平成28(行ケ)10048  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成28年8月25日  知的財産高等裁判所

 知財高裁は、「知識の教授」に含まれる「リスクマネジメント研修」について,本件商標を不使用と認定し、使用していたとした審決を取り消しました。
問題となった商標は、「ファイナンシャル・リスクマネジャー」と「FRM」の2段併記商標です。
当裁判所は,本件配布行為をもって,本件審判請求の登録前3年以内に日本 国内において,商標権者が,本件取消請求役務のうち,「知識の教授」に含ま れる「リスクマネジメント研修」について,本件商標と社会通念上同一と認め られる商標を使用していたことを証明したものと認められるとした本件審決の 判断は誤りであり,原告主張の取消事由2には理由があるから,その余の点に つき判断するまでもなく,本件審決は取り消されるべきものと判断する。
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以上のとおり,被告は,遅くとも平成19年8月には,自社が開講する 講座について,受講希望者向けに講座の概要等を説明するための資料とし て,FRM養成講座についての記載がある案内書を作成し,その後,平成 20年6月及び平成23年10月に同案内書を改訂したが,これらの改訂 後の案内書においても,FRM養成講座についての記載はそのまま残され ていることが認められる。そして,このような事実からすれば,被告は, 要証期間である平成23年11月13日以降においても,FRM養成講座 についての記載がある本件案内書を,受講希望者らへの案内資料として保 有し,これを受講希望者らに配布するなどして使用していたことが推認さ れるものといえる。
2 「知識の教授」の役務についての使用の有無について
 原告は,仮に本件配布行為が認められるとしても,要証期間内に,被告が FRM養成講座を実際に開講し,又は,開講の準備を整えていたとの事実が 認められないことからすれば,本件商標と社会通念上同一の商標を,「知識の 教授」という役務について使用したものとは認められない旨主張するので, 以下検討する。 要証期間内に,被告がFRM養成講座の名称を使用した講座を開講して いた事実が認められるか否かについて
ア 証拠上認められる客観的事実について 前記第2の2のとおり,平成22年12月にプロフェッショナル協 会が設立され,同協会が,コンサルタント協会に代わって,被告が開 講する講座に対応する資格の認定・管理等を行うこととなった際,被 告は,関係者らに対し,甲2書面をもって,従前コンサルタント協会 が認定・管理していたFRMの資格について,その名称をFRCに変 更した上で,プロフェッショナル協会において認定・管理していく旨 を通知している事実が認められる。他方,その後,被告が,関係者ら に対し,上記通知に係る事項を訂正したり,変更したりする旨の通知 をした事実をうかがわせる証拠はない。 しかるところ,甲2書面の上記内容は,被告がそれまで開講してき たFRM養成講座についても,上記資格名の変更に対応した名称に変 更することを意味するものといえるから,被告が甲2書面による通知 を行い,その後これを訂正・変更する通知も行っていないということ は,特段の事情がない限り,被告が,平成23年以降は,FRM養成 講座の名称を使用した講座を開講していないことを示す事情というこ とができる。 また,次のような事情も,被告が平成23年以降FRM養成講座の 名称を使用した講座を開講していないことをうかがわせる事情という ことができる。 すなわち,被告が開設するホームページの記載をみると,平成18 年の時点では,被告が開講する講座名として,1)リスクコンサルタン ト(マネジャー)養成講座・基礎課程,2)リスクコンサルタント(マ ネジャー)養成講座・上級課程,3)CRO養成講座に加え,4)FRM ファイナンシャル・リスクマネジャー養成講座の記載がある(甲6) のに対し,平成23年及び平成24年の時点では,上記1)ないし3)の 記載はあるものの,「FRMファイナンシャル・リスクマネジャー養成 講座」の記載はない(甲8,9)。また,平成25年,平成26年及び 平成28年の時点においても,「リスクマネジメント・プロ養成講座・ 基礎課程」,「リスクマネジメント・プロ養成講座・上級課程」等の記 載はあるものの,FRM養成講座の記載はない(甲10ないし13, 72)。 このように,被告が開設するホームページをみる限り,平成23年 以降,被告がFRM養成講座の名称を使用した講座を開講している形 跡は何らみられず,かえって,被告のホームページでは,被告が開講 する他の講座については継続して紹介されているのに対し,FRM養 成講座については,被告が当該講座を開講していたことが明らかな平 成18年当時には紹介されていたのに,平成23年以降には全く紹介 されていないことからすれば,平成23年以降は,被告において,F RM養成講座の名称を使用した講座を開講していないことがうかがわ れるものといえる。 以上のとおり,証拠上認められる客観的・外形的な事実をみる限り, 本件案内書中にFRM養成講座の記載があること以外には,被告が平 成23年以降にFRM養成講座の名称を使用した講座を開講している 形跡は見当たらず,むしろ,そのような講座を開講していないことが 積極的にうかがわれるものといえる。

◆判決本文

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