気を行う機関の排気系において排気間での熱交換を行うものであって,排気を外部の熱源等により加熱するものではなく,むしろ圧力波機械を高圧圧縮段用に配置した場合には圧力波機械の仕事能力を低下させるものであるから,本件補正発明の「加熱装置」とは,その構\成,機能及び作用がいずれも異なっているというほかない。・・・以上のとおり,引用例2に記載の発明における「排気冷却・中間加熱器」は,本件補正発明の「加熱装置」に相当せず,引用例2に記載の発明は,「加熱装置」の構\成を備えているとは認められないから,本件審決による引用発明2Bの認定には誤りがある。

◆判決本文

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平成22(行ケ)10381 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年07月25日 知的財産高等裁判所

 審決の引用文献の認定には妥当性を欠く点があるが、結論に影響がないとして、進歩性なしとした審決が維持されました。
 原告は,審決が,引用例(甲1)の第2図,第4図の記載に基づいて,引用発明のコーティングが「吊ロープ3の太さの半分より実質的に小さい厚さを有する」と認定したことが誤りである旨主張する。確かに,引用例(甲1)において,「高摩擦弾性体6」又は「高摩擦弾性体8」が「吊ロープ3」の太さの半分より実質的に小さいか否かについては,特段の記載がない。そして,特許出願に係る図面は,設計図面のように具体的な寸法などが正確に描かれるものではないので,審決が,引用例(甲1)の第2図,第4図の記載のみから,引用発明におけるコーティングが「吊ロープ3の太さの半分より実質的に小さい厚さを有する」といった具体的な定量的事項を認定したことは妥当でない。もっとも,上記のような特許出願に係る図面も,技術文献の図面である以上,概略的かつ定性的な事項については大きな誤りはなく記載されているというべきであって,単なる大小関係等については十分に読み取ることができるところ,引用例(甲1)の第2図,第4図からすれば,「高摩擦弾性体」が十\分に薄いことが読み取れる。また,引用例(甲1)の「高摩擦弾性体6」は巻上シーブ5の溝にコーティングされるものであって(甲1,2頁),表面を処理するという「コーティング」の性質上,「吊ロープ3の太さの半分」との大小関係はともかく,十\分に薄いものというべきである。そして,前記(1)イのとおり,本願発明における「ロープの太さの半分より実質的に小さい厚さ」を有するとの事項は,コーティングが十分に薄いこと,すなわち薄さの程度を概略的に規定したものにすぎない。そうすると,審決の認定は,引用発明において「高摩擦弾性体6」又は「高摩擦弾性体8」が「吊ロープ3」の太さに比べ十\分に薄いものであるとする限度において,誤りはない。さらに,審決も,コーティングの綱溝の底部における具体的な厚さ(「最小で約0.5mm,最大で約2mmの厚さ」であること)につき,相違点2として認定し,別途検討している(そして,後記エのとおり,この点に関する審決の判断に誤りはない。)のであるから,審決による引用発明の認定に妥当性を欠く点があるとしても,審決の結論に影響を及ぼすものではない。なお,被告は,乙1(特開平7−259441号公報),乙2(特開平10−150887号公報)により「高摩擦弾性体6」又は「高摩擦弾性体8」が薄いことの立証を試みているが,乙1は「建築用ガスケット及びその製造方法」に関する発明で,乙2は「釣り・スポーツ用具用部材」に関する発明であって,いずれも本願発明及び引用発明とは技術分野が異なるから,「高摩擦弾性体6」又は「高摩擦弾性体8」の薄さを具体的に解釈する上で参考とできるものではない。
イ 取消事由2(一致点認定の誤り)について
原告は,取消事由1と同様の理由により,審決の一致点の認定には誤りがある旨主張するが,前記アのとおり,審決による引用発明の認定には妥当性を欠く点があるものの,審決の結論に影響を及ぼすものではないから,同様に,審決による一致点の認定にも,審決の結論に影響を及ぼすほどの誤りはないというべきである。

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平成22(行ケ)10324 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年07月07日 知的財産高等裁判所

 無効理由無しとした審決が取り消されました。
 本件明細書が開示する,重合体粒子表面のグラフト共重合体鎖の長鎖アルキル基に対して液晶分子が垂直に規則正しく配列することにより,液晶スペーサー周りの配向異常を防止するという本件発明の作用効果は,単独重合,共重合によらず,長鎖アルキル基を有する重合性ビニル単量体の重合体鎖を重合体粒子表\面にグラフトしたことに基づくものであって,本件明細書において,本件発明が,引用発明1に開示されている構成のうちから,「特定の共重合体鎖」に限定しているとしても,それに基づいて生じる格別の作用効果に係る記載はないから,本件発明の「特定の共重合体鎖」が単独重合体鎖や他の共重合体鎖と比較して格別の作用効果を奏するものということはできない。しかも,本件明細書【0014】には,「長鎖アルキル基の層の厚みが0.01μm以上であれば,グラフト共重合体鎖の溶融効果又は配向基板上の官能基残基との反応により重合体粒子と配向基板との固着性も有する。」として,長鎖アルキル基の層が一定の厚みを有すると付着性が向上する旨を明らかにしているものである。そうすると,本件発明は,引用発明1における付着層を構\成する重合体鎖について,その一部に相当する「特定の共重合体鎖」を単に限定しているにすぎず,このような限定によって,引用発明1とは異なる作用効果あるいは格別に優れた作用効果を示すものと認めることもできないから,引用発明1の解決課題である付着性や技術常識の観点から,相違点1が実質的な相違点ということはできない。ウ 以上のとおり,本件発明は,引用発明1において例示的に列挙された「重合可能な単量体の単独重合体又は上記単量体の2種以上の共重合体であって熱可塑性を有するもの」の中から,「表\面に長鎖アルキル基を有する重合性ビニル単量体の1種又は2種以上と重合性ビニル単量体と共重合可能な他の重合性ビニル単量体の1種又は2種以上とからなるグラフト共重合体鎖を導入した重合体粒子」について一部限定したものというほかない。また,本件発明は,引用発明1から本件発明が限定した部分について,引用発明1の他の部分とその作用効果において差異があるということはできないから,引用発明1と異なる発明として区別できるものでもない。したがって,本件発明と引用発明1との間には,相違点は存しないといわざるを得ない。\n

