「ももいちご」が周知商標であるとして異議申し立てがなされました。知財高裁は、周知商標であるとした審決を維持しました。
申立人ら商品1は,本件商標の登録出願日である平成21年11月24日の時点において,販売開始から約15年が経過し,毎年の出荷量も数十トン程度とほぼ安定した状況にあり,また,この間,関西地域において,テレビCMが7年間にわたって放送されたほか,ラジオCM等の各種宣伝広告も多数行われ,更には,申立人ら商品1の粒の大きさや甘さ,特定の地域でしか生産されない希少性,一粒1000円にもなる高価さなどが話題となり,テレビ番組,雑誌,新聞,インターネット上の情報記事等で
繰り返し紹介され,これらの宣伝や紹介の際には,常に引用商標1が使用さ
れてきたことが認められる。
これらの事実を総合すると,引用商標1は,本件商標の登録出願日当時に
おいて,これがいちごに使用された場合,申立人らが生産,販売する申立人
ら商品1を表示するものとして,少なくとも関西地域及び徳島県における取引者,需要者の間において広く認識されていたものと認めることができる。
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JA徳島市らによるテレビCMやラジオCM等の宣伝・広告は行われていな
いものの,平成25年初めころまでは,新聞記事等で引用商標1とともに紹
介されている事実が認められるほか,申立人ら商品2を紹介するテレビ番組,新聞記事等において,申立人ら商品2の前身となるブランドのいちごとして,引用商標1とともにたびたび紹介されている事実が認められるのであり,こ
れらを総合すれば,引用商標1の周知性は,本件商標の登録査定時である平
成25年10月9日当時においても,なお維持されていたものと認めること
ができる。
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原告らは,申立人ら商品1が「あまおう」などの他の高級いちごと比べて,出荷量が圧倒的に少ない事実を指摘する。
しかし,申立人ら商品1は,そもそも徳島県佐那河内村の特定の農家のみが生産するいちごであるから,「あまおう」などの一般的な品種のいち
ごに比べて,その生産・出荷量が圧倒的に少ないことは当然である。そし
て,申立人ら商品1は,上記のような希少性が一つの理由となって話題をインターネット上の
情報記事等で繰り返し紹介されてきたものであり,その結果,引用商標1
が周知性を獲得するに至ったのであるから,申立人ら商品1の出荷量が他の高級いちごに比べて少ない点は,引用商標1の周知性を否定する事情と
なるものではない。
また,申立人ら商品1の平成15年から平成25年3月までの年度ごとの出荷量の推移は,・・年まで約69トンから約95トンの間で推移した後,平成21年には約55トン,平成22年には約47トンと徐々に減少傾向が見られるようにな
っている。しかし,申立人ら商品1は,本件商標の登録査定時(平成25年10月9日)の直近である平成24年12月から平成25年3月までの
出荷シーズンにおいても,約38トンの出荷量を確保しているのであるか
ら,本件商標の登録査定時までに申立人ら商品1の流通量が著しく減少したとまではいえず,この程度の減少傾向の存在が,引用商標1の周知性の
喪失に直ちに結びつくものとはいえない。
◆判決本文