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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

本件発明

平成28(行ケ)10071  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年6月14日  知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性なしとした審決が取り消されました。理由は、相違点の認定誤りです。
 ア 本件審決は,「保護方法データベース」に記憶された「入力元のアプ リケーション」が保護対象データである「ファイル」を処理するのは自明 であり,機密事項を保護対象データとして扱うことは当該技術分野の技術 常識であることから,引用発明の「入力元のアプリケーション」,「識別 子」はそれぞれ,本願発明の「機密事項を扱うアプリケーション」,「機 密識別子」に相当し,また,引用発明の「保護方法データベース」に「入 力元のアプリケーション」の「識別子」が記憶されていることは明らかで あるから,引用発明の「保護方法データベース」は本願発明の「機密事項 を扱うアプリケーションを識別する機密識別子が記憶される機密識別子記 憶部」に相当する旨認定・判断した。 イ(ア) しかし,前記認定に係る本願明細書及び引用例1の記載によれば, 本願発明における「機密識別子」は「機密事項を扱うアプリケーション を識別する」ものとして定義されている(本願明細書【0006】等) のに対し,引用発明におけるアプリケーションの「識別子」は,アプリ ケーションを特定する要素(アプリケーション名,プロセス名等)とし て位置付けられるものであって(引用例1【0037】等),必ずしも 直接的ないし一次的に機密事項を扱うアプリケーションを識別するもの とはされていない。
(イ) また,本願発明は,「すべてのアプリケーションに関して同じ保護 を行うと,安全性は高くなるが,利便性が低下するという問題が生じ る」(本願明細書【0004】)という課題を解決するために,「当 該アプリケーションが,前記機密識別子記憶部で記憶されている機密 識別子で識別されるアプリケーションであり,送信先がローカル以外 である場合に」「送信を阻止」するという構成を採用したものである。\nこのような構成を採用することによって,「機密事項を含むファイル\n等が送信によって漏洩することを防止することができ」,かつ,「機 密識別子で識別されるアプリケーション以外のアプリケーションにつ いては,自由に送信をすることができ,ユーザの利便性も確保するこ とができる」という効果が奏せられ(本願明細書【0007】),前 記課題が解決され得る。このことに鑑みると,本願発明の根幹をなす 技術的思想は,アプリケーションが機密事項を扱うか否かによって送 信の可否を異にすることにあるといってよい。 他方,引用発明において,アプリケーションは,機密事項を扱うか否 かによって区別されていない。すなわち,そもそも,引用例1には機密 事項の保護という観点からの記載が存在しない。また,引用発明は,柔 軟なデータ保護をその解決すべき課題とするところ(【0008】), 保護対象とされるデータの保護されるべき理由は機密性のほかにも考え 得る。このため,機密事項を保護対象データとして取り扱うことは技術 常識であったとしても,引用発明における保護対象データが必ず機密事 項であるとは限らない。しかも,引用発明は,入力元のアプリケーショ ンと出力先の記憶領域とにそれぞれ安全性を設定し,それらの安全性を 比較してファイルに保護を施すか否かの判断を行うものである。このた め,同じファイルであっても,入力元と出力先との安全性に応じて,保 護される場合と保護されない場合とがあり得る。 これらの点に鑑みると,引用発明の技術的思想は,入力元のアプリケ ーションと出力先の記憶領域とにそれぞれ設定された安全性を比較する ことにより,ファイルを保護対象とすべきか否かの判断を相対的かつ柔 軟に行うことにあると思われる。かつ,ここで,「入力元のアプリケー ションの識別子」は,それ自体として直接的ないし一次的に「機密事項 を扱うアプリケーション」を識別する作用ないし機能は有しておらず,\n上記のようにファイルの保護方法を求める上で比較のため必要となる 「入力元のアプリケーション」の安全性の程度(例えば,その程度を示 す数値)を得る前提として,入力元のアプリケーションを識別するもの として作用ないし機能するものと理解される。\nそうすると,本願発明と引用発明とは,その技術的思想を異にするも のというべきであり,また,本願発明の「機密識別子」は「機密事項を 扱うアプリケーションを識別する」ものであるのに対し,引用発明の 「アプリケーションの識別子」は必ずしも機密事項を扱うアプリケーシ ョンを識別するものではなく,ファイルの保護方法を求める上で必要と なる安全性の程度(例えば,数値)を得る前提として,入力元のアプリ ケーションを識別するものであり,両者はその作用ないし機能を異にす\nるものと理解するのが適当である。