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平成22(行ケ)10162 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年02月24日 知的財産高等裁判所

 一致点の認定に誤りがあるとして、進歩性なしとした審決が取り消されました。
 原告らは,引用発明1の皮革片はカップ状の裾の部分しか接合しておらず,本件発明1の接合部とは異なっているので,「接合部」が設けられる点を一致点とした審決の認定に誤りがあると主張する。上記1で認定したとおり,本件発明1は,皮革片の周縁部を折り曲げ,折り曲げ部に設けられる接合部において,隣接する皮革パネルと接着するという構成をとるものである。このように,本件発明1における「接合部」は,接着するための部位であるから,一定の領域を有する「面接触」を要するものと解される。これに対し,上記2のとおり,引用発明1は,カップ状の皮革パネルの裾部分(周辺端面)のみを接触させたものであり,接触している部分は線接触であると認めるのが自然である。そうすると,引用発明1における皮革片の接触部は,接着するための接合部とはいえず,本件発明1における接合部に相当するということはできないから,この点を一致点とした審決の認定は誤りである。そして,「接合部」の有無は,皮革パネルの接着に関する相違点2の前提となるものであって,この点の相違も含めて相違点2についての本件発明1の構\成の容易想到性を判断すべきなのに,審決はこれを怠っている。したがって,取消事由1は,理由がある。

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平成22(行ケ)10063 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年01月13日 知的財産高等裁判所

進歩性違反無しとした審決が維持されました。
 そうすると,本件発明において解決すべき課題は,ボイラ等に用いられる,外表面に表\面拡大要素たるピンを設けた熱交換チューブにおいて(段落【0002】),ピンとチューブとの間の溶接接合部やピンの溶接接合部に隣接する部分等に亀裂が生じる結果(溶接割れ),ピンがチューブから破断,脱落する事態を防止するという点にあるものであり,上記課題を解決するための手段として,ピンの材料である炭素鋼の炭素含有率を,チューブ本体の材料である炭素鋼の炭素含有率よりも小さくする等の構成が採用されたものである。したがって,本件発明と審決引用発明とは,当該発明によって解決すべき技術的課題が,前者では溶接接合部等の亀裂防止にあり,後者では酸腐食に対する耐久性の向上等にあって,両者は耐久性の向上というごく抽象的な観点で共通するにすぎず,技術的には相違するものというべきである。また,審決引用発明では表\面拡大要素にほうろう被膜を施すことが大きな要点となっているが,本件発明では表面拡大要素にほうろう被膜を施すことは予\定されていない。そして,審決引用発明においてフィンの材料に炭素含有率が小さい炭素鋼が採用された趣旨も,前記のとおり熱交換性能を損なわないことを前提に,ほうろう被膜の欠陥等の発生を防止し,熱交換チューブの耐久性を発揮することができるようにする点にあるものであって,本件発明でピンの材料の炭素鋼の炭素含有率がチューブ本体の材料の炭素鋼の炭素含有率よりも小さくされた趣旨である溶接接合部等の亀裂防止の点は,審決引用文献においては開示も示唆もされていない。\n

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平成22(行ケ)10173 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年01月11日 知的財産高等裁判所

 引用文献には記載されていないとして、無効理由無しとした審決が維持されました。
 原告は,引用例1には無機着色顔料に白色を混ぜ合わせる際に,石灰に加えて白色顔料である酸化チタンを加えることが示されている旨を主張する。 しかしながら,引用例1は,前記のとおり有色顔料を白色顔料及び体質顔料と並列して記載するにとどまり(【0023】),消石灰等に加える顔料の好例とされる酸化チタンについては消石灰に対する配合割合を詳細に記載しているものの(【0027】),消石灰に無機着色顔料を配合した上で,更に無機白色顔料を配合する場合を想定した具体的な記載がなく(【0024】参照),現に,その記載に係る実施例は,いずれも顔料としては酸化チタンのみを配合したものに尽きている(【0065】〜【0094】)。しかも,消石灰は,それ自体に隠蔽力があり(乙10,17),かつ,白色を呈していることに加えて,無機着色顔料は,一般に白色顔料よりも高い隠蔽力を有する(乙19)。したがって,引用発明1における顔料の配合が,「所望の隠蔽力並びに色彩(明度,色度,彩度)に応じて適宜選択調整することができる」(【0024】)ものであるとしても,消石灰等に無機着色顔料を配合して当該調整を行った場合,隠蔽力及び色彩の調整という目的は,当該配合により達成されてしまうから,これに加えて,あえて無機白色顔料を配合する理由に乏しい。そして,引用例1には,この場合に無機白色顔料を配合することについて,これを示唆するものも含めて,何ら記載がない。したがって,引用例1には,消石灰等に無機着色顔料を配合するに当たり,更に無機白色顔料(酸化チタンを含む。)を配合することについては記載がないものというべきである。 以上によれば,引用例1には,消石灰に酸化チタン(無機白色顔料)を配合することや,消石灰に無機着色顔料を配合することについては記載があるものの,これに加えて,無機着色顔料を消石灰に配合するに当たり,無機白色顔料も配合する旨の記載があるとはいえない。よって,これと同旨の本件審決に誤りはない。

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