平成27(行ケ)10219  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成28年4月12日  知的財産高等裁判所

パロディーの「フランク三浦」が「フランクミュラー」から無効理由あるかが争われました。知財高裁は、類似するとした審決を取り消しました。侵害事件ではありません。
(ア) 本件商標と引用商標1を対比すると,本件商標より生じる「フラン クミウラ」の称呼と引用商標1から生じる「フランクミュラー」の称呼 は,第4音までの「フ」「ラ」「ン」「ク」においては共通するが,第 5音目以降につき,本件商標が「ミウラ」であり,引用商標1が「ミュ ラー」であって,本件商標の称呼が第5音目と第6音目において 「ミ」「ウ」であり,語尾の長音がないのに対して,引用商標1におい ては,第5音目において「ミュ」であり,語尾に長音がある点で異なっ ている。しかし,第5音目以降において,「ミ」及び「ラ」の音は共通 すること,両者で異なる「ウ」の音と拗音「ュ」の音は母音を共通にす る近似音である上に,いずれも構成全体の中間の位置にあるから,本件商標と引用商標1をそれぞれ一連に称呼する場合,聴者は差異音 「ウ」,「ュ」からは特に強い印象を受けないままに聞き流してしまう 可能性が高いこと,引用商標1の称呼中の語尾の長音は,語尾に位置するものである上に,その前音である「ラ」の音に吸収されやすいもので あるから,長音を有するか否かの相違は,明瞭に聴取することが困難で あることに照らすと,両商標を一連に称呼するときは,全体の語感,語 調が近似した紛らわしいものというべきであり,本件商標と引用商標1 は,称呼において類似する。
他方,本件商標は手書き風の片仮名及び漢字を組み合わせた構成から成るのに対し,引用商標1は片仮名のみの構成から成るものであるから,本件商標と引用商標1は,その外観において明確に区別し得る。 さらに,本件商標からは,「フランク三浦」との名ないしは名称を用 いる日本人ないしは日本と関係を有する人物との観念が生じるのに対 し,引用商標1からは,外国の高級ブランドである被告商品の観念が生 じるから,両者は観念において大きく相違する。 そして,本件商標及び引用商標1の指定商品において,専ら商標の称 呼のみによって商標を識別し,商品の出所が判別される実情があること を認めるに足りる証拠はない。 以上によれば,本件商標と引用商標1は,称呼においては類似するも のの,外観において明確に区別し得るものであり,観念においても大き く異なるものである上に,本件商標及び引用商標1の指定商品におい て,商標の称呼のみで出所が識別されるような実情も認められず,称呼 による識別性が,外観及び観念による識別性を上回るともいえないか ら,本件商標及び引用商標1が同一又は類似の商品に使用されたとして も,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるとはいえない。 そうすると,本件商標は引用商標1に類似するものということはでき ない。
(イ)a これに対し,被告は,本件商標は,著名ブランドとしての「フラ ンク ミュラー」の観念を想起させる場合があることから,著名ブラ ンドとしての「フランク ミュラー」の観念を生じる引用商標1と は,観念において類似し,称呼においても類似するから,両者は類似 の商標である旨主張する。 確かに,前記(2)アのとおり,被告使用商標ないしは引用商標1が,被 告商品を表示するものとして,本件商標の登録査定時に,我が国において,需要者の間に広く認識され,周知となっていたのであるから,前 記(ア)のとおり,本件商標と引用商標1の称呼が類似することと相ま って,本件商標に接した需要者が,本件商標の称呼から,称呼の類似 する周知な被告使用商標ないしは引用商標1を連想することはあり得 るものと考えられる。 しかしながら,本件商標は,その中に「三浦」という明らかに日本 との関連を示す語が用いられており,かつ,その外観は,漢字を含ん だ手書き風の文字から成るなど,外国の高級ブランドである被告商品 を示す引用商標1とは出所として観念される主体が大きく異なるもの である上に,被告がその業務において日本人の姓又は日本の地名に関 連する語を含む商標を用いていることや,そのような語を含む商標な いしは標章を広告宣伝等に使用していたことを裏付ける証拠もないこ とに照らすと,本件商標に接した需要者は,飽くまで本件商標と称呼 が類似するものの,本件商標とは別個の周知な商標として被告使用商 標ないしは引用商標1を連想するにすぎないのであって,本件商標が 被告商品を表示すると認識するものとは認められないし,本件商標から引用商標1と類似の観念が生じるものともいえない。

◆判決本文

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