平成26(ワ)8905  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成28年6月15日  東京地方裁判所

 損害賠償が認められましたが、特許権侵害による損害額のうち、ほとんどは弁護士費用です。
 ア(ア) 原告は,特許法102条2項の適用を主張するところ,前記前提事実及び 弁論の全趣旨によれば,原告は,被告LEDと競合するLEDを販売等していると 認められるから,原告には,被告らによる本件特許権1の侵害行為がなかったなら ば利益が得られたであろう事情が認められるといえ,同条項の適用が認められるべ きである(知財高裁平成24年(ネ)第10015号同25年2月1日特別部判 決・判時2179号36頁)。この点について,被告らは,被告LEDが譲渡等さ れなければ,原告の製品が販売されていたであろうとの条件関係が存在しないから, 原告には逸失利益の損害は生じていないと主張するが,上記のとおり原告が被告L EDの競合品を販売等していることからして,なお原告に逸失利益の損害が生じた と認定するに差し支えないというべきである。 (イ) 本件特許権1の侵害により被告らがそれぞれ得た利益の額について,被告E &Eが10万5000円の利益を得たことについては,原告と同被告との間で争い がない。また,被告立花が被告LEDの販売により得る利益が,売上高の10パー セントであることは,原告と同被告との間で争いがないところ,被告立花は,イガ ラシに対して被告LEDを2万円で販売し,それ以上に被告LEDの販売等により 売上をあげた事実は認められないから,被告立花が得た利益の額は,2000円と 認めるのが相当である(なお,被告立花は,上記売上代金を全てイガラシに返金し ているとの事情を主張するが,同事実によっても,一度発生した損害が発生しなか ったことになるわけではないし,これにより原告に生じた損害が填補されたと認め ることもできない。)。したがって,これらの額は,特許法102条2項により, 原告が受けた損害の額と推定される。
(ウ) 被告らは,1)原告が被告LEDについて原告が保有する9件の特許権を侵害 すると主張していること,2)被告LEDは,本件発明1の作用効果を奏しないか, 奏したとしても極めてわずかな効果しか奏しないこと,3)被告LEDは,被告製品 (窒化物半導体素子)にさらなる部材を付加していること,4)有色LED市場にお ける原告のシェアなどからすれば,本件発明1が被告らの得た利益に寄与した割合 は5パーセントを上回ることはなく,推定された損害額のうち95パーセント相当 額について,同推定が覆滅されるべきである旨主張する。 しかしながら,1)について,被告LEDが,原告の他の特許権に係る発明の技術 的範囲に含まれるか,含まれるとして,他の特許権に係る発明が被告LEDの売上 にいかに寄与したかについては,本件証拠によっても,判然としないというほかな い。2)について,被告LEDが本件発明1の作用効果を奏しないか,極めてわずか しか奏しないなどといった事実は認められない。3)については,被告LEDが被告 製品に部材を付加しているとしても,その価値の源泉の大半は被告製品にあるもの と合理的に推認できる。4)については,有色LED市場における原告のシェアを一 般的に示すのみでは,本件において,なお原告の受けた損害の額についての推認を 覆すには十分とはいえない。以上のとおり,損害の額の推定が一部覆滅されるべきであるとする被告らの主張は,採用することができない。
(エ) 以上の検討によれば,被告E&Eによる本件特許権1の侵害行為により原告 が受けた損害(逸失利益)の額は10万5000円と認められ,被告立花による本 件特許権1の侵害行為により原告が受けた損害(逸失利益)の額は2000円と認 められる。

◆判決本文

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