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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

引用文献

平成21(行ケ)10253 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年11月17日 知的財産高等裁判所

 進歩性違反無しとした審決が取り消されました。
 以上の引用例9の記載によると,引用例9には,ゼラチンカプセルの機械的性質は,可塑剤の種類とその添加量・含有水分などの影響により変化するが,基本的には,基剤のゼラチンフィルムのレオロジー的性質によること,フィルムの粘性要素が小さいとカプセルは脆くなるところ,低湿度下では,粘性要素が小さくなって,外力によって破壊されやすくなること,カプセルの粘弾性のような基本的強度は,カプセルと同一組成のシートによって測定されるという知見が開示されている。そして,当業者であれば,かかる知見に接した場合,低湿度の環境下ではゼラチンカプセルは外力によって破壊されやすくなること,粘性に優れたシートを与えるゼラチン基剤から製造されたゼラチンカプセルは,外力によって破壊されにくいことに加え,機械的強度を測定する粘弾性測定装置により硬カプセルの底部の衝撃に対する抵抗力を測定する記載等から,カプセルの外力による変形や破壊は,ゼラチン基剤の粘弾性と関連するものであると理解するものということができる。したがって,当業者は,引用例9から,カプセルが外力により破壊されるか否かという耐衝撃性等の機械的強度も,カプセルと同一組成のフィルムで試験することができることを理解することができるというべきである。この点について,医薬用硬質カプセルに関する特開昭61−100519号公報(甲22)においても,衝撃強度や引張り強度等の機械的強度について,ゼラチン基剤フィルムの状態で測定されているものであり,本件審決が「カプセルの機械的強度はフィルムの粘性要素と関連性を有しており,カプセルの機械的強度はカプセルと同一組成のフィルムで試験するものである」とするとおり,当業者における技術常識であったものということができる。・・・・以上からすると,低湿度下におけるハードゼラチンカプセルの機械的強度を向上するために,可塑剤として,#4000のポリエチレングリコールを3〜15重量%の割合で添加することは,当業者であれば容易に想到し得るものということができる。同様に,ゼラチンを水に溶解した溶液に,かかる割合で#4000のポリエチレングリコールを添加してジェリーを得た後,浸漬法により非フォーム状ハードゼラチンカプセルを製造する方法の発明である本件発明2も,当業者が,引用例9と引用例2により開示された技術的知見を組み合わせることにより,容易に想到し得るものということができる。

◆判決本文

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平成21(行ケ)10253 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年11月17日 知的財産高等裁判所

 無効でないとした審決が取り消されました。
 以上からすると,本件審決が,引用例2には,ゼラチン単独フィルムの耐衝撃強度の向上には,グリセリンよりも特定のポリエチレングリコールの方がよいことについて開示されているとは認められないとした判断は誤りといわざるを得ない。この点について,被告は,引用例2に応用分野として例示されている「マイクロカプセル」は,カプセル剤とは全く異なるものであり,「医薬」という広範な指摘についても,直ちにハードゼラチンカプセルへの適用が記載されているということもできないなどと主張する。しかしながら,引用例2は,「固体ゼラチンの構造と特性及びそれらの改質の原理」と題する論文で,ゼラチン自体の物理,機械的特性に関する一般的な知見を開示するものであって,特定の用途におけるゼラチンの性質に限定して記述されているものではない。実際,引用例2は,ハードゼラチンカプセルに関する専門書である引用例6(甲6)にも引用されており,ゼラチンカプセルの技術分野に属する文献であるということができる。被告の主張は採用できない。\n

◆判決本文

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平成22(行ケ)10024 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年10月28日 知的財産高等裁判所 

 新規事項でないとした審決の判断は維持されましたが、進歩性ありとした判断は取り消されました。
 前記(4),(5)によれば,本件基準明細書又は図面に記載された発明は,回路基板改造による不正行為の防止を課題とし,上記不正行為を効果的に防止して不正行為を受けにくくする遊技機を提供することを目的としており(前記段落【0006】【0007】),遊技制御基板からの信号の入力のみを可能とする信号伝達方向規制手段を表\示制御基板に設けるとともに,表示制御基板への信号の出力のみを可能\とする信号伝達方向規制手段を遊技制御基板に搭載する構成とし(図16),更に信号伝達方向規制手段をバッファIC回路で構\成していることが認められる(前記段落【0060】)。これにより,本件基準明細書又は図面に記載された発明は,表示制御基板側から遊技制御基板側に信号が伝わることなく,確実に信号の不可逆性を達成することができるようにしており,表\示制御基板改造による不正行為を効果的に防止するものである(前記段落【0094】【0095】【0096】)。そうすると,本件基準明細書又は図面のすべての記載を総合すると,本件基準明細書又は図面に記載された遊技機は,当業者において,不正行為を防止するため,遊技制御基板から表示制御基板への信号の伝達のみを可能\とし,表示制御基板側から遊技制御基板側に信号が伝わる余地がないよう,確実に信号の不可逆性を達成することができるように構\成していること,すなわち,信号の不可逆性に例外を設けないとの技術的事項が記載されていると認定するのが合理的である。そうすると同技術的事項との関係において,「遊技制御基板と表示制御基板との間のすべての信号について,信号の伝達方向を前記遊技制御基板から前記表\示制御基板への一方向に規制する」ことは,新たな技術的事項を導入するものであるとはいえない。これに対し,原告は,甲3記載の発明について,メイン制御部からサブ制御部へのすべての信号を規制の対象としていないと解釈するならば,本件基準明細書についても同様に解釈するべきであり,本件訂正は,新たな技術的事項を導入するものに当たると主張する。しかし,前記のとおり,訂正の適否の判断において,「願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面・・・に記載した事項の範囲内」であるか否かは,当業者において,明細書,特許請求の範囲又は図面のすべてを総合することによって,認識できる技術的事項との関係で,新たな技術的事項を導入するものであるか否かを基準に判断すべきものであり,他の公知文献等の解釈により判断が左右されるものではないから,上記原告の主張は採用することができない。したがって,遊技制御基板と表示制御基板との間の「信号」を「全ての信号」と限定する本件訂正は,「願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面・・・に記載した事項の範囲内」においてするものということができるので,審決が本件訂正を認めた点に違法はない。
・・・ 以上によれば,審決が認定する技術事項Cが前記段落【0071】の記載に基づくものであるとしても,同段落の記載は,甲9の他の部分の記載や甲9記載の発明が解決しようとする課題及びその解決手段と整合しないか,又は,技術的に解決不可能な内容を含むものであって,誤った記載と解される。したがって,前記段落【0071】の記載のみから,甲9には技術事項Cが実質的に開示されていると認めることはできない。審決が,技術事項Cを根拠に,甲9において,「遊技制御基板199」から「払出制御回路基板152」へ伝達される信号は賞球個数信号D0〜D3がすべてであるとは認定できないと判断したことは誤りである。
・・・ 前記(2)のとおり,甲3には,サブ制御部6からメイン制御部1へのデータ信号入力を禁止し,サブ制御部6からメイン制御部1への不正信号の入力を防止するため,メイン制御部1とサブ制御部6との間のすべての信号について,信号の伝達方向を前記遊技制御基板から前記表示制御基板への一方向に規制するための信号伝達方向規制手段を設けることが実質的に記載されているものと認められる。そうすると,本件訂正発明1と甲3記載の発明との相違点は,本件訂正発明1は表\示制御基板内及び遊技制御基板内の各々に信号伝達方向規制手段が実装されているのに対し,甲3記載の発明は,メイン制御部1(「遊技制御基板」に相当)及びサブ制御部6(「表示制御基板」に相当)の各々に信号伝達方向規制手段が実装されていないこととなる。また,前記(3)のとおり,甲9には,遊技機に関し,メイン制御部からサブ制御部への一方向通信とした構\成を採用することにより,サブ制御部からメイン制御部へ入力される情報の入力部を利用した不正なデータの入力による不正改造等を防止することが記載されており,その具体的手段として,信号の伝達方向を遊技制御基板(メイン基板)からサブ基板への一方向に規制するために,前記遊技制御基板からの信号の入力のみを可能とし,前記遊技制御基板への信号の出力を不能\とする信号伝達方向規制手段である信号回路209を遊技制御基板199(メイン基板)に設けるとともに,信号の伝達方向を前記遊技制御基板(メイン基板)からサブ基板への一方向に規制するために,前記サブ基板への信号の出力のみを可能とし,前記サブ基板からの信号の入力を不能\とする信号伝達方向規制手段である信号回路217を払出制御回路基板152(サブ基板)に設けることが開示されていると認められる。さらに,甲9に記載された技術事項は,甲3記載の発明と同様に遊技機に関する技術分野において,不正信号の入力を防止するという目的を達成するためのものであり,甲3記載の発明においては1つであった一方向データ転送手段を,甲9のように入力側基板と出力側基板のそれぞれに設けることにより,より高い効果が期待できることは当然のことであるから,甲9記載の技術事項を甲3記載の発明に適用することは,当業者において容易であるといえる。なお,前記(3)のとおり,審決が技術事項Cとして認定した事項は,甲9記載の技術的思想に基づく適切な開示事項とは認められず,甲9記載の技術事項を甲3記載の発明に適用する際の阻害要因とはならない。したがって,甲9記載の技術事項を甲3記載の発明に適用することにより,本件訂正発明1の構成(ε)及び構\成(ζ)を得ることは当業者が容易に想到し得ることといえる。以上によれば,本件訂正発明1は,甲3に記載された発明に甲9記載の技術事項及び周知技術を適用することにより,当業者が容易に想到することができるものであるから,本件訂正発明1の進歩性を肯定した審決の判断は誤りであり,取消事由2は理由がある