(ウ) このように,本願発明の「機密識別子」と引用発明の「識別子」が 相違するものであるならば,それぞれを記憶した本願発明の「機密識 別子記憶部」と引用発明の「保護方法データベース」も相違すること になる。
ウ 以上より,この点に関する本件審決の前記認定・判断は,上記各相違点 を看過したものというべきであり,誤りがある。
エ これに対し,被告は,相違点AないしBの看過を争うとともに,仮に相 違点Bが存在するとしても,その点については,本件審決の相違点1に 関する判断において事実上判断されている旨主張する。 このうち,相違点AないしBの看過については,上記ア及びイのとお りである。 また,本件審決の判断は,1)引用例2に記載されるように,ファイル を含むパケットについて,内部ネットワークから外部ネットワークへの 持ち出しを判断し,送信先に応じて許可/不許可を判定すること,すな わち,内部ネットワーク(ローカル)以外への送信の安全性が低いとし てセキュリティ対策を施すことは,本願出願前には当該技術分野の周知 の事項であったこと,2)参考文献に記載されるように,機密ファイルを あるアプリケーションプログラムが開いた後は,電子メール等によって 当該アプリケーションプログラムにより当該ファイルが機密情報保存用 フォルダ(ローカル)以外に出力されることがないようにすることも, 本願出願前には当該技術分野の周知技術であったことをそれぞれ踏まえ て行われたものである。 しかし,1)に関しては,本件審決の引用する引用例2には,送信の許 可/禁止の判定は送信元及び送信先の各IPアドレスに基づいて行われ ることが記載されており(【0030】),アプリケーションの識別子 に関する記載は見当たらない。また,前記のとおり,引用発明における 識別子は,アプリケーションが機密事項を扱うものか否かを識別する作 用ないし機能を有するものではない。\n2)に関しては,参考文献記載の技術は,機密情報保存用フォルダ内の ファイルが当該フォルダの外部に移動されることを禁止するものである ところ(【0011】),その実施の形態として,機密情報保存用フォ ルダ(機密フォルダ15A)の設定につき,「システム管理者は,各ユ ーザが使用するコンピュータ10内の補助記憶装置15内に特定の機密 ファイルを保存するための機密フォルダ15Aを設定し,ユーザが業務 で使用する複数の機密ファイルを機密フォルダ15A内に保存する。」 (同【0018】)との記載はあるものの,起動されたアプリケーショ ンプログラムが機密事項を扱うものであるか否かという点に直接的に着 目し,これを識別する標識として本願発明の機密識別子に相当するもの を用いることをうかがわせる記載は見当たらない(本件審決は,参考文 献の記載(【0008】,【0009】,【0064】)に言及するも のの,そこでの着目点は機密ファイルをあるアプリケーションプログラ ムが開いた後の取扱いであって,その前段階として機密ファイルを定め る要素ないし方法に言及するものではない。)。このように,当該周知 技術においては,アプリケーションが機密事項を扱うものであるか否か を識別する機密識別子に相当するものが用いられているとはいえない。 なお,参考文献の記載(【0032】等)によれば,アプリケーショ ンプログラムのハンドル名がアプリケーションの識別子として作用する ことがうかがわれるが,参考文献記載の技術は,アプリケーションが実 際に機密ファイルをオープンしたか否かによって当該アプリケーション によるファイルの外部への格納の可否が判断されるものであり,入力元 と出力先との安全性の比較により処理の可否を判断する引用発明とは処 理の可否の判断の原理を異にする。また,扱うファイルそのものの機密 性に着目して機密ファイルを外部に出すことを阻止することを目的とす る点で,扱うファイルそのものの機密性には着目していない引用発明と は目的をも異にする。このため,引用発明に対し参考文献記載の技術を 適用することには,動機付けが存在しないというべきである。 そうすると,相違点Bにつき,引用発明に,引用例2に記載の上記周 知の事項を適用しても,本願発明の「機密識別子」には容易に想到し得 ないというべきであるし,参考文献記載の周知技術はそもそも引用発明 に適用し得ないものであり,また,仮に適用し得たとしても,本願発明 の「機密識別子」に想到し得るものではない。そうである以上,相違点 Bにつき,本件審決における相違点1の判断において事実上判断されて いるとはいえない。

