公知技術と同一であるので新規性なし、さらにサポート要件違反もあるとして、被侵害と判断されました。訂正の再抗弁も否定されました。
これを本件についてみると,原告の主張によれば,本件発明の構成要件C及びDの「上部,下部,左(右)側部」とは「上部,下部又は左(右)側
部」を意味するのであり,左右側面部の裏面において一過性の粘着剤が塗布
される位置を,当該分離して使用するものの上部,下部又は左(右)側部の
内側のいずれか及び上部,下部又は左(右)側部の外側に該当する部分のい
ずれかであればよいというのである。
これに対し,本件明細書等の発明の詳細な説明の欄には,一過性の粘着剤
を塗布する部分の具体例として,分離して使用するもの4と中央面部1の上
部境界,下部境界,左側部(右側部)境界の各境界の内側近傍と外側近傍に
接着剤を塗布したものしか記載されていない。そのため,特許請求の範囲に
記載された発明は,発明の詳細な説明及び図面に記載されたものより広い。
しかるに,このように,本件明細書等の発明の詳細な説明の欄を超えて,
一過性の粘着剤が塗布される位置を原告の上記主張のとおりでよいとすると,
このうちどの部分に粘着剤を塗布すれば「葉書,チケット,クーポン券等の
分離して使用するものを広告等の印刷物より切り取る必要がなく,かつその
周囲に切り込みが入っているにもかかわらず,広告等の印刷物に付いていて
紛失させることなく,しかも手間がかからず葉書,チケット,クーポン券等
の分離して使用するものを利用することが出来る印刷物を提供すること」
(本件明細書等の段落【0006】)という本件発明の課題を解決すること
ができ,また「印刷物に付いている葉書,チケット,クーポン券等を切り取
ろうとする意思を持たずに,印刷物を開くと自動的に手にすることにな
る。」(同段落【0012】)の作用効果を奏することになるのか,必ずし
も明らかとはいえない(乙B11及び乙B12も参照)。
したがって,当業者において,本件発明の課題解決手段や,発明を理解す
るための技術的事項が,発明の詳細な説明に記載されているものとはいい難
い。
(3) 以上によれば,本件発明は特許法36条6項1号に規定するサポート要件
を充たしていないから,本件特許は同法123条1項4号により特許無効審
判により無効にされるべきものである。
・・・・
以上によれば,乙B1文献には引用発明1'が記載されており,このうち
「情報記録体」の具体例として「レスポンス用葉書」が記載されているに等
しく,引用発明1'は本件訂正発明の構成要件AないしIの全てを備えているから,引用発明1’は本件訂正発明と同一である。なお,この点に関し
て原告は,引用発明1'と本件訂正発明はさらに相違点があると主張するが
(相違点1−1及び1−2),前記2(4)の争点(3)ア(無効理由1)におい
て説示したところに照らし,いずれも採用することができない。
そうすると,本件訂正発明は引用発明1'と同一であって,なお新規性を
欠くものであるから,本件訂正に係る原告の再抗弁は,前記(1)で説示した
3)の要件を充たしていないというほかない。
◆判決本文