◆判決本文

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平成22(行ケ)10029 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年10月12日 知的財産高等裁判所

 進歩性の基礎となる公知技術か否かが争われました。裁判所は、公知であるとした審決を取り消ししました。
 「刊行物に記載された発明」とは,刊行物に記載されている事項又は記載されているに等しい事項から当業者(その発明が属する技術の分野における通常の知識を有する者)が把握できる発明をいう,と解するのを相当とするところ,本件においては,本願発明が「L612として同定され,アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(AmericanType Culture Collection)にATCC受入番号CRL10724として寄託されているヒトのBリンパ芽腫細胞系」であるのに,本願優先日前に刊行された引用例1及び2には「L612を分泌する細胞系」と記載されているだけで,ATCC受入番号の記載がないことから,引用例1及び2における上記記載だけで「刊行物に記載されているに等しい事項」といえるかということを検討する必要がある。
・・・ 以上のとおり,本願優先日前,A 博士(及び共同研究者)は,L612細胞系につき,第三者から分譲を要求されても,同要求に応じる意思はなかったものと認められ,その結果,L612細胞系は,第三者にとって入手可能ではなかったことになり,「引用例1,2に記載されるL612細胞系は,第三者から分譲を請求された場合には,分譲され得る状態にあったものと推定することができる」とした審決の認定判断は誤りであって,同誤りが審決の結論に影響を及ぼすおそれがあることは明らかである。\n

◆判決本文

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平成21(行ケ)10353 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年09月30日 知的財産高等裁判所

 引用文献の認定誤りを理由に進歩性なしとした審決が取消されました。
 以上によれば,甲1発明において,トリュフ入りブリーチーズが,熟成後,「上側のチーズと下側のチーズが分離せずに一体となった状態にある」との構成が開示されているものと認定することはできない。したがって,審決が,甲1発明について,「チーズどうしが結びつくことにより,上側のチーズと下側のチーズとが分離せずに一体となった状態にある。」と認定したことは誤りであり,同認定を基礎として,相違点Bについて,「本件発明1と甲1発明との間で,チーズカードどうしの「結着」の程度,「一体化」させられている点に差異は見出せないため,この点は実質的な相違点とはいえない」とした容易想到性の判断も誤りというべきである。\n

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平成21(行ケ)10422 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年08月19日 知的財産高等裁判所

