「電子ショッピングモールシステム」について、新規性なしとして侵害否定されました。興味深いのは、当該動作を行うための構成を有することは、当該動作から明らかと認定した点です。被告は楽天です。原告は訂正審判を請求しましたが、訂正拒絶理由が通知されて最終的には、取り下げています。審査における審査メモには「参考文献には、ユーザが電子ショッピングモールを訪れた当初は共通カテゴリを用いて商品が提示され、ある商品が選択された後にはその商品を販売する店舗が独自に定めた店舗カテゴリを用いて商品が提示される構成が記載されておらず、一方、本願発明はそれにより、電子ショッピングモール全体としての統一感を保ちつつも、店舗の個性を発揮して他店舗との差別化を図ることができるという顕著な効果を発揮。」とあります。
ア 乙16文献には次の趣旨の記載がある。(乙16) 楽天市場のオンラインショッピングなら,ジャンルを掘り下げていくだけで目的の商品まで簡単にたどり着くことができる。ここでは北海道・函館の地ビールを検索する。トップページの「商品名で調べる」又は「商品別」をクリックして商品名で探すこともできる。表示されているジャンル名「ドリンク・アルコール類」から開始し,その先は「ビール・地ビール」→「地ビール」→「北海道」とジャンルが絞られていき,その度にそれぞれのジャンルでの検索結果に商品名が表示される。金額も表示されるので,わざわざ店のホームページにアクセスしなくても商品を選べるのは利点だ。(66頁) 商品別で検索したときも,商品名をクリックすれば,店舗のホームページにアクセスして,その商品の紹介ページが見られる。「はこだてビール」の店舗のホームページには「オリジナルギフトセット」というジャンルがあり,このジャンルの画像や価格,セット名を一覧表示することができたので,その中から商品を選ぶことにした。(68頁)
イ 楽天市場のトップページから順次表示されるものであり,楽天市場の全体ルギフトセット」のジャンルは,特定の商品を取り扱う店舗のホームページに表示されるものであり,当該店舗が設定した商品分類に基づく店舗カテゴリであると,それぞれ認めることができる。そして,乙16文献に記載されたインターネットショッピングモールに係る発明(乙16発明)においては,ある共通カテゴリが示された場合に・・・のであるから,商品と共通カテゴリ及び店舗カテゴリを示す情報が相互に結び付けられるように記憶されていると認められる。また,ある店舗が取り扱う商品に係る情報から当該店舗独自のカテゴリ及びこれに分類される商品が表示される(同)のであるから,ある商品がどの店舗カテゴリに属するか,その店舗カテゴリにどの商品が属するかを識別するに足りる情報が記憶されているということができる。
ウ 以上によれば,乙16発明は,本件各発明の前記争いのある各構成をいずれも備えていると認められる。
◆判決本文