商標「i:na」と「e−na」について、審決では類似すると判断されましたが、知財高裁は「称呼は同じだが、外観において明らかに相違しその相違の程度が顕著である」として、類似しないと判断しました。
そこで,本願商標の「i:na」と引用商標の「e−na」を対比す
ると,いずれも欧文字3字と1つの記号(「:」又は「−」)からなり,後
半の2文字が「na」である点において共通するが(引用商標中の「a」は
「a」にアクサン記号が付されたもの),冒頭の1文字及び記号はいず
れも異なる。特に,引用商標においては,冒頭の「e」の文字が他の文
字よりも大きく表記され,最も看者の注意を惹きやすい文字といえるところ,これと本願商標の冒頭の「i」の文字とは,その外観が明らかに
異なる。
また,本願商標の「i:na」の欧文字は,同じ大きさのデザイン化
された太い筆記体の文字が横一列に並べられたもので,全体として整然
とした印象を受けるのに対し,引用商標の「e−na」の欧文字は,手書
き風のややくだけた活字体の書体であることに加え,文字の大きさが統
一されておらず,「n」の文字が他の文字よりやや低い位置に表記され,各文字が横一列に整然と並べられていないことから,全体としてやや雑然
とした印象を受けるものといえる。
なお,本願商標の下段部分と引用商標は,欧文字に近接してその読み
を表記する片仮名又は平仮名が表記されている点において共通する
が,いずれも欧文字部分に比して極めて小さな表記にすぎないから,この点は,外観の類否に特段の影響を与えないものというべきである。
(エ) 以上のとおり,本願商標の下段部分と引用商標は,それぞれを構成する欧文字3字中の2字を共通にするものの,看者の注意を惹きやすい
冒頭の文字が異なる上,文字の書体,配列等の構成も異なっており,全体として受ける印象においても相違することによれば,本願商標の下段
部分と引用商標は,外観において明らかに相違し,その相違の程度は顕
著であるものと認められる。
・・・
エ 取引の実情について
本願商標の指定商品である「ティッシュペーパー,トイレットペーパ
ー,その他の紙類」に係る取引又は引用商標の指定役務中の「紙類の小売
等役務」及び「壁紙の小売等役務」に係る取引において,本件審決当時,商
標の称呼のみによって取引が行われる実情があることをうかがわせる証拠
はない。
かえって,ティッシュペーパー,トイレットペーパー等の商品について
は,スーパーマーケット,ホームセンター,ドラッグストア等の小売店舗
において,展示販売され,商品に付された商標の外観を確認し得る態様で
販売されることが通常であると考えられるところであり,このことは,本
件審決当時,原告が本願商標を使用して製造・販売するティッシュペーパ
ー及びトイレットペーパーについても,これらの小売店舗において広く販
売されている事実(甲2,5,19)からも裏付けられる。また,インタ
ーネット販売においても,商品名,商品の画像等から,商品に付された商
標の外観を確認し得るのが通常であるといえる。
オ 小括
以上のとおり,本願商標の要部である下段部分と引用商標は,「イーナ」の
称呼が生じる点では共通するものの,観念において比較することができな
い上,外観において明らかに相違し,その相違の程度は顕著であること,さ
らに,前記エ認定の取引の実情を総合考慮すると,本願商標及び引用商標
が本願商標の指定商品と同一又は類似する商品に使用されたとしても,取
引者,需要者において,その商品の出所について誤認混同を生ずるおそれ
があるものといえないから,本願商標と引用商標とは全体として類似して
いるものと認めることはできない。
したがって,本願商標が引用商標に類似する商標であるとは認められな
いから,本願商標の指定商品と引用商標の指定役務の類否について判断す
るまでもなく,本願商標が商標法4条1項11号に該当するとした本件審
決の判断には誤りがある。
◆判決本文