イベントにおける使用が、公然実施に該当すると判断されました。
イ また,控訴人は,特許出願のためには出願前に発明内容を他社に知られ
てはならないことを認識していたから,本件小型器については,本件イベントにお
いて,実演,操作説明その他詳細な製品説明,内部構造の開示を行っていないと主張し,甲16〜18はこれに沿う。
しかし,本件発明1の構成要件のうち,B2,B4,C1〜3,Fが本件小型器の展示によって公知となったことは争いがなく,かつ,本件小型器は炭酸ガスと化
粧水を混合した上で顔面等に吹き付けるためのものであって,その展示態様と業務
用大型器の実演や説明から,ガスボンベが本体内部に入っており,スプレーガンに
付属したカップ内に化粧水が入れられるべきものであること,本体上部とつながっ
た管を通って炭酸ガスがスプレーガンに到達すること,炭酸ガスと化粧水が混合さ
れたものが,スプレーガンのレバーを操作することによってその先端から噴射され
ることは容易に看取されるといえる。本件イベント当時,特許出願のためには出願
前に当該特許発明の内容を他者に知られてはならないことを認識していたのであれ
ば,このような,公然知られた又は公然実施をされたと判断される可能性がある展示方法を,採用することは不自然である。
控訴人は,本件小型器展示の目的を,美容院での施術の雰囲気を出すためなどと
主張するが,上記のような可能性のある展示方法を,雰囲気を出すといった曖昧な目的のために行うのは不合理である。しかも,本件イベントにおいて,控訴人が,
本件小型器を組み立て,液体をカップに入れた,少なくとも外観上すぐに実演でき
るような状態で展示しながら,他方で,来場者の質問を受け付けなかったり,本件
小型器の実演を拒んだりしたとは想定し難い。
上記(2)ケで認定したとおり,控訴人において知的財産権関連業務を行っていたB
が,本件イベントにおける展示を事前に認識していなかったこと,本件特許出願を
決めたのが本件イベントの後であったことからすれば,本件イベントへの本件小型
器の出品は,本件特許出願前には当該特許発明の内容を知られてはならないという
意識を欠いたまま行われたものであり,本件小型器の実演や説明も,業務用大型器
と同様に行われたと認めるのが相当である。
控訴人の主張には,理由がない。
ウ さらに,控訴人は,本件イベントにおいては,本件小型器の実演,操作
説明その他詳細な製品説明や,内部構造の開示等が行われておらず,公然性の要件を欠き,本件小型器の展示は,「特許製品以外の製品の宣伝活動や営業活動のための
展示又は客寄せのための展示」にすぎず,譲渡等を目的としたものではないから,
公然と「実施」したとはいえない,と主張する。
しかし,上記(2)キ及び(3)イで認定したとおり,本件イベントにおいては,本件
小型器の実演及び説明が行われ,展示とあいまって内部構造をも知り得る状態にあったと認められる。
◆判決本文
◆関連事件です。平成27(ネ)10067
◆関連事件(審取)です。平成27(行ケ)10144