膣圧回復治療用具について非類似の意匠と判断されました。
登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は,需要者の視覚を通
じて起こさせる美観に基づいて行うものであるところ(意匠法24条2項),この
ためには,意匠に係る物品の性質,用途,使用態様,さらには公知意匠にない新規
な創作部分の存否等を参酌して,当該意匠に係る物品の看者となる需要者が視覚を
通じて注意を惹きやすい部分を把握した上で,登録意匠とそれ以外の意匠とが要部
において構成態様を共通にするか否かを中心に観察し,全体としての美観を共通にするか否かを判断すべきである。
本件意匠に係る物品は,膣圧回復治療用具であって,これを使用する一般消費者
を需要者と観念すべきところ,本件において,同用具の公知意匠に係る証拠は提出
されていないが,膣圧回復治療用具を実際に使用する需要者にとっては,膣内に挿
入する部分は,注意を惹きやすい部分といえる。もっとも,需要者は,現実に同用
具を使用する際にどのように使用することとなるかについても着目すると考えられ
るから,本件意匠のうち持ち手部分も,注意を惹く部分であることは否定できない。
したがって,本件意匠について,需要者が視覚を通じて最も注意を惹きやすい部
分は,本体部及び持ち手部分の各具体的構成態様にあるものと認められる。
・・・
以上のとおり,本件意匠と被告意匠1とは,需要者が視覚を通じて最も注意を惹
きやすい部分の各具体的構成態様において差異点が認められるところ,本件意匠の本体部には突起がないことから,滑らかな印象を与えるのに対し,被告意匠1のA
部は,多数の突起が形成されていることから,ざらざらとした印象を与える。また,
本件意匠の持ち手部にはリングを備えているのに対し,被告意匠1のB部は,底部
にブラシ状に多数の突起が形成されていることから,明らかに異なった印象を与え
る。
以上の点を総合すると,前記共通点にかかわらず,本件意匠と被告意匠1とは,
全体として美観を共通にするものとはいえないから,被告意匠1が本件意匠に類似
するものとは認められない。
・・・
以上のとおり,本件意匠と被告意匠2とは,需要者が視覚を通じて最も注意を惹
きやすい部分の各具体的構成態様において差異点が認められるところ,本件意匠の本体部は,正面視において略「ハート」状であるのに対し,被告意匠2のC部は,
正面視において略「卵」状であり,その印象を異にする。また,本件意匠の持ち手
部には略楕円状のリングを備えているのに対し,被告意匠2のD部は,底部にブラ
シ状に多数の突起が形成されていることから,明らかに異なった印象を与える。
以上の点を総合すると,前記共通点にかかわらず,本件意匠と被告意匠2とは,
全体として美観を共通にするものとはいえないから,被告意匠2が本件意匠に類似
するものとは認められない。
◆判決本文