発信者情報開示請求です。争点は、リツイートする行為が著作権侵害かです。裁判所はリツィートの仕組みから判断して、公衆送信には該当しないと判断しました。
前記前提事実(3)ウ及び(4)記載のとおり,本件写真の画像が本件アカウント
3〜5のタイムラインに表示されるのは,本件リツイート行為により同タイムラインのURLにリンク先である流通情報2(2)のURLへのインラインリ
ンクが自動的に設定され,同URLからユーザーのパソコン等の端末に直接画像ファイルのデータが送信されるためである。すなわち,流通情報3〜5
の各URLに流通情報2(2)のデータは一切送信されず,同URLからユーザ
ーの端末への同データの送信も行われないから,本件リツイート行為は,そ
れ自体として上記データを送信し,又はこれを送信可能化するものでなく,公衆送信(著作権法2条1項7号の2,9号の4及び9号の5,23条1
項)に当たることはないと解すべきである。
また,このようなリツイートの仕組み上,本件リツイート行為により本件
写真の画像ファイルの複製は行われないから複製権侵害は成立せず,画像フ
ァイルの改変も行われないから同一性保持権侵害は成立しないし,本件リツ
イート者らから公衆への本件写真の提供又は提示があるとはいえないから氏
名表示権侵害も成立しない。さらに,流通情報2(2)のURLからユーザーの
端末に送信された本件写真の画像ファイルについて,本件リツイート者らが
これを更に公に伝達したことはうかがわれないから,公衆伝達権の侵害は認
められないし,その他の公衆送信に該当することをいう原告の主張も根拠を
欠くというほかない。そして,以上に説示したところによれば,本件リツイ
ート者らが本件写真の画像ファイルを著作物として利用したとは認められな
いから,著作権法113条6項所定のみなし侵害についても成立の前提を欠
くことになる。
したがって,原告の主張する各権利ともその侵害が明らかであるというこ
とはできない。
これに対し,原告は,本件リツイート行為による流通情報2(2)のURLか
らクライアントコンピューターへの本件写真の画像ファイルの送信が自動公
衆送信に当たり,本件リツイート者らをその主体とみるべきであるから,本
件リツイート行為が公衆送信権侵害となる旨主張する。
そこで判断するに,本件写真の画像ファイルをツイッターのサーバーに入
力し,これを公衆送信し得る状態を作出したのは本件アカウント2の使用者
であるから,上記送信の主体は同人であるとみるべきものである(最三小判
平成23年1月18日判決・民集65巻1号121頁参照)。一方,本件リ
ツイート者らが送信主体であると解すべき根拠として原告が挙げるものにつ
いてみるに,証拠(甲3,4)及び弁論の全趣旨によれば,ツイッターユー
ザーにとってリツイートは一般的な利用方法であること,本件リツイート行
為により本件ツイート2は形式も内容もそのまま本件アカウント3〜5の各
タイムラインに表示されており,リツイートであると明示されていることが認められる。そうすると,本件リツイート行為が本件アカウント2の使用者
にとって想定外の利用方法であるとは評価できないし,本件リツイート者ら
が本件写真を表示させることによって利益を得たとも考え難いから,これらの点から本件リツイート者らが自動公衆送信の主体であるとみることはでき
ない。
◆判決本文