音楽著作物について、翻案ではないと判断されました。
上記事実関係によれば,原告楽曲と被告楽曲の旋律(上記(2)ウ)は,旋律
の上昇及び下降など多くの部分が相違しており,一部に共通する箇所がある
ものの相違部分に比べればわずかなものであって,被告楽曲において原告楽
曲の表現上の特徴を直接感得することができるとは認め難い。また,両楽曲は,全体の構成(同ア),歌詞の各音に対応する音符の長さ(同イ)及びテンポ(同エ)がほぼ同一であり,沖縄民謡風のフレーズを含む点で共通する
が,これらは募集条件により歌詞,曲調,長さ,使用目的等が指定されてお
り(同オ),作曲に当たってこれに従ったことによるものと認められるから,
こうした部分の同一性ないし類似性から被告楽曲が原告楽曲の複製又は翻案
に当たると評価することはできない。
これに対し,原告は前記のとおり原告楽曲と被告楽曲は実質的に同一の楽
曲である旨るる主張するが,以上説示したところに照らし,いずれも採用す
ることができない。
(4)さらに,念のため,依拠性について検討すると,原告は,1)実質的に同一
の楽曲を依拠することなく作曲することは不可能であること,2)被告Yに短
期間で被告楽曲を独自に作曲する経験及び能力があるとは考えられないこと,3)電子メールの送信日時には改ざんの可能性があることから,被告Zを担当者とする被告SMEが被告Yと意思を通じ,原告楽曲に依拠して被告楽曲を
作曲したと主張する。
そこで判断するに,上記(3)のとおり両楽曲が実質的に同一であるとはいえ
ないから,原告の上記1)の主張は前提を欠く。また,上記2)の主張を基礎付
けるに足りる証拠はない。さらに,上記3)の主張については,証拠(乙1及
び2の各1,乙20)及び弁論の全趣旨によれば,原告及び被告Yがそれぞ
れ被告Zに対し楽曲の完成及びこれが収められたファイルの保存先を電子メ
ールにより伝えたのが,被告Yにおいては平成25年1月18日午前11時
10分,原告においては同日午前11時32分であると認められる一方,電
子メールの送信日時については,一般的ないし抽象的な改ざんの可能性があるとしても,本件の関係各証拠上,被告らによる改ざんがあったことは何ら
うかがわれない。
(5) 以上によれば,被告楽曲が原告楽曲の複製又は翻案に当たるとはいえない
から,原告の著作権が侵害されたとは認められず,これを前提とする著作者
人格権の侵害も認められない。したがって,その余の点について判断するま
でもなく,原告の請求は全て理由がない。
◆判決本文