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平成28(行ケ)10037  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年6月14日  知的財産高等裁判所

 審決は、新規性無し(29条1項3号違反)で無効と判断しましたが、知財高裁はこれを取り消しました。
 1 本件審決の判断構造と原告の主張の理解
本件審決が認定した本件発明と引用発明(甲1発明)は,いずれも多数の選 択肢から成る化合物に係る発明であるところ,本件審決は,両発明の間に一応 の相違点を認めながら,いずれの相違点も実質的な相違点ではないとして,本 件発明と甲1発明が実質的に同一であると認定判断し,その結果,本件発明に は新規性が認められないとの結論を採用した。 その理由とするところは,本件発明1に関していえば,相違点に係る構成は\nいずれも単なる選択を行ったにすぎず,相違点に係る化合物の選択使用に格別 の技術的意義が存するものとはいえない(相違点1ないし3),あるいは,引 用発明(甲1発明A)が相違点に係る構成態様を包含していることは明らかで\nあり,かつ,その構成態様を選択した点に格別な技術的意義が存するものとは\n認められない(相違点4)というものであり,本件発明1を引用する本件発明 2ないし14,本件発明14を引用する本件発明15ないし17についても, それぞれ,引用発明(甲1発明A又はB)との間に新たな相違点が認められな いか,新たな相違点が認められるとしても,各相違点に係る構成が甲1に記載\nされているか,その構成に格別な技術的意義が存するものとは認められないか\nら,いずれも実質的な相違点であるとはいえないというものである。 要するに,本件審決は,引用発明である甲1発明と本件発明との間に包含関 係(甲1発明を本件発明の上位概念として位置付けるもの)を認めた上,甲1 発明において相違点に係る構成を選択したことに格別の技術的意義が存するか\nどうかを問題にしており,その結果,本件発明が甲1発明と実質的に同一であ るとして新規性を認めなかったのであるから,本件審決がいわゆる選択発明の 判断枠組みに従って本件発明の特許性(新規性)の判断を行っていることは明 らかである。 これに対し,原告は,取消事由として,引用発明認定の誤り(取消事由A) や一致点認定の誤り(取消事由1)を主張するものの,本件審決が認定した各 相違点(相違点1ないし4)それ自体は争わずに,本件審決には,「特許発明 と刊行物に記載された発明との相違点に選択による格別な技術的意義がなけれ ば,当該相違点は実質的な相違点ではない」との前提自体に誤りがあり(取消 事由2),また,仮にその前提に従ったとしても,相違点1ないし4には格別 な技術的意義が認められるから,特許性の有無に関する相違点の評価を誤った 違法があると主張している(取消事由3)。 これによれば,原告は,本件審決が採用した特許性に関する前記の判断枠組 みとその結論の妥当性を争っていることが明らかであり,取消事由2及び3も そのような趣旨の主張として理解することができる。 また,本件発明2ないし17はいずれも本件発明1を更に限定したものと認 められるから,本件発明1の特許性について判断の誤りがあれば,本件発明2 ないし17についても同様に,結論に重大な影響を及ぼす判断の誤りがあると いえる。 以上の観点から,まず,本件発明1に関し,本件審決が認定した各相違点(相 違点1ないし4)を前提に,各相違点が実質的な相違点ではないとして特許性 を否定した本件審決の判断の当否について検討することとする。
・・・・
本件訂正後の特許請求の範囲の記載(前記第2の2)及び本件明細書の記 載(前記(1))によれば,本件発明は,次の特徴を有すると認められる。
・・・
