商標法4条1項7号(公序良俗)違反なしとした審決が維持されました。
前記認定のとおり,被告は,本件商標が登録されるまで,日本国内において
製造・販売するゴルフクラブに「KAMUI」単体商標を使用することはなかった
ことが認められるものの,他方で,原告と被告は,共同企業体であるカムイクラフ
トを設立し,製造したゴルフクラブに「KAMUIPRO」の名称を付して販売し
ていたこと(「KAMUIPRO」の商標権は原告と被告の共有である。),カムイク
ラフト解消後,被告は,ゴルフクラブの名称をカムイプロからカムイツアー(KA
MUITOUR)に改めることとしてゴルフクラブの製造販売を継続したこと(「K
AMUITOUR(標準文字)」についても商標登録されている。),一時期は,被告
のゴルフクラブが「カムイ」のゴルフクラブとして紹介されることもあったこと,
本件商標の登録出願時においても,「KAMUITOUR」,「カムイツアー」等の標
章を使用してゴルフクラブを販売しており,上記のゴルフクラブの売上本数や売上
高についても原告と同程度のものであったことなどが認められ,被告としても,当
初から,「KAMUI」と文字を共通にする上記各標章をゴルフクラブに付して販売
等しており,継続的に相応の売上げがあったものということができる。
また,前記認定のとおり,原告と被告は,共同企業体であるカムイクラフトを解
消するに当たり,カムイの新製品については,それぞれが権利を有することを合意
したことが認められるものの,この合意のみをもって,被告が原告に対し,原告が
「KAMUI」単体商標の権利を有することを約束したものとはいい難く,本件商
標の登録出願が,原告と被告との間の上記合意に反するとは認められない。その他,
カムイクラフト解消後においても,被告が原告に対し「KAMUI」単体商標に関
して法的義務を負う関係にあったということもできず,本件商標の登録出願につき,
被告に何らかの義務違反があるとも認められない。
以上のような経緯等によれば,前記認定の韓国における原告と被告の「KAMU
I」に係る商標に関する紛争も契機として,被告が本件商標権に基づく先行訴訟に
至ったことを考慮しても,本件商標について,直ちに本件商標の登録出願の経緯に
著しく社会的妥当性を欠くものがあり,登録を認めることが到底容認し得ないよう
な事情があるとは認められない。
◆判決本文