知財高裁は、ライブハウスでの演奏について、オリジナル曲の演奏についても、JASRACにて管理対象としている以上、支払い義務があると判断しました。ライブハウスが実行主体であるとの判断も維持しました。
3 争点2(オリジナル曲の演奏による著作権侵害の成否)について
(1) 1審被告らは,自ら制作したオリジナル曲を演奏することは,1審原告に著
作権管理を信託している著作者自身が許諾しているのであるから,不法行為に当た
らないと主張する。
しかし,前記1の認定事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」の第4の1(7)
イ)のとおり,1審原告と著作権信託契約を締結した委託者は,その契約期間中,
全ての著作権及び将来取得する全ての著作権を,信託財産として1審原告に移転し
ているから,1審原告管理著作物の著作権者は,1審原告である。そうすると,利
用者が誰であっても,1審原告の許諾を得ずに1審原告管理著作物を利用した場合
には,当該利用行為は著作権侵害に当たるといわざるを得ない。
このことは,著作権信託契約約款11条が,自作曲の自己利用に関し,著作物の
関係権利者の全員の同意を得た自己利用(委託者がその提示につき対価を得る場合
を除く。)については,あらかじめ受託者の承諾を得て,管理委託の範囲について
の留保又は制限をすることができると定めていることからも,裏付けられるところ
である。
以上のとおり,演奏者が1審原告に著作権管理を信託した楽曲を演奏する場合で
あっても,1審原告の許諾を得ない楽曲の演奏が,1審原告の著作権侵害に当たる
ことは明らかであり,1審原告には使用料相当額の損害の発生が認められるから,
著作権侵害の不法行為が成立する。
(2) 1審被告らは,1審原告が著作者自身の演奏申込みも認めない違法な運用を行いながら,無許諾を理由に著作者自身の演奏の不法行為責任を追及することは,
管理委託契約の趣旨に反するものであり,許されないと主張する。
しかし,著作者が自ら演奏することを許諾している場合であっても,著作物につ
いてのその余の関係権利者の得るべき使用料を分配する必要があることからすれば,
著作者自身の演奏行為について演奏の不法行為責任を追及して使用料相当額を徴収
することが,管理委託契約の趣旨に反するとはいえず,1審被告らの主張は理由が
ない
。
(3) したがって,1審被告らの上記主張は採用することができない。
4 争点3(1審被告らの故意又は過失の有無)について
(1) 1審被告らは,前記2(2)の各事実を認識していた上に,前記1の認定事実
(引用に係る原判決の「事実及び理由」の第4の1(4)ア)のとおり,1審被告らは,
本件店舗を開いた後は,1審原告に著作権料を支払わなければならないことを認識
していたのであるから,著作権侵害主体であることの認識があったことは明らかで
あり,1審被告らには著作権侵害の故意又は過失があったというほかない。
(2) 1審被告らは,本件店舗における演奏曲目や出演者が権利者から許諾を得た
かどうかを知らないから故意がない旨主張する。
しかし,著作権侵害の故意の有無の判断に当たっては,他人が権利を有する楽曲
を利用していることの認識があれば足り,具体的な楽曲名や権利者の認識までは要
しない。また,1審被告らが1審原告管理著作物の利用許諾契約を締結していない
こと及び本件店舗における多くのライブにおいて,具体的な数はともかく,1審原
告管理著作物が演奏されていることについては当事者間に争いがないところ,ライ
ブハウスの出演者自らが1審原告から許諾を得ることは一般的ではなく,前記1の
認定事実(引用に係る原判決の「事実及び理由」の第4の1(4)ア)のとおり,1審
被告Y2も,本件店舗以外のライブハウスに出演したことがありながら,1審原告
から許諾を得たことはなかったことに照らすと,本件店舗における演奏曲目や出演
者が権利者から許諾を得たかどうかの認識は,本件における1審被告らの主観的要
件の判断を左右するものではない。
(3) また,1審被告らは,著作権侵害の故意は,直接主体たる出演者の各演奏行
為時に存在していなければならず,その内容は,当該出演者が他人の著作物を無許
諾で演奏していること及び場の提供によって1審被告らも共同で当該楽曲を演奏し
ていることの各認識ないし認容でなければならないと主張する。
しかし,1審被告らは,各出演者による演奏行為当時,著作権侵害主体であるこ
とを基礎付ける事実を認識し,1審被告ら又は本件店舗は1審原告との間で1審原
告管理著作物の利用許諾契約を締結することなく,当該出演者が他人の著作物を演
奏していたのであるから,規範的な侵害主体としての故意に欠けるところはないと
いうべきである。
◆判決本文
◆原審はこちら 平成25(ワ)28704/a>