平成27(ワ)13760  損害賠償請求事件  著作権  民事訴訟 平成28年4月21日  東京地方裁判所

 配信サイトに違法アップロードした場合のストリーミングは複製には該当しないとして114条1項の損害額は否定されました。
 原告は,1)ストリーミングの再生回数が受信複製物の数量に当たること,2)本件動画サイトにおけるストリーミングの再生回数はダウンロードの回数と同視できることなどからすれば,本件著作物1及び2の本件動画サイトにおけるストリーミングの再生回数が著作権法114条1項にいう受信複製物の数量となる旨主張する。 (2) そこで判断するに,受信複製物とは著作権等の侵害行為を組成する公衆送 信が公衆によって受信されることにより作成された著作物又は実演等の複 製物をいうところ(同項),本件においてはダウンロードを伴わないストリ ーミング配信が行われたにとどまり,本件著作物1又は2のデータを受信し た者が当該映像を視聴した後はそのパソコン等に上記データは残らないというのであるから,受信複製物が作成されたとは認められないと解するのが 相当である。 また,前記前提事実(2)のとおり,本件動画サイトは動画をストリーミン グ配信するウェブサイトであるところ,証拠(甲19,20)及び弁論の全 趣旨によれば,本件動画サイトにアップロードされた動画をダウンロードす ることは不可能ではないが,そのためには特殊なソフトウェアを利用するな どの特別の手段を用いる必要があることが認められる。 以上によれば,本件著作物1及び2の本件動画サイトにおけるストリーミ ングによる動画の再生回数が受信複製物の数量に当たるということはでき ないし,これをダウンロードの回数と同視することもできない。
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本件著作物1は,平成25年10月5日に本件動画サイトに有料動画と してアップロードされ,同月6日時点における「再生数」は1万3292 回と表示されていた。本件著作物2は,同月4日に本件動画サイトに有料動画としてアップロードされ,同年11月29日時点における「再生数」 は2万4539回と表示されていた。本件動画サイトの会員でない者が有料動画を視聴しようとするとサンプ ル動画が数秒間再生されるところ,上記の「再生数」にはこのサンプル動 画の再生数も含まれる。本件著作物1及び2に係る「再生数」の内訳は不 明である。 被告がアップロードした本件著作物1及び2のデータは,平成26年3 月頃までに本件動画サイトから削除された。(甲4,5,乙3,8,12) イ 本件著作物1は,動画配信サイト「DMM.com」にて有料でインタ ーネット配信されており,その価格は,平成25年10月5日時点におい て,HD版ダウンロードとHD版ストリーミングのセットが2480円, ダウンロードとストリーミングのセットが1980円,HD版ストリーミ ング(7日間)が390円であった。また,本件著作物2も同様に配信さ れており,その価格は,同年11月29日時点において,HD版ダウンロ ードとHD版ストリーミングのセットが2980円,ダウンロードとスト リーミングのセットが2480円,DVDトースターが2800円であっ た。 インターネット配信の上記各価格は,配信時期やキャンペーンの実施等 によって変動し,本件著作物1に係る平成28年1月15日時点のHD版 ストリーミング(7日間)が273円,本件著作物2に係る平成27年9 月28日時点のHD版ストリーミング(同)が300円となっていた。 (甲2,3,13,乙2,15) ウ 原告(変更前の商号は株式会社北都)は,取引先との間で,コンテンツ 提供基本契約を締結し,取引先に対して原告の映像等のコンテンツの配信 を許諾しているところ,ある取引先との契約では,原告がその対価として ●(省略)●を受け取ることが定められている。 (甲17,25)
(2) 原告は,1)本件著作物1及び2が本件動画サイトにおいて上記「再生数」 に記載の回数配信され,2)これらが正規に配信された場合の価格はそれぞれ 372円,2362円であり,3)この場合原告は●(省略)●を受領できた として,著作権法114条3項に基づく損害賠償を請求する。しかし,上記 の事実関係によれば,1)上記「再生数」の正確性を裏付ける証拠が何ら提出 されていない上,全体の再生回数のうち有料のストリーミング配信の回数は, 事柄の性質上,無料のサンプル動画の再生回数より大幅に少ないと考えられ る。また,2)本件著作物1及び2のストリーミング配信の正規の価格は時期 等によって変動するがおおむね1本当たり270〜390円程度であり,さ らに,3)原告は自らが使用許諾をした場合の対価につき契約条項の大半を抹 消した契約書の写し(甲17)を提出するのみであり,現実にいかなる収入 を得ていたかは明らかでない。本件におけるこれらの事情を総合すれば,被 告による本件著作物1及び2の公衆送信権の侵害に対して原告が著作権の行 使につき受けるべき金銭の額は,それぞれ50万円とするのが相当である。

◆判決本文

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