平成27(行ケ)10203  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟  平成28年3月24日  知的財産高等裁判所

 不使用であるとした審決が維持されました。争点の一つが、3段併記の商標のうち、一部の文字列の使用が50条の使用に該当するかです。裁判所は審決と同様に、社会通念上同一とはいえないと判断しました。
ア 本件使用商標1は,別掲1のとおり,最上段に「Rubotan」の欧 文字,その下段に「LINE」の欧文字,さらに,その下段に「LIQU ID」の欧文字,「ルボタン」の片仮名文字及び「ライン」の片仮名文字 を三段に配してなる五段の標章である。
上段二段の「Rubotan」及び「LINE」の欧文字は,下段三段 の「LIQUID」,「ルボタン」及び「ライン」よりも文字が大きいこ と,「LIQUID」の下部の「ルボタン」及び「ライン」の片仮名文字 は,同じ大きさ,同じ書体でまとまりよく併記されていることからすると, 「ルボタン」及び「ライン」の片仮名文字は,「Rubotan」及び 「LINE」の欧文字の表音を示したものとして,本件使用商標1から「ルボタンライン」の称呼が自然に生じるものと認められる。「LIQU ID」の欧文字は,「液状」の意味を有し,本件使用商品が液状であるこ とを表示したものと理解することができ,しかも,上段二段の「Rubotan」及び「LINE」の欧文字よりも文字が小さいことからすると, 出所識別標識としての機能は弱いものといえる。一方で,「Rubotan」の欧文字と「LINE」の欧文字は,上下 2段にまとまりよく併記されており,「Rubotan」の欧文字は筆書 き風の書体であり,「LINE」の欧文字は「Rubotan」の欧文字 よりもやや文字が大きいが,「Rubotan」の欧文字はゴシック体の 「LINE」の欧文字とは異なる筆書き風の書体であることからすると, 外観上,いずれかが顕著に際立っているということはできない。 加えて,本件使用商品は,販売名を「ルボタン ライン」とする「アイ ライナー」であり(前記(1)),本件使用商品の宣伝広告においては,本 件商品の画像とともに「ルボタンライン」,「ルボタンライン リキッド アイライナー」,「ルボタンアイライナー」などと表記され(甲22ないし27),本件証拠上,本件使用商品について,「LINE」の部分のみ をその出所の識別標識として使用していた事情は認められない。
イ 以上を総合すると,本件使用商標1の構成中の「Rubotan」及び「LINE」の欧文字は,分離して観察することが取引上不自然であると 思われるほど不可分的に結合しているものではないが,需要者,取引者に おいては,ひとまとまりの表示として認識するものと認められるから,「LINE」の欧文字部分が独立して自他商品識別標識として機能し得るものということはできない。 したがって,「LINE」の欧文字及びその表音を示した「ライン」の片仮名文字が,本件使用商標1の要部に当たるとの原告の主張は採用する ことができない。
ウ この点に関し,原告は,化粧品業界においては,書体,大きさ,段等を 異にする2以上の構成要素からなる商標については,それぞれの構成要素 について商標登録を受けて使用するのが一般的であるという取引の実情が あり,このような取引の実情を考慮すると,「LINE」の欧文字が本件 使用商標1の要部に当たる旨主張する。 しかしながら,個々の商標の要部をどのように認定するかは,需要者, 取引者の認識等を前提に個別的に検討すべき問題であり,原告が主張する ような取引の実情があるからといって直ちに「LINE」の欧文字が本件 使用商標1の要部に当たることの根拠となるものではない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 エ 以上のとおり,本件使用商標1の構成中の「LINE」の欧文字及び「ライン」の片仮名文字は本件使用商標1の要部に当たるものと認められ ないから,本件使用商標1は本件商標と社会通念上同一と認められる商標 であるとの原告の主張は,その前提を欠くものであり,理由がない。
(3) 本件使用商標2と本件商標の社会通念上同一性について
原告は,要証期間内に,別掲2のとおり,本件使用商品を6個梱包するた めの包装用容器(本件包装用箱)に,「 」の片仮名文字,その 下段にゴシック体で大きく表された「ライン」の片仮名文字を表示して使用 していたものであり,「ライン」の片仮名文字の標章(本件使用商標2)は, 本件商標と社会通念上同一性のある商標であるから,原告又は通常使用権者 であるエリザベスは,要証期間内に,本件商標と社会通念上同一と認められ る商標(本件使用商標2)を本件使用商品に使用した旨主張する。 しかしながら,前記(2)ア認定のとおり,本件使用商品は,販売名を「ル ボタン ライン」とする「アイライナー」であり,本件使用商品の宣伝広告 においては,本件商品の画像とともに「ルボタンライン」,「ルボタンライ ン リキッドアイライナー」,「ルボタンアイライナー」などと表記され,本件証拠上,本件使用商品について,本件使用商標1の構成中の「LINE」の部分のみをその出所の識別標識として使用していた事情は認められな いこと,本件包装用箱は,本件使用商品を6個梱包するための包装用容器で あること(甲95)に照らすと,本件包装用箱に接した需要者,取引者は, 本件包装用箱に付された別掲2の「ルボタン」及び「ライン」の片仮名文字 を,ひとまとまりの標章として認識し,上記標章から「ルボタンライン」の 称呼が自然に生じるものと認められるから,「ライン」の片仮名文字のみが 独立して自他商品識別標識として機能し得るものということはできない。

◆判決本文

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