 引用文献の認定誤りを理由として、進歩性なしとした拒絶審決が取り消されました。  そこで,上記理解に基づいて,引用例に記載された「シランコーチング剤」と「シランカップリング剤」とをその成分の化学構造の観点から比較すると,両者の成分は,いずれも「有機シラン化合物」である点では共通するものの,「シランコーチング剤」の成分は,「水素化ケイ素の水素原子が炭化水素基などで置換した有機化合物」に止まるものであって,その具体的な化学構\造は,引用例の記載からは明らかではなく,甲27,乙5,甲31の記載を総合しても,一般的に「シラン」には,ガラスなどの無機物質と結合するためのアルコキシル基などの無機官能基を有していることは認められない。したがって,上記(2) カ(甲28)に記載されるような特定の化学構造を有する化学物質である「シランカップリング剤」は,化学構\造が特定のものである点において,「シランコーチング剤」と相違していると認められる。次に,その使用形態について比較すると,「コーチング剤」とは,一般的に,その言葉どおり,被膜を形成する材料を含有する塗料や被覆材などを基材上にコート(塗布,被覆)するための剤を意味する用語であると認められるから,「シランコーチング剤」とは,「シラン」を成分として含み,何らかの基材上にコートされる剤と解される。一方,「シランカップリング剤」については,例えば,上記(2) エ(乙3)に,「使用方法」として,カップリング剤を水溶液中に分散してガラス繊維や目の粗い充填剤に適用することが記載され,また,「接着の性質」の記載から,この使用方法によって,ガラス繊維や充填剤の表面とカップリング剤の無機官能\基とが反応して,結合することは理解されるものの,「カップリング剤」を「コート(塗布,被覆)」して使用することについては,何ら示されていないし,前述のとおり,引用例の「シランコーチング剤」に関する記載を総合しても,引用例においては「シラン」若しくは「シランコーチング剤」を「カップリング剤」として使用していることを示す記載はないから,引用例の記載からは「シランコーチング剤」が「シランカップリング剤」であると認めることはできない。以上によれば,引用例に記載された「シランコーチング剤」の「シラン」を,特定の化学構造を有する「シランカップリング剤」と限定して解釈することはできないし,「コート」という使用形態を特定する「シランコーチング剤」と,その使用方法が専ら「コート」であるとはいえない「シランカップリング剤」とを同一視することもできないというべきである。この点について,被告は,引用例の「シランコーチング剤」は,モノマー注入前に,セラミック焼成体に注入されて,焼成体表\面に被覆処理が施され,その結果,表面が改質されることから,「カップリング剤」と同等の目的で使用されているといえるなどと主張するが,引用例には,「シランコーチング剤」を使用する目的については何ら記載されていないから,引用例記載の発明の目的は明らかでなく,また他に被告が同等であるという根拠も見出せない。よって,審決が前記第2の3(1)クにおいて認定したように,引用例に「シランカップリング剤」を用いることが示されているということはできないから,審決の引用例の記載事項の認定には誤りがある。

◆判決本文

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平成21(行ケ)10180 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年08月19日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が取り消されました。裁判所は、新規物質については単に構成が記載されているだけでは足りず、製造方法を理解し得る程度の記載があることを要するとしました。
 本件発明6及び7における本件3水和物が新規の化学物質であること,甲7文献には,本件3水和物と同等の有機化合物の化学式が記載されているものの,その製造方法について記載も示唆もされていないこと,以上の点については当事者間に争いがなく,かつ審決も認めるところである。そこで,このような場合,甲7文献が,特許法29条2項適用の前提となる29条1項3号記載の「刊行物」に該当するかどうかがまず問題となる。ところで,特許法29条1項は,同項3号の「特許出願前に‥‥頒布された刊行物に記載された発明」については特許を受けることができないと規定するものであるところ,上記「刊行物」に「物の発明」が記載されているというためには,同刊行物に当該物の発明の構成が開示されていることを要することはいうまでもないが,発明が技術的思想の創作であること(同法2条1項参照)にかんがみれば,当該刊行物に接した当業者が,思考や試行錯誤等の創作能\力を発揮するまでもなく,特許出願時の技術常識に基づいてその技術的思想を実施し得る程度に,当該発明の技術的思想が開示されていることを要するものというべきである。特に,当該物が,新規の化学物質である場合には,新規の化学物質は製造方法その他の入手方法を見出すことが困難であることが少なくないから,刊行物にその技術的思想が開示されているというためには,一般に,当該物質の構成が開示されていることに止まらず,その製造方法を理解し得る程度の記載があることを要するというべきである。そして,刊行物に製造方法を理解し得る程度の記載がない場合には,当該刊行物に接した当業者が,思考や試行錯誤等の創作能\力を発揮するまでもなく,特許出願時の技術常識に基づいてその製造方法その他の入手方法を見いだすことができることが必要であるというべきである。
(2) 本件については,上記のとおり,本件発明6及び7における本件3水和物が新規の化学物質であること,甲7文献には,本件3水和物と同等の有機化合物の化学式が記載されているものの,その製造方法について記載も示唆もされていないところ,前記1(2) の記載内容を検討しても,甲7文献には製造方法を理解し得る程度の記載があるとはいえないから,上記(1) の判断基準に従い,甲7文献が特許法29条1項3号の「刊行物」に該当するというためには,甲7文献に接した当業者が,思考や試行錯誤等の創作能力を発揮するまでもなく,特許出願時の技術常識に基づいて本件3水和物の製造方法その他の入手方法を見いだすことができることが必要であるということになる。この点,審決は,前記第2の4(1) 記載のとおり,まず,甲5文献の開示内容から,4−アミノ−1−ヒドロキシブタン−1,1−バイホスホン酸モノナトリウム塩が生成していることが窺える等の事情があること,甲12ないし甲14の各文献の開示内容から,水和物の製法としては,水溶液から晶出することが一般的であり,結晶水は,加熱あるいは乾燥により離脱し,加熱あるいは乾燥の条件を強くすることにより,順次離脱することは周知であるといえること,及び4−アミノ−1−ヒドロキシブタン−1,1−ジホスホン酸モノナトリウム塩の3水和物が存在することは甲7文献に記載されていることを根拠に,当業者は,4−アミノ−1−ヒドロキシブタン−1,1−ジホスホン酸モノナトリウム塩を水溶液から晶出させることにより,3水和物が得られること,そして,もし水溶液からの晶出により得られた4−アミノ−1−ヒドロキシブタン−1,1−ジホスホン酸モノナトリウム塩の水和数が3を超えていれば,適宜条件を選択し,加熱,乾燥することにより水和数を減ずることにより,容易に,本件3水和物を得ることができると考えるのが自然であると判断しているところ,その論理は必ずしも明確ではないが,前記第2の4(4)記載のとおり,さらに,審決は,原告の主張に対する判断において,「有機化合物によって水和物が存在し得る場合があることは明らかであり,‥‥,甲7文献において既に3水和物が目的物として明示され,その存在を疑うべき特段の事情が無いことを考慮すれば,技術常識を勘案し3水和物の製造条件を検討することに格別の困難性は無いというべきであ」ると判断していることから,これを善解すれば,甲7文献の記載を前提として,これに接した当業者が,思考や試行錯誤等の創作能力を発揮するまでもなく,甲5及び甲12ないし甲14の各文献に記載されている特許出願時の技術常識に基づいてその製造方法その他の入手方法を見いだすことができるものと判断したと解される。
(3) そうすると,本件においては,本件出願当時,甲7文献の記載を前提として,これに接した当業者が,思考や試行錯誤等の創作能力を発揮するまでもなく,本件3水和物の製造方法その他の入手方法を見いだすことができるような技術常識が存在したか否かが問題となるが,次のとおり,本件においては,本件出願当時,そのような技術常識が存在したと認めることはできないというべきである。\n