(1) 特許に係る発明が,先行の公知文献に記載された発明にその下位概念とし て包含されるときは,当該発明は,先行の公知となった文献に具体的に開示 されておらず,かつ,先行の公知文献に記載された発明と比較して顕著な特 有の効果,すなわち先行の公知文献に記載された発明によって奏される効果 とは異質の効果,又は同質の効果であるが際立って優れた効果を奏する場合 を除き,特許性を有しないものと解するのが相当である 。 ここで,本件発明1が甲1発明Aの下位概念として包含される関係にある ことは前記3のとおりであるから,本件発明1は,甲1に具体的に開示され ておらず,かつ,甲1に記載された発明すなわち甲1発明Aと比較して顕著 な特有の効果を奏する場合を除き,特許性を有しないというべきである。 そして,甲1に本件発明1に該当する態様が具体的に開示されているとま では認められない(被告もこの点は特に争うものではない。)から,本件発 明1に特許性が認められるのは,甲1発明Aと比較して顕著な特有の効果を 奏する場合(本件審決がいう「格別な技術的意義」が存するものと認められ る場合)に限られるというべきである。
(2) この点に関し,本件審決は次のとおり判断した。
・・・・
エ 以上によれば,本件審決は, (1) 甲1発明Aの「第三成分」として,甲1の「式(3−3−1)」及び 「式(3−4−1)」で表される重合性化合物を選択すること,\n(2) 甲1発明Aの「第一成分」として,甲1の「式(1−3−1)」及び「式 (1−6−1)」で表される化合物を選択すること,\n(3) 甲1発明Aの「第二成分」として,甲1の「式(2−1−1)」で表さ\nれる化合物を選択すること, (4) 甲1発明Aにおいて,「塩素原子で置換された液晶化合物を含有しない」 態様を選択すること, の各技術的意義について,上記(1)の選択と,同(2)及び(3)の選択と,同(4)の 選択とをそれぞれ別個に検討した上,それぞれについて,格別な技術的意 義が存するものとは認められないとして,相違点1ないし4を実質的な相 違点であるとはいえないと判断し,本件発明1の特許性(新規性)を否定 したものといえる。
(3) 本件審決の判断の妥当性
本件発明1は,甲1発明Aにおいて,3種類の化合物に係る前記(1)ないし (3)の選択及び「塩素原子で置換された液晶化合物」の有無に係る前記(4)の選 択がなされたものというべきであるところ,証拠(甲42)及び弁論の全趣 旨によれば,液晶組成物について,いくつかの分子を混ぜ合わせること(ブ レンド技術)により,1種類の分子では出せないような特性を生み出すこと ができることは,本件優先日の時点で当業者の技術常識であったと認められ るから,前記(1)ないし(4)の選択についても,選択された化合物を混合するこ とが予定されている以上,本件発明の目的との関係において,相互に関連す\nるものと認めるのが相当である。 そして,本件発明1は,これらの選択を併せて行うこと,すなわち,これ らの選択を組み合わせることによって,広い温度範囲において析出すること なく,高速応答に対応した低い粘度であり,焼き付き等の表示不良を生じな\nい重合性化合物含有液晶組成物を提供するという本件発明の課題を解決する ものであり,正にこの点において技術的意義があるとするものであるから, 本件発明1の特許性を判断するに当たっても,本件発明1の技術的意義,す なわち,甲1発明Aにおいて,前記(1)ないし(4)の選択を併せて行った際に奏 される効果等から認定される技術的意義を具体的に検討する必要があるとい うべきである。 ところが,本件審決は,前記のとおり,前記(1)の選択と,同(2)及び(3)の選 択と,同(4)の選択とをそれぞれ別個に検討しているのみであり,これらの選 択を併せて行った際に奏される効果等について何ら検討していない。このよ うな個別的な検討を行うのみでは,本件発明1の技術的意義を正しく検討し たとはいえず,かかる検討結果に基づいて本件発明1の特許性を判断するこ とはできないというべきである。 以上のとおり,本件審決は,必要な検討を欠いたまま本件発明1の特許性 を否定しているものであるから,上記の個別的検討の当否について判断する までもなく,審理不尽の誹りを免れないのであって,本件発明1の特許性の 判断において結論に影響を及ぼすおそれのある重大な誤りを含むものという べきである。

