商品の説明文については著作物性(創作性)なしと判断されました。ただ、一部の挿絵についての侵害を認めました。判決文の最後に問題となった説明文と挿絵が表記されています。
ア 被告説明文による原告説明文に係る著作権侵害の成否の判断について
原告は,原告説明文は創作性を有する表現たる著作物であり,被告説明文は原告説明文を複製したものであって,原告の著作権に対する侵害が成立する旨主張する。
そこで検討するに,上記著作権侵害が認められるためには,まず,1)原告説明
文と被告説明文とで共通する表現部分について,創作性が認められなければならない。そして,原告説明文と被告説明文は,いずれも本件商品の取扱説明書における
説明文であるところ,製品の取扱説明書としての性質上,当該製品の使用方法や使
用上の注意事項等について消費者に告知すべき記載内容はある程度決まっており,
その記載の仕方も含めて表現の選択の幅は限られている。これに対し,原告は,我が国においては,原告が初めて本件商品を販売した際,高い品質と安全性が求めら
れる日本市場向けに幼児用首浮き輪の安全適切な使用方法等を分かりやすく理解さ
せるための取扱説明書は存在していなかった旨指摘するけれども,そのような状況
にあっても,本件商品の使用方法や使用上の注意事項等については,それ自体はア
イデアであって表現ではなく,これを具体的に表現したものが一般の製品取扱説明
書に普通に見られる表現方法・表現形式を採っている場合には創作性を認め難いと
いわざるを得ない。本件商品の取扱説明書において,幼児のどのような行動に着目
した注意事項を記載しておくか,どのような文章で注意喚起を行うかといった点に
ついても,選択肢の幅は限られているとみられる。
次に,前記前提事実に証拠(甲4,13)及び弁論の全趣旨を総合すると,原告
説明文は,モントリー説明書の英語の説明文を日本語に翻訳した上でこれを修正し
て作成されたものであり,同説明文に依拠して作成されたものと認められる。二次
的著作物の著作権は,二次的著作物において新たに付与された創作的部分のみにつ
いて生じ,原著作物と共通しその実質を同じくする部分には生じないこと(最高裁
平成4年(オ)第1443号同9年7月17日第一小法廷判決・民集51巻6号2
714頁〔ポパイ事件〕)に照らすと,上記1)で創作性が認められる表現部分についても,2)モントリー説明書の説明文と共通しその実質を同じくする部分には原
告の著作権は生じ得ず,原告の著作権は原告説明文において新たに付与された創作
的部分のみについて生じ得るものというべきである。そして,本件においては,上
記1)で原告説明文(日本語)と被告説明文(日本語)とで共通する表現部分について創作性が認められるとすれば,その理由は,もとより翻訳の仕方に関わるもので
はなく,英文か日本文かに関わらない表現内容等によるものと考えられるから,上記2)では,モントリー説明書の英文を日本語に翻訳したその訳し方に創作性があっ
たとしても,被告による原告の著作権侵害を基礎付ける理由にはなり得ず,表現内容等について原告説明文において新たに追加・変更された部分でなければ,上記「原
告説明文において新たに付与された創作的部分」には当たらないというべきである。
また,原告説明文において本件ガイドラインと共通しその実質を同じくする部分
についても,原告説明文がこれに依拠したと認められる場合には,上記2)と同様,
原告の著作権は生じないというべきである。
◆判決本文