「Enoteca Italiana」が「ENOTECA」と類似するかが争われました。特許庁審決では類似しないと判断されましたが、知財高裁は類似するとしてこれを取り消しました。
以上のとおり,本件商標は,「Enoteca」の文字部分と「I
taliana」の文字部分とから構成される結合商標であるが,その外観上,それぞれの文字部分を明瞭に区別して認識することができるこ
と,それぞれの文字部分から別異の観念が生じることに鑑みると,本件
商標の「Enoteca」の文字部分と「Italiana」の文字部
分は,それを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほ
ど不可分的に結合しているものと認められないというべきである。
イ 本件商標の登録査定当時には,「ENOTECA」又は「エノテカ」は,原
告及び原告が行うワインの輸入販売,小売,卸売等の事業ないし営業を表示するものとして,日本国内において,取引者,需要者である一般消費者
の間に,広く認識され,周知となっていたこと,本件商標の「Enote
ca」の文字部分から,取引者,需要者において,原告の周知の営業表示としての「ENOTECA」又は「エノテカ」の観念が生じることは,前
記ア(イ)認定のとおりである。
他方で,前記ア(ウ)認定のとおり,本件商標の「italiana」の
文字部分から「イタリアの」という観念を生じるが,本件商標の指定役務
との関係においては,本件商標の「italiana」の文字部分は,そ
の役務の提供の場所,提供の用に供される物等がイタリアに関連すること
を示すものと認識されるにとどまるものといえる。
以上を総合すると,本件商標が「ワインの小売又は卸売の業務について
行われる顧客に対する便益の提供」の役務及びワインに関連する役務に使
用された場合には,本件商標の構成中の「Enoteca」の文字部分は,取引者,需要者に対し,上記各役務の出所識別標識として強く支配的な印象
を与えるものと認められ,独立して役務の出所識別標識として機能し得るものといえる。
そうすると,本件商標から「Enoteca」の文字部分を要部として
抽出し,これと引用商標とを比較して商標そのものの類否を判断すること
も,許されるというべきである。
ウ これに対し,被告らは,本件商標は,外観が不可分一体で,称呼も一連
一体であり,観念についても,その構成全体から,ワインを販売・提供する店舗の名称あるいは被告会社の周知な店舗名を表すものであること,本件商標の構成中の「Enoteca」の文字部分は強く支配的な印象を与えるものはいえないことなどからすると,本件商標から「Enotec
a」の文字部分のみを要部として抽出することはできない旨主張する。
しかしながら,被告らの主張は,以下のとおり理由がない。
(ア) 被告らは,本件商標は,縁取りして統一的に図案化されたワインレ
ッド色の「Enoteca Italiana」の文字をまとまりよく一
体的に表してなるロゴタイプの商標であり,本件商標から「エノテカイタリアーナ」の一連の称呼がよどみなく生じるから,本件商標は,色彩
や形態によって外観が不可分一体であり,称呼も一連一体である旨主張
する。
しかしながら,前記ア(ア)認定のとおり,本件商標は,その構成全体から「エノテカイタリア−ナ」の称呼が生じるが,一方で,本件商標は,そ
の構成中の「Enoteca」の文字部分と「Italiana」の文字部分との間に空白があること,それぞれの文字部分の冒頭の文字が大
文字で,冒頭以外の文字が小文字であることからすると,本件商標の外
観上,「Enoteca」の文字部分と「Italiana」の文字部
分とを明瞭に区別して認識することができるから,本件商標の外観が不
可分一体であるということはできない。
また,本件商標の構成全体から「エノテカイタリア−ナ」の称呼が自然に生じることからといって直ちに本件商標から「Enoteca」の
文字部分を要部として抽出することができないとはいえない。
したがって,被告らの上記主張は,本件商標から「Enoteca」の
文字部分のみを要部として抽出することはできないことの根拠となるも
のではない。
◆判決本文