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平成28(行ケ)10155  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年4月18日  知的財産高等裁判所

 特許出願人は「光源が,分解されることのない一体不可分に形成されたものである」との限定解釈を主張しましたが、認められませんでした。
 本願明細書には,前記1(2)のとおり,本願発明は,リフレクタ上に又はリフレク タに光源をガイドする及び/又は固定するための更なる別個の構成要素を必要とす\nることなく,前記光源が,前記リフレクタの反射表面に対してあらかじめ規定され\nた位置において,前記リフレクタの後方の端部におけるリフレクタの頸部に直接的 に固定されることができるような照明装置を提供し,光源が,一方の手のみによっ て,容易に,確実に,速く,リフレクタに固定されるのを可能にすることを目的と\nし,課題の解決手段として,複数のロック部材がリフレクタ上に形成されており, 前記ロック部材は,前記リフレクタの光軸の周りの又は前記光軸に平行な軸の周り の光源の回転運動の動きの経路において,前記光源が前記光軸の方向において前記 リフレクタの頸部内に少なくとも部分的に挿入されている場合,前記光源内に形成 されている対応する穿孔と嵌合し,少なくとも1つの前記ロック部材は,このよう な仕方において前記回転運動の経路における少なくとも1つの穿孔と協働し,前記 光源が前記リフレクタに対する軸方向の規定された位置に保持されるように構成し,\nこれにより,ランプ(光源)のリフレクタへの固定がリフレクタ及びランプ(光 源)とは別個の付加的な留め具を必要とすることなく行われる等の作用効果を奏す るものであることが記載されている。 上記記載によれば,本願発明は,光源をリフレクタに固定する際の作業を念頭に, 当該作業において,光源とは別個の付加的な留め具等の構成を要することなく,光\n源の,光軸の方向におけるリフレクタ内への挿入及び当該光軸周りの又はそれに平 行な軸の周りの回転運動により,リフレクタ上に形成されたロック部材と光源にお いて形成された穿孔とを係合させることにより,リフレクタへのランプの位置決め 及び固定ができるようにしたものであると理解できる。そして,かかる特徴に照ら すと,本願発明における光源が,分解されることのない一体不可分に形成されたも のに限定されると特に解すべき理由はない。 さらに,本願明細書に記載された実施形態においては,「光源」に相当するもの として,「イグナイタ4,ガラス製エンベロープ11及びランプベース18を有す るガス放電ランプ3」が開示されているところ,これも複数の構成要素から組み立\nてられるものであること,並びに,イグナイタ4がガラス製エンベロープ11及び ランプベース18に回転が確実になるような仕方において固定されることが記載さ れる一方で(【0030】,【0035】,【0036】,【0038】),これ らが分解されることのない一体不可分に形成されたものであることについては何ら 記載がない。
(ウ) 以上によれば,本願発明における光源が,分解されることのない一体不可 分に形成されたものに限定されるということはできず,これには,分解可能な複数\nの構成要素から組み立てられるものも含まれるものと解される。\n
・・・
(ア) 原告らは,本願明細書の記載を参酌すれば,本願発明の光源は,一体的固 定的に形成されたものであり,光源3の交換の際にガラスエンベロープ11,ベー ス18及びイグナイタ4が分解されることはなく一体不可分であって,光源をガイ ドする別個の構成要素を要せずに,交換すべき光源を一方の手のみによって,容易\nに速くリフレクタに固定できる光源を意味すると解すべきである旨主張する。 しかし,前記イ(イ)のとおり,本願明細書に記載された本願発明の特徴に照らす と,本願発明における光源を,分解されることのない一体不可分に形成されたもの に限定されると特に解すべき理由はなく,実施形態における「光源」に相当するも のとして記載された「イグナイタ4,ガラス製エンベロープ11及びランプベース 18を有するガス放電ランプ3」についても,複数の構成要素から組み立てられる\nものであることが記載されている一方で,分解されることのない一体不可分に形成 されたものであることについては何ら記載がない。 本願明細書の記載によれば,前記イ(イ)のとおり,本願発明は,光源をリフレク タに固定する際の作業を念頭に,当該作業において,光源とは別個の付加的な留め 具等の構成を要することなく,光源の,光軸の方向におけるリフレクタ内への挿入\n及び当該光軸周りの又はそれに平行な軸の周りの回転運動により,リフレクタ上に 形成されたロック部材と光源において形成された穿孔とを係合させることにより, リフレクタへのランプの位置決め及び固定ができるようにしたものであると理解で きる。そして,光源をリフレクタに固定する際の作業において,光源のリフレクタ への固定がリフレクタ及び光源とは別個の付加的な留め具を必要とすることなく行 われるということは,光源自体がどのように構成されたものであるか(分解される\nことのない一体不可分に形成されたものであるか)を規定するものではない。

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平成28(行ケ)10100  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年2月8日  知的財産高等裁判所

