練習用箸について、著作物性が否定されました。判断としては1審と同じですが理由が詳細になっています。
第三に,原告各製品は,幼児が食事をしながら正しい箸の持ち方を簡
単に覚えられるようにするための練習用箸であって,その目的を実現す
るために,2本の箸を連結する,あるいは,箸を持つ指の全部又は一部
を固定するというのは,いずれもありふれた着想にすぎず,このことは
甲16〜26の各製品や,乙5〜12の各公報に描かれたデザインを見
ても明らかである。また,かかる着想を具体的な商品形態として実現し
ようとすれば,箸という物品自体の持つ機能や性質に加え,練習用箸としての実用性が求められることからしても,選択し得る表現の幅は自ら相当程度制約されるのであって,美術の著作物としての創作性を発揮す
る余地は極めて限られているものといえる。
(エ) 以上に基づいて検討するに,まず,箸を連結すること自体はアイデア
であって表現ではない(なお,連結部分にキャラクターを表現すること
も,それ自体はアイデアであって,著作権法上保護すべき表現には当たらない。)し,その具体的な連結の態様を見ても,原告各製品が他社製
品(甲16〜26)と比較して特徴的であるとまではいえず,まして美
的鑑賞の対象となり得るような何らかの創作的工夫がなされているとは
認め難い。よって,前記1)の点に美術の著作物としての創作性を認める
ことはできない。
次に,箸を持つ指やその位置が決まっている以上,これを固定しよう
と考えれば,固定部材を置く位置は自ずと決まるものであるし,人差し
指,中指,親指の3指を固定することや固定部材として指挿入用のリン
グを設けることも,例えば,原告各製品が製造販売されるより前に刊行
された乙5,7,8の各公報においても類似の構成が図示されている(すなわち,乙5及び乙7には,一対の箸のうち1本が人差し指と中指を入
れる2つのリングを有し,他方の1本が親指と薬指を入れる2つのリン
グを有するものが図示されている。乙8には,一対の箸のうち1本が人
差し指と中指を入れる2つのリングを有し,他方の1本が薬指を入れる
1つのリングを有するものが図示されている。)ように,特段目新しい
ことではない。原告各製品も通常指を置く位置によくあるリングを設け
たにすぎず,その配置や角度等に実用的観点からの工夫があったとして
も,美的鑑賞の対象となり得るような何らかの創作的工夫がなされてい
るとは認め難い。よって,前記2)の点についても,美術の著作物として
の創作性を認めることはできない。
◆判決本文
◆1審はこちらです。平成27(ワ)27220