平成27(行ケ)10126  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成28年6月9日  知的財産高等裁判所

 進歩性違反なしとした審決が取り消されました。
 次に,本件明細書の発明の詳細な説明の記載をみると,実施例2 に関して,「本例は,図4に示すごとく,アルミナシート3の両表面に,アルミナシート3よりも薄く,電気絶縁性を有するアルミナ 材料からなる一対の表面アルミナ層35を積層して,固体電解質シート2を形成した例である。…開口用貫通穴351は,ジルコニア 充填部4(充填用貫通穴31)よりも小さく,ジルコニア充填部4 における電極5よりも大きな形状に形成してある。」との記載があ り,図4のガスセンサ素子の断面図では,表面アルミナ層の開口用貫通穴351の内周と電極の外周との間に隙間が形成されている態 様が示されていることが認められる。 しかしながら,本件明細書の発明の詳細な説明には,本件発明1 について,表面アルミナ層の開口用貫通穴が電極の側面が露出する程度に電極よりも大きな形状であることを要する旨の記載はなく,また前記1(2)オで述べた本件発明1が奏する作用効果(ガスセン サ素子の早期活性化と共に,強度向上を図ることができること及び ジルコニア充填部が充填用貫通穴内から抜け出してしまうことを防 止すること)との関係からみても,電極の側面が露出する態様のも のに限定されるべき理由はない。 他方,図4に示されたガスセンサ素子は,実施例の一態様を示す ものにすぎないから,当該図面に表面アルミナ層の開口用貫通穴351の内周と電極の外周との間に隙間が形成されている態様が示さ れているからといって,直ちに本件発明1の構成が当該態様のものに限定されると解すべきものとはいえない。 (C) さらに,本件審決は,「ガスセンサ素子において,電極はできる 限り広い面積で測定ガスに接することが好ましいことが技術常識で あること」を前記解釈の根拠とする。 しかしながら,上記のような技術常識があるからといって,本件 発明1のガスセンサ素子における電極が,常にその上面のみならず 側面まで露出するものであることを要するとの解釈が直ちに導き出 されることにはならない。
(d)以上によれば,本件発明1の表面アルミナ層に設けられた開口用貫通穴は「上記電極よりも大きな形状に形成してあ」るとの構成について,電極の側面が露出する程度に開口用貫通穴が電極よりも大 きな形状に形成してあることを意味するとした本件審決の解釈は, 根拠を欠くものであって誤りであり,これを前提とする本件審決の 前記判断も誤りというべきである。
b 上記aで検討したところによれば,本件発明1における「該開口用 貫通穴は,上記電極よりも大きな形状に形成してあ」るとの構成には,電極の側面が露出する程度に開口用貫通穴が電極よりも大きな形状に 形成してあるもののみならず、前記a(a)で述べたとおり、表面アルミナ層の開口用貫通穴の側面とその内側に配置される電極の側面が隙間 なく接しているものも含まれると解すべきである。 してみると,本件アルミナ接着剤層が第1電極404及び第2電極 406の側面に接して形成される態様は,相違点に係る本件発明1の 構成のうち,「該開口用貫通穴は,上記電極よりも大きな形状に形成してあ」るとの構成を満たすものといえる。ウ 以上のア及びイによれば,甲2発明(1)に甲3技術を適用することは当業者が容易に想到し得たことであり,かつ,その結果得られるガスセンサ 素子は,相違点に係る本件発明1の構成をすべて備えるものといえるから,成とすることは,本件出願当時の当業者において容易に想到し得たものと 認められる。

◆判決本文

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