均等侵害も第5要件満たしていないとして、否定されました。
イ 前記1(3)のとおり,控訴人は,本件特許1の出願経過において,拒絶理由通
知を受け,構成要件Cの15本のピークの回折角の数値を挿入する平成23年11月29日付けの補正を行い,この際,上記補正が特許請求の範囲の限定的減縮に相
当するものであることを表明した。また,控訴人は,本件特許2の出願経過においても,拒絶理由通知を受け,構成要件C’の15本のピークの回折角の数値を挿入する平成25年3月8日付けの補正を行い,この際,上記補正が特許請求の範囲の
限定的減縮に相当するものであることを表明した。控訴人は,本件特許1の出願経過における拒絶理由通知において,1本のみのピ
ーク強度でしか特定されず,他のピークの特定がないので,公知文献に記載された
結晶と出願に係る結晶が区別されているとは認められないなどと指摘されたのに対
して,上記補正を行ったのであるから,15本のピークの回折角の数値をもって本
件発明1の結晶を特定したというほかない。
そして,本件特許2は,結晶形態のピタバスタチンカルシウム塩及びそれを含む
医薬組成物に関し, 特別な貯蔵条件でなくとも安定なピタバスタチンカルシウムの
結晶性原薬を提供することを課題とし,ピタバスタチンカルシウムの結晶性原薬に
含まれる水分量を特定の範囲にコントロールすることでその安定性が格段に向上す
ること及び結晶形態AないしCの中で結晶形態Aが医薬品の原薬として最も好まし
いことを見いだした本件特許1を原出願とする分割出願であって,本件特許1に係
る原薬を安定的に保存する方法を提供することを課題とする発明であり,その出願
当初の特許請求の範囲の請求項1には,上記補正後の本件発明1の結晶と同じ15
本のピークの回折角の数値をもって結晶が特定されていたものである。
以上によれば,本件各特許の出願経過においてされた上記各補正は,本件各発明
の技術的範囲を,回折角の数値が15本全て一致する結晶に限定するものであると
解されるから,構成要件C・C’の15本のピークの回折角の数値と,全部又は一部がその数値どおり一致しないピタバスタチンカルシウム塩の結晶は,本件各発明
の特許請求の範囲から意識的に除外されたものであるといわざるを得ない。
◆判決本文
◆平成27(行ケ)10081 こちらは、本件特許発明についての無効審判の取消訴訟です。この事件では、特許無効とした判断が取り消されていますが、上記事件ではイ号は非侵害と判断されています。