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平成21(行ケ)10361 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年05月27日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が取り消されました。
 前記のとおり,引用刊行物A記載の発明は,擬似油汚れについて特定量を滴下し,乾燥工程を設けないとする相違点(い)に係る構成を欠くものである。同発明は,本願発明における時間,労力,価格を抑えることを目的として,手順を簡略化しようとする解決課題を有していない点で,異なる技術思想の下で実施された評価試験に係る技術であるということができる。このように,本願発明における解決課題とは異なる技術思想に基づく引用刊行物A記載の発明を起点として,同様に,本願発明における解決課題とは異なる技術思想に基づき実施された評価試験に係る技術である引用刊行物C記載の発明の構\成を適用することによって,本願発明に到達することはないというべきである。(ウ) 本願発明は,決して複雑なものではなく,むしろ平易な構成からなる。したがって,耐油汚れに対する安価な評価方法を得ようという目的(解決課題)を設定した場合,その解決手段として本願発明の構\成を採用することは,一見すると容易であると考える余地が生じる。本願発明のような平易な構成からなる発明では,判断をする者によって,評価が分かれる可能\性が高いといえる。このような論点について結論を導く場合には,主観や直感に基づいた判断を回避し,予測可能\性を高めることが,特に,要請される。その手法としては,従来実施されているような手法,すなわち,当該発明と出願前公知の文献に記載された発明等とを対比し,公知発明と相違する本願発明の構成が,当該発明の課題解決及び解決方法の技術的観点から,どのような意義を有するかを分析検討し,他の出願前公知文献に記載された技術を補うことによって,相違する本願発明の構\成を得て,本願発明に到達することができるための論理プロセスを的確に行うことが要請されるのであって,そのような判断過程に基づいた説明が尽くせない限り,特許法29条2項の要件を充足したとの結論を導くことは許されない。本件において,審決は,上記のとおり,本願発明と引用刊行物A記載の発明と対比し,擬似油汚れについて特定量を滴下し,乾燥工程を経由しないで水洗するとの構成を相違点と認定している。しかし,審決は,本願発明と,解決課題及び解決手段の技術的な意味を異にする引用刊行物A記載の発明に,同様の前提に立った引用刊行物C記載の事項を組み合わせると本願発明の相違点に係る構\成に到達することが,何故可能であるかについての説明をすることなく,この点を肯定したが,同判断は,結局のところ,主観的な観点から結論を導いたものと評価せざるを得ない。\n

◆判決本文

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平成21(行ケ)10257 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年06月29日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が取り消されました。理由は、引例に記載に技術の認定誤りです。カラー刷りの別紙が判決文に添付されてます。本件発明についてで技術説明書です。審判で提出したものかもしれませんが、事案によっては、裁判所に対してはこのような資料提出が好ましいですね。
 すなわち,引用例1の記載事項から得られる知見は,単に,フラットタイプリニアモータにおいては,磁気シールド板は,推力向上に寄与しないことを示しているにすぎない。引用例1には,推進力向上に寄与しないフラットタイプリニアモータに,ロッドタイプリニアモータを適用することの動機付けが示されているわけではなく,また,磁気シールド板が推力向上の効果が生じることを予測できることが示されているわけではない。のみならず,引用例1のフラットタイプリニアモータに周知技術であるロッドタイプリニアモータを適用すると,フラットタイプリニアモータにおいては磁束の分路として機能\することから推力を減少させる方向で作用していた磁気シールド板が,逆に推力を向上させる方向で作用することを当業者において予測できたことを認めるに足りる記載又は示唆はない。そうすると,ロッドタイプリニアモータが周知の技術であったか否かにかかわらず,引用例1に,ロッドタイプリニアモータを適用する示唆等が何ら記載されていない以上,当業者が,周知技術を適用することにより,相違点1,2及び6に係る本願発明の構\成とすることを容易に想到し得たものであるということはできない。

◆判決本文

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平成21(行ケ)10310 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年06月16日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性違反理由無しとした審決が維持されました。
 原告は,本件発明1は複数ユーザの個人認証に限定されるものではないから,引用発明1における「URL」は,本件発明1の「管理マスタID」に相当すると主張する。しかし,上記(1)イ,ウのとおり,本件発明1の「管理マスタID」は,複数のユーザが存在することを前提に,第1のシステムのユーザと第2のシステムのユーザとを関連付けるために,ユーザごとに設定されたユーザ固有の識別コードであるのに対し,引用発明1の「URL」は,複数のユーザが存在することを前提としているともいえないし,ユーザごとに設定されたユーザ固有のものともいえないから,引用発明1における「URL」が,本件発明1の「管理マスタID」に相当するということはできない。

◆判決本文

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平成21(行ケ)10163 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年04月28日 知的財産高等裁判所 

 CS関連発明について、進歩性なしとした審決が維持されました。
 上記記載によれば,引用例1に記載された発明(引用発明1)の半導体製造装置は,半導体製造ラインの進捗管理及び工程管理において,工程管理用電子ファイルの作成及び管理を容易にすることを基本的な課題とし,そのために次の構成を備えたものであることが認められる。・・・そして,引用発明1は,上記構\成を備えることにより,管理部署と半導体製造ライン間における工程管理情報の作成が容易になる,複数の設備群管理計算機と複数の部署別管理計算機との間の電子ファイルの流れを効率良く管理できる,半導体製造ライン及び管理部署のハード構成並びにプログラムの簡素化を図ることができる等の効果が得られるものである。・・・・そこで検討するに,引用例1には,前記のとおりの技術的事項が記載されているところ,半導体製造ラインシステムの複数の設備群管理計算機及び製品管理計算機は通信回線により情報転送可能\に接続されており,管理部署システムの複数の部署別管理計算機も通信回線により情報転送可能に接続されている。また,電子ファイル管理計算機は,半導体製造ラインシステムと管理部署システムとを接続し,複数の設備群管理計算機と複数の部署別管理計算機との間の送受信先を指定してそれぞれの電子ファイルの情報転送を管理する機能\を備えることから,電子ファイル管理計算機と半導体製造ラインシステムとの間,及び電子ファイル管理計算機と管理部署システムとの間にも,情報の転送を行う通信回線が存在するということができる。そして,計算機を通信回線により情報転送可能に接続する場合,送受信機能\を有する装置を介在させることは,コンピュータネットワークの技術分野における技術常識といえる事項であり,電子ファイル管理計算機,管理部署システムの部署別管理計算機,半導体製造ラインシステムの設備群管理計算機及び製品管理計算機は,いずれも通信回線により情報転送可能に接続されているのであるから,それぞれ送受信機能\を有する装置,すなわち「送信・受信装置」を介して情報転送可能に接続されていると認めることができる。」\n

◆判決本文

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平成21(行ケ)10144 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年03月30日 知的財産高等裁判所