 本件は、下記第4次審決の取消訴訟です。知財高裁は進歩性違反について無効理由なし(特許維持)と判断しました。今までの経緯が複雑です。
第1次審決−無効審理において訂正請求をしましたが、認められず無効審決。
第1次取消訴訟+訂正審判がなされたので、特許庁に差し戻し。
第2次審決−訂正審判による訂正認容審決。
第3次審決−無効審判が請求されたが、無効理由なしとの審決。
第2次取消訴訟−無効理由なしとした審決を取り消し(平成26年(行ケ)第10219号)。
第4次審決−無効審判の審理が再開され、再度、無効理由なしとの審決
 本件請求項1の記載によれば,本件発明1の「凸部分は0.07c m(0.0275in)〜0.0889cm(0.0350in)の曲 率半径を持ち」との構成は,ゴルフボールの「表\面から延びる格子構造」\nを成す「格子部材」について,「第1の凹部分と第2の凹部分の間に設 けられた」「頂部を有」する部分である「凸部分」の「曲線の断面」が, 上記数値範囲の曲率半径を有することを特定するものといえるところ, その断面が上記数値範囲の曲率半径を有すべき「凸部分」の範囲(頂部 に相当する部分か,頂部を含まない部分でも足りるか。)については, 本件請求項1の記載自体から一義的に明らかであるとはいえない。 そこで,この点については,本件明細書の記載を考慮して解釈する必 要がある。
(イ) まず,本件明細書において,凸部分に求められる曲率半径の数値に ついて述べた記載としては,段落【0052】に,「…複数の格子 部材40の好ましい断面が図7及び8に示されている。この好まし い断面は,第1の凹面部54と,凸面部56と,第2の凹面部58 を有する湾曲面52を有している。各格子部材40の凸面部56の 半径R2は好ましくは0.0275から0.0350インチの範囲 である。」との記載があり,他にこの点に言及する記載はない。 しかるところ,段落【0052】の上記記載及び同記載に係る図 8によれば,凸面部56の頂部を含む湾曲面について,本件請求項 1と同一の「0.0275から0.0350インチの範囲」の曲率 半径とするものとされている。
(ウ) また,以下に述べるような本件明細書の記載を総合すれば,本 件発明1において凸部分の曲率半径を上記数値範囲と特定すること には,次のような技術的意義があることが理解できる。 すなわち,本件発明1においては,「各格子部材は外側球体を画 定するゴルフボールの中心から最も離れた点において頂部を有する 隆起した断面形状を持つ」(段落【0023】)ものとすることで, 「複数の格子部材の各々の頂部は0.00001インチより小さい 幅を有し」(段落【0024】),「本発明のゴルフボール20は, ゴルフボール20の外側球体のランド領域を画定する各格子部材4 0の頂部50ラインだけを有している」(段落【0048】)もの となり,その結果,「本発明による管状の格子パターンの空気力学 は,より大きな揚力と少ない空気抵抗を与え,これにより在来の同 様な構成のゴルフボールより大きな距離を飛ぶゴルフボールとな」\nり(段落【0063】),「本発明のゴルフボール20はゴルフボ ール20の最大範囲から所定の距離において小さい体積を有する。 この小さい体積は低速時において空気境界層を捕捉するに必要とさ れる最小の量であり,一方,高速時において低い空気抵抗を与える」 (段落【0068】)こととなって,前記1(2)のとおりの本件発 明1の目的(より大きな距離を得るための必要な乱流を生じさせる ため,飛行中にゴルフボールの周りを取り囲む空気の境界層を捕捉 する最小のランド領域を提供することを可能とすること)を達成す\nるものであることが理解できる。そして,本件請求項1及び本件明 細書の上記(イ)の記載においては,上記格子部材に係る「外側球体 を画定するゴルフボールの中心から最も離れた点において頂部を有 する隆起した断面形状」を具体的に特定するものとして,凸部分の 曲率半径を上記数値範囲にすることが特定されているものといえる。 以上のような本件発明1の技術的意義に係る理解及び本件明細書 の前記(イ)の記載を前提とすれば,本件発明1において,その断面 が上記数値範囲の曲率半径を有すべき「凸部分」とは,ゴルフボール の外側球体のランド領域を画定する頂部に相当する部分であると解 するのが相当である。
・・・
 以上によれば,甲8及び9には,相違点2の「凸部分は0.07cm 〜0.0889cmの曲率半径を持つ」との構成が記載されているとは\n認められないから,その記載があることを前提として,甲1発明と甲3, 4,8及び9の記載事項に基づいて,当業者は相違点2に係る凸部分の 曲率半径に係る構成を容易に想到し得たとする原告の前記主張には理由\nがない。

◆判決本文

◆前回の訴訟はこちらです。平成26年(行ケ)第10219号

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