控訴審で均等主張をしましたが、知財高裁は、第2要件を満たさないとして、均等でないと判断しました。
ア 前記2のとおり,1)本件発明1−1は,一次原反ロールから薬液が塗布され
た二次原反ロールに至るまでの積層手段,薬液塗布手段,スリット手段及び巻取り
手段が順に連続した1つの製造ラインに組み込まれ,同製造ライン上をシートが上
記各手段を経ながら間断なく流れるように構成された二次原反ロールの製造設備であるプライマシンを備えているのに対し,2)被告設備は,一次原反ロールから薬液
が塗布された二次原反ロールに至るまでの間,一次原反ロールRから積層連続シー
トSを形成する積層手段であるシート合わせロール10,積層連続シートSをスリ
ットするスリット手段であるスリッター101及びスリットされた積層連続シート
Sを巻き取ってロール102とする巻取り手段である巻取り装置131から成る製
造ラインと,上記製造ラインとは別に設けられた薬液塗布手段であり,同製造ライ
ンから移送されたロール102から繰り出される積層連続シートSに薬液を塗布す
る薬液塗布装置11及び薬液が塗布された積層連続シートSを再度巻き取って二次
原反ロールRとする巻取り手段である巻取り装置132から成る製造ラインに分か
れている。
そこで,本件発明1−1において一次原反ロールから薬液が塗布された二次原反
ロールを製造するプライマシンを,被告設備における上記2つの製造ラインと置き
換えても,本件発明1−1の目的を達成することができ,同一の作用効果を奏する
かについて検討する。
イ 前記1のとおり,本件発明1−1の課題は,薬液塗布工程をプライマシンや
マルチスタンド式インターフォルダとは別に設ける構成を採用した場合に起きる,薬液塗布のために原反を移送する手間や多大な設備コストが掛かるという問題の発
生を回避し,同構成よりも低コストで薬液塗布を行うことができ,かつ,薬液塗布の有無を容易に切替え可能である製造設備を提供することであり,その解決手段は,一次原反ロールから薬液が塗布された二次原反ロールに至るまでの積層手段,薬液
塗布手段,スリット手段及び巻取り手段が順に連続した1つの製造ラインに組み込
まれ,同製造ライン上をシートが上記各手段を経ながら間断なく流れるように構成されたプライマシンを備える構成とすることである。同構成の採用によって,薬液
塗布手段をプライマシンやマルチスタンド式インターフォルダとは別に設ける場合
と比較して,その場合に起きる,薬液塗布のために原反を移送する手間や多大な設
備コストが掛かるという問題の発生を回避し,設備コストをより低く抑えることが
でき,また,薬液を塗布しない製品を製造する場合は,プライマシンから薬液塗布
手段を省略すれば足りるので,薬液塗布の有無を容易に切り替えることができると
いう効果を奏する。
ウ そして,被告設備は,前記アのとおり,一次原反ロールから薬液が塗布され
た二次原反ロールに至るまでの間,一次原反ロールRからロール102を形成する
製造ラインとは別に,薬液塗布装置11が設けられており,上記製造ラインから原
反(ロール102)を薬液塗布のために薬液塗布装置11に移送するというもので
ある。したがって,本件発明1−1において一次原反ロールから薬液が塗布された
二次原反ロールを製造するプライマシンを,被告設備における2つの製造ラインと
置き換えれば,少なくとも,本件発明1−1の目的のうち,薬液塗布工程をプライ
マシンやインターフォルダとは別に設ける構成を採用した場合に起きる薬液塗布のために原反を移送する手間が掛かるという問題の発生を回避し,同構成よりも低コストで薬液塗布を行うことができる製造設備を提供するという目的を達成すること
ができず,薬液塗布手段をプライマシンやマルチスタンド式インターフォルダとは
別に設ける場合と比較して,その場合に起きる薬液塗布のために原反を移送する手
間が掛かるという問題の発生を回避し,設備コストをより低く抑えることができる
という効果を奏しなくなることは,明らかである。
◆判決本文
◆一審はこちら。平成24(ワ)6547