 引用発明の認定誤りを理由として、拒絶審決が取り消されました。
 前記1(2)の記載によれば,引用例2記載発明は,音響装置や映像装置などの特別の機器を必要とせず,また睡眠薬や鎮静剤のような副作用や習慣性のない,日常的に摂取可能で,嗜好性にも優れた,α波を効果的に増強してリラックス状態をもたらすことのできるα波増強剤及びα波増強用食品を提供することを課題とするものである。引用例2には,「ストレス」という語が数多く用いられている。すなわち,「α波を増強させてストレスを解消してリラックス状態にする」(【0001】),「α波はリラックス時(安静・閉眼時)に増加し,ストレスがかかると減少する」,「α波の出現状態はリラックス度の指標としてしばしば用いられており,近年のストレス社会において,α波を積極的に増強させてリラックスさせようとする試みが色々なされている。」(【0002】),「優れたα波増強作用を有していてマラクジャ果汁を摂取するとストレスが解消されてリラックス状態を出現させることができる」(【0006】),「マラクジャ果汁の投与によってストレスの解消に有効なα波(特にα1波とα2波)の増強がなされる」(【0027】),「摂取して約1時間後にはストレスが低減してリラックスした精神状態になった。」(【0030】),「摂取して約40分後にはストレスが低減してリラックスした精神状態になった。」(【0031】),「本発明のα波増強剤またはα波増強用食品を摂取した場合には,α波が誘導増強されて,ストレスが解消されリラックスした状態を得ることができる。」,「時間的および場所的に制約されずにいつでも必要な時に摂取して,ストレスの解消を図ることができる。」(【0032】)との記載がある。これらの記載からは,ストレスの解消・低減がリラックスと同義に用いられており,α波が増強してリラックスした状態を指すものとして用いられていると合理的に理解される。また,実施例1の実験(脳波の記録)の内容をみても,実験開始時あるいはそれより前に,被験者にストレッサーが負荷されているのと記載はない。なお,実施例2のフリッカーテスト及び実施例3の刺激反応時間測定は,「マクラジャ果汁に中枢抑制作用があるか否か,あるとして作業能\力を障害するほどのものであるか否か」を確認したものにすぎず(【0027】),ストレスの解消・増減に係る効果を確認することを目的とする実験ではない。そうすると,引用例2発明は,マラクジャ果汁を含有する増強剤等により,脳のα波を増強させ,人の精神状態をリラックスさせる発明であり,そこにストレスの解消,低減という語が用いられているとしても,それは,単に,リラックスした状態を表すために用いられているにすぎないのであって,引用例2がストレスの解消,低減に係る技術を開示していると認定することはできない。これに対し,審決は,「引用例2に,α波が,リラックス時に増加し,ストレスがかかると減少することが知られていること,そこで,α波を積極的に増強させて,リラックスさせることによって,ストレスを予\防又は軽減しようとする試みがなされていることが記載・・・されているように,ストレスの予防,軽減機作として,α波の増強があることは公知である。また,引用例2には,低周波数のα波を10%程度増強することで被験者の内省に変化を与えるとする報告例も記載・・・されている。上記のとおり,ストレスの予\防,軽減とα波の増強の程度とが密接に関係することは明らかである」(審決書4頁1行〜9行)とする。しかし,上記のとおり,引用例2の「ストレスを予防又は軽減」との記述は,その技術的な裏付けがなく,単に,リラックス状態への移行を述べたにすぎないと理解するのが合理的であり,また,実施例を含めた引用例2全体の記載からみても,引用例2に,ストレスを予\防,軽減する技術が開示されていると判断することはできない。(2) 以上のとおり,引用例2発明に関する審決の認定は誤りである。審決は,引用例1発明及び引用例2発明の「ストレス」の意義についての誤った理解を前提として,両者の解決課題が共通であり,引用例1発明には引用例2発明を適用する示唆があると判断した点において,審決の上記認定の誤りは,結論に影響を及ぼす誤りであるというべきである。・・・・前記1(1)の,引用例1における,「本発明者らは,このような抗ストレス作用を有する物質を,ラットにアドレナリンのβ−受容体のアゴニストであるイソプロテレノールを投与した時の心拍数上昇に対する抑制効果を指標に,鋭意スクリーニングを行い,L−テアニンが,イソ\プロテレノールによって誘起される心拍数上昇を著しく抑制することを見出した」等の記載に照らすならば,引用例1発明は,L−テアニンを有効成分とする抗ストレス剤によりストレスの予防,軽減を図るというものであり,イソ\プロテレノールによって誘起される心拍数上昇を抑制したり,計算作業のストレス負荷時における心拍数の増加及び血圧の上昇を抑える効果があることからみて,心血管系に作用して,ストレスを予防,軽減する発明であり,自律神経系に作用して血圧又は心拍数の上昇を抑制することによりストレスの予\防・軽減を図るものである。これに対し,前記1(2)によれば,引用例2発明は,脳のα波を増強してリラックス状態を発生させる発明であり,同発明は,中枢神経系である脳に作用して脳のα波を増強させ,リラックス状態を発生させるものであると解される点で,両者に相違がある。ところで,前記(1)の記載によれば,自律神経系の作用と中枢神経系の作用は区別して認識されるのが技術常識であり,証拠を総合するも,自律神経系に作用する食品等が,当然に中枢神経系にも作用するという技術的知見があることを認めることはできない。そうすると,自律神経系に作用する引用例1発明は中枢神経系に作用する引用例2発明とは技術分野を異にする発明であることから,当業者は,引用例1発明に引用例2発明を適用することは考えないというべきであって,両発明を組み合わせることには阻害要因があるというべきである。イこの点,被告は,抗ストレス作用を「自律神経系の活動を反映する血管,心拍数などの心臓血管系の反応の点からみた作用」としてとらえるか,あるいは「中枢神経系の活動を反映する脳波からみた作用」としてとらえるかは,ストレスの程度やリラックスの程度を確認するための指標として何に着目するかという差異にすぎず,引用例1と引用例2の技術が質的に異なることを意味しないから,阻害要因とならないと主張する。しかし,前記のとおり,自律神経系に作用するか,中枢神経系に作用するかは,基本的な作用機序に係るものであり,単なる測定のための指標にすぎないとの証拠はなく,したがって,被告の主張は採用することができない。以上のとおり,阻害事由を看過して,当業者が引用例1発明に引用例2発明を適用することにより,容易に補正発明1に想到することができるとした審決の判断には誤りがある。

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平成20(行ケ)10467 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年03月10日 知的財産高等裁判所

