平成27(ワ)7033  不正競争差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 平成28年1月14日  東京地方裁判所

 対象の加湿器の形状は不競法の商品でない、著作物でもないと判断されました。
 原告らの不正競争防止法2条1項3号に基づく請求に対し,被告らは,原告加湿器1及び2は同号により形態が保護される「商品」に当たらない旨主張する。 そこで判断するに,同号が他人の「商品」の形態の模倣に係る不正競争を規定した趣旨は,市場において商品化するために資金,労力等を投下した当該他人を保護することにあると解される。そして,事業者間の公正な競争を確保するという同法の目的(1条参照)に照らせば,上記「商品」に当たるというためには,市場における流通の対象となる物(現に流通し,又は少なくとも流通の準備段階にある物)をいうと解するのが相当である。 論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア 原告加湿器1及び2は加湿器として開発されたものであり,使用するためには電源が必要になるところ,原告が平成23年11月及び平成24年6月に展示会に出品した際には,いずれも加湿器の本体を外部電源に銅線で接続することにより電気の供給を受ける構成となっていた。(甲3,5,20)
イ 原告らは,平成24年7月,被告スタイリングライフの担当従業員から原告加湿器2の製品化について問合せを受けたのに対し,原告らと考えの合致する製造業者が見つかっておらず,製品化の具体的な日程は決まって いない旨回答した。(甲7)
ウ 原告らは,平成27年1月5日頃,原告らのウェブサイトで原告加湿器3の販売を開始した。原告加湿器3は,加湿器本体とUSB端子がケーブルで接続され,これにより電気の供給を受ける構成となっている。(甲16,17)上記事実関係によれば,原告加湿器1及び2は,上記各展示会の当時の構成では一般の家庭等において容易に使用し得ないものであって,開発途中の試作品というべきものであり,被告製品の輸入及び販売が開始された平成25年秋頃の時点でも,原告らにおいて原告加湿器1及び2のような形態の加湿器を製品化して販売する具体的な予\定はなかったということができる。そうすると,原告加湿器1及び2は,市場における流通の対象となる物とは認められないから,不正競争防止法2条1項3号にいう「商品」に当たらないと解すべきである。
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そこで判断するに,同法2条1項1号は「著作物」とは「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものをいう」旨,同条2項は「この法律にいう『美術の著作物』には,美術工芸品を含むものとする」旨規定している。これらの規定に加え,同法が文化の発展に寄与することを目的とするものであること(1条),工業上利用することのできる意匠については所定の要件の下で意匠法による保護を受けることができることに照らせば,純粋な美術ではなくいわゆる応用美術の領域に属するもの,すなわち,実用に供され,産業上利用される製品のデザイン等は,実用的な機能を離れて見た場合に,それが美的鑑賞の対象となり得るような創作性を備えている場合を除き,著作権法上の著作物に含まれないものと解される。
(3)これを本件についてみるに,証拠(甲3,5,20)及び弁論の全趣旨によれば,原告加湿器1及び2は,試験管様のスティック形状の加湿器であって,本体の円筒状部の下端に内部に水を取り込むための吸水口が,本体の上部に取り付けられたキャップの上端に噴霧口がそれぞれ取り付けられており,この吸水口から内部に取り込んだ水を蒸気にして噴霧口から噴出される構造となっていることが認められる。そして,以上の点で原告加湿器1及び2が従来の加湿器にない外観上の特徴を有しているとしても,これらは加湿器としての機能\を実現するための構造と解されるのであって,その実用的な機能\を離れて見た場合には,原告加湿器1及び2は細長い試験管形状の構造物であるにとどまり,美的鑑賞の対象となり得るような創作性を備えていると認めることはできない。

◆判決本文

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