FITの3文字が大きく表示され、その周辺に Foxconn Interconnect Technologyと小さく表示した商標について、FITだけを分離抽出できるかが争われました。知財高裁は、分離抽出できるとした審決を維持しました。
本願商標と引用商標とを対比すると,前記2のとおり,本願商標からは,
「フォックスコン インターコネクト テクノロジー エフ アイ ティー」の称
呼及び鴻海グループに属する企業との観念が生じるとともに,「FIT」の文字部
分から,「エフアイティー」との称呼が生じるほか,その構成文字と同一の英文字から成る英単語の「fit」に相応した「フィット」との称呼及び「適した」,「ぴ
ったりの」との観念が生じ(乙1,2),これは,原告も自認するところである。
本願商標から生じるこれらの称呼及び観念のうち,「フィット」との称呼及び「適
した」,「ぴったりの」との観念は,前記3の引用商標の称呼及び観念と同一である。
このように,対比に係る商標から2つ以上の称呼,観念が生じる場合,そのうちの
1つの称呼,観念が類似するときは,両商標は類似するというべきである(最高裁
昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12
号1621頁参照)。
本願商標の「FIT」の文字部分と引用商標とは,外観上,文字の彩色や書体等
の相違はあるものの,その相違は,上記の称呼及び観念の同一性をりょうがして上
記類似を覆すほどのものではない。
以上によれば,本願商標と引用商標とは,出所について誤認混同のおそれがあり,
両商標は,類似するものということができる。
(2) 原告は,本願商標の構成文字に,原告のグループ企業のブランドとして広く知られた「Foxconn」の文字が含まれ,かつ,原告の商号原語表記である「Foxconn Interconnect Technology」が併記さ
れているという事実を軽視せず,本願商標の指定商品に係る取引においては商品の
製造主体が重視されるという取引実情にも鑑みれば,本願商標と引用商標は,事実
上,出所の混同が生じることはない旨主張する。
しかし,前記2のとおり,本願商標中,「Foxconn Interconnect Technology」の文字部分は,外観上,「FIT」の文字部分に
比べて明らかに目立たない態様であり,それほど見る者の注意をひくものではなく,
取引者・需要者に対し,本願商標の指定商品の出所識別標識として強く支配的な印
象を与えるのは,「FIT」の文字部分である。したがって,原告主張に係る取引
の実情を考慮しても,本願商標と,本願商標の「FIT」の文字部分と同一の構成文字から成り,同一の称呼及び観念を生じる引用商標とは,出所について誤認混同
のおそれがあるものというべきである。
◆判決本文