 進歩性ありとして無効としなかった審決が、取り消されました。
 上記記載によると,引用例2には,入賞態様決定手段で決定されたビッグボーナスゲーム当選,ボーナスゲーム当選その他の入賞態様に応じ,遊技効果ランプの点灯の有無とリーチ音の発生の有無という異なる複数の報知態様の種類の組合せを選択し報知するとの構成が開示されているということができる。この点に関し,本件審決は,引用例2に記載された技術は音の発生若しくは遊技効果ランプの表\示又はその両方を用いた形態で入賞態様を報知するにとどまると判断したが,引用例2のスロットマシンにおいて,【0050】に記載されるように,ビッグボーナスゲーム当選の際にのみリーチ音を発生させるとした場合には,ビッグボーナスゲーム当選のときは,遊技効果ランプが点灯するとともに,リーチ音も発生し,ボーナスゲーム当選のときは,遊技効果ランプは点灯するものの,リーチ音は発生せず,その他のときは,遊技効果ランプは点灯せず,リーチ音も発生しないことになるのであるから,引用例2のスロットマシンに,遊技効果ランプの点灯の有無とリーチ音の発生の有無とを組み合わせて入賞態様を報知するものが含まれることは明らかであり,したがって,本件審決の判断は誤りであるといわざるを得ない。b そうすると,「入賞態様決定手段で決定された入賞態様に対応した報知情報を遊技者に報知する報知手段を備え」との構成,「報知手段は,…音発生手段によって発生される効果音の種類,および連動演出手段によって演出されるランプによる連動表\示態様の種類を,それぞれ選択する報知態様選択手段…から構成され」との構\成及び「報知態様選択手段により選択された効果音の態様の種類からなる報知情報および連動表示態様の種類からなる報知情報をそれぞれ報知する」との構\成をそれぞれ有する引用発明(3)において,引用例2に開示された上記構成(入賞態様決定手段で決定された入賞態様に応じ,異なる複数の報知態様の種類の組合せを選択し報知するとの構\成)を適用し,報知態様選択手段により選択される報知情報について,「音発生手段によって発生される効果音の種類,および連動演出手段によって演出される連動表示態様の種類の組合せを,入賞態様決定手段で決定された入賞態様に応じて選択する」との構\成を採用し,また,報知する報知情報について,「報知態様選択手段により選択された,効果音の種類及び連動表示態様の種類の組合せからなる」との構\成を採用すること,すなわち,本件訂正発明3の報知態様選択手段等に係る構成を採用することは,本件優先日当時の当業者において容易に想到し得たものと認めるのが相当である。\n

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平成21(行ケ)10133 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年03月03日 知的財産高等裁判所

 訂正要件違反かが争われました。新規事項でないとした判断は維持しましたが、当該構成要件を採用することは容易と判断して、無効理由なしとした審決を取り消しました。\n 本件明細書における「台板」の構成は,埋込用アタッチメントの一部を構\成する四角形の板状部材であって,その上部にフレーム及び振動装置を固定し,その下面中央部には杭の上部に嵌め込むための円筒状の嵌合部が設けてあるものとして記載されているということができるが,本件図面における振動装置の油圧モーターの油圧式ショベル系掘削機側の端は,台板とは別の部材である三角柱の3つの側面のうちの1つの面を開放状態としたような形状の部材によってカバーされており,同図面上は同油圧モーターの端がどこに位置するのかを確認することはできないから,台板の四辺のうち油圧式ショベル系掘削機側の辺が,油圧式ショベル系掘削機側にある振動装置の油圧モーターの端よりも油圧式ショベル系掘削機側にあることについて,本件明細書又は本件図面に直接的に記載されているとまで認めることはできない。もっとも,訂正が,当業者によって,明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該訂正は,明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものということができるので,本件訂正のうち特許請求の範囲に「上記台板(14)の四辺のうち油圧式ショベル系掘削機(9)側の辺は,油圧式ショベル系掘削機(9)側にある上記振動装置(2)の油圧モーター(21)の端よりも油圧式ショベル系掘削機(9)側にあり,」との記載を付加する部分が,本件明細書及び図面の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものかどうかを判断するに当たっては,この種の杭埋込装置における前記説示した意味での台板の存在及び形状についての当業者の認識を踏まえる必要がある。・・・・ 以上によると,本件特許出願時における当業者にとって,油圧式ショベル系掘削機のアーム先端部に取り付ける埋込用アタッチメントとして,四角形の台板の上部に振動装置を備えるとともに,その下部略中央部に杭との嵌合部を備えるものはよく知られており,振動装置,四角形の台板及び嵌合部相互の関係については,四角形の台板を油圧モーターを含む振動装置が納まる程度の大きさとし,振動装置が隠れるように配置する構成のものが知られ,作業現場において長年にわたって使用されてきたものとして周知であったということができる。そうすると,本件訂正のうち,特許請求の範囲の【請求項1】及び【請求項2】について「上記台板(14)の四辺のうち油圧式ショベル系掘削機(9)側の辺は,油圧式ショベル系掘削機(9)側にある上記振動装置(2)の油圧モーター(21)の端よりも油圧式ショベル系掘削機(9)側にあり,」との限定を加える部分は,本件特許出願時において既に存在した「台板の上部に振動装置を設けるとともに,下面中央部に嵌合部を設ける」という基本的な構成を前提として,「振動装置の油圧モーターが油圧式ショベル系掘削機側にある」という当業者に周知の構\成のうちの1つを特定するとともに,「台板」と「振動装置」の関係について,同様に当業者に周知の構成のうちの1つである「四角形の台板の上に油圧モーターが隠れるように振動装置を配置するという構\成」に限定するものである。そして,上記イ(ア)ないし(ク)で認定した技術状況に照らすと,上記周知の各構成はいずれも設計的事項に類するものであるということができる。したがって,本件明細書及び図面に接した当業者は,当該図面の記載が必ずしも明確でないとしても,そのような周知の構\成を備えた台板が記載されていると認識することができたものというべきであるから,本件訂正は,特許請求の範囲に記載された発明の特定の部材の構成について,設計的事項に類する当業者に周知のいくつかの構\成のうちの1つに限定するにすぎないものであり,この程度の限定を加えることについて,新たな技術的事項を導入するものとまで評価することはできないから,本件訂正は本件明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてするものとした本件審決の判断に誤りはない。・・・・そして,上記1(3)ウにおいて認定した本件特許出願時における当業者の認識を踏まえると,この種の杭打込装置において,「台板の上部に振動装置を設けるとともに,下面中央部に嵌合部を設ける」という構成は基本的な構\成のうちの1つであると認められるから,引用例1に接した当業者は,同記載の図面から台板の存在を認識することができるというべきである。したがって,台板の有無及びその構成について,本件発明1と引用発明1との相違点2を認定した本件審決には,原告主張の誤りがあるといわなければならない。(2) しかしながら,本件審決は,引用発明1には台板の上部にあるものを保護するという技術思想を認めることができないとの理由により,引用発明1と本件発明1との相違点2に係る構成を導き出すことは当業者にとって容易であるということはできないと判断しているのであって,引用例1における台板の存在を認定したとしても,その判断が異なる結果となったとは解されず,本件審決による相違点2の認定の前記誤りは,結局,本件審決の結論に影響を及ぼすものということはできないから,原告主張の取消事由2も採用することができない。\n

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平成21(行ケ)10265 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年01月28日 知的財産高等裁判所

 引用文献には、示唆がないとして、進歩性なしとした審決が取り消されました。
 刊行物1の第4図によれば,切り欠ぎ部と対称の位置にあり電機子の軸方向における両側面に他の部材7(錘)を取り付けることが開示されているのみであり,環状のコアレス電機子コイルの内側に錘を入れることについては記載も示唆もないし,コイルの内側に錘を配置することが本件発明を含む軸方向空隙型電動機の技術分野で周知の技術的事項であると認めるに足りる証拠はない。また,径方向空隙型電動機である甲1発明から軸方向空隙型電動機である本件発明を想到するに当たって,甲1発明において径方向空隙型を軸方向空隙型に変更したことに伴い,甲1発明における錘の配置位置を軸方向から径方向に変更した場合は,電機子の軸方向の側面に代えて電機子の径方向の側面に錘を配置することとなり,これは電機子の外周に錘を設けることとなるから,当業者において電機子コイルの環の内側に錘を入れることを想到させるものではない。さらに,前記刊行物2の記載によれば,軸方向空隙型電動機である甲3発明において,その電機子に対して厚みのある部材を付加することは排除されるべき技術的事項であって,たとえ甲1発明に不平衡荷重効果を増大させるための部材を取り付けることが開示されているとしても,不平衡荷重効果を増大させるような部材は,一般に密度が高く所定の厚みを有するものであるし,また,電機子巻線の近傍にこのような部材を配置することは,従来行われてきた加圧成形等の妨げにもなり得る。したがって,甲1発明の電動機の各構成要素を,軸方向空隙型電動機である甲3発明の構\成のものに改変したものにおいて,電機子に錘となる部材を取り付けることを想到することは困難であるというべきである。

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平成21(行ケ)10112 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年01月28日 知的財産高等裁判所

 引用文献の認定誤まりがあるとして、進歩性なしとした無効審決が取り消されました。
 甲1の前記記載によれば,甲1発明Aは,本来接着力が低い含フッ素ポリマーの接着力を改善するために,含フッ素エチレン性重合体の官能基に着目し,含フッ素エチレン性重合体がポリマー鎖末端又は側鎖に特定数以上のカーボネート基及び/又はカルボン酸ハライド基を有するようにすることによって接着力の向上を図ったものであるといえる。含フッ素エチレン性重合体のカルボニル基含有官能\基については,「カーボネート基および/またはカルボン酸ハライド基を総称して,単に『カルボニル基含有官能基』という。」(明細書4頁2行〜4行)とされて,カルボニル基含有官能\基がカーボネート基及び/又はカルボン酸ハライド基を意味するものとされ,カーボネート基及びカルボン酸ハライド基以外のカルボニル基についての記載はない。他方,カーボネート基及びカルボン酸ハライド基については,具体的な化学式を示して,その例が示されている(4頁25行〜5頁5行)。そうすると,引用例(甲1)において,「カルボニル基含有官能基」との文言が用いられているとしても,これを甲1の記載に即して検討すれば,甲1には,含フッ素エチレン性重合体の官能\基として,カーボネート基及びカルボン酸ハライド基のみが開示されているにすぎず,それ以外のカルボニル基含有官能基についての開示はない。したがって,甲1発明Aのカーボネート基及びカルボン酸ハライド基について,その上位概念である「カルボニル基」と認定した審決の認定に誤りがある。3 相違点1についての容易想到性判断の誤り(取消事由1の2)について前記2のとおり,審決には,甲1発明Aを認定するに当たり,上位概念である「カルボニル基」を用いて認定した点において誤りがあり,審決は,その結果,甲1発明Aに甲6の3発明を誤って適用し,相違点1の容易想到性について判断を誤ったものであると判断する。・・・前記1で認定した引用例(甲1)の記載によれば,甲1発明Aは,含フッ素エチレン性重合体について,ポリマー鎖末端又は側鎖にカーボネート基及び/又はカルボン酸ハライド基を有するようにすることで,ポリアミド系樹脂と含フッ素エチレン性重合体との層間接着力を向上させたものであり,ポリマー鎖末端又は側鎖に有するのは,カーボネート基及び/又はカルボン酸ハライド基であり,これをカルボニル基と認定することはできないことは前記2で判断したとおりである。また,引用例(甲1)には,ポリアミドについて,発明の対象となった含フッ素エチレン性重合体と接着性のよい既存のポリアミド材料を選択するという視点からの記載がされているだけであり,ポリアミドの側の特定の官能基又は極性基に注目し,アミン価,酸価を調整して,含フッ素接着性材料との接着力を増加させることについての記載はない。したがって,当業者が甲1の記載を見たとしても,フッ素性接着材料との接着性のよい材料としてポリアミドを認識し,そのポリアミドの中からより接着力の強い材料を選択することについての示唆を与えられることはあるとしても,そこから,ポリアミドの官能\基又は極性基に着目し,アミン価,酸価を調整することにより接着性を向上させるということについてまで示唆を与えられるということはできない。

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平成21(行ケ)10136 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年01月28日 知的財産高等裁判所

 引用文献の認定誤りを理由として、無効理由なしとした審決が取り消されました。
 上記の記載によれば,プランタ3より高い仕切部5は,バルコニーなどに立つ者から,プランタ3を隠すために設けられるものであり,甲2−1発明は,仕切部5を設けることにより,植物2を花壇に植えられたかのように見せ,美しい景観を造り出すことができるようにした発明である。このような甲2−1発明の目的に照らすならば,突出部5aは,プランタ3をバルコニーなどに立つ者から隠れるような位置に配置されることは必須であるが,それをもって足りるのであって,プランタ3の外周縁の上端部を被覆しないことまでも必須であると解することはできない。このような理解は,「建物の屋上,バルコニー等を容易に緑化する・・・ことができる」(甲2の1【0004】)と記載され,「容易」に作業ができることが強調されていることに照らすならば,突出部5aをプランタ3の外周縁の上端部を被覆しないような位置のみに配置することを必須のものと解することは,不自然であること,実願平2−63005号(実開平4−21242号)のマイクロフィルム(甲4,第2図)の「上板121」,特開平8−89088号公報(甲7,【図2】)の「鉤部12a」,実開昭59−130593号公報(甲8,第2図)の「笠木部5」及び実開昭63−167843号公報(甲9,第3図)の「張出し状被覆部3」が示されていることに照らすならば,被覆対象物の外周縁の上端部より被覆対象物側の領域を被覆することの方が自然であることと整合する。

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平成20(行ケ)10425 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年12月22日 知的財産高等裁判所

 進歩性なしとした審決が、引用の構成,作用及び機能\の点において,本件発明の検知の構成と大きく異なるとして、取り消されました。
 上記記載によると,引用例4には,吸入用穴と排気弁とを備えた覆い等から成る鼻被覆具において,排気弁の一方の端部を覆いに固定して,排気弁が片開きの状態で開くようにした上,排気弁の他方の端部に接点を取り付けるとともに,鼻被覆具の対応する位置(排気弁が閉じた際に当該接点が接触することとなる覆いの部分)にも接点を取り付け,これら2つの接点によりセンサを構成し,排気弁が閉じた時(2つの接点が接触した時)に信号を発するとの構\成(以下「引用例4の検知の構成」という。)が開示されており,これは,排気弁の開閉の有無をセンサで検知するものということができる。しかしながら,上記記載によると,引用例4の鼻被覆具は,吸気を加湿したり,清浄化したりすることのできる鼻又は鼻及び口の双方を覆うマスクに係る従来技術の問題点(飲食時,会話時等における煩わしさ,呼吸時の息苦しさ等)を克服するとともに,更に引用例4の検知の構\成を付加することにより,無呼吸症候群の病状に係るデータ(呼吸停止状態が生じた回数等)を取得することができ,その他,呼吸を感知する必要のある病気の診断等に活用することができるというものであるし,また,引用例4の鼻被覆具は,送風(吸気の補助)のためのブロワーを備えるものではなく,したがって,ブロワー送風を制御するとの構成を有するものでもない。そうすると,本件発明の検知の構\成が,消費電力の増加を抑制するために呼吸連動制御の構成を採用する前提として,呼吸の状態(排気又は吸気)を検知し,これにより,呼吸に連動したブロワー送風の切替えを行うものであるのに対し,引用例4の検知の構\成は,無呼吸症候群の病状をモニターするなどするため,呼吸の状態(呼吸停止の有無)を検知するものの,これを単にデータとして取得するのみであり,これによって呼吸に連動したブロワー送風の切替えその他の呼吸に連動した何らかの制御を行うものではないから,引用例4の検知の構成は,その作用及び機能\の点において,本件発明の検知の構成と大きく異なるものであるし,また,その解決課題の点においても,呼吸連動制御の構\成と大きく異なるものであるというべきである。さらに,上記のとおり,引用例4には,同引用例記載の鼻被覆具を防じん防毒用のマスクとしても使用することができるとの記載がみられるものの,引用例4の検知の構成を付加した目的に照らすと,同構\成を付加した引用例4の鼻被覆具は,防じん防毒用のマスクとして用いられるものではなく,加えて,上記のとおり,引用例4の鼻被覆具がブロワーを備えないものであることをも併せ考慮すると,引用例4の検知の構成を備えた同引用例の鼻被覆具は,その属する技術分野の点においても,呼吸連動制御の構\成を有する呼吸用保護具(モータで駆動されるブロワーを設置したもの)と異なる面を有するものといわざるを得ない。したがって,引用発明において,呼吸連動制御の構成を採用し得ると仮定しても,本件出願当時の当業者において,その構\成を実現する具体的な方法として,引用例4の検知の構成を適用し,本件発明の検知の構\成に容易に想到することができたとまで認めることはできない。この点に関し,被告らは,引用例4記載の発明が属する国際特許分類を根拠に,引用例4の検知の構成を備えた同引用例の鼻被覆具と本件発明とが同一の技術分野に属すると主張するが,発明の属する国際特許分類が同じであることから直ちに,発明の構\成の組合せ,置換等の容易性を判断する際の考慮要素の1つとなる技術分野の異同に関し,各発明の属する技術分野に異なる面がある場合を否定することはできないというべきである。

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平成21(ネ)10046 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成21年12月28日 知的財産高等裁判所

 第1審は、進歩性なしを理由として104条の3により権利行使不能と認定しました。控訴人は、引用文献に記載の技術は、基本原理が異なると控訴しましたが、知財高裁は原審の判断を維持しました。
 すなわち,確かに,同じ断面の管路に同じ速さで液体を流すことを前提とするならば,粘性の高い液体にはその分だけ高い圧力を必要とすることとなる。しかし,実際の装置における液体の流速は,ノズルの長さ,大きさや液体の粘性などの諸条件に応じて異なり,液体に加えられる圧力も異なるものと認められ,乙22に記載された「0.1から5bar」という圧力は,一概に低いとは言い切れないとしても,高いとも断言できないものである。また,前記a(b)のとおり,乙22記載の発明において分析液体7が圧力チャンバー1内で加圧下に保持されていたとしても,そのことから直ちに,乙22記載の発明が液体供給源の圧力によって液体が放出されることを基本原理とするものとは認められない。・・・前記(ア)bのとおり,乙22の記載(【0021】等)によれば,液圧加速とは,閉鎖領域19がノズル放出口3より広いことにより,閉鎖素子13の移動の速さよりもノズル放出口3から放出される液体の速さが速くなることを意味するものと認められ,原告主張のように,閉鎖素子の移動によってバルブの開きが小さくなったときに流量が減少するという問題に対して流量を補うものとは認められない。以上によれば,乙22記載の発明は,閉鎖素子の移動によって液体が放出されるものと認められ,液体供給源の圧力によって液体が放出されることを基本原理とするものとは認められない。

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平成21(行ケ)10125 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年12月28日 知的財産高等裁判所

 引用発明の認定誤りを理由として、進歩性なしとした審決を取り消しました。
 前記(1)で認定した刊行物1の記載によれば,引用発明は,長時間座って作業をする人の腋の下を支えて腕と腰の疲れを防ぐ軽快具であり,支棒(2)に巻かれ,パイプ(4)がはめ込まれているスプリング(5)が,腋下によって圧迫されることで生じる復元力によって腋下が押し上げられることによって上体を支持して腕と腰の負担を軽くし,楽にするという効果を有する器具であるといえる。しかし,パイプ(4)が略水平方向に移動することができる旨の記載はない。刊行物1の第3図によれば,パイプ(4)は略中央部から外側に湾曲しているものの,パイプ(4)の上端は,下端のほぼ真上に位置し,水平方向に移動していない態様で示されていることからすれば,同図は,使用者の体重(の一部)が腋下支にかかることにより撓んだ状態を示しており,パイプ(4)が弾力性を有してその上端の腋下支(6)を略水平方向に移動可能とすることを示したものと解することはできない。\n

◆判決本文

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